この句は、色々な解釈が成り立って面白い。
➀ 子供の蕗の薹が、葉っぱのお母さんに「おい母さん」と呼び掛けた。童話の世界ですね。
➁ 蕗の薹を見つけた作者が、自分の妻に「おい母さん」と呼び掛けてしまった。母親に「おい」と呼び掛けるのは、私は抵抗がある。妻がふさわしい。子供がいる家庭で、夫が妻を「母さん」と呼ぶのは普通。
③ 蕗の薹を見つけた作者が、実際近くにいる母に「おい母さん」と呼びかけた。子供の頃の回想。
➃ 蕗の薹を見つけた作者が、元気だが近くにいない母にいると勘違いして「おい母さん」と呼びかけてしまった。
⑤ 蕗の薹を見つけた作者が、すでに亡くなっている母に「おい母さん」と、生きているつもりで呼びかけてしまった。
こういった色々な解釈が成り立つのも、ついつい呼んだという意味の、この句の「呼んでしまひぬ」にある。蕗の薹を見つけた喜びの余り、見せたくてついつい声に出してしまったのだ。
飯野仁俳句集「しえん」より
最近知り合った飯野仁さんから句集をいただきました。私が俳句をやっており、句会を主宰しメンバーが複数いるということを聞き、10冊送って来ました。俳句は、若い頃から現在まで、200句ほど。他に随筆もあります。
飯野さんは、弁護士で93才、とてもお元気です。句集「しえん」の由来は、煙草の煙から来ていて、大の煙草好き。特に「パイプ煙草」なのだそうです。
仁さんのダンディズムは、俳句、パイプタバコ、ヨット、ゴルフ、ジャズ、車など多岐にわたっています。
シキミ(樒)