一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

600  生に飽き世にも飽きたり五月富士   章子

2012年05月31日 | 

(せいにあき よにもあきたり さつきふじ)

ポールウァレリーが、第一次世界大戦後「諸君、嵐は去った。にもかかわらず、われわれは、あたかも嵐が起きようとしている矢先のように不安である」と言ったそうだが、これは「太平洋戦争後」や、「東日本大震災後」に置き換えても通じる名言ではないだろうか。

確かに、私の青春時代は「不安の時代」であったし、「虚無の時代」でもあった。神の死を宣言したニーチェのニヒリズムやサルトルの実存主義、ドストエフスキーなどを訳も分らないながらも読んでいれば、必然的に陥る暗黒の世界だろう。

さて、この句に共感するのは、青春時代から休みなく続いている私の「虚無感」に起因している。つまり、私の気分にぴったりなのである。

この作者に、私は共感はしても憐みは感じない。「五月富士」によって、こういう厭世的な句を作る人間が自殺する、とは考えにくいからである。

シライトソウ(白糸草) ユリ科シライトソウ属

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599  薔薇の呼気重たく深く匂うなり    薪

2012年05月30日 | 

599  薔薇の呼気重たく深く匂うなり     

 ある句を「佳い句だなあ」と思って、このブログに載せようと文章を考え始めるのだが、どうしても文が思い付かないことがある。丸二日も考えて、とうとう諦めることさえある。

 その逆に、俳句は余り評価できないのに、文が出来てしまうこともある。又、文が先に出来て、付け足しに下らない俳句を作る場合もある。

 実際毎日のことだから、ブログに費やす時間はせいぜい長くて1時間が限度であり、それ以上になると、仕事に支障が出る。

 この句も、一旦選んだのだが、「呼気」が気になってしかたない。香りは、確かに「呼気」ではあるが、単に「息」で良いのではないか、それともいっそのこと、ない方が良いのではないか、などと考え始める。

 更に「重たく深く」まで気になってきて、結局「五月の薔薇健気に淡く匂うなり」などと変えてしまった。原句をいじり過ぎて、とうとう別の意味の別の句になってしまった。

ヒメジョオン(姫女) キク科ムカシヨモギ属

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598   2012年5月 岩戸句会

2012年05月29日 | 岩戸句会

初夏の旅赤旗を読む老夫婦      炎火

半世紀経てクラス会山笑う

 

薔薇の呼気重たく深く匂うなり      薪

蚕豆や優しき女の塩加減

 

万緑やこの仮の世の仮の今      章子

生に飽き世にも飽いたり五月富士

 

夏近しふくらみ初めし孫の胸      稱子

母の日の吾がために買う花の束

 

志なくて老いたり蟇眠る           正太

夕ざくら散り急がずに散っている

 

訳知りの犬の眼差し新樹光      鼓夢

緑陰に薄目あけそな地蔵かな

 

この大気朝、午、夜無く五月なり    侠心

花に酔ひ香に惑わされ薔薇の庭

 

病むバラを切る決意らしきもの    遊石

赤き口青空に向け時鳥

 

ふわふわのうぶ毛残して巣立ちけり  歩智

雲間より金環日食若葉寒

 

休み窯早く来い来いホトトギス       洋子

新緑のうねりが登る頂きへ

 

代掻き田小鷺たたずむお昼時       空白

薄墨の雲に守られ陽のリング

 

湯上がりの香に切々とほととぎす    雲水

会う人のみな美しき晶子の忌

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597  初夏の旅赤旗を読む老夫婦    炎火

2012年05月28日 | 

(しょかのたび あかはたをよむ ろうふうふ)

 1960年、70年代の安保闘争の全学連、全共闘などが、同じ共産主義とはいえ、日本共産党とは一線を画していたわけだが、中核、核マル、赤軍といった連中は、いつの間にか雲散霧消してしまった。たぶん、その後の彼らのほとんどが日本の経済成長を牽引して、働き蜂となっていったに違いない。そういった安保闘争世代が今続々と引退、退職している。つまり、高度高齢化社会の老人になりつつあるわけだ。

 そんな60余年に及ぶ経済至上主義の社会の中で、反安保・反資本主義の日本共産党だけが、かすかに生き残っている。社会党も社民党として残ってはいるが。しかし、日本共産党の支持率は、せいぜい2~3パーセント前後で推移していて、ついに国を動かす力にはならなかった。

 それどころか、1990年代に入ると、ソビエト連邦や東ヨーロッパの共産主義国が次々と崩壊した。現在の中国も共産主義とは名ばかりで資本主義と変わらない。

北朝鮮やシリアがいい例であるが、どのような主義主張を掲げようが、一旦権力を握った人間達は、必ず自己保身に走り、官僚は腐敗し、国民のことを全く考えなくなる。多少ましではあるが、例えば官僚と東電の癒着を見ても、日本の体質も大して変わらない。

 さて、日本共産党の機関紙「赤旗」を読む老夫婦は、一体何を考え、何を語り合っているのだろうか。彼らの主義主張に反して歩んできた、この物の溢れた偽物臭い豊かな日本に住み、旅をしているのだが・・・・・・・・・

マーガレット (キク科の多年草)

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596  生涯をあなたに添いて藤の花 

2012年05月27日 | 

(しょうがいを あなたにそいて ふじのはな)

 我が家に白藤がある。植えたものだが、別に藤棚がある訳ではなく、近くにあったミズキ(水木)に絡みつきつつ成長し、とうとう水木より高く這いあがってしまった。

 そして十数年経ったある台風の日、とうとう支えの水木が途中から折れてしまった。藤に締め付けられ、頂部が枯れていたのだ。

 植えた私が馬鹿なのか、水木がひ弱過ぎたのか、藤が強すぎたのか、それは分からないが、どうしてどうして、今年も白藤はちゃんと咲いている。

 水木が枯れたのも、男が短命なのも同じ理屈だろうか。

白藤

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595  湯上りの香や切々とほととぎす

2012年05月26日 | 

(ゆあがりのかや せつせつとほととぎす)

 ホトトギスをもう少し調べていたら、隠語としてのホトトギスの語源というのがあった。ホトトギスの「ホト」は、「女陰」であり、「トギ」は「伽」つまり「寝る」であり、{ス}は、カラス・ウグイスなど、鳥に付ける末尾語なのだそうである。

 本来のホトトギスと言えば、「鳴いて血を吐くホトトギス」などのように鋭い鳴き声が特徴である。それ故、結核の正岡常規は、俳号を「子規」としたくらいなのだ。、

そういう鋭い鳴き方なのに、唱歌「夏は来ぬ」の「忍び音・洩らす」と言う表現は、どうみてもつじつまが合わない。作詞の佐々木信綱さんに聞いてみたいところだ。

 ところが隠語としてのホトトギスが男女の行為のことであり、それゆえの「忍び音」だったり、「洩らす」ならば、ぴったりつじつまが合う。どうやら過去の和歌や狂歌・俳句の中には、この隠語を土台にしたものが、結構あるらしい。

フジ(藤)  マメ科フジ属

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594  時鳥厠半ばに出かねたり  漱石

2012年05月25日 | 

(ほととぎす かわやなかばに でかねたり)

 厠(トイレ)に入っている時にホトトギスの初音(忍び音)を聞くと、凶事があるとされていて、その場合は、即座に犬の遠吠えの真似をすれば、災禍を福に転換できる、とされていたそうである。

 宮中での天皇の即位や新嘗祭、元旦などに、狗人(いぬびと)が吠声(はいせい)を出して悪霊を追い払ったのが、どうやら元祖らしい。

 明治40年頃、時の総理、西園寺公望は、恒例の雅園に漱石を招待したのだが、漱石は手紙に掲句を書いたそうです。つまり、「厠でホトトギスが鳴いてしまい、すぐには出られないので、欠席します」この句は当時、世間で大いに話題になったとか。

 チャキチャキの江戸っ子の漱石は、戊辰戦争で大参謀だった公望が大嫌いだったそうで、この句を公表したのも、公望への当てつけだったのではないか。

ミズキ(水木)  ミズキ科ミズキi属の落葉高木

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593 目瞑りてシャワー浴びおり雨蛙

2012年05月24日 | 

 (めつむりて シャワーあびおり あまがえる) 

 植え木に水遣りをしようとして、紫陽花の枝にいるアマガエル(正式名は、ニホンアマガエル)に気付いた。いたずらっ気を出して水を掛けたのだが、アマガエルは逃げるでもなくじっとしていた。ホースの暖まった水が、アマガエルには気持ち良かったのかもしれない。

 こんな小さな体からあんな大きな声が出るのは、鳴嚢(めいのう)という袋が喉にあって、それを共鳴させるからだそうである。アマガエルも鳴くのはオスだそうで、本来は春の求愛行動であるが、雨が降りそうになると、繁殖期でなくとも鳴く。

ジャスミン(モクセイ科オウバイ属)

 

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592  そら豆がふんわりベッドに寝ているよ  かおり

2012年05月23日 | 

(そらまめが ふんわりベッドに ねているよ)  

 ソラマメは、マメ科ソラマメ属で、空を向いて実るから「空豆」、実が蚕に似ているから「蚕豆」、その他「天豆」「夏豆」「四月豆」などとも書くそうである。

 さて、友人の話によると、お孫さんのかおりちゃんは、東京に住む小学3年生で、おばあちゃんちに来るたびに、数句の俳句を作るそうである。庭の雑草の名前もおばあちゃんより相当詳しいそうであり、将来を期待される若手俳人である。

 この句の、「ふんわりベッドに寝ているよ」という擬人化表現は、豊かな想像力と捉えるべきだろう。

アカメガシワ (トウダイグサ科、アカメガシワ属の落葉高木)

なるほど、名前の通りの新芽です

 

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591  あるはずの日食金柑朝凪げり

2012年05月22日 | 

(あるはずの にっしょくきんかん あさなげり)

「金冠日食見ました?」

「誰が見ますか。意地でも見ませんよ、そんなもの。どこのテレビ局も大騒ぎで、見てられませんね。日頃、星も眺めないような連中が、この時とばかりの馬鹿騒ぎだからね」

「やっぱりね。あなたのことだからそうだと思ったわ。おヘソが後ろに付いてるんじゃない」

「ほっといてくれ」

「ところで、こちらの天気はどうだった?東京は良く見えましたよ」

「友達の話では、曇ってて全く見えなかったそうだよ」

「やっぱりね。負け惜しみのあなたらしい話だわ。ところでこの句、柑の字が間違ってるわよ」

「いや~、これでいいんだ。うちの金柑、今ようやく色付いているんだから」

「・・・・・・・・・・・」

アイリス(アヤメ科アヤメ属)

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590  油虫語気がブリブリしておりぬ

2012年05月21日 | 

 ゴキブリは、白アリと近似種だそうである。確かに、両種とも松枯れの松の陰などに潜んでいる。このやや鈍重な黒い山ゴキブリと、俊敏な薄茶色の家ゴキブリとは、基本的に同種らしい。ゴキブリは、カマキリとも近似種だそうで、全世界に4,000種、日本に52種もいるという。

 野営テントに寝ていて、顔を這う虫がいたので、クワガタと勘違いして大喜びしたという。しかし、よくよく見たら、なんと山ゴキブリで「ギャー」というのが、あるブログにあった。

 ゴキブリが汚い虫の代表で、カブトムシやクワガタが嬉しい虫の代表で・・・・・・こんな馬鹿な話があるか。

  そう言えば先日、利根川水系の水道水に、ホルムアルデヒドが基準値を超えて検出されて、大騒ぎになったばかりだ。

一説によると、人類は放射能を初めとする様々な化学物質などによって自ら滅び、その後の地球を支配、君臨するのは、ゴキブリなのだそうである。そんな日が、近づいているのですぞ、皆さん!!!

マツ(松) マツ科マツ属

窯焚きの燃料のほとんどは、あなたです。ごめんなさい。

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589  蠅生まれ既に瀕死の水の上

2012年05月20日 | 

(はえうまれ すでにひんしの みずのうえ)

蠅ではなかったが、小さな飛んでいる虫が気になるらしく、

「この虫、なんとかして下さらない?」と女

「こんな虫、どうして気になるのかなあ。無視するに限りますよ」と男

「そんなこと言わないで、なんとかして下さい!」

「分かりました、仕方ない。虫も殺さぬ良い男なのに・・・」

と言って、男は蠅叩きを取りに行って戻ってきたのだが、その虫がいない。

殺気を感じ取ったのだろうか。

クレマチス キンポウゲ科センニンソウ属orクレマチス

 

 

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588  腹赤くなるまで吸わせ蚊を打てり

2012年05月18日 | 

(はらあかく なるまですわせ かをうてり)

 昔、座禅をしている時、腕の血を腹一杯吸った蚊が、飲み過ぎたのだろう、畳の上にぽとりと落ちてひっくり返り、しばらく動かなくなるのを見ていたことがある。勿論その後10分ぐらいして飛び去ったのである。

 腕を刺している蚊を見つけた時、すぐ打とうとすると結構逃げられる。そこで考えたのが、じーっとして腹一杯吸わせる方法。すると、自分の血のせいで、蚊の腹が次第に赤くなるのに気付くはずだ。それから、余っている方の準備万端の手で、引っぱたけば良い。10中8,9成功するはずだ。

ラミウム  シソ科 (半常緑多年草)

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587  水を撒く爺さんやんちゃ丸出しに

2012年05月17日 | 

(みずをまく じいさん やんちゃ まるだしに) 

 本来は、桶の水を柄杓で『水を打つ、打ち水』が季語だったが、最近は茶庭などでの儀式以外は、ホースで水を撒くのが普通。ノズルにシャワーが付いていて植え木の水撒きに便利だし、直水にすれば圧力があがり、汚れ落としに便利。

 こういった夏の水遊びは、子供たちが大好きで、孫でも来れば爺さんも負けずに本気になって大はしゃぎする。健康で長生きして良かった、と思うひとときかもしれない。

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586  母の日やわが強かりし女運   敬三

2012年05月16日 | 

(ははのひや わがつよかりし おんなうん)

 男にとって、生まれや育ち、経済などより、最も大事なのは女運。女にとって、最も大事なのは、男運だそうである。

この句、季語が「母の日」だから母親運のことを言いたいのは分かるし、その後も出会った女性が、特に妻が良かったのだろう。

 さて、優れた母を持った強運の持ち主と言えば、孟子がいる。我が子のために三度引越しをしたという「孟母三遷」などは有名。

又、男女のことであれば、伊丹十三監督の男の運を開く女「あげまん」がある。「あげまん」があれば、当然男をダメにする「さげまん」もある。又、女性側から見た「あげちん、さげちん」というのもあるらしい。

まあ女運(男運)の強弱を論議するのも結構だが、ゲジゲジやムカデではなく、人間としてこの世に生まれてきたこと自体が、既に奇跡に近い強運であることを忘れてはならない。

 

マルバウツギ(丸葉空木) ユキノシタ科ウツギ属の落葉低木

(アジサイ科)というのもありました。

どちらが本当?

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