一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

420  小春日や忘れてかまわぬことばかり   和子

2011年11月13日 | 

(こはるびや/わすれてかまわぬ/ことばかり)

 

この世に、およそ大事なことなんて一つもない。過ぎ去ってみれば、大事にしていたことが、自分を苦しめていたのだ。このことが分かれば、人生が随分楽になるはずだ。

 

「こだわらず、とらわれず、かたよらず」という格言があるように、大事なこと、というのは、執着であり、我欲であり、争いや孤独の種であった。

 たぶん、この作者の心境は、かの有名な菊田一夫のラジオドラマ「君の名は」の冒頭のナレーション、「忘れ得ずして忘却を誓う心の虚しさよ」と同じなのではないか。

 

 だから、神様は、年をとるにつれて物忘れをひどくさせ、ついには痴呆や恍惚の人にさせて、現生や老いの苦しみから解放してくれるのではないか、と思う。

 つまり、「忘れることは幸せの種」なのである。

 

 

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419火事赤し妹ならば婚へず   誓子

2011年11月12日 | 

(かじあかし/いもうとならば/くながえず)

 

火事は、冬の季語。もう昔のことで自信はないけれど、私の記憶では、この句の作者は山口誓子ではないかと思う。

この句が、当時の句会で問題になったという。つまり、二つの解釈が成り立つ、というのだ。「火事赤し」は、妹に対する作者の恋愛感情を表している、として、つまり

 

   弟の妻、義理の妹に「いくらあなたが好きだからといって、妹だから結婚はできないよなあ」

   恋人又は妻に「あなたが妹だったら、結婚できなかったなあ、妹でなくて良かった」

 

 解釈は2通りあるのかもしれないが、当然①の方が興味深い。これも昔聞いた話。

 

 

クロガネモチ(黒鉄黐)

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418  冬始さてイモムシの本届く 

2011年11月11日 | 

(ふゆはじめ/さてイモムシの/ほんとどく)

 

初対面で少し話しただけなのに数日後、ある女性から「イモムシ」のハンドブックが送られてきた。その本によると、日本の鱗翅目(りんしもく・蝶5%と蛾95%)は、6,000種もあるそうだ。

 

今までの私は、蝶や蛾には無関心で、以前、鉢植えのクチナシの葉が、丸坊主なので良く見ると、大きな緑のイモムシを発見し、植え木バサミで半分にちょん切った記憶がある。ハンドブックを見ると切られたのは「なんとか揚羽のイモムシ」に違いなかった。

 

 私は、イモムシを研究する強迫観念に、もう囚われてしまった。既に、サルトリイバラやパセリを育てることを考えているんだから。

 

ドウダンツツジ(満天星躑躅)

 

 

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417  半島を通り過ぎゆく初時雨

2011年11月10日 | 

 (はんとうを/とおりすぎゆく/はつしぐれ)

 

 朝方、西の空を見ていると、黒雲がこちらに向かっていた。しばらくして、予報より数時間早く、雨が降り出した。先程の雲、いわゆる時雨雲が降らせたに違いなかった。

  

庭やテラスに吹き散らかった落葉が、濡れて貼りついてしまったから、落葉掃きは止めることにした。 

それにしても、茗荷の葉がすっかり枯れてしまった。茗荷だけ見ていると真冬みたいだ。外気温は、10度。 

 

今日の雨は、今年の冬、初めての時雨だった。明日は、一日降るらしい。今日は、初めて本格的に薪ストーブを焚いている。

 

オビトケコンギク(帯解け紺菊)

 

花弁が筒状で、先端がスプーンみたいです。

ノコンギクの園芸種だそうです

 

オビトケなんて、色っぽい名前ですが

丸まった筒を解け、という意味でしょうか。

 

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416  夫の屁を蒲団の中で笑い合う   小夜子

2011年11月09日 | 

(つまのへを/ふとんのなかで/わらいあう) 

 

 蒲団は、冬の季語である。日本では、畳にシングルの蒲団を敷くが、最近は欧米並みにベッドが過半数を得ているのではないか。しかし、その中でWベッドで寝ている夫婦は、どのくらいいるだろうか。全く検討か付かないが、せいぜい数パーセントであろう。いや、数パーセントもあるだろうか。 

 

夕食を外で済ませた夫と、家で食べた妻とがWベッドインした。そこで夫が屁を放った。妻笑いながら曰く。 

 

「あなた、いつもと匂いが違うわよ。夕御飯何食べたの」

 

それから、二人はああでもない、こうでもない、と笑い合ったという訳であろう。その後、どうなったかは、御想像にお任せ致します。

 

さて、蒲団の中の相手の屁が、全く気にならず笑い合える、というのは素晴らしいことだし、こうでないと、真の夫婦とは言えない。

 

残念ながら、私は「畳にシングル」の伝統的日本人なので、妻の屁を蒲団の中で経験したことがない。笑い合えなかったことが残念だし、作者夫婦が羨ましい。

 

 

ジョロウグモ(女郎蜘蛛)

 

今時の山を歩いていて顔をなぶるのは、大抵この蜘蛛である。

このクモは、女郎蜘蛛のメスで紅がよく目立つ。

 

オスは、かなり小さく、よく見ないと見過ごしてしまう。

下手にメスに近づくと、食べられてしまうので、

用心深く交尾のチャンスを狙うそうである。

 

蜘蛛でなくて良かった!!!

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415  愛されてそして愛して落葉焚く

2011年11月08日 | 

 働きもの、怠けもの、人間はどっち? 

 

これは、怠け者だと思うね。寒い北半球で文化や科学が発展したのは、自然環境が厳しかったから、生きるために仕方なく働いたに過ぎない。

南国で気候が温暖で食べ物が豊富なら、働く必要がない。しかし、子供を見ていると、本当によく動くよね。本来はやっぱり働き者かな?

 

愛すると愛される、あなたは、どっちのタイプ?

 

これは、どう見ても愛される方が先だね。赤ん坊が親から愛されて育ち、やがて大人になって人を愛するようになる。

しかし、愛することが先の情熱的な人は、意外と少ないんじゃない?愛されることにばかり気を使い、愛することを忘れている人も結構いる。そうならないように気を付けなきゃね。

 

さて、今日は立冬。暦や俳句では、今日から冬だ。暖かかったら、今日という日に「小春ちゃん」と呼びかけてみよう。

 

 

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414  古酒汲むや姉妹三人よく笑う

2011年11月07日 | 

(こしゅくむや/しまいさんにん/よくわらう)

 

 ある青年がお見合いをすることになった。なんと、妙齢の三人姉妹の中から、一番気に入った娘を選べという。

 

 青年が姉妹の家を訪ねると、お酒や食事が準備されていた。末の妹は青年の前に座りお酌したり、料理を勧めたり話も上手でよく笑い、なかなか可愛い娘だった。

 

長女は、台所で料理に奮闘しており、青年と話すこともなかった。次女は、料理を運んだり、姉を手伝ったり、妹や青年とも話したり、台所とテーブルを行き来し、青年と姉のどちらにも配慮して働いていた。

 

内心青年は、結婚するなら挨拶しただけの、台所で甲斐甲斐しく働く長女を選ぼうと思ったそうである。

ところが、台所にいた長女が、末の妹に「○子さん、あなたも少しは手伝いなさい」とやや命令口調で言ったそうである。

 

その一言で、青年は長女は止めて、次女を選んだそうである。本当だかどうだか、昔聞いた話。

 

タイワンホトトギス(台湾杜鵑)

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413  野菊咲く唯の野菊と思ひけり

2011年11月06日 | 

(のぎくさく/ ただののぎくと/  おもいけり)

 

 聞きかじりで、申し訳ないが、

 

野菊と言うが、「ノギク」という植物は、存在しない。単に「野に咲く菊に見えるもの」という程度の意味にすぎない。

 

キク(菊)科には、キク属を含む79属がある。その中で、野菊と言われているのは、キク属(ノジギクなど15種)、ヨメナ属(ヨメナなど6種類)、シオン属(ノコンギクなど22種)などがあるそうだ。

 

そこで、我が家近辺に咲く最も多い野菊が、植物学的に何かと調べてみた。どうやらノコンギク(野紺菊)らしい。今まで私はヨメナ(嫁菜)とばかり思っていた。20年ほど前に知人が「これは嫁菜」と断定的に言ったのを鵜呑みにしたからである。

 

しかし、こういう植物学的な知識がなくとも、単に「野菊咲く、野菊かな」などと俳句を作っていた訳で、まあ、今まで何も問題はなかった。俳人や作家は、単なる野菊で十分なのだ。

 

 

キダチチョウセンアサガオ

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412  葉桜の散るやお疲れ様でした

2011年11月05日 | 

(はざくらの/ ちるやおつかれ/ さまでした)

 

 私の知る限り、最も早く散る木の葉は、桜である。現在、我が家の大島桜は、もうほとんど葉っぱがない。

 

散るのが早いということは、それだけこの半年あまり大変だったのだろう、と思う。春の芽吹きから開花や散華、新緑、万緑、紅葉、落葉・・・・

 

本当にお疲れさまでした。来年も頑張ろうね。頑張ってね。「っぱフレディー」でも読んでみるか。

 

キダチチョウセンアサガオ(木立朝鮮朝顔)

エンゼルトランペットとも

 

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411  ペコポコと耳の鼓や秋の風    風牛

2011年11月04日 | 

 (ペコポコと/ みみのつづみや/  あきのかぜ)

「ペコポコと耳の鼓」ってたぶんあのことだろう。つまり、山から車で急に下りてきたり、エレベーターや飛行機などに乗った時の、気圧の変化によってなる鼓膜の変化のことだ。誰でも経験していることだが、よく気付きましたね。

 

ネットで調べてみると、耳抜きがうまくできないと、耳が痛くなる敏感な人もいるらしい。又、内耳管が詰まっていると、鼓膜が破れることもあるらしい。

 

ペコポコというのも、ペコちゃん、ポコちゃんが想像されて可愛らしい。鼓膜ではなく、和楽器の特に能で使われる鼓を持って来たのも、工夫ですね。

 

 

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410  コスモスや鋼材を切る鉄仮面   炎火

2011年11月02日 | 

 (コスモスや/こうざいをきる/てつかめん)

 

自然界の草花の中でもたおやかな花コスモスと、余りにも人工的な火花を散らす鋼材の切断作業の鉄仮面の取り合わせが妙。

 

 この句の鉄仮面は、溶接に用いる防護面、保護面、溶接面などのことだ。しかし、実際の「鉄仮面」は、フランスの1600年代のアレキサンドル・デュマの小説「鉄仮面」から派生して、現代まで続いているらしい。

 

 句会で、「鉄仮面というのは、おかしい」という意見があったが、防護面などと言うより余程面白い、と私は思う。

 

 

コスモス・秋桜とも

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2011年10月 岩戸句会

2011年11月01日 | 岩戸句会

夕紅葉死ぬこと残し燃え尽くす  章子

庭下駄の音をはばかる星月夜

 

 コスモスや鋼材を切る鉄仮面   炎火

 虫の声砲丸投げのライン哉

 

朝まだき騒ぐ鴉や末枯るる    鼓夢

 ヨーヨーマ弾く音さやけし後の月

  

点滴の一滴の間や十三夜      薪 

整列の野球少年雁渡る

 

十三夜熱めのお湯に設定す   洋子

オムレツを手早く返す野分晴

 

呆気無き人との別れ十三夜    稱子

路地に満つ夕餉の匂ひ秋の暮

 

回復の兆し病間に十三夜     正太

新米を供えて今日は庭仕事

 

何もせず何も出来ない山は秋   遊石

リンゴ剥く音も静けき独りの夜

 

江戸前の風を集めて菊供養    歩智

今日も又抜く猫じゃらし散歩道

 

満月や万葉の湯に虫の声     空白

本門寺伽藍九月の夕日時

 

 秋の風薬草からから乾びけり  雲水

 野菊咲く唯のノギクと思ひけり

 

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