お父さんのマリポタ日記。
マリノスのこと、ポタリングのこと。最近忘れっぽくなってきたので、書いておかないと・・・
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※山本文緒(1962年神奈川県生まれ。2021年10月13日、膵臓がんのため58歳で死去。OL生活を経て作家デビュー。「恋愛中毒」で吉川英治文学新人賞、「プラナリア」で直木賞、「自転しながら公転する」で島清恋愛文学賞、中央公論文芸賞を受賞)



●一生に一度しか書けないものを命かけて書いた

 ある日突然がんと診断され、58歳で余命6カ月(セカンドオピニオンでは4カ月、これが副題となっている)と宣告された、直木賞作家の山本文緒さん。治療法はなく、抗がん剤で進行を遅らせるしか手はなかった。しかし、副作用が軽くなっているとして臨んだ抗がん剤は地獄だった。がんで死ぬより抗がん剤で死ぬと思ったほどだという。そのため緩和ケアへ進むことを決断し、夫とふたり、無人島に流されてしまったかのような日々が始まった。

 余命宣告をされた衝撃の診断の1カ月後から始まり、死の直前まで綴られた作家の日記である。活字にしてほしい思いがある反面、こんな救いのないテキストを誰が読むんだろうと懐疑的になりながらも決してジタバタせず、淡々と客観的に自分をみつめ、そして作家らしくユーモアも交えながら残された日々の様子を語る。

 余命宣告というのは、言い換えれば人生の残り時間が明確になることでもある。だから「うまく死ねますように」と準備もできる。周囲も覚悟ができる。それでもノンフィクションだけに自然な中にも当事者でなくては語れないような、心にズシリとのしかかる重い言葉が出てくる。病気であることを知らない人へ「心の中でありがとうございますとさようならを言った」にはぐっときた。

 結末が分かっているだけに残りページがどんどん減っていくのが切なくて悲しい。一生に一度しか書けないものを、まさに命をかけて書ききった。

 山本文緒さんは2021年10月13日10時37分、自宅で永眠。亡くなられてから初めて著作を読んだことになったが、ほかの作品も読んでみたい気になった。僕が生きている限り、心の中で生き続けます。
 

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