一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

836  2013年1月  岩戸句会

2013年01月31日 | 

 初不動厄なき齢となりにけり    正太

元朝や風葬の国はるかなり

 

日の丸に折り跡ありてお正月    歩智

柚子風呂に揺れる貮拾の雅かな

 

阿部サダの住みし色町柳に雪    稱子 

もののみな息吹溢るる大旦

 

ピータンの混沌の色大旦      薪

花骨牌指切るような音のせり

 

木枯をしかと受けとめ山に住む   章子 

元朝や八十路の坂の音もなく

   

京八坂祇園界隈雪女郎       遊石

秘め事を秘めて願いし初詣 

 

一病を自慢しあいて冬茜      洋子

漁火のかすかに残る初景色

 

正月や例えばマクドナルド哉     炎火

元朝や豚児一家の寝息かな

  

おもしろき日陰の形残り雪      空白

チェーン巻く車の振動地の怒り      

 

元朝に繰り言頻り逆らえず      豊春

手捻りに碗生まれだす春隣

 

雪折れの大枝に賜る柚子五つ      侠心

積む雪に椿花にじみてシャーベット

 

御屠蘇酌むもしかして惚れ薬かも   雲水

静寂の日々を重ねて寒椿

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835  京八坂祇園界隈雪女郎    遊石

2013年01月30日 | 

(きょうやさか ぎおんかいわい ゆきじょろう)

 京都には上七軒・祇園甲部・祇園東・先斗町・宮川町という五つの花街があるそうだ。夕刻過ぎに近くを通ると、舞妓さんが歩いていたりする。特に目を引くのが、白粉(おしろい)を塗った肌と鮮やかな口紅。

 歌舞伎役者と同じような厚化粧を美しいと感じる男達がいるから、白粉を塗るのだろうけれど、私にはゲテモノ趣味と思われてならない。

 花町では、成金坊主たちが札びらを切っているような話も聞くが、いずれにしても伝統・文化という、庶民感覚からかけ離れた世界。

 この句は、その舞妓さんを「雪女郎」と思わせたところが、元遊び人である作者の功績。

 

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834  元朝や風葬の国はるかなり   正太

2013年01月29日 | 新年

 正月の句と言えば、①「めでたさ」を詠うのが当然の反面、②「めでたくない」句を作る人もいる。私もめでたくない輩である。一方、③そのどちらにも与しない人もいる。

この句、元朝に「風葬」を詠うなんて不吉なことなので、②ではないか、と思ったら、「はるかなり」ときた。これで、③と解釈して良さそうである。

さて、風葬とは、死体を埋葬せずにさらす葬法。曝葬(ばくそう)、空葬とも言う。死体を置く方法によって、樹葬、台上葬、洞窟葬などと区別する。これらの葬法は北アジア、東南アジア、オーストラリアなどでみられ、インドネシアが有名だそうである。

 いづれにしても、最も原始的な葬法だろう。人間以外の動物たちは、全て風葬であり,鳥葬、獣葬、虫葬、バクテリア葬・・・・なのだから。

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833  日の丸に折り跡ありてお正月   歩智  

2013年01月28日 | 新年

 昭和30年~40年代の正月や祝日では、日の丸掲揚が普通だった。ところがいつの間にか掲揚する家庭がほとんど消滅してしまった。

 「日教組のせい」だとか、「軍国主義や右翼と間違えられるから」だとか、原因は色々あるが、とにかく国旗掲揚する家庭がなくなってしまった。

サッカーのワールドカップやオリンピックともなれば、「日の丸」を振るどころか、顔にまで「日の丸」を書くほどの熱狂的ファンが沢山いる。

戦争ではなく、スポーツで平和的に戦う。そして、それぞれの国民がそれぞれの国旗を振る。それが一番素晴らしいことだろう。

フキノトウ(蕗の薹)

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832  初不動厄なき齢となりにけり  正太

2013年01月27日 | 新年

 不動尊は、大日如来の化身で、「お不動さん」の名で親しまれ、全国各地の寺に安置されている。初不動は、1月28日が縁日で、関東では成田不動尊が有名。

 さて、厄年を調べてみた。最も古い平安時代の「色葉字類抄」では、13、25、37、49、61、73、85、97」が厄年とされている。

江戸時代でも、『仏説灌頂菩薩経』では「7、13、33、37、42、49、52、61、73、85、97、105」

 ところが、1712年(正徳2年)の百科事典「和漢三才図会」では、「男25,42,61、女19、33、37」となっており、この頃のものが現在まで続いている模様。

 42が「死に」通ずとか、33が「惨々」に通ずなどと馬鹿げた語呂合わせまである。日本人は、血液型による性格や相性判断が無根拠に大好きで、無宗教なのに厄年なんかも結構信じていて、神社や寺に行って、高額を払い厄払いをしてもらっている。

いづれにしても、現在では男は61才から、女は37才から厄年はないことになっている。実に不思議な話ではある。

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831  聞き流す夫の聞くふり野水仙  あや子

2013年01月26日 | 

 「ふんふん、なるほど」などと、家の亭主は上手に相槌を打つ。そこでしばらくして女房は、「さっきのことなんだけどねえ」「えっ、何のこと・・・・・」やはり、何にも聞いていなかった。亭主は、きっと水仙の撮影に夢中だったに違いない、

 それにしても、家でも新聞を読みながら、又はテレビを見ながら、実に上手に相槌を打つのだが、実際亭主の頭の中に、女房の言葉は記憶されてはいない。

 それは、軽い認知症ではないかって。当らずとも外れてはいないかもよ。

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830  大寒やわらわら湧ける鯛平目

2013年01月24日 | 

 「わらわら」という語は、「乱れたさま、破れ乱れたさまを表わす、散り乱れるさま。ばらばら」副詞で、既に「平家物語」に登場しているそうだ。

 日本全国で使われているようだが、私は聞いたことはあったとしても、使ったことは一度もなかった。そこで、早速使ってみた。

 この句の「湧く」も「鯛や平目」も「わらわら」に相応しいか、と言えば全く自信がない。唯言えることは、日本の海がそんな風になって欲しい。

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829  世に飽いてゐる寒月を愛でてゐる   章子

2013年01月23日 | 

 この句の解釈は、二つある。

①「飽いている」のは「寒月」であり、その寒月を作者が愛でている。

②「飽いている」のも「愛でている」のも作者である。

文法的に言えば、①が正しいであろう。しかし、寒月が世を飽くはずがないから、②の解釈が常識的。

 例えば、「世に飽いてをり寒月を愛でてをり」とすれば、誤解を避けられるのだが、わざと曖昧にしたのが、作者の功績かもしれない。

 何故なら、アメリカのアポロ計画で行った6回の月面着陸。これを「人類史における科学技術の偉大な業績」などと賞賛されているが、月の立場から見たら、大いなる迷惑に違いないし、「人間の支配しているこの世、地球」に月が飽き飽きしている方が、余程俳諧的で面白いからである

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828  ゐるやうにゐなくなりたる夕焚火  新五郎

2013年01月22日 | 

 空気や水は、あって当然。だから、誰も感謝しない。いつもあって当然の生活では、有難味を感じないのが普通だからだ。

 しかし、いつも傍にいて当然だった父や母、妻や夫、我が子や友が、突然いなくなってしまう。遅かれ早かれ、防ぎようもなく、いつか必ずそういう時は来る。いや、たった一つ防ぎようはあった。自分の方が早く死ねばいい。

さて、この句のゐるやうにゐなくなりたるは、微妙な表現だ。①現時点でいなくなったことは知っている。②いなくなったのに、いるように勘違いしていた時間があった。それは、数時間でも数十分でもなく、数分か数十秒、もしかすると数秒のことかもしれない。

いや、もしかすると、数年以上かもしれない。

 

 

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827  棟梁のまづ離れたる焚火かな  順子

2013年01月21日 | 

 棟梁(とうりょう)とは、建物の棟(むね)と梁(はり)のことで、建物の重要なものであることから、武士や僧侶のトップに君臨する一番えらい人のことを言った。

  この句では、たぶん大工の棟梁、つまり親方、今風に言えば○○建設の社長である。冬の建築現場で、休憩や昼の時、一斗缶などで端材をもやしての焚火は日常の光景。

 「さて、そろそろ始める時間だ」しかし、弟子達の誰も仕事にかかろうとしない。堪忍袋の緒を切らした棟梁は、しかし怒りもせず自ら仕事に向かう。ここでようやく、弟子たちは仕事に戻る。主従関係や徒弟制度が崩壊し民主的にはなったが・・・

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826  冬山を廻して「ASUKA」出航す   器

2013年01月20日 | 

 「ASUKA」は、日本郵船の豪華客船、現在は「ASUKAⅡ」。豪華客船と言えば、1912年(明治45年)4月14日。氷山にぶつかって沈没したタイタニック号の事件を思い出す。犠牲者1500人。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」では、ジョバンニをこの事件の犠牲者達と同乗させている。

 最近では、地中海でイタリアの大型クルーズ船「コスタ・コン コルディア号」(乗客乗員約4200人)が、座礁沈没し(犠牲者32人)、船長の避難誘導放棄が問題になった。

 さて、豪華客船には、退屈しのぎの様々なイベントやカルチャースクールがあって、日本人主体の場合「俳句教室兼句会」などもあり、有名な俳句の先生方が指導者として乗り込み、ついでにお暇でお金持ちのお弟子さん達が沢山乗り込み、船会社も大先生もガッチリするそうである。

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825  担がれて蛇綱全長冴ゆるなり  淑子

2013年01月18日 | 

(かつがれて じゃづなぜんちょう さゆるなり)

 蛇綱とは、毎年1月19日に、京都府宮津市今福の村落で行われるお祭り。今年は、蛇年でもあるだけに、賑わうのではないだろうか。

 藁で作った蛇綱を担いで、各戸を回る。江戸時代に始まったようだが、秋田のナマハゲに似て、娯楽性のある楽しい行事である。

 「冴ゆ」は、「冷え切る」「澄む」「あざやか」などの意味があるが、季語としての「冴ゆ」は、寒さが極まった感じをいう。

雪の初化粧

 

 

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824  静寂の日々を重ねて寒椿

2013年01月16日 | 

 「火は日」と相通じる。二つの「かたち」も「こころ」も同じと考えて差し支えないだろう。同様に「木は気」と相通じる。だから発音が同じなのだ。

 今人々は、火や木と離れ、鉄やコンクリート、化学繊維などの科学物質、電気や電波と仲良くしているが、そういう暮らしを快適と感じる原因は何なのだろうか。

 伐られてゆくホルトノキを見ながらそんなことを考えるのは、私がおかしいのだろうか。

ハヤトウリ(隼人瓜)ウリ科、別名センナリウリ(千成瓜)。

 

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823  冬鳥を遊ばせてゐる寝釈迦かな  玲子

2013年01月15日 | 

 鳥を遊ばせるような寝釈迦が、日本にどのくらいあるだろうか?屋内にあったり、絵では勿論ダメ。調べたところでは、千葉県、館山の萬徳寺のものが、長さ16m高さ3,75メートルで、御姿も横綱級。

 さて、寝釈迦に見立てた阿蘇の山がある。普通、阿蘇山と呼ばれるが、実は阿蘇山という山は存在しないそうだ。鋸状の根子岳、最高峰の高岳(1592m)、今も噴火を続けている中岳、草原の烏帽子岳、杵島岳の五岳を総称して阿蘇山という。また、その遠景から阿蘇五岳を阿蘇の寝釈迦というそうである。

鳥を遊ばせるのは、たぶん阿蘇に敵うものはあるまい。

ハボタン(葉牡丹) アブラナ科アブラナ属

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822  冬ざれや枯れて伐らるるホルトの木

2013年01月14日 | 

 ホルトノ木の「ホルト」とは、ポルトガルのこと。薬用に使われていたホルト油(オリーブオイル)が採れるオリーブの木と、葉や実がよく似ているので「ホルトの木」と名付けられたそうである。江戸時代に、オリーブの木と間違えられて、関東以南の各地に植えられたようである。

 植木屋の話では、熱海市内に点在するそのホルトノキが、次々と枯れているそうである。ほとんどが高さ10メートルを越え、樹齢200年以上はありそうな大木ばかりなのだ。

 松枯れはほぼ全国的に蔓延したようだが、今度はホルトノキなのだろうか。

ホルトノキ科ホルトノキ属、(別名、ズクノキ、ハボソノキ、モガシ)

常緑のホルトノキに葉がありません

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