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ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ゲンジボタルの幼虫上陸

2020-04-05 15:02:05 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルの幼虫上陸が各地で始まっている。幼虫は、蛹になるために水中から出て陸地を目指す。腹部第8節にある2つの発光器を光らせながら上陸する光景はとても幻想的であり、まだまだ謎の多い生態の神秘的な1ステージでもある。
  ゲンジボタルは、遺伝子型によって大きく2つのタイプ、西日本型および東日本型に分けられ生息環境や生態にも違いが認められ、幼虫の生活場所と上陸行動にもそれぞれ特徴がある。この記事では、成虫が乱舞する様子を何度も観察し撮影(ホタルの乱舞~里山で舞う東日本型ゲンジボタル~)している東日本型ゲンジボタルの生息地である千葉県某所での幼虫上陸の観察を記したいと思う。

 当生息地は、全体が典型的な谷戸になっており、谷戸の最奥から転々と発生場所がある。上陸を観察したところは、谷戸の入口付近で、水田脇の用水路である。コンクリート3面張りで、壁の高さはおよそ60cm、水底には泥が堆積し、水深は約15cm。カワニナはかなり多く生息している。ここより上部は小さな用水路で、台風や大雨でも濁流になるようなことはほとんどない。人為的な幼虫の放流やカワニナの放流など一切行われていない全くの自然発生地であり、谷戸全体では、毎年多くのゲンジボタルが発生している。
  千葉県内では最も成虫の発生時期が早く、5月中旬から見られ、ピークは5月下旬頃である。上陸してから羽化発生するまでの潜土期間はおよそ50日であるから、当地の幼虫の上陸時期は3月中旬頃からと予測できるが、幼虫は幾つかの条件が合致しなければ上陸を開始しない。これは遺伝子型の違いとは関係なく基本的な条件は以下の4つになる。

  • 日長時間が、12~13時間であること。
  • 上陸時の気温が、約10℃以上であること。
  • 降雨時、または降雨後で陸地が濡れていること。
  • 0.1lux以下であること。(満月の夜の地表面は0.2lux、街灯下は50~100lux)

 ゲンジボタルの終齢幼虫は、室内の人工飼育において、室内灯を照らすなど屋外の日長時間と異なる場合は、自然界とは違う時期に上陸しようとすることから、体内時計によって日長時間の変化を計り上陸時期を見極めていると思われる。日長時間が12~13時間くらいになると、幼虫は岸辺の水際に集まってきて、時々水面から頭部を出して水上を伺うような行動をする。おそらく気温や雨の状況を確認しているものと思われる。そして条件が揃えば夜間に上陸が行われるのである。
  まずは当生息地において日長時間が12時間を超えた今年3月1日から4月1日までの降水量と上陸開始時間である19時の気温をグラフで表してみる。(グラフ1)上陸は19時以降になってからも行われるが、19時の気温で考察することとした。

降水量と気温変化のグラフ

グラフ1.千葉県A市のゲンジボタル生息地における降水量と気温(19時)の変化 2020.3/1~4/1(気象庁のデータより作成)

 グラフ1の中で先の上陸の条件と完全に合致する日を見ると、3月10日と19日、28日、そして4月1日が該当するので、次にそれぞれの日の1時間ごとの降水量と気温の変化を表してみる。(グラフ2)

降水量と気温変化のグラフ

グラフ2.千葉県A市のゲンジボタル生息地における3月10日、28日、4月1日の気温と降水量(気象庁のデータより作成)

 このグラフから、3月10日と19日は上陸したであろうことが推定できる。(残念ながら3月10日および19日は観察を行っておらず、実際に上陸したかどうかは確認できていないので、あくまで気象データからの推定である。)以前、4月9日に千葉県の房総にて上陸を観察しているので、3月10日の上陸は時期的にかなり早いように思うが、温暖化の影響なのであろう千葉県内の他の地区では、ここ数年、上陸の時期が少しずつ早くなってきているという観察もある。今年は桜の開花も東京では3月14日で、1953年の観測開始以来最も早い開花となった。 当地のゲンジボタルの幼虫が3月10日に上陸しても不思議ではない。
 次の19日は、21時を過ぎてから雨が降り始めている。かつて、ゲンジボタルの幼虫が上陸を開始するには「朝から雨が降り続いていること」が条件と言われていたが、筆者が山梨県と千葉県の生息地で観察した結果では、上陸の時期であり、気温が10℃以上であれば、夜になって(深夜からでも)雨が降ってくれば上陸を開始することが分かった。ただし、霧雨ではダメで、地面がしっかりと濡れるまとまった雨でなければならない。(雨が夕方になって止んだ場合でも、陸地が十分に濡れていれば上陸を開始することも分かっている。)従って、これも推定ではあるが、19日もおそらく上陸したと思われる。
  次に合致する28日は、知人と観察に訪れたが、天気予報よりも雨の降り出しが遅く、18時の時点で霧雨。からからに乾燥した土壌を湿らすには、ほど遠い状況。気温は11℃。予報では、どんどん気温が下がり深夜から降雪の予報。実際に翌29日は、東京都内では雪が積もった。その日は19時を過ぎても水際で発光する幼虫の姿がなかったため、早々と諦めて撤収してしまったが、知人は、千葉県内のゲンジボタルの生息地をいくつか回った後、再び当地を訪れると、23時過ぎに10頭ほどの幼虫が上陸しているところを確認し、写真を撮影している。気温は7℃まで下がり、上陸が続くことはなかったと記載している。その記事はこちらになる。「オヤヂのご近所仲間日記」(ゲンジボタル 幼虫上陸の頃
  28日は遅い時間になればまとまった雨が降ることは分かっていたが、気温が下がってしまうことから早々と諦めて撤収してしまったことに、写真云々ではなく、ホタルの研究家として後悔の念に駆られたが、次のチャンスに恵まれ、夕方に現地入りし観察と撮影を行った。

 当日は、グラフ2で分かるように朝から雨で気温も18時で13℃と高かった。水路をのぞいていると、18時半におよそ10頭のゲンジボタルの幼虫が一斉に水際で発光を始めた。カメラのフレーム内では、1頭がゆっくりと壁を登り始めた。この1頭は22分かけて高さ約60cmの垂直のコンクリート壁を登ったが、なかなか後が続かない。途中で水中に戻ってしまった個体もいた。19時過ぎに、ちょうど発達した南岸低気圧が南海上を通過したため、かなりの土砂降り。まとまった雨が上陸の条件ではあるものの、土砂降りでは上陸も躊躇するようである。
 また不思議なことに、この生息地では、写真で見ると奥の壁しか登らない。手前側(カメラで撮影している側)は、すぐに田んぼになっており、畔は草刈りがされている。奥では、壁を登り切った先の斜面は草刈りがされていないのである。潜土したり隙間で蛹になるホタルは、少なくとも2か月は安定した環境でなければ羽化できない。幼虫は、安定した環境がどちらなのか分かっているのであろか?
 20時を過ぎると上陸幼虫も、水際で発光する幼虫も見えなくなった。ここのゲンジボタルの遺伝子は東日本型であるから幼虫の集団性もあまりない。更には上陸時期が終盤で個体数も少なくなっているのであろう。写真としての見栄えには物足りなさもあるが、この場所におけるゲンジボタルの生態の証拠写真と新たな知見を得ることが出来た。
  これら上陸した幼虫たちは、前蛹期間を経て蛹化、そして羽化して成虫となるが、蛹化までの日数は有効積算温度で決定される。この後の気温変化にもよるが、早ければGW明けには少しずつ成虫の発生が始まり、5月20日頃がピークになるかもしれない。関東地方では、これから上陸が始まる地区が多くある。チャンスがあれば、山梨県、東京都内の自然発生地において、引き続き上陸の観察と撮影を行いたいと思う。また、今年は、5月22日から2泊3日で高知県までゲンジボタルの観察と撮影に行く予定である。高知県におけるホタルの上陸報告から、おそらく高知も5月22日頃が発生のピークと思われるので、期待に胸が膨らむ。

 以下には、過去に撮影した水際でカワニナを食べるゲンジボタルの幼虫と上陸している幼虫の写真、そして今回撮影した上陸幼虫の光跡写真、120枚の写真1枚1枚をタイムラプス動画にして掲載した。尚、タイムラプス動画は、約15倍速のスピードになっている。先にも記したが、一番左の幼虫は、コンクリート壁を登りきるのに実際は22分かかっている。

参考:ホタルの幼虫上陸ゲンジボタルの幼虫上陸(東京2025)

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

カワニナを食べるゲンジボタルの幼虫の写真
カワニナを食べるゲンジボタルの幼虫(水中撮影)
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F20 1/25秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:千葉県 2011.3.19 8:19)
ゲンジボタルの幼虫の写真
ゲンジボタルの幼虫(水中撮影)
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F20 1/25秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:千葉県 2011.3.19 8:19)
発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫の写真
発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫(腹部第8節の左右両側に発光器がある)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 16秒 ISO 400(撮影地:千葉県 2011.4.09 20:24)
発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫の写真
発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫の光景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F2.8 30秒 ISO 640 約60分の多重露光(撮影地:千葉県 2020.4.01 18:37~19:43)
発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫の写真
発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫の光景
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / バルブ撮影 F2.8 90秒×10カット多重 ISO 400(撮影地:千葉県勝浦市 2011.4.9)
発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫(再生時は、設定からHDお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
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ホタルの産卵~孵化

2019-06-23 16:59:51 | ゲンジボタル

シリーズ「ホタルの写真を撮る」その4

 ブログでは、ホタルの一生を写真で紹介してきたが、今回はホタルの産卵~孵化について掲載したいと思う。
 オスは光りながら飛び回り、葉先で目立つように光る未交尾のメスを見つけると近寄っていき、光によるコミュニケーションが行われて交尾に至る。15時間ほどの交尾が終わると、メスは22時頃から河川上を一直線に飛びながら産卵場所を探し、23時頃から産卵を開始する。主に日陰で、水際の水面に対して垂直に生えているコケにおよそ500~1,000個の卵を産みつける。産卵数は、西日本型の方が多く2,000個ほど産む個体もいる。産卵は夜明けまで続けられ、2~3日かけて産卵する。
 卵はやや楕円形をしていて、長い方の直径がおよそ0.55mmで、短い方の直径がおよそ0.5mmである。卵は成虫の体内にある間にすでに発光しているといわれているが、その光は産み落とされたばかりの頃は、暗闇の中でやっと見える程度の明るさである。成虫のように点滅するのではなく、昼間も夜も光り続けている。そして、日がたつにつれて少しずつ強い光りになっていき、孵化の数日前になると、その光りはさらに強くなり、殻を通して中の幼虫の尾端の2つの発光器を確認することができる。この時期では、何かの刺激を受けると一気に強く発光する。
 孵化は、産卵後平均25日くらいで始まるが、孵化まで期間は「有効積算温度」(卵の発育零点 9.3℃ 有効積算温度 357.4℃日)で決定され、高い気温の方が日数が短くなる。孵化は午前1時頃から始まり、幼虫は、そのまま水中へと入っていく。

 小さな被写体を大きく撮影する時は、マクロレンズを使用するが、一般的なマクロレンズの拡大率は等倍までである。つまり、35mmのフィルム上に実物大の大きさが写るのであるが、直径0.5mmのホタルの卵を大きく写すには、それでは物足りない。カメラボディとレンズの間に中間リング(エクステンションチューブ)を取り付ける方法もあるが、 拡大率は2倍くらいが限度であるため、これ以上の拡大になると「ベローズ」が必要になる。「写真8」この組み合わせでは、およそ7倍もの倍率で撮影できる。(尚、メーカーによっては、レンズ単体で5倍まで撮影できるレンズも市販されている。)
 以下に掲載したすべての写真は、フィルムで撮影し、スキャナーでデジタル化したものでるが、「写真9」のようにCanonのデジタルカメラ EOS 7D にオリンパスのオートベローズを付けて 撮影することもできる。ただし、フィルムで撮影した方が鮮明で奇麗であった。
 残念ながら、撮影に使用したフィルムは、既に製造販売されていない。現在、販売されているリバーサル・フィルム(富士フィルム)は、35mmではプロビア100F、ベルビア50、ベルビア100の3種類しかない。卵の写真では、これらのフィルムで美しく撮ることができるが、発光は、成虫の飛翔風景も含めてネガ・フィルムの PRO400H しかない。

参照

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの 画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタルの交尾
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタルの産卵
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional

ホタルの卵の写真

ゲンジボタルの卵
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / AUTO-BELLOWS M-System / FUJICHROME Provia400F Professional

ホタルの卵の写真

発光するゲンジボタルの卵
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional

ホタルの卵の写真

ゲンジボタルの卵(幼虫が透けて見える)
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / AUTO-BELLOWS M-System / FUJICHROME Provia400F Professional

ホタルの孵化の写真

孵化するゲンジボタルの幼虫
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / AUTO-BELLOWS M-System / FUJICHROME Provia400F Professional

カメラの写真

撮影システム(フィルム)
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / OLYMPUS AUTO-BELLOWS M-System

カメラの写真

撮影システム(デジタル)
Canon EOS 7D / OLYMPUS ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / OLYMPUS AUTO-BELLOWS M-System / OLYMPUS EXTENSION TUBE 25 / Canon MACRO TWIN LIGHT MT-24EX

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苺月と源氏蛍(Firefly in the Strawberry moon)

2019-06-22 12:16:05 | ゲンジボタル

 6月はゲンジボタルの季節である。ちょうど満月と発生時期が重なり、また気象条件も良かったので撮影したが、実は、ホタルは満月が大嫌いである。 ご存知のように、ホタルは互いが発する光によってコミュニケーションを図っている昆虫である。このような満月の明かりでは互いの光が見えないために、写真のように葉の上で静かに光っているだけで、飛び回るオスは少ない。つまり、その夜の繁殖行動は極めて少ないのである。
 満月は自然現象であり、月の昇る時間や天候によってその影響がホタルの発生期間中ずっと及ぶことはない。しかしながら、人工的、あるいは人為的な灯りは「光害」と言い、ホタルの繁殖行動を最も阻害するのである。0.1luxの灯りでも繁殖は阻害されるのである。ホタルの生息地において、街灯の灯りが当たったり、家の灯りが当たるような場所では、ホタルはどんどん暗がりを探して逃げていく。
 そもそもホタル(ゲンジボタル)の発生期間は、長くても3週間くらいである。メスはオスよりも遅れて羽化してくるから、繁殖できる期間は2週間くらいに減ってしまう。しかし、満月の晴れた夜、風の強い夜、気温が15℃以下の肌寒い夜は、オスは飛び回らないから、実際に繁殖できる期間は1週間くらいかも知れない。その少ない繁殖のチャンスを「光害」は更に機会を奪ってしまう。
 「光害」が全くない条件の良いホタル生息地でも安心はできない。ホタル観賞に訪れる方々は、無意識に懐中電灯を照らす。足元だけでなく、ホタルが飛び回る方向にも向ける。スマホでフラッシュを焚いて写真を撮る。まだ、飛翔時間帯なのに車のライトをつけて帰る・・・このような行為が続けば、そのうちホタルはその場所からいなくなってしまうだろう。

 写真を趣味や職業として撮るカメラマンにとっても、風景的なホタル写真の撮影に「光害」は邪魔になるため、「灯り」については注意しているようだが、昨今、インスタ映えするヒメボタルの写真撮影者が増えており、一部に、絶対にしてはいけない行為が見受けられる。
 ヒメボタルのメスは下翅がなく飛ぶことが出来ないため、地面や葉の上でオスの飛来を待っているわけだが、撮影者が撮影ポイントを探すために農道や林道から外れて生息場所に平気で立ち入るのである。ヒメボタルが飛翔する場所に番傘を置いて撮影した馬鹿者もいる。おそらくメスのヒメボタルを踏みつけているだろう。意図する作品を撮るためなら、何をしても良いわけではない。 撮影者は、あらかじめヒメボタルの生態について細かく学んだ上で現地に来て撮って欲しい。

 ホタルの飛翔風景写真を撮り飽きると、撮影者は、次に成虫が発光しているマクロ写真も撮りたくなる。撮影された写真の中には、発光しているホタルに何らかの灯り(懐中電灯やストロボ)を照らしたであろうものがある。その撮影にどのくらいの時間を掛けたのかは分からない。撮影者1人の「一瞬」かもしれない。周囲に誰もいなければ、鑑賞者や飛翔風景を撮っている撮影者の邪魔にもならない。短い時間ならば、ホタルの繁殖にも影響がないだろう。私もホタルにストロボを焚いて撮影した写真が何枚もあるが、それらはすべて飼育して羽化させた個体を自宅室内のセットで撮影しているものだ。絶対、自然発生地では人工的な灯りは使用しない。それは、ホタルが好きだからである。当てるべきではない。
 自然河川においてホタルにストロボを当てて撮影し、その撮影方法をブログで詳細に解説していたあるプロの写真家に対して苦言を呈したところ、「極論であり、なんの影響もない。マナーは人に押し付けるな。自身のホームページだけで言っていろ。」という言葉が返ってきた。悲しい事実である。

 昆虫撮影でも風景撮影でも、求める被写体、求めるシーンを撮るためら何をしても良いのだろうか?「自分一人だから良いだろう。一瞬だから良いだろう。」は、正論であろうか?何かを犠牲にして撮った写真は、単に自己を満足させるだけであるように思う。撮影者はエコーツーリズムの精神をもって望むことが必要なのではないだろうか。
 以下に掲載した写真は、夕暮れに最初に光る一番ボタルを自然光で撮影している。画質は悪いが、自然界ではこれ以上の写真を望んではいけないと思う。

 ストロベリームーンは、6月の満月を指す俗称。 正式な天文学の用語ではなく、名称はアメリカ先住民のオジブワ族が風習に由来するものであり、 色とも関係がない。オジブワ族は、野生の木の実や種子を採集する暮らしを送ってきたことから、その時に採集できるものを月の呼び名としてきた。ストロベリームーンは、イチゴの収穫時期に昇ることから呼んだ名称である。(ウィキペディアより)
 アメリカに生息するフォチヌス等のホタルならば、表題はカタカナ表記が良いだろうが、ここでは漢字とした。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ホタルの写真

苺月と源氏蛍
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 3秒 ISO 200(撮影地:東京都 2012.6.09 20:01)

ホタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 3.2秒 ISO 1000(撮影地:東京都 2012.6.04 20:02)

ホタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 10秒 ISO 1600(撮影地:東京都 2012.6.16 19:30)

ホタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 8秒 ISO 1600(撮影地:東京都 2012.6.16 19:32)

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東日本型のゲンジボタルの乱舞

2019-06-09 18:28:42 | ゲンジボタル

 東日本型のゲンジボタルの乱舞を前々回の記事「ホタルの乱舞~里山で舞う東日本型ゲンジボタル~」同様に写真と映像で紹介したいと思う。

 ゲンジボタルの発光周期には地理的変異があることは良く知られており、気温 20℃での発光周期(オスの同期明滅)を比較すると西日本型(短周期で2秒)と東日本型(長周期で4秒)に分けられるが、観察していると、発光している時間や飛び方等にも若干の違いが見られる。東日本型ゲンジボタルは、比較的長く光りながらゆっくり飛び、飛翔距離も短いという特徴がある。
 長時間露光による光跡を写した写真でも西日本型と東日本型ゲンジボタルの違いが分かる。西日本型ゲンジボタルの飛翔風景を写真に撮ると、光跡がスー、スーと流れるように写るが、一方の東日本型の場合は、写真的に絵にならない。ただし、映像はほぼ見た目と同じであり、東日本型ゲンジボタルであっても、その魅力を十分に味わうことができる。尚、映像には同期明滅が分かるものも掲載した。

 東日本型のゲンジボタルの乱舞を撮影した場所には、4月10日に上陸の様子を観察に行っているが、8頭ほどしか上陸していなかった。当日は勿論雨であったが、東京奥多摩では雪が降るほどの低温で、当地の気温も10℃であった。その後は、雨らしい雨があまり降らず、今年のゲンジボタルの発生はとても少ないのではないかと危惧していたが、いざ発生時期になってみると、前々回の記事で掲載した場所も本記事で掲載した生息地も、例年にない乱舞であった。
 しかし、疑問が残る。羽化までの有効積算温度を発生日から逆算していくと、上陸は4月10日~15日に計算上はなる。昨今、上陸が早くなってきており、場所によっては3月に上陸しているという観察報告もあるので、今一度、上陸時期、上陸の条件、羽化までの有効積算温度等を再検証する必要がある。

 今後のホタルの予定は、今月下旬頃に、開発計画のある東京都内の谷戸(ここでは、ゲンジとヘイケが同時に乱舞すると言われている)、同じく都内の渓流においての動画撮影を予定。7月は6年間で8回通って、2009年にようやく撮影できた東京奥多摩のヒメボタル。当時フィルムであったので、今回はデジタルでの再挑戦。そして、昨年、レンズキャップを外し忘れて何も撮れていなかった富士山麓のヒメボタルを予定している。

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東日本型ゲンジボタルの飛翔風景の写真

東日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 640 5分相当の多重(撮影地:千葉県  2019.6.08)

西日本型ゲンジボタルの飛翔風景の写真

西日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 640 5分相当の多重(撮影地:東京都)

東日本型ゲンジボタルの同期明滅(気温20℃)

西日本型ゲンジボタルの同期明滅(気温20℃)

東日本型ゲンジボタルの乱舞(BGM付)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE(撮影地:千葉県 2019.6.08)

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ホタルの乱舞~里山で舞う東日本型ゲンジボタル~

2019-06-02 14:54:20 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルが飛び交う季節となった。九州や四国では先々週あたりから、発生しているという情報を得ているが、ようやく関東でも早い所では発生のピークを迎えている。
 今回、観察と撮影に向かったのは、千葉県内のゲンジボタル自然発生地である。典型的な里山で、幼虫の放流を含めて全く保全活動等はされていない天然ボタルである。 当地では5月の中旬頃から発生しており、谷戸の場所を変えながら発生している。幼虫の上陸時期の雨不足と4月の寒の戻りで、今年の発生はとても少ないのではないかと心配していたが、当地の谷戸の最奥では、筆者でさえ歓声を上げるほどの乱舞であった。

 「ホタルを見るなら明るい時間から現地へ!」筆者は、講演会でも各メディアでも、そういつも訴えかけているが、なぜ明るい時間帯から行くのか?ホタルは発光することでオスとメスがコミュニケーションを図っている昆虫だ。暗くないと、お互いの光が見えない。月明りでさえも影響がある。にも関わらず、ホタル観賞にくる人々の中には、懐中電灯を持参してくる方々が多い。暗い道を歩くために使うが、心理的にどうしてもホタルの方に向けてしまいがちだ。当然、ホタルの繁殖に影響が出る。
 1つの生息場所においてホタルが飛び交う期間は3週間程度だが、毎晩が繁殖機会ではない。メスはオスよりも1週間ほど遅れて発生してくるから、繁殖の期間は2週間程度しかない。雨が降っても影響はないが、月が明るい夜や風が強い夜、気温が15℃を下回る寒い夜は活動が鈍るから、繁殖の期間は更に減って1週間くらいになる。その1週間しかない繁殖のチャンスを我々人間が懐中電灯で奪っているのである。
 懐中電灯を持たない、使わない。そのために明るい時間帯に行くのである。目が慣れて、暗くなっても良く見えるから心配ない。暗くなるまでの間は周辺を見て、ホタルがどんな環境に生息しているのか、よく観察する。写真を撮るならば、この時間帯にポジションを決め、構図等を確認しておく。そして1番最初に光る「1番ボタル」を見つけようではないか。

 今回、現地へは18時到着。日の入りは19時なので、ゲンジボタルが光るまでは1時間以上もある。周囲を散策すると、水田や隣接する水路の周辺は、奇麗に草刈りがされていた。ホタルのためには草刈りはしない方が良い。特に下草に止まるメスには必要だ。この草刈りは、鑑賞のためでもなく、農作業の一環であるから仕方がない。ただし、生息域の一部であり、谷戸の最奥の湿地周辺は草が伸び放題である。
 気温21℃。曇りで風速2m。気温は良いが、空は一面の雲に都心の灯りが反射して、かなり明るく、乾いた風が時折強く吹くので、条件的にはあまり良くない。しかしながら、19時15分。刈り取られた短い草の中で、1匹が光り始めた。しばらくすると、少し離れた藪の中でも発光。19時26分に飛翔開始となった。

 ここに生息するゲンジボタルは、東日本型のゲンジボタルであり、その生息環境も東日本型の典型と言える水田とその脇を流れる用水路、そして雑木林がセットになった谷戸である。この日は、渓流や河川ではない、こうした環境に舞うゲンジボタルの光景を写真として残すことに専念した。写真は、およそ12分相当の多重である。また、動画でも記録として撮影したのでご覧頂きたい。尚、下記掲載の成虫の写真は、過去に撮影したものである。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。また動画においては、Youtubeで表示いただき、フルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタルの光景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 12分相当の多重 ISO 200(撮影地:千葉県 2019.5.31)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 4秒 ISO 1000

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 10秒 ISO 1600

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 10秒 ISO 1600

ホタルの乱舞~里山で舞う東日本型ゲンジボタル~Japanese Firefly Light Show
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE(撮影地:千葉県 2019.5.31)

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ホタルの幼虫上陸

2019-05-01 13:48:23 | ゲンジボタル

 ホタルの幼虫上陸の観察と撮影で山梨県へ。(尚、本文で記すホタルは、ゲンジボタルのことを言う。)
 今季のホタルの幼虫上陸の観察は3回目。まず、2011年4月9日に多くの幼虫が上陸する様子を観察している千葉県へ4月10日に訪れた。この日は、1日中本降りの雨であったが、 寒気の影響で東京の青梅や奥多摩では雪。千葉県では、夜の気温が10℃を下回り、護岸で発光する幼虫もいたが、水中から上陸する個体は1頭も見られなかった。次は、4月14日に今回と同じ山梨県の生息地を訪れた。ここは2011年4月23日において、少数ではあるが上陸を観察しており、昨年は4月15日の深夜に多くの幼虫の上陸を観察している。(ゲンジボタルの幼虫上陸)本年の14日は、19時の気温は13℃。しかし雨の降り出しが17時と遅く、しかも降っても小雨であったため、19時半に1頭が発光しながら上陸を開始したものの後が続くことはなかった。
 本年4月30日は、東京では前日の夜から雨。かなりまとまった雨であった。ホタルが生息する山梨県のA地区の天気も雨で、19時までは降り続く予報。GPV気象予報でも、20時までは雨雲がかかっていた。ようやくホタルの幼虫上陸が期待できる日がやってきた。
 雨の東京を16時半に出発。途中も雨であったが、最後の一山を超えると雨は止んでおり、現地では舗装道路の路面が乾いている状況。一日の降水量は27mmであるが、午前中で雨はあがってしまったらしい。川の大きな石も水上部分は乾いている。天気予報に裏切られ、愕然としたまま暗くなるまで待機することにした。

 ホタルの幼虫上陸の時期は、日本各地の生息地によって異なり、関東地方では3月中旬頃から5月上旬頃に行われるが、時期になればいつでも上陸するわけではなく、次の条件が合致しなければ上陸しない。

  • 日長時間が12~13時間以上であること。
  • 当日の気温が水温と同等かそれ以上(10℃以上)であること。
  • 初回は、降雨時であること。

 ホタルが生息する山梨県のA地区における今年の気象状況を見てみると(グラフ1.)3月中旬以降に雨が少ない。雨量が多い日は寒気の影響で気温も低くなっている。また、降っても午前中だけ。これは、ホタルの幼虫上陸を阻害する状況である。この異常気象は、ホタルの発生に大きな影響を与えるものと思われる。

雨量と平均気温のグラフ

グラフ1.山梨県A地区の雨量と平均気温(2019年3月~4月)

 30日19時半。ホタルの生息域のごく一部で発光する幼虫を発見。10頭ばかりが上陸を開始したが、水際で発光して上陸を止める個体も数頭いた。雨が降っていれば多くの幼虫が上陸したに違いない。
 以下に掲載した当日の写真は、85分に相当する多重で、発光しながら上陸した幼虫が光の筋として写っている。また、過去に撮影した同地区での写真、千葉県での写真も参考までに掲載した。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫の写真

発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫
光跡が細く小さいものは、幼虫の這う速度が速く、太く明るいものは、這う速度が遅く同じ場所で何度も発光していたことを表している。

Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 30秒 ISO 2000 85分相当の多重(撮影地:山梨県 2019.4.30)

発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫の写真

発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 360秒 ISO 400(撮影地:山梨県 2011.4.23)

発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫の写真

発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / バルブ撮影 F2.8 560秒 ISO 400(撮影地:千葉県 2011.4.09)

発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫の写真

発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / バルブ撮影 F3.2 3秒 ISO 400(撮影地:千葉県 2011.4.09)

発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫の写真

発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / バルブ撮影 F3.2 3秒 ISO 400(撮影地:千葉県 2011.4.09)

発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫の写真

発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / バルブ撮影 F3.2 3秒 ISO 400(撮影地:千葉県 2011.4.09)

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Photos and videos of Japanese fireflies(Genji Firefly)/ゲンジボタルの写真と映像

2019-01-25 21:30:26 | ゲンジボタル

It is a Photos and video of Japanese fireflies (Genji Firefly).
Genji fireflies are indigenous to Japan.
They live in a stream of Satoyama. You can appreciate it in Tokyo.
Genji fireflies flitting around a riverside in the dusk would be typical fireflies of Japan.
First of all, please watch a beautiful firefly with Photos and video (movie).
And when you visit Japan, please experience the Japanese summer night with a firefly.

Fireflies exist on every continent except Antarctica, with approximately 2000 species worldwide, and about 9 species in the capital of Japan, Tokyo. Fireflies, with the exception of species that are active during the day, are bioluminescent organisms, which means that they produce their own light. Most bioluminescent insects glow continuously. Fireflies, however, are the only ones that flash. The color of light emitted, signal pattern, time and duration of nocturnal activity vary from species to species. In some of these species, all stages of the lifecycle glow, even the eggs.

Fireflies have made early summer a special time for the Japanese since ancient days. The Japanese word for firefly, hotaru, is generally used for two species, genji-botaru and heike-botaru. In their larva form, both species prey on small freshwater snails. Genji-botaru larvae live in clean flowing water, heike-botaru in rice fields and other places where water is stagnant. There are about 2,000 firefly species in the world, but fewer than 10 species are known to be aquatic at the larva stage. All of the others are terrestrial at both the larva and adult stages, making the genji and heike species very unusual. The Japanese archipelago has plenty of rivers, streams, wetlands and irrigated rice fields, and these provide excellent habitats for aquatic fireflies. So it is natural that, since ancient times, people in villages and towns have observed and enjoyed the little lights darting about in the night. Fireflies first appear in literature in the Man'yoshu, Japan's oldest collection of poetry (late 8th century). They appear in haiku, longer poems and essays right through to the Edo period (1603-1867). In the old days, there was a belief that the lights of fireflies represented the souls of the dead. In the Edo period, one pastime was catching fireflies while enjoying the cool evening air. Ukiyoe woodblock prints show things used to catch them, such as flat and folding fans, traps made of bamboo grass, and insect nets. This custom seems to have developed in the mid-1600s in the Seta and Ishiyama districts of Otsu (present-day Shiga Prefecture). When the light show was at its peak in early summer, hotaru-bune boats would take people on eating and drinking excursions to the best places to see them.

furukawa@tokyo-hotaru.com
http://www.tokyo-hotaru.com/
http://www.tokyo-hotaru.com/jiten/english.html

Photo of Japanese fireflies(Genji Fireflies)

Photo of Japanese fireflies(Genji Fireflies)

Japanese fireflies(Genji_Fireflies) video

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ゲンジボタルの写真と映像(動画)

2018-06-23 20:14:56 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルの写真と映像(動画)を撮影してきた。
 前の記事に記したように、6月16日は「ホタル大学」の第三回目で「里山とゲンジボタルの生息地での観察」を行ったが、ゲンジボタルの生息地では、気温が低かったことで飛翔せず葉上で数頭が発光するのみであった。そこで、一週間後に筆者一人で再度訪問したところ、気象条件が合致し多くのゲンジボタルが発光しながら飛翔する光景を観察し撮影することができた。

 ホタルの写真は、今年になってからブログに何枚か掲載しているが、飛翔風景は、いずれも過去にフィルムで撮影したものばかりなので、本記事の写真が今年初になる。当然フィルムではなく、一眼デジタル・カメラでの撮影であり、撮影方法も長時間一発露光ではなく、短時間の露光で撮影したコマを何枚も重ね合わせたものである。
 デジタル・カメラでの撮影は、フィルムの長時間一発露光と違って1秒毎のインターバルになるため、一枚の写真の中に時間の連続性がない。「写真は空間芸術であり、時間芸術である」という観点からは、このホタルの写真は「創作」に他ならない。また、ホタルの光跡も1秒という隙間が入ってしまうので、生態学的にも価値のない「創作」である。
 掲載した「ゲンジボタルの風景」は、それを弁別した上で撮影し現像したものである。一枚目は、見栄えだけを重視し、フィルムでは露出オーバーになるだろう24分間の光跡を重ね合わせた。(フィルムでも、場所によっては60分の長時間露光で適正露出になる)2枚目は、フィルムの露光時間であろう5分間の光跡を重ね合わせた。これらは、あくまで「創作」であり、これだけのホタルが一度に飛んでいる訳ではないので、誤解のないようお願いしたい。

 今回は、映像(動画)も撮影した。機材は、ビデオカメラではなく写真と同じ Canon EOS 5D Mark Ⅱと Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE の組み合わせ。デジタルカメラでも EOS 6D Mark Ⅱ や 5D Mark Ⅳ ならば、背景も綺麗に写るだろうが、筆者の機種ではこれが限界。ただし、ゲンジボタルの発光は美しく捉えていると思う。映像(動画)では集団同期明滅も分かり、生態学的にも価値がある。8分強の長い映像(動画)であるが、ご覧頂きたいと思う。

 実は、勤め先の健康診断で腫瘍マーカーの値が9.5という結果が出て、先月、専門の病院でMRI検査をすると、前立腺癌の疑い。日程をやりくりして、6月20日~21日に生検のため検査入院をしてきた。退院日は安静。翌日は血尿も止まり体調も回復傾向。また車の運転は大丈夫ということもあり、無理のない範囲で夕方から車にて小一時間で行けるゲンジボタルの生息地へと足を運んだ。
 病院での検査結果は7月9日。仮に癌が見つかっても、仕事は勿論、ホタルの研究をはじめ、様々な昆虫や自然風景の写真撮影は、変更なく行いたい。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ゲンジボタルの飛翔風景写真

ゲンジボタルの風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 640 24分多重(撮影地:東京都あきる野市 2018.6.22)

ゲンジボタルの飛翔風景写真

ゲンジボタルの風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 640 5分多重(撮影地:東京都あきる野市 2018.6.22)

ゲンジボタルの映像(動画)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE(撮影地:東京都あきる野市 2018.6.22)

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ゲンジボタルの幼虫上陸2018

2018-04-15 16:24:15 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルの幼虫上陸の観察と撮影を山梨県の生息地で行った。

 ゲンジボタルの幼虫は、水中でおよそ9ヶ月、個体によっては4年近く水中で生活し、春になると陸地の土中で蛹になるために上陸を行う。上陸の時期は、日本各地の生息地によって異なり、関東地方では3月下旬頃から5月上旬頃に行われるが、時期になればいつでも上陸するわけではなく、次の条件が合致しなければ上陸しない。

  • 日長時間が12~13時間以上であること。
  • 当日の気温が水温と同等かそれ以上であること。概ね10℃以上。
  • 初回は、降雨時であること。

 昆虫は体内時計を持っており、水中生活するゲンジボタルの幼虫の場合は日長時間によって季節を感じ取っており、上記条件を満たす時に上陸を開始する。幼虫は、数分間光り続けながら上陸するのが特徴である。

 今回訪れた場所の到着時(18時半)は、まったく雨が降っておらず、またそれ以前も降った形跡がなく、草も土も乾いていた。22時を過ぎる頃から小雨が降り出したが、発光する幼虫は無し。23時を過ぎると雨は本降りとなり、岸辺で微かに発光する幼虫が見られるようになるが、上陸は無し。午前0時を過ぎた頃から上陸する幼虫が数頭見られるようになった。気温は12.6℃。
 ただし、この生息地におけるゲンジボタルの発生数からみて、今回の上陸数がとても少ない。気象データでは、今年は、3月21日、22日にまとまった降雨があった後は、4月6日が15時頃から深夜まで降雨。次が今回の4月14日~15日の深夜になる。前回、前々回の降雨時に上陸したかどうかは分からないが、関東の他の地域では上陸が行われたという報告があることから、この生息地においても上陸していた可能性はあり、今回は上陸の終盤であったのかも知れない。
 上陸したゲンジボタルの幼虫は、草の根元や石の下等から土中に潜り込み、毎日の平均温度から8.02度を差し引いた有効積算温度が408.4度日になると蛹化し、その後、約10日で羽化し成虫になる。ちなみに昨年の気象データで計算してみると、本年の発生(飛翔)時期は以下のように予想できる。

  1. 3月21日上陸の場合は、5月31日に羽化し、6月2日頃から飛翔。
  2. 4月06日上陸の場合は、6月03日に羽化し、6月05日頃から飛翔。
  3. 4月14日上陸の場合は、6月08日に羽化し、6月10日頃から飛翔。

 おそらく6月の第2週目頃が発生のピークになると思われる。(実際は、5/24頃~6/15頃が発生期間で、6/5頃がピークでおよそ300頭が飛翔。2018年の実際の気象データと照らし合わせてみると、3月21日から上陸を開始。4月17日、18日に最も多くの幼虫が上陸したと思われる。)また今回、新たな知見を得ることができたので以下に記しておきたい。

  1. ゲンジボタルの幼虫は、上陸時期の降雨時であれば周囲が暗くなる19時過ぎから上陸を開始するが、十分な雨が降らなければ、いつまで経っても上陸しない。
  2. 本降りの雨が少なくとも1時間以上続けば、深夜からでも上陸を開始し、雨は朝から降り続いていなくても良い。
  3. 上陸する川岸は、どちらか一方であることが多いが、両岸に上陸もする。比較的暗い岸方向を選んでいたように思うが、明確に区別はできない。
  4. 水際で発光するだけで上陸しない幼虫が多数存在した。

 掲載写真は、発光しながら上陸するゲンジボタル幼虫の光跡を写したものである。午前0時19分から午前1時23分のおよそ1時間の光跡を一枚に合成した。10個体ほどの発光する幼虫が写っているのだが、数個体が小川の岸近くの石を登り、また数個体が中州を越えて2mもある護岸を登っているのが分かる。私的には、当然写真の出来には不満が残るが、観察結果として生態的な新たな知見を得たことが嬉しく満足している。写真はピンボケで駄作であるが、ゲンジボタルの生態としてご覧頂きたい。また、過去に別の地域で撮影した「発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫」のマクロ写真も参考までに掲載した。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫の写真

ゲンジボタルの幼虫上陸 Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 30秒×120カット ISO 400(撮影地:山梨県 2018.4.15 0:19~1:23)

発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫の写真

発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫 Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / バルブ撮影 F2.8 3秒 ISO 400 ストロボ使用(撮影地:千葉県 2011.4.9)

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ゲンジボタルの飛翔風景(2017)

2017-06-10 20:19:00 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルの飛翔風景を撮影してきた。2017年は、これまで訪れたことがない場所を選んだ。近隣には、いくつか観察と撮影を行っているゲンジボタルの生息地があるが、今回訪れた場所は発生数がとても多く、また「ホタルが舞う景観の美しさ」という点では、関東随一であると思う。

 初訪は6月2日。昨年は、この頃が発生のピークだったらしいが、今年は、まだオスのみ数頭の発生で、快晴の夜空に半月が明るく照っていたため、飛翔も極僅かで川岸の藪から出てこないという状況であった。
 ここ数年、ゲンジボタルの発生時期が全国的に早い傾向にあった。発生時期は、幼虫の上陸日とその後の気温によって決まるので、それぞれ地域によって差はあり、同じ地域でも、数キロ離れるだけで時期は一週間から10日ほど違う。今回の場所はどうであろうか。幼虫の上陸日とその後の気温、更にはオスが発生し始めて5日~1週間後にメスが発生してきて個体数がピークに達することから、今年は、6月10日前後が発生のピークであると計算した。
 そこで、6月9日。2回目の訪問。どの場所に多く飛翔しどの位置から撮るのが良いかは、前回にロケハン済である。広角レンズで撮りたくなる景観なのだが、どうしても人工物や邪魔な明りが入ってしまうので、ここは愛用の Carl Zeiss Planar 50mm で撮ることにした。

 ゲンジボタルの飛翔風景を撮るのに心配なのは、まずゲンジボタルが多く発生しているかどうか。通常、最初の発生から一週間もするとピークになるが、6月2日以降にまとまった雨が降っていない。雨が降らなければ、土が乾いて硬くなり、羽化した成虫が地上に出にくくなる。次は、今の気温と風。変温動物であるから気温が低ければ活動は鈍るし、風が強ければ、飛翔しない。そして一番気になるのが、月明りである。6月9日は、2017年で最も小さな満月である。最も大きな満月の時と比べて、その明るさは70%というが、一週間前の半月でさえ、自分の影が映るほどの明るさであった。オスとメスが互いの「光」で何らかのコミュニケーションを図っているホタルには、月明かりは大敵である。(街灯、車のライト、懐中電灯は、ご法度である。)
 色々と心配をしながら待っていると、19時半、ゲンジボタルの発光が始まった。気温は24度で無風。蒸し暑い。空には薄雲がかかり、満月は、まだ昇って来ない。次第に発光するゲンジボタルの数が増え始め、飛翔も始まった。何とか、多くのゲンジボタルの成虫が羽化して出てこれたようである。

 以下に、飛び始めた19時半頃から飛翔ピークの20時半頃までに撮影した3枚の写真を掲載した。次第に飛翔する数が増えているのが分かるが、いずれの写真も、デジタルの合成写真である。かつてはフィルムで撮影していたが、見栄えの良いホタルの飛翔風景写真は、デジタル合成の方が一般的に評価される。当然1秒ほどのタイムラグがあるので、連続した時間を一枚にする本来の写真の芸術性は欠けるし、ホタルの発光飛翔の様子も途切れるため、生態学的価値もない。また、合成の枚数を多くすれば、3枚目の写真のように、品を欠く程いくらでも発光の軌跡を増やすことができる。勿論、見た様子とは全く違う。実際の光景は、写真では表現できないほど感動的であることは、言うまでもない。これら写真は、撮影者が作り上げた現実とは違う世界に他ならない。かつては、デジタル合成に批判的であった筆者も、今では、割り切って、その手法で撮影している。

 最後に、ゲンジボタルの生態に関して、これまでの定説とは違うことが色々と分かってきたので、ここに幾つか記しておきたいと思う。 これは東日本型のゲンジボタルにおいてであり、また地域特性ということもあるかと思われる。全国のゲンジボタルに当てはまることではない事を承知いただきたい。

  • カワニナではなく、ミミズだけを食して成虫になる。
  • 土繭は作らないで蛹化する。
  • 産卵は、コケだけではなく、草の根元や木の皮等にも行う。
  • 幼虫は、流れのない湿地にも生息する。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、すべて1024*683 Pixelsで掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ゲンジボタルの飛翔風景写真

ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 2分相当多重 ISO 250(撮影日:2017.6.09)

ゲンジボタルの飛翔風景写真

ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 11分相当多重 ISO 320(撮影日:2017.6.09)

ゲンジボタルの飛翔風景写真

ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 30分相当多重 ISO 400(撮影日:2017.6.09)

ゲンジボタルの生息地風景

ゲンジボタルの生息地風景

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ゲンジボタル

2016-06-01 22:29:23 | ゲンジボタル

シリーズ「ホタルの写真を撮る」その4

 ゲンジボタル Luciola cruciata Motschulsky, 1854 は、ホタル科(Family Lampyridae)ホタル亜科(Subfamily Luciolinae)ホタル属(Genus Luciola Laporte, 1833 )で、日本固有種の代表的なホタルである。5月中頃から九州で発生が始まり、桜前線と同じく順に北上し、関東では、神奈川県と千葉県の一部では5月下旬頃から発生し、東京都奥多摩では7月上旬に発生する。
 このブログでは、シリーズ「ホタルの写真を撮る」ということで紹介してきたが、今回は、成虫のマクロ撮影を紹介したい。(光景は次回)以下には、作例として6点の写真を掲載した。

 ゲンジボタルのマクロ撮影でポイントになるのは、発光している様子を撮ることであるが、図鑑的には発光と体の様子を収めたい。そのためには ストロボが欠かせないが、自然発生地におぴて人工光を浴びせることは、配偶行動の妨げになるので、写真1~3では人口飼育して羽化した個体を自宅の室内でセットを組んで撮影したり、繁殖場所から離れたところで撮影している。シャッターはバルブで、絞りは開放にして、まず発光を撮影し、その後F22まで絞ってストロボを上方から発光させてシャッターを閉じる方法で撮影。最近のカメラ(レンズ)では、予め絞った値のまま撮影するしかない。その場合は、ストロボは後幕シンクロすれば良いが、発光は写りが悪いという難点がある。
 デジタルカメラのISO感度が高くても粒子の荒れない画像が得られるという利点を生かすと、自然発生地においてもストロボを使用せず撮影できる。図鑑的ではないが、自然なホタルの 写真になる。写真4~6
 ホタルの飛翔風景写真は、簡単で誰でも撮影できるが、このような発光しているマクロ写真は、ゲンジボタルの生態学的行動パターンを知っていないと撮影はできない。

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5
FUJICHROME Provia400F Professional

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5
FUJICHROME Provia400F Professional

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5
FUJICHROME Provia400F Professional

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 4秒 ISO 1000

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
バルブ撮影 F2.8 10秒 ISO 1600

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
バルブ撮影 F2.8 3秒 ISO 200

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
バルブ撮影 F2.8 3秒 ISO 200

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
バルブ撮影 F2.8 9秒 ISO 200

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
バルブ撮影 F2.8 9秒 ISO 200

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
バルブ撮影 F2.8 9秒 ISO 200

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
バルブ撮影 F2.8 9秒 ISO 200

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
バルブ撮影 F2.8 9秒 ISO 200

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ホタルの蛹と羽化

2016-04-29 21:04:20 | ゲンジボタル

シリーズ「ホタルの写真を撮る」その3

 ゲンジボタルの幼虫が、長い水中生活を終えて上陸する様子は「ホタルの幼虫上陸」(追記あり)で紹介したが、今回は、蛹化から羽化までを紹介したい。
 上陸した幼虫は、数メートルから数十メートルも歩いて土に潜る。その後、幼虫は体を回転させて土繭を作り、前蛹を経て蛹化し、羽化して成虫になる。前蛹期間は、温度で決定される。観察と実験から机上計算した結果、

発育零点8.02℃、有効積算温度408.4日度

つまり、上陸後、(毎日の温度-8.02)が408.4を越えると蛹化する計算になる。その後、蛹は、ほぼ10日で羽化し成虫になる。 単純計算では、幼虫が上陸してから50日くらいで成虫が飛び回る様子が見られる。

 ホタルの蛹と羽化の様子を自然界で観察することは不可能に近い。写真を撮影しようとするならば、必然的に撮影用のセットに幼虫を上陸させて、その後、丁寧に土を掘り起こして土繭を見つけるしかない。以下に掲載した写真は、すべて人工飼育により撮影したものである。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ホタルの土繭

ゲンジボタルの土繭
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional

ホタルの前蛹

土繭の中の前蛹
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional

ホタルの蛹

ゲンジボタルの蛹
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional

発光するホタルの蛹

発光するゲンジボタルの蛹
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional

発光するホタルの蛹

発光するゲンジボタルの蛹
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional

ホタルの蛹

ゲンジボタルの蛹
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional

ホタルの羽化

ゲンジボタルの羽化
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ホタルの羽化

ゲンジボタルの羽化
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional

ホタルの羽化

ゲンジボタルの羽化
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional

羽化したホタル

羽化したゲンジボタル
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional

羽化して地上に出てくるゲンジボタルホタル

地上に出てくるゲンジボタル
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ホタルの幼虫上陸

2016-04-13 23:04:10 | ゲンジボタル

シリーズ「ホタルの写真を撮る」その2

 ホタルは、世界に約2,500種類も生息しているが、幼虫が水中で生活するホタルは10種類しかいない。そのうち日本には、ゲンジボタル、ヘイケボタル、クメジマボタル(久米島のみに生息)の3種が生息している。10種以外のホタルは、一生を陸地で過ごす陸生のホタルである。ここでは、ゲンジボタルについて解説しておきたい。
 ゲンジボタルの幼虫は、卵から孵化した後、翌年の初夏に成虫になるものもいるが、多くは2年~4年ほどかかって成虫になる。一生のほとんどを水中で生活しているわけだが、その間カワニナ等(地域によっては様々なものを食べている)を食べて成長し、春に終齢まで成長すると、蛹になるために岸辺を上がり土に潜るのである。ゲンジボタルの幼虫は、春になればいつでも上陸するわけではなく、次の条件が合致しなければ上陸しない。

  • 日長時間が12~13時間以上であること。
  • 当日の気温が水温と同等かそれ以上であること。
  • 初回は、降雨時であること。

 ホタルをはじめ昆虫は体内時計を持っており、気温や日長時間の変化によって季節を感じ取っており、ゲンジボタルの場合は、上記条件を満たす 時に上陸を開始する。
 上陸は、周囲が暗くなる19時過ぎから始まる。水中から出た途端に発光をはじめるが、成虫のように明滅はせず、数分間、光り続ける。写真では、光が途切れ途切れに写っているが、 幼虫は腹部先端を曲げ尾脚を使って尺取虫のように這うため、腹部先端にある発光器が見え隠れするために、このように写るのである。(発光器は腹部の両脇にある。)
 西日本型の遺伝子を持つゲンジボタルは集団性が特徴の1つであるから、上陸もまとまった数の幼虫が一斉に上陸を開始する。一方、東日本型の遺伝子を持つゲンジボタルは集団性がなく、多くの幼虫が一度に上陸する行動は見せず、数週間にわたって、条件が合致する日にバラバラと上陸をする様子が観察できる。
 幼虫は、潜土に適した場所まで垂直な壁でも登って行く。場合によっては、数十メートルも歩いて行く。中州を通り越し、その先のコンクリートの護岸を登っていくこともある。また、上陸する川岸は、両岸ではなく、どちらか一方であることが多い。ただし、場所によっては両岸に上陸するが、その場合でも多くの幼虫が同じ側の岸に上陸する。その決定要因は何であるかは不明である。

 さて、ゲンジボタル幼虫の上陸光景の撮影は、基本的には「成虫の乱舞光景」の場合と同じである。フィルムの場合は長時間露光で、デジタルの場合は、30秒から60秒程度露光したカットを合成すればよいが、撮影そのものよりも、上陸時に生息地に出向くタイミングの方が難しいかもしれない。上陸の条件は同じでも、各地域や場所によって時期が異なるから、それぞれの生息地の状況をあらかじめ把握しておく必要がある。概ね、ゲンジボタルが毎年飛び始める時期の二か月前と思っていれば良いだろう。ただし、昨今の異常気象で上陸時期になっても雨が降らない場合は上陸が遅れる。上陸後の温度が高ければ例年の時期に成虫が発生するが、上陸後も温度の低い日が続く場合は、成虫の発生も遅くなる。

 ゲンジボタルの幼虫が上陸するときの光景は、成虫の乱舞とは違って神聖な趣がある。関東及び関東以北の地域は、現在~ゴールデンウイーク頃がピークであるから、是非、観察していただきたい。

注釈:本記事は、過去に撮影しそれぞれ個別に公開していた写真を、時節柄の話題として提供するために再現像し編纂したものです。また、掲載写真は、すべて同じ場所で撮影したものです。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ゲンジボタルの生息地風景

ゲンジボタルの生息地風景
Canon 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE
絞り優先AE F20 1/20秒 ISO 1600(撮影地:千葉県勝浦市 2011.3.19)

カワニナを食べるゲンジボタルの幼虫の写真

カワニナを食べるゲンジボタルの幼虫(上陸の3か月前は、昼間でもカワニナを食べて成長を促す)
Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8 1/80秒 ISO 1250(撮影地:千葉県勝浦市 2011.1.09)

カワニナを食べるゲンジボタルの幼虫の写真

カワニナを食べるゲンジボタルの幼虫(上陸の3か月前は、昼間でもカワニナを食べて成長を促す)
Canon 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE
絞り優先AE F18 1/20秒 ISO 1000 +2/3EV(撮影地:千葉県勝浦市 2011.1.09)

ゲンジボタルの幼虫の写真

ゲンジボタルの幼虫とカワニナの殻
Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F18 1/40秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:千葉県勝浦市 2011.1.09)

ゲンジボタルの幼虫の写真

ゲンジボタルの幼虫
Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F18 1/60秒 ISO 2000(撮影地:千葉県勝浦市 2011.1.09)

ゲンジボタルの幼虫(水中撮影)

ゲンジボタルの幼虫(水中撮影)
Canon 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE
絞り優先AE F20 1/20秒 ISO 2500 +2/3EV(撮影地:千葉県勝浦市 2011.3.19)

ゲンジボタルの幼虫(水中撮影)

カワニナを食べるゲンジボタルの幼虫(水中撮影)
Canon 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE
絞り優先AE F20 1/25秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:千葉県勝浦市 2011.3.19)

上陸しながら発光するゲンジボタルの幼虫

上陸しながら発光するゲンジボタルの幼虫
Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
バルブ撮影 F2.8 90秒×10カット多重 ISO 400(撮影地:千葉県勝浦市 2011.4.9)

上陸しながら発光するゲンジボタルの幼虫

上陸しながら発光するゲンジボタルの幼虫
Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
バルブ撮影 F2.8 139秒 ISO 400(撮影地:千葉県勝浦市 2011.4.9)

上陸しながら発光するゲンジボタルの幼虫

上陸しながら発光するゲンジボタルの幼虫
Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
バルブ撮影 F2.8 7秒 ISO 400 ストロボ使用(撮影地:千葉県勝浦市 2011.4.9)

上陸しながら発光するゲンジボタルの幼虫

上陸しながら発光するゲンジボタルの幼虫
Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
バルブ撮影 F2.8 3秒 ISO 400 ストロボ使用(撮影地:千葉県勝浦市 2011.4.9)

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源平合戦

2009-06-07 00:17:09 | ゲンジボタル
 この数年、毎年訪れている千葉県の房総にホタルの写真を撮りに行ってきた。昨日からの雨がなかなか止まずにやきもきしたが、17時にはすっかり止んで晴れ間も見えるようになった。昨年は、大雨と低温でホタルが飛ばす寂しい思いをしたが、今年は無風で湿度も高い。気温20℃。まずまずのホタル日よりである。

 まずは周囲を散策。水田ではタニシがゴロゴロと、かなり多い。水たまりでは、イモリとトウキョウサンショウウオの幼生が泳いでいる。そしてカエルの合唱。空気も旨い。これこそ、ホタルが自然発生する里山環境なのである。

 暗くなるまで2時間待つ。19時15分に、ようやく小川にせり出した木々の葉の中で、ゲンジボタルが光り出す。次第に発光する数が増え、19時40分に飛び出す。いつしか小川の上はかなりの数のゲンジボタルが同調しながら飛び交い、小川の横に広がる水田では、ヘイケボタルがチカチカと明滅していた。これこそが源平合戦である。

 広い里山に私と友人だけがホタルと戯れ、ホタル本来の姿に感動していた。

写真は、東京にそだつホタル

ゲンジボタルの発生状況

2007-06-28 22:47:05 | ゲンジボタル
 昨日、ゲンジボタルの観察地の1つである場所に行ってみた。6月13日頃に発生し、16日は約100匹、20日は約200匹、23日は約300匹、そして27日は約50匹の飛翔であった。この間、メスのゲンジボタルは1匹も発見できなかった。地元の方々もそうおっしゃっていた。今年のこの場所の特徴は、わずか2週間ほどの発生期間で、10日ほどで発生ピークを迎え、その後は急速に減少。前半はほとんど雨が降らず、今半になってやっと少しだけ振るという状況。気温は日中の最高気温が30度を超える日が多く、湿度も低かった。上陸の時期にも降雨日が少なかったことから、まとまって上陸したために発生時期が短かったのかも知れない。ただ、一晩中、観察していたわけではないので、何とも言えないが、メスが見つからなかったのが不思議である。
 別の河川では、16日に発生ゼロ、23日に約30匹、27日は10匹と少なくなっていた。こちらは、4年前には200~300匹の発生かあったが、翌年川沿いの電柱工事が大々的にあり、それ以後発生数が少なくなってしまった。ここ数年は、毎年20~30匹というところである。
 どちらも、別の原因も考えられる。乱獲である。前述の場所では、夜中に網をもった人がゲンジボタルを大量に採集しているのが目撃されている。メスを中心に捕られた可能性も高い。後者でも同じだ。また、どちにもカワニナも大量に捕られているようである。ある市で「ホタルの里復活」を目指す団体もそこでカワニナを採集したというから、あきれてしまう。自分のところさえホタルが飛べば、だれも管理などしていない自然発生している所は、どうなってもいいのだろうか・・・
 
 とたんに飛翔する数が減ってしまった河川で、何だかとても寂しい思いに駆られてしまった。

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