一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

262   香水やさてと別れを告げに行く  真奈美

2011年05月31日 | 

昨日のNHKラジオ深夜便で、天野祐吉氏と富士真奈美氏の対談があった。江戸時代の「隠居」のように、年を取った日本人はもっと上手に遊ぶべきだ、というのが対談のテーマ。

 

 俳優、俳人の真奈美さんは、人生の遊び人。俳優・俳人の「俳」は、可笑しみ・遊びの意味があるから、正に上手に遊んでいる、という。

 

 掲句は、10年の結婚生活に別れを告げるべき時の俳句だそうだ。結婚生活という束縛から解放されて、今が最高の幸せとか。

 

身一つの身を深々と初湯かな

 

正月に一人で誰にも気兼ねせず、お節料理を食べたり、ゆったりと初湯に浸かるのが、最高の自由の謳歌で、「こんなに幸せでいいのかしら」だそうだ。

 

一茶忌や真面目になっちゃあおしまいよ

 

 いやいや、実に天真爛漫で楽しい。

 

 

 

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261   いそいそと蜥蜴入り来る陶房に

2011年05月30日 | 

擬声語には、擬音語と擬態語がある。

 

擬音語・・・ワンワン、ニャオニャオ、ブーブー、ドキドキ、ガチャン、メラメラ、

擬態語・・・そわそわ、いそいそ、ふらふら、うとうと、きらきら、しっとり、ひんやり、

 

仕事場に入って来る自然界の動物は、トンボ・小鳥(ヤマガラ、シジュウカラなど)、ヘビ、トカゲなどがいる。蚊や蠅、蛾などの虫は、嫌われ者。

 

 

 さて、俳句に擬声語は、あまり使わない方がいいのだが、「いそいそ」というのは、トカゲの動きに最適な表現だ、と思う。今でもそう思っている。

 

 

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260  梅雨冷の詰まりてゐたる休み窯  章子

2011年05月29日 | 

つゆびえの つまりていたる やすみがま) 

 

この句を見て思った。「やられた、一本取られた。不覚。30年以上も陶芸をやっていて、気が付かなかった。口惜しいけれど脱帽だ」

 

がらんどうの穴窯に梅雨冷えが詰まっている、とはよくぞ発見してくれたものだ。窯詰め、窯焚き、窯出しという一連の作業に気を取られて、休み窯の中の空気の存在に気付かなかった。

 

 まだまだこういう発見はあるのだから、陶芸の俳句は作り尽くした、などと決めつけてはいけない。章子さん、勉強になりました。有難うございます。

 

バラ(薔薇)

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259  責め焚きやいつか消えたる蚊遣香

2011年05月28日 | 

(せめだきや いつかきえたる かやりこう) 

 

窯焚きには、窯や作品を乾燥させるための初期段階の「焙り(あぶり)」と1,300度に上昇させるまでの「責め焚き」、そして最終段階の「練らし」がある。最もハードなのが責め焚きだ。

 

 蚊遣香は、蚊取り線香のこと。穴窯を作ってから、最初の20年は年4回焚いていたから、どうしても真夏に窯を焚かざるをえない。唯でさえ暑いのに真夏に窯を焚くのは、尋常の暑さではない。

 

 その後、年3回になり、去年から年2回になったから、真夏に窯を焚くことはなくなった。この句は、10年以上前の句ということになる。

 

 

 

 

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258  桑の実や犬が腹這う水溜り

2011年05月27日 | 

(くわのみや いぬがはらばう みずたまり) 

 

 クワの実が色付き始めた。唱歌「あかとんぼ」にも、「山の畑の桑の実を 小籠に摘んだは まぼろしか」とある。

 

さて、風香り風光る初夏から、そろそろ梅雨に移行する時期だ。卯月から皐月へ。梅雨前線が現れ、台風2号が接近している。

いわゆる走り梅雨と思っていたら、なんとなんと平年より12日も早く、梅雨入りしてしまった。五月中の梅雨入りは珍しい。

 

 散歩の犬たちは、山の動物たちと追いかけっこをしている。野兎や狸、ハクビシン、野良猫などとだ。近くに水溜りがあると、ハアハアゼイゼイ言いながら腹這ってしまう。たちまち、どろんこだ。

 

アナガリス・モネリ

 

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257  薪割れば薪の香休めば万緑

2011年05月26日 | 

(まきわればまきのか やすめばばんりょく) 

 

 

気功を習っている友人が中国へ行った時の話。「中国では、漢方の治療として、精神病の患者に松の香りを嗅がせる」という。この話を聞いた時、ピンとくるものがあった。

 

実は、私はわがままな人間なので、会社などの組織の中では生きて行くことができない。昔会社に勤めたこともあるが、喧嘩はしなくても半年もすると厭になって辞めてしまう。

 

陶芸という独りでもできる仕事のお陰で、何とか今日まで生きて来られたのだが、陶芸の様々な仕事の中で一番好きなのが、実は薪割りなのだ。薪割りがどうして楽しいのか、それをいつも不思議に思っていた。その理由が判明した。

 

「松の香りは、精神病に効く」

 

キンポウジュ(ブラシノキとも、オーストラリア原産)

 

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256  働かぬ犬をなじりて草を刈る

2011年05月25日 | 

 ある時「おいモモ、お前は働かなくていいなあ。餌をもらって、あとはのんびりと昼寝か」なんてことを呟いて草を刈っていた。なじると言っても、勿論本気ではないが、人間と同じことのできないモモを、その時は見下していたのかもしれない。

 

しかし、よく考えてみると、人間だけが文明や科学、英知や進歩などと称して、沢山のガラクタを生産して、地球を汚染し続けている。人間以外の全ての動物は、地球環境に悪いことは一切していない。

 だから、犬をなじるこの句は、精神的レベルが低いと言わざるを得ない。

 

 

ヨモギ(蓬)

 

 

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255  径問へば麦秋のひと口ごもる  遊石 

2011年05月24日 | 

みちとえば ばくしゅうのひと くちごもる) 

 

秋でもないのに、麦秋・竹秋という言葉がある。こういう日本語の面白さを知るのも俳句あってのことだ。最近麦畑をみることは本当に少なくなった。残念だが二毛作をしなくなったからである。

 

さて、道を尋ねたら、農夫()は口籠ったという。しかし、決して知らないからではない。その人は、見知らぬ作者を観察しているのかもしれないし、教えることに躊躇しているのかもしれない。

 

理由はともあれ、農村には朴訥の人が多い。現在NHKで放映している連続ドラマ「お日さま」の[たけお君]を想像してしまった。

 

スイカズラ(吸葛)、キンギンカ(金銀花)とも

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254  香木の栞をはさみ知恵子抄  章子

2011年05月23日 | 

(こうぼくの しおりをはさみ ちえこしょう)

                             

作者は、智恵子抄に香木の栞を使っているという。「栞を外し」ならば「これから読み始める」ところだが、この句の場合は「栞をはさみ」だから、丁度本を閉じたところだ。 

 

 

父光雲と共に彫刻家であったことを思うと、高村光太郎と智恵子は木の香りに包まれて生活していたのだろうし、その中には当然香木もあっただろう。

 

作者は智恵子抄を閉じ、そういった光太郎と智恵子の生活や智恵子の言葉などに思いを馳せていたのだろう。

 

 この句、「香木」が季語かどうか疑問である。しかし、香水が夏の季語なので同一視してもいいし、季語でないなら無季俳句でいい。つまり、どちらでもいい。

 

サクラの実

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253  藍々と五月の穂高雲を出づ  蛇笏

2011年05月22日 | 

(あおあおと ごがつのほだか くもをいず) 

 

藍(あい)は、タデ科の一年草で染料として、又漢方薬としても使われる。「藍々」は、「あおあお」と読んでいいだろう。日本人なら、藍染の「藍色」は、誰でも知っている。 

 

同じ読み方の「青」は、「青葉」や「青嵐」「青時雨」など、緑として使われているから、その混乱を避けるため、「藍」を使ったのだ。 

 

余談だが、「青」には、他にも「碧」がある。碧落、碧雲、碧海、碧眼などと使われている。もう一つ「蒼」がある。「蒼白」「鬱蒼」などと使われている。

 

「五月」は、「ごがつ」であって、「さつき」ではない。「さつき」は、「皐月」であって、旧暦の五月だ。「さみだれ」は、「皐月雨」であって、「五月雨」と書くべきではない。つまり、旧暦と新暦がごちゃごちゃになっているのだ。

 

 さて、長野・岐阜県境にある穂高岳は、飛騨山脈の最高峰、奥穂高岳3190メートルをはじめ、北穂高岳3100メートル、涸沢岳3103メートル、前穂高岳3090メートル、西穂高岳2909メートルが連なる登山のメッカ。

 

 

 雲が流れて、隠れていた穂高が現れたのだから、正しくは「雲が穂高を出た」のであるが、作者は「穂高が雲を出た」、と言っている。こういう表現は作句の参考になる。

 

グラジオラス

 

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252  花薊普段使いの欠け茶碗

2011年05月21日 | 

(はなあざみ ふだんづかいのかけちゃわん)

 

 ラジオで聞いた話、イランの諺に「陶工の欠け茶碗」というのがあるそうだ。実は私も、自作の欠け茶碗を使っている、つまり同じことをしているので大笑い。

 

 そう言えば、日本でも同じような意味の「紺屋の白袴」とか「大工のあばら家」「髪結いのみだれ髪」なんていうのがある。

 「医者の不養生」「坊主の不信心」「易者の身の上知らず」などというのも同類か。

 

 しかし、「陶工の欠け茶碗」というのは、どうやら日本にはないようだ。不思議。

 

ヤマツツジ(山躑躅)

 

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251   山雨みな青葉雫となりにけり

2011年05月20日 | 

「箱根を歩く会」というのを主宰していたことがある。毎月一回、日帰りで伊豆や箱根をハイキングする会だ。この月一度の歩く会が、私の俳句作りの原点だったかもしれない。

 

大降りではないが、雨が降って来たようだ。青葉がざわめいている。昼なお暗き原生林の中だから、雨は一旦青葉が受け取り、やがて雫となって落ちて来る。下では、登山道の脇の大木に寄って、リュックからカッパや傘を出したり、小休止だ。

 

 

ニシキウツギ(錦空木)

 

 

 

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250   誘われて旅立ちを待つ夏帽子   富久子

2011年05月19日 | 

 「誘われて」というのは、人に誘われたのだろうが、初夏という季節にも誘われているのだろう。旅立ちを待っているのは、作者自身に違いないのだろうが、象徴的に夏帽子をもってきたのが成功している。

 

荷物のまとめられた鞄の上に、又は壁に掛けられた作者の夏帽子。旅への期待感がよく表れている。どんな帽子か一度見せていただきたいものだ。

 

ミズキ(水木)

 

 

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249   ありし日の夭折願望新茶汲む

2011年05月18日 | 

 生まれてから一度だけ、お金を払って占いをしてもらったことがある。二十歳の頃だ。渋谷かどこかの道路脇に並ぶ辻占いである。私の質問は、たった一つ「いつ死ぬか」だった。

占い師は、憮然として「60才までは、大丈夫です」私は、心底がっかりした。それ以上は、聞く気にもなれずお金を払って立ち去った。

「大丈夫です」とはふざけている、と思った。早く死にたい私にとって、それは予想外の返答だったのだ。

当時、全く先の見えない自分を悲観していたのは、三島由紀夫や太宰治などの影響があったかもしれない。

 

シラン(紫蘭)

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248   眼がぐるり底の虎魚が見得を切る   海人

2011年05月17日 | 

(めがぐるり そこのおこぜが みえをきる)

 

これからは、水の季節。素潜りでもアワビやサザエなどの貝類や、クロダイ、イシダイ、ホウボウなどが獲れるそうだ。

 

 ほう、海人さん、オコゼ(虎魚)がいましたか。あいつは空揚げにしたら実に旨いよね。二度揚げしたら、骨まで食べられる。しかし、ヒレに毒があるそうだから、気を付けてね。おっとっと、そんなこと知っているに決まっているよね、失礼。

 

 見得と言えば、歌舞伎でやるやつだよね。いわゆる両手を開いて、にらむようにポーズをとるやつ。オコゼちゃんが、どんな風に見得を切ったのか、見てみたいなあ。 

 

 

ミヤコワスレ(都忘れ)

 

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