フェリーで利尻島へ 雲の上に山頂が浮かぶ
2011年7月17日の利尻山(1721m)の登山記録
雨模様の三連休。天気予報に目を凝らすと、利尻山だけは晴れるかも。
稚内公園でテントを張り、翌朝第一便のフェリーに乗り込む。
小雨ながら波もなく穏やかな海原に、利尻山の頭がうっすらと浮かぶ。
山頂に着くころの青空を期待して、深い森に分け入る。
雨滴で濡れた緑のひとつひとつが清々しい。
深い森を歩く
針葉樹の巨木が立つ幽玄の森を抜けると、見返りに日本海が広がる。
雲海のはざまに礼文島の黒い一筋が見えた。
日本の最北に来たという感慨がわく。
植物図鑑に見入る若者に、見慣れぬ花の名を聞くと、「シュムシュノコギリソウ」とか。
遥か北千島の占守(シュムシュ)島に連なるその名が、厳しい風土に耐える植生を物語る。
六合目 左手奥の黒い一筋が礼文島
シュムシュノコギリソウ
七合目から日が差し始め、ハイマツ帯にノゴマのコーラスが響く。
ルビーのような赤い喉を震わせている。 この鳥、別名を日の丸という。
下山してきた夫婦の登山者に「ノゴマですよ」と、我が感動をおすそ分けしてしまった。
ようやく八合目の長官山(1218m)にたどり着くと、高曇りの空に孤峰が大きく屹立していた。
緑の斜面に走る二筋の白い雪渓が、我が心にさわやかな風を運んでくる。
うきうきと足取りも軽く進むと、小さな利尻小屋を経てほどなく九合目に達する。
ここまで登山口から4時間。
ノゴマ( 英名: シベリアン ルビースロート)
八合目
八合目と九合目の間に小さな利尻小屋
九合目
九合目では、頂上から下りてきた大勢の岳人が海を見下ろし、山を見上げていた。
八合目で見上げた二筋の雪渓を眼下に覗いてみると、大きな斜面が黄色く染まっている。
チシマキンバイの変種であるボタンキンバイの大群落だという。
ボタンキンバイで染まる斜面
ボタンキンバイの絨毯をアップで。白い花はハクサンイチゲか?
九合目から山頂にかけては、この山の核心部。「ここから正念場」という標識まで立っていた。
オーバユース・・・。 崩壊を繰り返している登山路のざらざらとした礫が足裏をずるっとすくう。
慎重に高度を上げていくと、この山らしい高山植物の数々が迎えてくれた。
リシリオウギ、リシリゲンゲと利尻の名を持つ花々。
シコタンハコベは千島の色丹(シコタン)の名を冠る。
リシリオウギ
シコタンハコベ
リシリゲンゲ 赤い花はエゾツツジ
7月。
この時期、この山を目指したのは、リシリヒナゲシに出会いたいという一心だった。
利尻山の固有種で、我が国唯一の野生ポピー(ケシの花)が咲くという。
が、登っても、登っても出会うことがない。
あきらめかけた、その時。
・・・・山頂直下の斜面に、いくつかの黄色の花がすくっと背筋を伸ばして咲いていた。
淡くて薄い花弁が天を向く。
近づくことのかなわぬ崩落地。ズームレンズでのぞいて記憶にとどめる。
大満足して歩を進めたら、手の届く距離にぽつりと一輪だけが咲いていた。
リシリヒナゲシ 薄い花弁に品格
すくっと背筋を伸ばして天空を見つめる
登山口から五時間ほどで山頂に。雲も散って、夏空がのぞく。
切り立った岩崖や青い日本海に、長い歩行の疲れが一瞬に癒された。
一時間でも、二時間でも居たかったが、帰りの最終フェリーの時間が気になる。
わずか15分。後ろ髪惹かれる思いで下山した。
帰路、八合目から見上げた山体は爽やかな夏空と呼吸を交わしていた。
利尻山の山頂
山頂の岩崖
山頂から見た日本海と対岸の稚内
帰路、八合目から見上げた山頂
■登山記録
08時30分:鴛泊コースから入山(ここが、ほぼ三合目)
09時00分:四合目
09時30分:五合目(610m) 森を抜けて眼下に日本海の見晴らしを得る
10時00分:六合目・第一見晴らし台(760m) シュムシュノコギリソウが咲く
10時30分:七合目(895m)
11時00分:第二見晴らし台(1120m)
11時20分:八合目(長官山・1218m)
11時45分:利尻山避難小屋
12時15分:九合目(1410m)
13時25分:山頂(1721m) 上り4時間55分
13時40分:下山開始
17時00分:登山口に戻る 下り3時間20分
下山時の森で出会ったたクマゲラ(♀) つがいで採餌していた
帰路の稚内行きフェリー最終便
稚内 港の湯
700円だが、連休の市民感謝ディということで500円。
新しく、広くて実に心地良い。
港を見下ろす露天風呂から、宵闇に浮かぶ幻想的な赤い月を眺めた。
翌朝の光景 コンブ漁が最盛期
翌朝、稚内・浜勇知から見た利尻山
リシリヒナゲシ、とてもきれいです。
花屋さんでそれらしき植物を見たことはありますが、
やっぱり自然の中で苦労して見つけてナンボ
ですよね。美しさの実感も増すと思います。
利尻富士は登頂に4時間ですか…。
いつかチャレンジしたい山です。