一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

3014  行く秋の我に神なし仏なし  子規

2023年10月27日 | 

 明治を生きた子規は、俳句、短歌、小説、評論など多方面にわたり創作活動を行い、漱石や虚子などに俳句を指導し、日本の近代文学に多大な影響を及ぼした。

日清戦争に記者として従軍、その帰路に喀血し、次第に結核に侵されていった。以後35才で亡くなるまでの7年間、子規庵で句会や歌会を催し創作活動を行った。しかし、病床の子規にとって、やり残したことが多々あったはずである。

「まだ死にたくない。神様、仏様助けて下さい」と懇願し祈ったに違いない。しかし、病は重くなるばかりで、その苦痛に耐えかねて掲句になったのであろう。

ソバ(蕎麦)の花

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3013  石山の石より白し秋の風   芭蕉

2023年10月25日 | 

「青春、朱夏、白秋、玄冬」と季節を色で示すのは、陰陽五行思想からきている。この句の「白し」は、秋風のことを言っているというよりは、秋の深まりをも言っている、と解釈すべきである。つまり、

「古来、秋は白いと言われているが、近頃は朱夏の暑さも収まり、白秋はすっかり深まって、ここの石山の石より白いのである。そこに心地良い秋風が吹いている。」

ウド(独活)

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3012  御祝詞朗々として無月かな   釣舟

2023年10月19日 | 

(おんのりと ろうろうとして むげつかな)

 江戸時代までの日本人の夜となれば、ほの暗い蝋燭の明かりで、家族と過ごす時間のみが豊かに流れていた。そんな夜の生活の中で、夏の猛暑が去って涼しくなり、屋外に出ても蚊が少なくなり、月が如何に大きな存在であったかは、想像に難くないであろう。

 日本人にとって、旧暦で月日が動くのも、月とのかかわりがし易かったであろう。毎月の1日は月がない朔であり、7日は上弦、15日は満月、23日は下弦、そして1日に戻る繰り返し・・・一日の半分が夜となれば、昼の太陽以上に、夜の闇における月の存在は人々にとって大きかったのである。

 落語で「おい、八つぁん、天気もいいし15日だから遊びに行こうぜ」という、満月の夜の月明かりを頼みにして、夜遊びに誘う会話が成り立つのである。

月は一年中存在し、最も鮮明に見えるのは、空気が最も澄む冬である。しかし、季語としての月は、冬ではなく秋である。これは単に、夏は蚊が多く冬は寒いので、屋外での鑑賞に耐えないからである。

 現代日本人は、室内外を問わず、電気による照明という実に明かるい夜の生活をするようになった。テレビなどの娯楽があり、屋外に出て月や星を眺める習慣を全く失ったといっても過言ではなかろう。

 又、天の川(銀河)などは、夜空が明るすぎて日本国内のほとんどで見ることができない。日本の小学生の半数が、魚は切り身であると思い込み、月の満ち欠けを知らない、という話を聞いたことがあるが、信じるに足る恐るべき話である。夜空は、暗いほど星が良く見え、月の明るさが増すのである。 

 さて、江戸時代以前の人々にとって、秋に月を愛でる夜時間はたっぷりあった。いわゆる夜長である。14日の夜から20日の夜までの月の名前をみれば、月に対する人々の暮らしようが、よく分かる。

 又、月に関する言葉の数を見ても、日本人の月に対する愛着がどんなに強かったかが、分かるであろう。尚、十五夜や十三夜にお供えをして月を祭る風習は、日本以外にはないそうである。以下、月に関する言葉と意味を調べて見た。 

小望月、待宵・・・明日の十五夜を待ちかねて、満月を恋うている

名月、無月、雨月・・・一年で最高の満月を愛でる。なくても愛でる。

十六夜(いざよい)・・・月の出が遅いのをいざよう(ためらう)

十七夜・立待月(たちまちづき)、

十八夜・居待月(いまちづき)、

十九夜・寝待月(ねまちづき)、臥待月(ふしまちづき)

二十夜・更待月(ふけまちづき) 

下弦の月 満月と次の新月の間の半月をいう。逆Dの字で次第に欠けて行く。

二十三夜待ち 陰暦23日の夜半過ぎに月待ちをすることで願い事が叶うと言われている。

二十六夜(にじゅうろくや) 陰暦26日の月のこと。

虧月(きげつ) 満月から新月までの間の、次第に欠けて細くなってゆく月のこと。

晦(つきごもり) 月隠り(つきごもり)が転じたもので月の末日、晦日(みそか)のこと。

中秋/仲秋 陰暦8月15日のこと。秋(陰暦7、8、9月)の最中にあたるところから中秋という。

月待ち 月の13日・17日・19日・23日などの夜に人々が集まり、月の出を待って拝む行事のこと。

月見 観月(かんげつ)ともいう。特に陰暦8月15日と9月13日の月を観ることをいう。

月の頃 満月前後の月の眺めの良い頃のこと。

寒月(かんげつ) 冷たく冴えた冬の月のこと。

月天心(つきてんしん) 冬の満月は頭の真上近くを通り、天の中心を通っているように見える。

雨月(うげつ)/雨夜(あまよ)の月 雨で見ることのできない名月を言う。恋人の姿を想像するだけで実際には見られないことに例えて言う。

雪待月(ゆきまちづき) 今にも降り始めそうな雪催いの空にかかっている月のこと。陰暦11月をいう

薄月(うすづき)月が霞んではっきりしない。そのような夜のことを薄月夜(うすづきよ)という。

明月(めいげつ) 清く澄んだ月のことで、名月をさす。

弓張月(ゆみはりづき)/弦月(げんげつ) 弓のような形をした月のことで、上弦または下弦の月。

天満月(あまみつつき) 満月のこと。天満星(あまみつほし)は夜空一面の星をさす。

月白、月代(つきしろ)/額月(ひたいづき) 月が出ようとしている時、空が明るくなる状態をいう。

田毎(たごと)の月 小さく区切った棚田ごとに映る月のこと。

月宿る 月がその夜の座を占めること。

白道(はくどう) 月が天球上に描く軌道のこと。

月明かり/月光・月華(げっか)・月明(げつめい) 月の光、または月の光で明るいことをいう。

月下(げっか) 月の光のさす所。夏の夜に咲く純白の大輪を月下美人という。月下香(チュベローズ、オランダ水仙)は夜強い芳香がある。

月夕(げっせき)月が煌々と照っている夜のことで、陰暦8月15日の夜をさすこともある。

月前(げつぜん) 月光が照らしている範囲。他の勢力の前で影が薄くなった存在を月前の星という。

月影(つきかげ) 月または月光のこと。更に月の形、月の姿、あるいは月の光で映るものの影のこと。

月の氷 澄み渡った夜空に冴えた月が氷のように見えることや、月光が水に映って煌く様子をいう。

月の剣/月の眉 三日月の異称。

月の霜/月の雫 月の光が冴えて白いのを霜にたとえて言う言葉。同じように月の雫と言えば露をさす。

月の鏡 月の形を鏡に見立てたもので、満月または晴れ渡った月のこと。

月の真澄鏡(ますかがみ) 月影を映す池の面を澄み切った鏡に例えた言葉。

月の盃(さかずき)弓なりに反った月を盃に見立てていう言葉。

月の船 夜空を海に見立て、月が動いて行く様子を船に例えた言葉。

月に磨く 月の光に照らされ、景色が一段と美しくなること。

月に明かす 月を見ながら夜を明かすこと。

月色(げっしょく)月の光または月の色のこと。同じように月の光をさすものに月気(げっき)がある。

月の顔 月または月の光のこと。

月輪(げつりん)月の異称。月の形が丸く輪のように見えるところから言う。

月魄(げっぱく) 月または月の精や神をさす。

月暈(つきかさ) 月の周囲に見える光の輪のこと。

夕月(ゆうづき) 夕方の月のこと。

掩蔽(えんぺい)/星食(せいしょく) 月が恒星や惑星の前を通って隠す現象。

黄昏月 黄昏時に西の空にかかる細い月のこと。

宵月 宵の間に見える月のこと。また宵の間だけ月のある夜のことを宵月夜という。

朧月(おぼろづき) 春の宵などの仄かに霞んだ月のこと。その夜のことを朧夜または朧月夜という。

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