一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

1156   寂しさは哀しさならず牡丹雪   守弘

2014年02月28日 | 

「さびし」は、」上代の「さぶし」から、中古以降「さびし」に転じた。語源の「さぶ」は、「錆ぶ」「荒ぶ」が語源で、鉄が錆びたように、心が満たされない思いを言う。漢字の「寂」は、家の中の人声が細く小さくなった様を表す。

 一方、「悲しい」の、「非」は羽根が両方に割れる意味を含み、「非+心」で心が裂け、胸が裂けるような「切ないほどいとおしい」「可愛くてならない」「悔しい」「残念」など激しく心が揺さぶられる状態、心の動揺を抑えきれない状態を言う。又、「哀しい」は、「口+衣」で口を隠してむせぶことを表すそうである。(語源由来辞典より)

 こう調べてみると、牡丹雪が降っての思いは、明らかに「寂しい」であって、「哀しい」とは言えない。しかしながら、先日のように数十年に一度の大雪に見舞われ死者すら出てしまうと、そんな暢気なことも言っていられない。

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1155  雛の夜の鏡に知らぬ女居り  薪

2014年02月27日 | 

 雛祭は、平安時代から始まった厄除けのための「流し雛」や儀式的な「上巳の節句」と、子供たちのままごと遊びから発展した「雛遊び」が結びつき、江戸時代になって、雛祭として全国に広まったようである。

 元は男女一対のみの内裏雛が、次第に華美になり、3段・5段・7段と増えていったので、享保年間には幕府が大型を禁止するほどになったそうである。

 さて、この句の知らぬ女とは、作者自身であろう。雛人形は、多少薄汚れはしても、昔と変わらぬ美しさと気品を保っている。ところが、作者は「私には若かりし頃の面影さえない」と言っている。表現にトリックがあって意味が分かれば可笑しいが、実際はどうにも逃れられない悲哀の句である。

湯河原・幕山梅園

5,6分咲きでしょうか。満開にはもう少しかかりそうです。(2月26日)

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1154  第210回 二月 岩戸句会

2014年02月26日 | 岩戸句会

春めくや水面に挑む二羽の鳶    豊春 

初島の灯影煌めく実朝忌

 

夜回りの鐘引き返す峠道      薪  

雛の夜の鏡に知らぬ女居り 

 

色の無く音無く寒の明けにけり   稱子

誕生の記念の梅のほころびぬ

 

極楽の入口で覚む春炬燵      章子

墨田川渡りて求む桜餅

 

ゆるゆると体ゆるめる春の旅    洋子

雛飾るLED(エルイーデイ)に替えようか

 

梅林や地球と同じ星は在る     炎火

立春や建設株に目を通す

 

春めくやウエイトレスの作り声   鼓夢

近づけば松枝に吹ぶく別れ雪

 

前向きに生きて冷たき春の風    遊石

ベルト穴一つゆるめて春隣

 

早起きに夢か現か雪の中      歩智

朗らかに子等の声あり雪の朝

 

梅白しうつろう風情今昔     一煌

立春の重き雪かな陽の光

 

残雪が陽なかで光流れ出す    余白

沈丁花雪の薄絹美しや

 

一秒も狂わぬ時計梅の花      雲水

一片の降らす雪もうありませぬ

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1153   初島の灯影煌めく実朝忌   豊春

2014年02月25日 | 

(はつしまの ほかげきらめく さねともき)

  旧暦1月27日(新暦では2月末)は、源実朝の忌日。実朝は源頼朝の第二子として生まれ、12才で征夷大将軍となったが、28才の若さで鶴岡八幡宮で兄頼家の子、公暁に暗殺された。

 実朝は、和歌に通じており、「金槐和歌集」がある。箱根権現、三島大社などを巡り、伊豆山権現に参った時の歌、

箱根路をわが越えくれば 伊豆の海や沖の小島に波の寄る見ゆ

 この歌の「沖の小島」は、現在の「初島」であるらしい。この時期、夜になると、初島近辺にはイカ釣り船の明かりが輝いて見える。

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1152   凍返る大道芸も生くるため   朋子

2014年02月22日 | 

 私が大道芸を見たのは、10数年前に一度きり。私の推測では、彼らは誰かに雇われているのではなく、自由気ままに旅から旅へ、体一つで生活している旅芸人ではないのだろうか。でなければ、あんなに楽しそうに、一生懸命やれるものではない、と思う。だから、この句のように「生きるため」という悲壮感を私は全く感じなかった。

 生活は大変かもしれないが、自分の好きなことをやっていて、特殊な技能を磨いて人々を笑わせたり、感動させたりしているのだから、とても素晴らしい仕事だと思う。

侘助

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1151   リビングの贋の暖炉に春の塵   トキノ

2014年02月21日 | 

(リビングの にせのだんろに はるのチリ)

 薪ストーブと違って、暖炉は実に不経済な暖房設備らしい。毎日焚いたら、燃焼効率の良い薪ストーブでも一冬4~5トン使うから、本格的な暖炉ではたぶん20トン以上は使うだろう。

 念願の薪ストーブを据えても、第一に材木を調達するのが大変。調達できたとしても割るのが大変、さらに最低1年の乾燥が必要だし・・・・・結局薪ストーブの横に石油ストーブを、なんて家庭も結構あるのではないだろうか。町中での暖炉は、もっと大変だろう。

 そこで外観が暖炉で、いかにも薪が燃えているように見えるストーブが人気なのだ。ガスや電気だから、スイッチ一つで着火消火ができるから、実に便利。

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1150   近寄るなキケン猪の罠あり

2014年02月20日 | 

散歩中などに、子連れの猪をよく見かける。土を掘り返した跡は、そこらじゅうに見ることができるし、我が家の庭も、しばしば荒らされるほど猪の被害は多い。

11月頃から、犬の散歩で通る県道のすぐ脇に、猪の罠が置かれていた。1,5m×1,5m×3mほどの鉄製の檻で、両側が開いていて、真ん中に餌が置かれていた。猪が檻に入り、餌近くのワイヤーに触れると扉が閉まる仕組みだろう。

ロープを張り、「イノシシの檻あり。近寄るな。キケン」と書かれた紙がぶら下がっていた。

 ところが今朝、その檻がなかった。きっと猪が掛かったに違いない。

 

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1149   亡き人の吐息となりて春の雪   万由子

2014年02月19日 | 

 吐息とは、単に吐く息というだけでなく、落胆したり、緊張がゆるんだりしたときに思わず出る溜息のことだという。

 大粒の淡雪が顔にぶつかって、そのことから作者が何を想像しようと自由であるが、亡き人の吐息とは、なかなかの想像力だ。というよりも、今の作者は、雪に限らず、雨が降っても、風が吹いても、梅が咲いても、何が起きても亡き人を思い出すに違いない。

 つまり春の雪は、作者の嘆きの吐息でもあるのだ。

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1148   梅ふふむ湖面に記す風のしわ   高明

2014年02月18日 | 

  「ふふむ(含む)」は、梅の中に花芽があるが、蕾の状態であって未だに外に現われていない、という意味。

 さて、この句の「湖面に記す風のしわ」は、本来「風が記す湖面のしわ」が正しい。しかし、ワカサギ(公魚)にでもなったつもりで、水中から湖面を眺めれば、「湖面に記す風のしわ」だし、その向こうにある「ふふむ梅」の姿まで見えてくるではないか。但し、梅は相当歪み揺らいではいるが。

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1147   駅頭の津軽三味線冴返る   泰三

2014年02月17日 | 

 NHKの朝の連続ドラマで主題歌「雨のち晴レルヤ」を歌っている「ゆず」というフォークデュオの二人も、元は路上ライブをやっていたそうである。そんな青年たちの中で、メジャーになっていくのは、ほんの一握りに過ぎないのだが、一旦メジャーになってしまうとすごいらしい。コンサートには5万人以上も集まるし、CDも100万枚以上なんてざらに売れるから、所得も半端ではないという。

 ところで、この句の三味線弾きの青年はどうであろうか。日本人が日本の伝統音楽を忘れている時代である。長唄・清元・常磐津・新内・小唄・端唄そして、民謡。その中でも津軽三味線は比較的人気がある方だが、それでもなかなか厳しいのではないか。

 指先の痺れるような春の寒さが世間の厳しさを物語っているが、私は青年のド根性に拍手を送りたい。青年よ、頑張れ、君の努力はいつか日の目を見るに違いない。

津軽じょんがら節

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1146   断捨離は子に任せたる良寛忌

2014年02月16日 | 

  断捨離とは、不要なものを断ち、捨て、執着から離れることを目指す整理法。平成22年(2010)ごろからの流行語。近年では断捨離を実践する人を「断捨離アン」などと呼ぶそうである。

  物を買って捨てられず、日本全国に増えているゴミ屋敷、ゴミ部屋に住む人達。政治家は景気を良くしようと必死だが、景気が良くなれば人は物を買い、ゴミを増やすだけのことである。

  そして、その愚かさに気付いた人たちが断捨離を始めたのだ。つまり断捨離とは、大量に買い集めた物を、大量にゴミとして捨てることに他ならない。

 良寛は、 旧暦の天保2年1月6日、新暦の1831年2月18日が命日。良寛ほどの断捨離名人を私は知らない。勿論、人間以外の全ての動物たちは、究極の断捨離を苦も無く実践していることは、言うまでもない。

動物が生産するものは、メスが産む子供たちと、飲食したものを排泄する糞と尿だけだ。つまり、人間がいなければ、地球は汚染されない・・・・・・・

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1145   春の日差しのやさしさに包まれて   由美

2014年02月15日 | 

小さい頃は 神様がいて 

不思議に夢を 叶えてくれた

やさしい気持ちで 目覚めた朝は 

おとなになっても 奇跡は起こるよ

 

カーテンを開いて 静かな木洩れ日の 

やさしさに包まれたなら きっと

目に映る全てのことは メッセージ

 

小さい頃は 神様がいて 

毎日愛を 届けてくれた

心の奥にしまい忘れた

大切な箱 開くときは今

 

雨上がりの庭で くちなしの香りの

やさしさに包まれたなら きっと

目に映る全てのことは メッセージ

 

カーテンを開いて 静かな木洩れ日の 

やさしさに包まれたなら きっと

目に映る全てのことは メッセージ

 

やさしさに包まれたなら←良かったらお聞きください

 

 

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1144   雪はしづかにゆたかにはやし屍室   波郷

2014年02月14日 | 

(ゆきはしづかに/ゆたかに/はやし/ししつ)

 今年の元旦、ある男がこの世を去った。その数か月前、死期を悟った男は、都内のホテルで会費制のパーティーを開いた。会場には、300人余りも集まったという。彼は病状を説明し、死が間近であること、葬儀は身内だけで行うことなどを話し、世話になった親戚・友人・知人に最後の別れの挨拶をしたそうである。

彼の机の上には、波郷のこの一句を書き写した便箋が置かれていたという。

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1143   春浅し慣れぬ手つきの注射針   道子

2014年02月13日 | 

 同じ人間でありながら、静脈が浮き出ているタイプAとそうでないタイプBがいる。血液採取や静脈注射の時、私はタイプAだから良いけれども、Bタイプは大変である。

 Bタイプの場合、相当の熟練看護師でも一発で静脈を探し出してうまく刺すのは難しいのである。何度やっても肘のところがダメで諦め、手の甲にしてもダメで・・・・・結構痛いらしく、第三者として腹が立って見ていられない。

 まして、経験不足の慣れぬ手つきであったら、Bタイプの患者はきっと痛みと共に恐怖感を抱くに違いない。

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1142   主なきままの窯場や下萌ゆる   青鳥

2014年02月12日 | 

  日本の住宅の数は約5700万戸、そのうち空き家は約750万戸で13.1%だそうである。(平成25年の調査)

  その中には、朽ちた住宅や別荘、工場、店舗、そして窯場もあるだろう。売るに売れず、貸すに借り手がないままに朽ちてゆく廃屋が750万戸である。もったいない、・・・・・これを利用しない手はないのだが、放置されたままである。

  そんな廃墟に春の草、いわゆる雑草が芽吹いている。人間に占領された土地を取り返すかのように、セリナズナゴギョウハコベラホトケノザその他諸々の草木が芽吹いている。

  この句は、明日は我が身と身につまされるが、草木にお返しすると考えれば、不経済でも非効率でもない。

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