一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

2226  二波三波波乗りジョニー五波六波   鯨児

2021年08月18日 | 

「波乗りジョニー」は、桑田佳祐の作詞作曲。歌詞に「同じ波はもう来ない、風が水面に帆を立てる、遥か遠く秋が目醒めた、せつない胸に波音が打ち寄せる」などの言葉が目を引く。2001年、オリコン週間1位(通算2週)ソング・オブ・ザ・イヤー、オリコン7月度月間1位、年間ではオリコン4位だった楽曲。かなりヒットしたらしい。

 オリンピックのサーフィン競技で、五十嵐カノア君が銀メダル、都筑有夢路ちゃんが銅メダルと大健闘して記憶に新しいが、この句のジョニーは只今第4の波に乗っているらしい。

おっとっと、ところが作者によれば、この句はコロナ感染の波のことを言っているそうである。そうであるならば、現在の日本は、幸か不幸か新型コロナの感染第5波に乗っていることになる。

サルスベリ(百日紅)

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2225  積乱雲胸のなかにも立つ日あり  いふり山麓

2021年08月17日 | 

 積乱雲が胸の中に立った、という。さて、読者である私は、作者の胸の中を覗こうとする。積乱雲は、入道雲ともいう。➀遠くから、例えば砂浜から眺めていれば、海上の入道雲は白く雄大で美しい。➁入道雲が近づいて来たら危険である。土砂降りの雨や落雷があるから、早く屋内に退散すべきであろう。③入道雲の中に入ってしまったら、正に豪雨、突風、落雷と身が危険である。

 さて、作者の胸中はいかなるものか、➁が作者の意向かもしれないが、想像が難しい。そこで私は➀を採りたいと思う。気分でいうとイライラした、ムカムカした、ハラハラした、ドキドキした、モヤモヤした、ワクワクした、ウキウキした気分などが考えられる。

 私は、ワクワクした気分を採りたいと思う。きっと、何か良いことがあってほくそ笑んでいて、海で泳ぎながら積乱雲を眺めているに違いない。

ムクゲ(木槿)

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2224  廃屋の庇傾き苔の花  さくら

2021年08月16日 | 

(はいおくの ひさしかたむき こけのはな)

 2018年の日本の空き家は846万件。空き家率は13.6%。県別でトップは和歌山県の18.8%。徳島、鹿児島、高知、愛媛と続く。過疎化が進んでいる県であろう。一方、空き家率の低い県のトップは、沖縄県の9.7%。埼玉、神奈川、東京、愛知と続く。沖縄を除けば、大都市圏の人口密集地である。

 空き家の中には、所有者不明で税金も払わず朽ちて危険な廃屋も多い。これらは、急ぎ法律を作り撤去して更地として、土地を国有化するべきだ。こういった問題を放置するのは、政治家の怠慢である。

ミントの花

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2223  晩夏光虔十林に誘われて 雲水

2021年08月14日 | 投稿

 童話の世界では、森林は神秘に満ちたカオスの異世界として位置づけられている。妖精やら魔女などが登場し、不思議なことが次から次へと展開される。そして人類も、かつてはこの森林の住人であった。しかし脳の進化とともに森を出て、脳が作り出す合理を御旗に、本能そして神秘とか非合理といったものを排除し、コスモスとしての町をつくり上げることになる。こうして町に住む人間にとって、冒頭で述べたように、森は異世界となる。

 この「晩夏光」という季語は、晩夏(夏の終わり)の力を失いつつある光のことである。ただ晩という言葉が、光にもかかって光の暗さ・翳りも意味している。むっとした森の光で、映画が好きな私は、黒澤明監督の「羅生門」のきらめく妖しい光をイメージした。そうした異世界たる森の光に、町の住人が誘われることになる。ただ「誘われて」という言い回しにすることで、二つの解釈が生じる。一つはその異世界たる森を前に畏怖して「誘われて」も、入るべきかどうかためらうというもの。もう一つは、「誘われて」森に入り込み、その後の体験は読み手の想像にゆだねるというものである。

 この句に関して、浅学菲才の私の解釈はここまでで、宮沢賢治の深い世界の入り口までもたどり着けなかった。残念なことである。

 最後に。前者の解釈の森への畏怖とか感謝の念は、近ごろ元の住人の人類にはなくなってしまった。毎年日本の総面積の1.5倍の森林伐採が地球上で行われ、温暖化の一因にもなっている。森林は、地球の冷却そして二酸化炭素の吸収を担ってきた。それを伐採するのは、自分の首を絞めることなのだが、食糧難による農地拡張ということで伐採は止まない。こうした愚行に、自然の方から多くの警告が発せられている。今回のコロナウイルスもその一つである。森林はこうしたウイルスの宝庫であり、伐採すればまた新たなウイルスが誕生ということになる。また、伊豆山の土砂災害もそうであろう。森や山は、いつの間にか行き場のなくなった産廃・残土の捨て場となってしまった。森や山が「もうやってられない」と突き返したと思えなくもない。私自身も昔のテニス仲間を失うという悲しい災害であったが、こうした森からの光に「誘われて」、現在の森の惨状を知ることも必要ではないか。(鯨児)

(鯨児様 投稿有難うございます。私の句を採り上げていただき恐縮しています)

クサギ(臭木) 臭いのは葉で、花は良い香りがします。

コメント (2)
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2222  来年も生きてるつもり種を採る  歩智

2021年08月13日 | 

 作物は、実を付けると種子を残す。その種子を蒔けば、次年度の作物が育つのが本来だ(固定種、在来種)。しかし、現代農業では種苗会社から購入した種子を使って作物を生産することが一般的になった。種苗会社の種子のほとんどは、一代交配種(F1)という種子で、実った種子を採って次年度に蒔いても同じ実りが期待できない。従って、農家は毎年新しい種子を購入しなければならないのである。

 一方、米、麦、大豆などの主要作物は、国や都道府県の農業試験場で新品種の研究などによって、種子が守られてきたが、その種子法が2018年に廃止され、民間に開放された。

 又、バイオテクノロジーが進化し、遺伝子組み換え種子が生産され、問題になっている。例えば、アメリカ大手のバイエル社(旧モンサント社)は、自社除草剤に耐性を持つ遺伝子組み換え大豆の種子を作った。これは、除草剤を撒いたとき、雑草は枯れても大豆だけは枯れないのである。しかし、その安全性が大いに疑問視されている。

 さて、人間誰でも死ぬことは分かっているが、「一年以内に自分が死ぬ」とはほとんど考えてはいないだろう。だから当然のこととして、来年のために種子を採るのである。この句、作者が卒寿であるが故に、ことさら説得力があり感慨深いものがある。

ミソハギ(禊萩)

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2221  山気満つ蜩繁き伊豆の森    豊春 

2021年08月08日 | 

 山気(さんき)とは、日本国語辞典によると、➀山中に生じる気。山中特有の冷え冷えとしてつめたい空気。➁山間の靄・霧。③山酔い(高山病)➃山気(やまき、やまけ、やまっけ)山師のような気質、 投機や冒険を好む気質、とある。この句の場合は、当然➀であろう。

 ヒグラシ(蜩)は、鳴き声からカナカナとも呼ばれる。漢字表記は蜩、茅蜩、秋蜩、日暮、晩蟬などがあり、俳句では秋の季語とされるセミのイメージがあるが、実際には梅雨の最中の六月下旬頃から七月にかけて発生し、ニイニイゼミと同じく、他のセミより早く鳴き始め、九月中旬頃までほぼ連日鳴き声を聞くことができる。鳴く時間帯は、普通早朝と夕方に鳴くが、箱根などの高地では昼間も鳴いている。つまり、涼しいのが好きなのだ。

 ヒグラシの鳴き声を、寂しい、悲しい、切ない、と感じられるので、映画やテレビなどでは「夏の夕暮」を表す効果音としてよく用いられる。

キンミズヒキ(金水引)

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2220  搜索犬泥のままなる外寝かな   裕

2021年08月07日 | 

 熱海市伊豆山で土砂崩れがあってから一と月経った。現時点で死者は22名、私のテニス仲間も亡くなった。更に、行方不明者が5名いて、未だに捜索が続けられている。崩落の原因となった盛土は、我が家から二キロほどしか離れていない。この不法な盛土を行った業者と、それを見逃してきた市や県、国の行政責任は重い。明らかな人災と言われる所以である。

 捜索は、自衛隊、消防隊、警察など150人態勢で連日行われていた。そして、人間の入ることのできない危険な建物の中を探す、脚が埋まり泥まみれになったシェパードがTVに映っていた。人間と犬の深い信頼関係は、埋葬された骨が同じ場所から発見された縄文時代に遡るそうである。

 さて、夏の涼しさの中の「昼寝」は、心地よく健康的である。一方「外寝」は、どちらかというと夜、外で寝ることを指す。この句の捜索犬の眠る様子は、見るものを十分に感動させる。

キンシバイ(金糸梅)

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2219   第299回 岩戸句会 7月

2021年08月06日 | 

搜索犬泥のままなる外寝かな     裕

ドローンのゆっくり巡る処暑の山

 

山気満つ蜩繁き伊豆の森       豊春     

カナカナは過ぎし日手繰る糸車

    

砂日傘ひとつひとつの日影あり    歩智         

来年も生きてるつもり種を採る

 

人二画支え合いたし日々草      さくら

廃屋の庇傾き苔の花

 

蚊帳の中電気を消して歌合戦     パピ

あららまあポケットから扇風機 

 

朝蝉や音合わせ無くてんでんに    凛

現し世にいましばらくは端居して

 

お決まりの髭と帽子に白い靴     沙会

接種して病人擬や夏の暮

 

暑を避けて宵の散歩や百日紅     光子

用心の隙間の転倒夏の月

 

二波三波波乗りジョニー五波六波   鯨児

火取虫ワクチン打って五輪中

     

しかられし端居の寝顔そっとなぜ   イヨ

湯上りの端居な夕べ風渡る

 

日の本の名のむくげ活け凛として   鞠

夏盛りハマナスの赤海を見る

 

梅雨明けて自粛は明けず窓掃除    貴美

端居して信濃の風や旅の宿

 

端居かけ汽笛ききながら初島へ    黄玉

紫の七月場所に呂の着物

                   

砂日傘ひとつひとつの日影あり    歩智         

来年も生きてるつもり種を採る

 

山盛りのえさ日盛りの野良猫に    稱子

毎日が日曜の暮らし夕端居

 

白日傘ファッショナブルな黒日傘   炎火

木洩れ日と羽蟻のゆれる露天風呂 

 

庭垣根炎昼避けて剪定す       余白

痩せ胸にブラジャーまとう老女の夏

 

いびつなるぐい飲みが好き冷やっこ  洋子

百日紅天の明るさ奪いおり

 

晩夏光虔十林に誘われて       雲水

皺枯れのジョニーキャッシュと夕端居

オオバギボシ(大葉擬宝珠)

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