ヤエヤマヒメボタル Luciola filiformis yayeyamana Matsumura, 1918 は、ホタル科(Family Lampyridae)ホタル属(Genus Luciola)でヒメボタル Luciola parvula と同じ仲間ので、石垣島と西表島に生息するホタルである。
ヤエヤマヒメボタルは、2022年の飛翔風景を撮影しているが、今回は前回撮ることができなかった成虫のマクロ写真の撮影が主目的であった。勿論、飛翔風景も撮りたいと思い、三晩とも違う生息場所で撮影する計画を立てた。遠征初日は生憎の雨で、気温が17度と低く、また風も強かったため、2022年に撮影した生息場所を日中にロケハンしたのみで終了。
翌2日は、晴れたものの気温が18度で風も吹いていた。この日も同じ場所を訪れ、17時半から待機しカメラをセットしたが、結局、発光したヤエヤマヒメボタルは4頭で飛翔もなし。例年ならば、3月中旬には発生しており、4月上旬は多くの個体が飛翔するはずであるが、現場で居合わせたツアーガイドの方の話によれば、3月下旬頃でも発生しておらず、昨日(4/1)で3頭しか発光していなかったとのこと。どうやら寒の戻りが羽化を遅らせているようである。20時近くになって4頭ほどの発光を確認したが飛翔はせず、この日も撮影はせずに撤収した。
石垣島における2022年と今年の3月の気温(最高気温と最低気温)の変化を調べてグラフにしてみると以下になる。

グラフを見ると、例年、ヤエヤマヒメボタルの発生が始まる3月中旬に、今年は最高最低気温ともに急激に低下していることが分かる。また、下旬においても若干の低下がある。蛹化もしくは羽化までは有効積算温度が関係しているから、この気温の低下が蛹化もしくは羽化を長引かせ、発生を遅らせたことは明らかである。これはヤエヤマヒメボタルのみならず、トンボやチョウの発生も遅らせていた。
さて、遠征の3日目。観察と撮影の最後のチャンスである。ようやく気温が上がり、日中の最高気温は23度。日没時刻でも19度あった。しかも無風である。これなら羽化する個体数が増え、5頭くらいがカメラの前を飛んでくれれば絵になると期待して、再度、同じ場所のポイントに17時半から待機した。天候は晴れ。しかし心配なのは「月」である。初日ならば、それほど影響のない範囲であったが、日が経つにつれ良い時間帯に月が輝く。曇りなら良かったが、晴れたこの日の夜は、月齢4.7の三日月が木漏れ日のように林床を照らす。前回の経験で、ヤエヤマヒメボタルの飛翔コースは分かっているので、その方向に2台のカメラをセットして待った。
月がなく気温25度であった2022年は、19時15分頃からヤエヤマヒメボタルの発光が始まったが、今回の一番ボタルは19時26分。やはり気温と照度が関係しているのであろう。それでも、徐々に発光する個体が増え始め、飛翔する個体も出始めた。全部で20頭ほどが発光飛翔したが、林床すれすれでなはく、地上から1.5mから2.0m以上も高い場所を飛翔し、中には林内から林道を横切る個体も多い。林床にいるメスを探すのではく、好き勝手に高所を飛び回っているように思えた。残念ながら、カメラを向けた方向よりも上部で多く飛翔し、フレームアウトの個体が多かった。やはり月明りの影響である。
発光のリズムも2022年の時とは違っており、単に光って飛んでいるという印象。発生初期でメスがいないこと、あるいは月明りが関係しているのかもしれないが、継続観察できないので何とも言えない。それら個体も19時50分には発光飛翔を止め、林床のあちこちに止まり始める。およそ30分間の飛翔時間であることは変わりなかった。
カメラを撤収しようすると、三脚の足元付近の草むらで発光する個体が多くいた。これらは、飛翔していた個体が止まったのではなく、羽化したが飛翔せずに草むらに留まっていた個体のようであった。気温が高く、風も月明りもなければ、多くのヤエヤマヒメボタルが発光飛翔したに違いない。
今回は、主目的であったヤエヤマヒメボタルの成虫のマクロ撮影が叶った。頭部の先から上翅の先までがおよそ4mmほどしかなく、体長の小ささに驚いた。マクロレンズで拡大して撮影した写真では、その小ささが伝わらないが、頭部を引っ込めた状態では約3.5mmしかない。発光を配偶のコミュニケーションツールとしているゲンジボタルやヘイケボタル、ヒメボタルと同じように複眼が体に対して大きいのも特徴である。こんなに小さなホタルが飲まず食わずで発光飛翔するのであるから、エネルギーの消耗も激しいのだろう、発光飛翔時間が30分であることに納得がいく。風が吹いても飛ばないことにも納得できる。おそらく、成虫の寿命は3~4日であろう。
今回は、発生初期でメスのマクロ撮影は叶わず、また飛翔風景写真もヤエヤマヒメボタルらしい絵にはならなかったが、飛翔風景写真においては、この条件下での発光飛翔を捉えたものとして意味があると思っている。
今後、個体数が増えて、今年も石垣島のジャングル内を無数のヤエヤマヒメボタルが飛び交うことを祈りたいと思う。以下には、参考までに2022年に撮影した写真を、今年と同じ多重露光時間になるように再現像したもの、そして動画も併載した。
以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画は 1920×1080ピクセルのフルハイビジョンで投稿しています。設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 3200(撮影地:沖縄県石垣市 2025.4.03)

Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 3200(撮影地:沖縄県石垣市 2025.4.03)

Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 2500(撮影地:沖縄県石垣市 2025.4.03)

Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 800(撮影地:沖縄県石垣市 2025.4.03)

Canon 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 10秒 ISO 400 4分相当の多重(撮影地:沖縄県石垣市 2025.4.03)

Canon 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 20秒 ISO 400 4分相当の多重(撮影地:沖縄県石垣市 2025.4.03)

Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 5秒 ISO 400 4分相当の多重(撮影地:沖縄県石垣市 2022.3.31)
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