よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

インスティテューショナル技術経営学

2008年03月01日 | 技術経営MOT
東工大で2日間にわたって行われた「イノベーションとインスティテューションとの共進化ダイナミズムの解明」をテーマにしたSIMOTの議論は刺激的だった。

「技術の創造から事業化までのイノベーション創出サイクルの活性化は、(1)国家戦略・社会制度、(2)企業レベルでの組織文化、(3)時代背景といった3つの次元で象られるインスティテューションとの共進のダイナミズムに大きく依存するとの認識を基本」として、「両者がうまく適合すれば、イノベーションも進み、同時にインスティテューションも進化発展し、両者の共進的発展の好循環が図られる」という枠組みで、活発な議論があった。

Institutionをproducts of the human socialization process (Berger and Luckmann, 1966)ととらえればworkplaceも立派なinstitutionとなる。そして、野中のSECIモデルを敷衍した上で、「ワークプレイスのありかたに変化を加えることは、職場とワークスタイルの適合化ではなく、むしろ、職場とワークスタイルとの共進に向けたダイナミックなプロセスである」(Senoo)という。

さて、大きくは一国の社会制度、経済や社会をささえる制度もinstitutionとなる。なので、日本語で「制度」というよりは、あえてカタカナでインスティテューションである、と拠点の研究者たちは通称している。

イノベーションとインスティテューションとの共進化ダイナミズムという枠組みを研究者で共有し、関連する軸をベースに研究をひもずけ体系化してゆこうという方向性は、ありがたい。

構造機能的に、「制度は、個々人の自然の力を限界内に維持する機能に奉仕し、個人の力は制度を変動の状況におく」(T. Persons)というようにとらえれば、institutionを構成する個人の人間力(Competency)は、イノベーションにとって重要なテーマとなる。残念ながら、今回の演題のなかには、個人のレベルまで具体的に落とし込んだ研究は見当たらなかったが。

・どのようなcompetencyをもつ人がイノベーション創出サイクルを活性化させるのか?
・イノベーションを創出させるためにはどのようなcompetencyを基準にして人材開発したらいいのか?

さらに進んで、特定のcompetencyの発揮を欲する人は、どのようなworkplaceとしてのinstitutionを好むのか?ということも研究の余地大。ベンチャー企業、非営利組織、安定的な大企業、起業、社会起業などなど。

これらのヒューマンファクターの変数を解明し、可視化・操作化できればさらに有益だろう。SIMOTを現場に落とし込んでインプリすることができるからだ。