ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2011.6.13 「お名前は?」 -「わあ!」

2011-06-13 20:42:33 | 日記
 たとえ思春期になっても、口数が少なくなるとはとても思えないほど、小さな頃から実に口が達者だった息子。実際、今でも五月蠅いくらい良く喋ってくださる。子育てをしていて本当に興味深く日々ワクワクして見守ったのは、その言語習得についてだ。どんどん人間になるってこういうことなのだ、と思った。今では大分記憶が曖昧になってきているので、どのくらい書けるかわからないのだが、思い出すまま記しておきたい。

 指差しが出来るようになり、ベビーカーから指差しとともに叫んだのは「イヤッ!」。「嫌々」ではない。これは、「○○と○○は同じ」という意味だった。「そうね、同じね~」と言うと、にっこり笑ってご満悦だった。自分が持っている電車がテレビに映れば「イヤッ!」。お花が咲いているのと活けてあるのを見れば「イヤッ!」。

 他人(ひと)様から見れば、意味不明な言葉が親だけにはわかる、そんな言葉があることがとても不思議だった。それでもどうしても理解できなくて、もう少し言葉が分かるようになったらどういう意味だったのか確認してみよう、と思いつつ、ある日聞いたらもうわからない、という残念な言葉も数多くあった。
 例えば「パ~イ、チュッチュッ、パ~イ」という言葉。これはとにかくご機嫌でないと言わなかった。歌うように体を揺らしてよく言っていた。でも、決して「ミルクを頂戴!」というおねだりの言葉ではなかったようだ。
 もう一つは「ダッチュ」。これもご機嫌な時の言葉。唇をとんがらせて「ダッチュ」。今本人に聞いてみると、さっぱりわからない、と言う。我が家では、今でも言葉を話し始めた小さな子どもを見ると、「ダッチュは可愛いねえ。」とその総称として使っている。
 息子から「お母さん、ダッチュとチビと子どもの境界線はどこよ。」と聞かれ、「ダッチュはまだ言葉がおぼつかない子、チビは保育園児どまり、子どもは小学生以降かな~」と答えている。

 標題は、1歳半の頃に「お名前は?」と聞くと「わあ!」と言って走り出した時を思い出したもの。旅行先のホテルのロビーで夫に「お名前は?」と聞かれ、「わあ!」と言って逃げ出す。追い駆けっこのように、延々とこのやりとりをしていた。
 その頃、ちょうど私のことを特定する言葉も覚えた。なんと「ママ」ではなくて「バーバ」。「はあぁ?なんで?おばあちゃんじゃないでしょ、ママでしょ~」と言ってみたところで断固として長いこと「バーバ」だった。
 実際の祖母のことをその頃、何と呼んでいたかは定かではないが、気が付くと「ジージ」「バーバ」という呼び方はしないで、きちんと「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼んでいた。

 ミニカーや電車で遊ぶのが好きだったのは男の子ならでは。家の廊下で走らせて遊ぶには飽き足らず、いつしか家の前のプレイロットの滑り台で、自分でなく玩具を滑り落とすことを覚えた。これは2歳頃だったか。とにかく上から落とす、落とす、落とす。下で拾って受け渡すのはこちらの役目。ガチャン、ガチャンぶつけて「壊れるから止めて!」、と叫んでも大喜び。
 それでも遊び足らず、家に帰ると、今度はソファにマットレスを斜めにして立てかけて、自分がソファの上によじ登って同じことをする。その時の言葉が「シーダイ、シュー!」。「滑り台でシューッ(と落として遊んでるのはとても楽しい!)」と言ったところか。このくらいまで喋ってくれれば分かりやすい。

 そのほか、きちんと発音できず、自分ではちゃんと言っているつもりでも「プリン」が「チミン」だったり。何故だろう。不思議だった。「はい、プリンね。」というと飛び跳ねて「チミン!チミン!」とくる。

 夫が電車を見に駅のホームに連れて行ったときに、息子が線路を指差して言ったのが「バッチ、バイバイ!」。夫は何故線路のことをそう表現するのかわからなかったという。
 これの語源は私が知っている。2歳になったかならないかの頃だったと思うが、行きつけのクリニックに胡蝶蘭の鉢植えがあった。なんでも触りたい2歳児だから、土をほじくり返して投げそうな仕草をした。慌てて私が、「バッチ、バイバイ!」(汚くなるから、触ってはダメ、バイバイしようね)と言ったのだ。ストンと腑に落ちたようで、触らずにいてくれた。それ以来、土や、砂利、砂などを見ると私の顔を確認して「バッチ、バイバイ!」と頷いた。だから、息子は線路ではなく線路の敷石を指して言ったこと。これが語源だ。

 こんなところだろうか。
 当時の保育園での連絡帳や日誌等を紐解けば、もっともっと(私にとって)珠玉のような言葉が出てくるかもしれない。今スラスラと思い出すのはこのくらいになってしまった。あの頃の本当に文句なく可愛かった(親ばかです。)息子を懐かしく愛おしく思い出しつつ、今や喉仏が出て、うっすら髭の生えてきた彼を隣に見ながら、何やら不思議な感じがしている。

 今日もはっきりしないお天気だった。やはり腰が危うい感じでちょっとこわごわ歩いている。だるくて疲れやすいのは仕方がない。休薬の週を大切に過ごさなくては。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする