一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

1043  ビル群に羊の群れし残暑かな  炎火

2013年09月30日 | 

 さすがに残暑ともオサラバの季節になった。ところで、熱海から東京まで新幹線で40分くらいだが、東京嫌いの私は1年に1度行くかどうか。しかし、新宿副都心などは30年近く行っていないし、新木場あたりも気になるところ。一度、鳩バスにでも乗って東京見物をしてみてはどうかと思うが、思うだけでたぶん行かないだろう。

 さて、副都心の高層ビルから新宿駅周辺を覗けば、地上をうごめく人の波が「羊の群」に見えても不思議ではない。羊は人間に飼い慣らされ、大人しく従順な動物の代表だからだ。

 だからこの句、東京で働く現代人への痛烈な皮肉の句とも言えるし、警鐘の句とも言える。例えば、関東大震災並みの大地震が来たら、高層ビルはどのくらいちゃんと立っているだろうか。9,11の貿易センタービルのように倒壊して、想定外だったと弁解しても、死者は帰って来ないんだよ。

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1042  青大将意地の顎して轢かれおり  薪

2013年09月29日 | 

(あおだいしょう いじのあごして ひかれおり)

 建物のガラスに激突して死ぬ鳥は、日本だけでも少なく見積もって数十万羽はいるだろう。まして道路で車に轢かれて死ぬ犬猫、蛇・ミミズ・蟻などの小動物も入れれば、その数は計り知れない。

 動物たちに裁判所があれば、我々人間は全員有罪になるに違いない。過失致死罪にして許してやりたいところだが、この数十年全く善処していないから、確信犯として殺人罪が適用され死刑になるに違いない。執行猶予などつくはずもない。

 これだけ考えてみても、天国や極楽に行ける人間なんてほとんどいないし,幸運にもたとえ行けたとしても、天国で孤独死するだろう。

 さてこの句の、「顔」や「貌」ではなく、「顎」を強調したところが秀逸。

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1041  ヘルメット脱いで月光容れにけり   真樹

2013年09月27日 | 

 日本で最も古いヘルメットと言えば、古墳時代の埴輪(はにわ)に青銅製の兜らしきものを被った兵士像がある。戦国時代の大将の兜は、本格的な戦闘帽というより、大将の威厳を誇示するための飾りようでもある。太平洋戦争の戦闘帽は、明らかに防弾用の実用的かつ無機的鉄製ヘルメット。

  そして最新のヘルメットは、バイク用、工事用などの材質は強化プラスチックが多いが、ピンからキリまで様々だ。あんなもの被らなくても良い時代が来て欲しいものだが、日本に地震がある限り持たない訳にはいかない。我が家では、倉庫に埃を被ってぶら下がっている。

 この句のヘルメットは、たぶんバイク用だろう、と思う。汗臭いだろうヘルメットに秋風と月光を入れれば、作者の心も爽やかになるに違いない。

ヒガンバナ(ヒガンバナ)

 

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1040  曼珠沙華道路標識また増えて

2013年09月26日 | 

  熱海から富士山を見るには、三島へ抜ける県道を熱海峠まで上がらねばならない。先日気付いたのだが、峠近くにはなんと道路標識の多いことか。10~20メートル間隔に様々な道路標識が立っている。

  確かに急傾斜で、ブレーキが過熱しての死亡事故も数年に一度くらいは発生しているから、意図は理解できるが、何せ多すぎるのだ。景観的にも大いに問題だし、税金の無駄遣いだと思う。

しかしながら、毎年の予算を消化するために、不必要な標識がこれからも増え続けるだろう。

 

 

ノーゼンカズラ(凌霄花、紫葳) ノウゼンカズラ科のつる性 木本。

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1039  敬老日卒寿はそっと紅を刷く  喜久

2013年09月25日 | 

(けいろうび そつじゅはそっと べにをはく)

長寿のお祝いには、

還暦(60)60年で同じ干支に戻るから

古希(70)杜甫(とほ)が「人生七十古来稀なり」と言ったから

喜寿(77)「喜」は、草書では七を3っつ書くから

傘寿(80)傘の4っつの「人」を取ると八十になるから

米寿(88)「米」を分解すると八十八になるから

卒寿(90)卒は、略すと「卆」だから

白寿(99)「百」から一を取ると「白」になるから

還暦と古希以外は、全て単なる駄洒落のようなものだが、お蔭で覚えやすいというメリットがある。

 さてこの句、女性ならどんなに年をとっても化粧をするだろう。それもそっとである。確かに作者は「かわいいおばあちゃま」である。

フヨウ(芙蓉)

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1038  めつむれば子規の顔ある鶏頭花  呉天

2013年09月23日 | 

  正岡子規と鶏頭と言えば、「鶏頭の十四五本もありぬべし」を思い出す。俳句をやっている人なら、誰でも知っているだろう。

 さて、昭和20年代に、この句の評価をめぐって「鶏頭論争」と言われる論争が起こり、以後も現代に至るまで俳人や歌人、文学者の間で延々と論議の対象となっている。

○この句は1900年9月、子規庵で高濱虚子などを含む計19名で行われた句会に出された。これが子規の生涯で最後から三番目の句会という。 

この日の子規の句会では、いつものように一題十句で「鶏頭」の題が出された。子規庵の庭には、鶏頭が十数本実際に植えられており、子規はこの時、鶏頭の句を合計9句を提出している。以下はその内の6句。

 「鶏頭の十四五本もありぬべし」

「堀低き田舎の家や葉鶏頭」

「萩刈て鶏頭の庭となりにけり」

「朝貌の枯れし垣根や葉鶏頭」

「鶏頭の花にとまりしばつたかな」

「鶏頭や二度の野分に恙なし」他9句

「十四五本」の評価をまとめてみると、

◎ 掲句は、句会で2点しか入らなかった。

◎ 虚子の選で「子規句集」が編集されたが、虚子はこの句を選ばなかった。

◎ 歌人長塚節が「この句の(良さの)わかる俳人はいまい」と斎藤茂吉に語った。

◎ 最近では、坪内稔典氏が「駄作」としている。

 「俳句は、本来575のみで論ずるべきだ」そういう観点からすれば、「鶏頭が14、5本はあるだろう」としか解釈できないのだから、どんなに想像力の働く人間でも、取り上げるべき俳句とは言えない。

しかし、この俳句に付随して「作者が死を目前に控えた正岡子規」「結核」「母と妹」「虚子」など様々な付録も評価の材料に入れるとすれば、節や茂吉のような高評価になるかもしれない。

 このように、どこにでも転がっているような平凡な作品が、あるときから名品になるようなことは、俳句以外にも世の中にはいくらでもあるのだ。

 タラノキ(楤の木) ウコギ科の落葉低木

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1037  経歴に花野彷徨一行分   麻耶子

2013年09月22日 | 

(けいれきに はなのほうこう いちぎょうぶん)

 先日、作者から第三句集「句歴華甲」をいただいた、掲句はその中の一句。ちなみに「華甲」の「華」を分解すると十が6つ、一が1つで、合計61。華甲の「甲」は、「甲子(きのえね)」で干支の最初をさしているので、数えの61歳つまり「還暦」を表わすようになったそうである。

さて、人様に自分の経歴を公表する機会は、そう沢山あるものではない。出生、年齢、学歴、職歴、褒賞など、どこまで詳しく書くかは、本人の判断にゆだねられている。作者は今日の「花野彷徨」を句集の経歴に入れたいという。それほど花野に感激しているのだ。句集を3冊も出している作者こその発想。

タムラソウ(田村草) キク科の多年草

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1036  アトランティスにとどく名月昇りけり   善之

2013年09月21日 | 

  台風18号が去って、十五夜、十六夜、そして今夜と、三日続けて晴天の満月が出ている。実に珍しいことだ。

  さて、この句の「アトランティス」は、ギリシャ神話に登場する海の神「ポセイドン」が支配し、大西洋に存在した「アトランティス大陸」のことらしい。実際に存在したかどうかも不明ながら、ブラジルサンパウロ沖の海底にそれらしき大陸の痕跡が発見されたという話などもあって、真剣に研究している学者もいるという。

 「アトランティス」は、過去の文献が限られており、考古学的難題であるからこそ、人類がこれからも永遠に紡いでゆく「夢」と「ロマン」、そして「ミステリー」なのであろう。

ハナシュクシャ(花縮砂)別名、ジンジャー(ginger) ショウガ科の半耐冬性球根草

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1035  台風の欠片一片茜雲

2013年09月20日 | 

 なんとか我が家は、被害もなく去って行った台風18号。そして今は、19号が中国大陸に上陸するらしい。今年、あと何個台風が発生し、何個上陸するのだろうか。まだまだあるに違いない。

 調べてみると、台風と同様のものにハリケーンやサイクロンがある。最近の大きな被害をもたらしたものには、2005年のアメリカ・ニューオリンズを襲ったハリケーン「カトリーナ」がある。死者が1800名余だからすごい。

さて、「かけら」は、「欠片」と書く。ある物が、例えば陶器が破損して欠けた破片を言う。

ツルボ(蔓穂)  ユリ科 ツルボ属.

 

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1034  颱風から逃げ船底に寝転がる

2013年09月19日 | 

 20才の頃、3年間の放浪の旅をした。与論島で2,3カ月過ごし、沖縄から鹿児島へ行く船に乗ることになった。台風が接近しているので、その船が今日の最後だと聞いていた。船は、たぶん500トンぐらいの小さな貨客兼用船だ。

 まだ明かるかったが、出港まで時間があったので、夕飯にビールと何かを腹一杯食べたのだ。

 乗船すると、うす暗い船底の2等船室は私達若者で満室。椅子はなく、枕と毛布が用意されていた。偶然隣同士になった姉妹と寝転がりながら、旅の話がはずみ楽しい気分だった。

 船が出港し外洋に出ると、台風の影響でものすごい波だった。だから船は、まるでエレベーターに乗っているように昇降するのだ。その落差は、たぶん5メートルはあるだろうと思われた。下降するときは床から体が離れて浮くような感じだったし、上昇する時はぐっと床に押し付けられるような感じなのだ。

外洋に出て、たぶん30分以内だろう。私は一変に気持ち悪くなり、トイレに駆け込んだ。そして、ついさっき腹一杯食べて飲んだものを全て吐き出したのだ。船室に戻ると、「大丈夫?」と姉妹の姉から声を掛けられたが、一切話す気力が失せていた。

ススキ(芒、薄)

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1033  颱風の去りし街角秋刀魚買う

2013年09月18日 | 

 「台風」は、江戸時代までは「野分」と言われていた。ところが、明治になってギリシャ語の「Typhon」に由来する「Typhoon」という英語が入って来た。

 情けないことに、日本は「野分」を止めて、それに「颱風」という漢字を当てたのである。その後、当用漢字から「颱」の字を外して、「台」を当てたそうである。

 ところで、「颱」の字は一字で「台」と「風」があるのだから、一字で「たいふう」と読んでもおかしくはない、と私は思うのだが・・・・とにかく、「野分」が本来の台風のことなのだが、残念ながら今では一般的には通用しない。

 「何?この句の「颱風」と「秋刀魚」が季重ね?・・・阿保か!」

ノハラアザミ(野原薊)

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1032  台風は素通りなれど疲れけり

2013年09月17日 | 

 熱海は、西側に伊豆半島があるから、半島の西(名古屋側)に上陸するか、東(東京側)に上陸するかで、台風の強さが随分と異なる。

 今回の台風18号は、西側に上陸したので、伊豆半島が防護壁となって、影響は小さかった。それでも、夜中の猛烈な風雨だったので、少なからず恐怖心はあった。

 今回の台風は、中心から遠い京都の桂川が氾濫したように雨台風でもあり、熊谷の突風による被害などもあった。又東北や北海道まで、被害が及んだ。

  気象庁は、数十年に一度のはずの「特別警報」を発令したが、とんでもない。これから毎年、それも頻繁に発令されると考えるべきではないか。

 その原因は、温暖化による海水温の上昇。なにしろ、北海道で本マグロが大量に水揚げされ、漁師が驚いているそうだから・・・・

シシウド

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1031  地鳴りして台風来たる闇夜かな

2013年09月16日 | 

  台風は常に北極を目指すらしいが、自力走行はできない。実際は、南風に押されたり、偏西風のジェット気流に乗ったりして進路が決まるそうだ。勿論、北極に到着する前に必ず消滅する。

 さて、どんなに台風が地響きをたてていても、例えば県営住宅などを家賃で借りていれば、大して心配はしないだろう。万一被害があっても、県が直すだろうからだ。地震や台風を心配するなら、半端な財産は持たないに限る。

 風速が2,30メートルになると、建物が震え森の木々が揺れて地響きを立てる。深夜ともなれば、身を固くして聞く意外になす術はない。

クズ(葛)

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1030  ちちろ鳴くキッチンドリンカーいつからか  章子

2013年09月15日 | 

 「ちちろ」とは、コオロギ(蟋蟀)のこと。日本人にとって、秋の虫の代表と言ったら、やはりコオロギで、その中の代表がツヅレサセコオロギであろう。家の中にも入りこみ、私達の生活に最も親しみ易いからだ。

 但し、コオロギと一口に言っても、古代ではセミ(蝉)も含むあらゆる鳴く昆虫を指していたらしい。広義に言えば、マツムシ・スズムシ・クツワムシなども含まれてしまう。

 さてこの句、作者はもういつ頃から始めたか分からないほど、長いことキッチンドリンカーらしい。数十年なのかもしれないが、お元気なのだから飲酒の適量は越えていないのだ。結構なことである。

イタドリ(虎杖)

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1029  母想ふ吾が誕生日天の川  稱子

2013年09月14日 | 

 作者によれば、彼女は「自分の誕生日に、毎年必ず母親の墓参りをする」という。作者自身も母であり、お産の体験があればこそ、なるほど自分の誕生日に自分を産んでくれた母をお参りするのは、当然のことかもしれない。 

ところが、お産が大変なことだと頭で理解していても、男には経験がない。だから私は、俳句よりも彼女の言葉に驚いてしまったのである。

この句の季語「天の川」は、彦星、織姫が年一回しか会えない七夕伝説を連想させる。娘が母を想う気持ちは、息子が母を想う気持ちより深いのかもしれない。

オトコエシ(男郎花)

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