ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ゲンジボタルのメスの飛翔

2023-06-25 14:20:43 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルのメスの飛翔の様子を記録として写真に撮影した。

 ゲンジボタルは、生息地によっても多少の違いはあるが、概ね19時半頃になると発光しながら飛翔するが、そのすべてはオスである。メスは、川辺の草の葉の上に止まって発光している。メスを見つけたオスはメスの所に降りて行き、発光によるコミュニケーションが成立すれば交尾に至る。交尾は夜が明けても続けられ、日の当たらない葉陰などに移動し15時間前後続く。
 葉先で目立つように光るメスは未交尾のメスで、既交尾のメスはオスが飛び回る時間帯は、茂みの中で静かに光ったり、歩き回ったりしており、オスの発光飛翔時間のピークが過ぎた22時半頃になると、産卵場所を求めて川面を飛び交うが、オスのようにふわふわ飛ぶのではなく、水面すれすれの高さを一直線に光りながら飛ぶのである。
 メスは、基本的に小川の上流に向かって飛翔する。これは遡上飛翔と呼ばれている。増水などにより幼虫が下流へ流されるために、その分成虫が上流に向かうと考えられている。この行動は、ゲンジボタルだけでなくカゲロウやトビケラなどの水生昆虫に広くみられるが、下流方向に飛んでいく場合もある。そして、産卵に適した場所を見つけると、そこに止まって産卵を始めるのである。
 この行動は、2011年に千葉県において東日本型ゲンジボタルで観察しているが、今回は岐阜県郡上市の西日本型ゲンジボタルで観察し、記録として写真に収めた。

 前記事に記載したが、22時半から川沿いを歩きながら観察を開始した。まだフワフワと発光飛翔するオスもいるが、多くは草や木の葉に止まって発光している。そんな中、下流から早いスピードで上流に向かって直線的に発光飛翔する個体が出現し始めた。これがメスである。写真では、右側が上流であり、左から右の方へと飛んでいる。明らかに、それまでのオスの飛翔とは、異なっていることが写真でも分かる。
 何頭ものメスの行方を目で追うと、それぞれが何カ所かに止まり、数頭がまとまって一カ所に集まる場所もあった。おそらく産卵場所と思われるが、数十メートル先の対岸であり、産卵の詳細を観察することはできなかった。しかし、これまでゲンジボタルのメスの飛翔の様子を写真に写していなかったので、今回、証拠として残すことができたことは、大きな成果であった。
 23時半を過ぎると、飛翔する個体はほとんどいなくなり、メスが止まった場所では、明滅ではなく静かな発光が続けられていた。

 そろそろ時期的にゲンジボタルの発生は、志賀高原などを除いて終わりである。成虫の集団産卵とマクロ映像を取り損ねたことが心残りであるが、それは来年の課題とし、7月5日から三泊四日で行く沖縄(山原)遠征に備えたいと思う。その後は、東京都内と長野県においてヒメボタルの観察と撮影を予定している。東京都内のヒメボタルは、まだ最盛期における発生状況を未確認であり、長野県においては、2021年に撮影した場所とは違う初訪問の場所を選んだので、楽しみである。

 ちなみに6月26日(月)は、高知県仁淀川波川地区のヒメボタル保全に関して、国土交通省 高知河川国道事務所等とのWeb会議である。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ゲンジボタルのメスの飛翔の写真
ゲンジボタルのメスの飛翔
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 25秒 ISO 1600(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 23:20)
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和良蛍

2023-06-19 18:26:43 | ゲンジボタル

 和良蛍は、岐阜県郡上市和良町に生息するゲンジボタルのこと。昨年の6月12日に初めて訪れたが、あいにくの月明かりと発生初期であったため、発光飛翔の数が少なかった。そこで、今年も訪れ、これぞ「和良蛍」という写真と映像を撮影することができ、また深夜まで滞在してメスの産卵行動などを観察してきた。

 和良蛍を守る会の水野英俊会長より、先週に本年の発生状況をご連絡をいただき、19日前後が発生のピークであろうとの予測。迷わず私の休日である18日(日)に遠征することに決定。17日(土)は、仕事が終了次第、北陸に向かって再度ヒサマツミドリシジミを狙うつもりであったが、仕事が忙しく疲労困憊。そもそも、11日(日)にヒメボタルを撮ってからというもの、先週はPCを前にして椅子で2日寝てしまい朝を迎えている。にも関わらず北陸から岐阜への遠征では車中二泊が強いられるため、体力的なことを考えてヒサマツミドリシジミは来年に延期することにし、土曜の夜は自宅のベッドで寝ることにした。
 翌18日。天候は晴れ。予想最高気温は30℃である。自宅を9時に出発。ナビゲーションは、中央道を土岐ジャンクションまで行くのではなく、八王子ジャンクションから圏央道で東名高速、新東名高速経由を指示。走行距離が50km以上も多いのになぜか?取り敢えず指示に従い、途中の浜松SAで昼食。家康フェアーをやっており、旨辛味噌カツ丼を頂く。道は空いていたが、結局、郡上八幡ICで降りて和良町に着いたのが15時。6時間もかかってしまった。
 今回の目的は、和良蛍らしい写真と映像の撮影の他、西日本型ゲンジボタルの集団性、特にメスの集団産卵を観察することである。早速、生息地を散策し、環境を見て回る。一体、メスはどこに産卵するのか、見当が付くところをいくつかピックアップした。川には降りることができないが、のぞく限りでは、あまりカワニナがいないことに驚いた。

 この日は、晴れで無風。気温は日中は30℃だったが、夕方で25℃。月もない。まさにホタル日和である。17時から三脚とカメラをセットし待機。昨年は19時45分に一番ボタルが発光を始めたが、今年は19時40分。5分後には別の場所で二番ボタル。10分後には飛翔。20時を過ぎたころから多くのゲンジボタルが発光を始めた。
 昨年の経験から、一番多く発光が見られた場所に2台のカメラを左右に向けてセットしたが、どちらでも、これまで見たことがない光景が広がった。川岸から背後の林の上まで無数のゲンジボタルが発光する。しかも堰があるため川の流れが穏やかで、ホタルの光が川面に映るから、光の数が2倍になるのである。川面に映る様子は、かつで高知県宿毛市で撮っているが、郡上の和良蛍の光景は、それを上回る。オスたちの同期明滅する光で山が動いているようにもみえる。このロケーションは、ここならではである。
 発生しているゲンジボタルの数は、とても数えることはできないが、目の前だけで数百頭はいるだろう。500mほどの散策路全体では数千頭はいるのではないだろうか。このロケーションは、ゲンジボタルが毎年一定数を保って発生するのに大切な役割を果たしている。堰は、大雨が降った時には濁流になるのを防ぎ、また渇水にもならない。また護岸の石組みは、幼虫の格好の隠れ場所になっているのである。
 昨日の土曜日は、鑑賞者がとても多く、散策路が渋滞したそうだが、さすが日曜日とあって、鑑賞者は20人ほど。カメラマンも数人しかいない。残念なことに、数人がスマホの明かりを向けたりしていたが、それよりも街道を車が通るたびにライトが当たるのである。しかも、地元の車ではなく鑑賞者の車なのである。ライトが当たるたびに発光を止めてしまう。やはり、ヘッドライトを付けなくてもよい、明るい時間に来てほしい。この問題の対策には、大きな看板を設置するなどして遮光するなどの工夫が今後必要であろう。

 21時になり、発光活動も終わりかと思いきや、一向に収まる気配がない。そこで、場所をそれまでとは違った風景である川下へ移動してみた。そこでは、フィルムカメラと同じ撮影方法である長時間露光で何カットも撮影し、22時半からは、和良蛍を守る会の水野英俊会長とともに、メスの飛翔や産卵場所を観察することにした。
 その時間になっても、発光するオスは相変わらず多い。20時台の1/3程度ではあるが、こんな光景を見るのも初めてである。その中を、水面上を一直線に発光飛翔する個体が何頭もいる。メスである。そのほとんどが上流に向かって飛んでいく。そして対岸の水際に止まって発光すると、何頭かが、そこに引き寄せられるように飛んでいく。残念ながら対岸までは行くことができないため、その様子は遠くから見ただけであるが、おそらく産卵場所なのであろう。23時半頃になると、発光数もかなり少なくなり、飛翔するメスも見られなくなった。

 駐車場に戻り、帰り支度をしていると、生息域から遠くであるにも関わらず、2頭のゲンジボタルが私の所に飛んできた。きっと見送りの挨拶に来てくれたのだろう。また、スーと生息域の方へ戻っていった。現地を翌19日(月)午前0時に出発し、帰路は中央道を選んだ。途中、駒ケ岳SAで2時間の仮眠を取り、6時に帰宅した。和良蛍を守る会の水野英俊会長より、今年の11月にホタルの勉強会の講師を依頼されたので、秋に再訪の予定である。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 15秒×30カット ISO 4000(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 21:00)
和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 13秒×35カット ISO 1600(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 21:00)
和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 63秒 ISO 1000(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 21:38)
和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 16秒 ISO 1000(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 21:48)
和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 25秒 ISO 1600(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 22:00)
和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 25秒×7カット ISO 1600(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 22:10)
和良蛍(再生時は、設定からHDお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
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杜に舞うヒメボタル

2023-06-12 21:14:25 | ヒメボタル

 杜に舞うヒメボタルを観察し撮影してきた。

 杜に舞うヒメボタルは、日本各地で見ることができ、関東周辺では静岡県御殿場市の二岡神社(未訪問)が有名であるが、今回の撮影場所は違う所である。
 撮影した地域は、ヒメボタルの分布的に貴重な地域であり、2010年からヒメボタルの観察と撮影に行っている。しかしながら、写真には、いつも1~2頭が飛んでいる様子しか収められていなかった。古くからの親友の調査では、この地域ではかなり広範囲にヒメボタルが生息していると聞いており、また、知人は昨年にこの地域内のある場所でヒメボタルが乱舞しており、写真に収めたとの連絡を頂いていた。それが杜に舞うヒメボタルであり、そこで今年は、その場所に行ってみることにした。
 10日土曜日は仕事の為、翌11日、小雨降る自宅を午後12時に出発。現地には14時過ぎに到着した。これまで観察をしてきた場所の近くであり、やはり広範囲に生息している証拠である。その場所は、神社の参道であり、常緑照葉樹が多い地域にも関わらず、鳥居をくぐると両脇は杉林になっている。その杜にヒメボタルが舞うのである。
 この地域のヒメボタルは深夜型で、23時からが活発に活動する。しかし到着時刻は14時過ぎ。周辺の環境を入念に調査し、16時に撮影のための三脚をセットし、後は待機である。19時からはカメラもセットし、その場で待機して活動の様子を伺った。気温23℃で無風。曇りで、時々日が差す天気で、将にホタル日和である。
 徐々に日が暮れ、19時45分。1頭のヒメボタルが下草で発光を始めた。規則的は明滅はしない。20時になると発光飛翔する個体も現れた。V字谷という物理的環境なのだろうか?長く光りながら、不思議なことに地上10mの高さまで舞い上がっていく個体が多い。また、あちらこちらで数頭が発光をしているが、発光は長くは続かない。準備運動なのだろうか?21時を過ぎても、あちらこちらで数頭が時々光るだけで、、一向に発光数は増えない。
 この場所は、人口の明かりは一切ない杜である。一種独特の緊張感を感じる。しかも私一人であり、若干の恐怖を感じながらの待機であったが、22時頃にカメラマン一人がやってきた。独占ではなくなったが、こんな環境では心強い。話を聞くと、昨日はとてもヒメボタルもカメラマンも多く、ヒメボタルは22時過ぎで、かなり乱舞していたという。今日は、昨日よりも気象条件は良いが、なかなか発光飛翔の数が増えない。
 時刻は23時。やはり体内時計があるのだろう、ようやく発光飛翔するヒメボタルが植えてきた。これまでは、参道両脇の杉林の中を飛んでいた個体も、参道に出てくるようになった。参道の隅では、メスのヒメボタルが独特な発光をしているが、参道は谷の傾斜の部にあり、オスは高い所を飛翔して一向に気づく様子はなかった。
 この夜、見渡せる範囲で50頭以上が発光していたが、居合わせたカメラマンの話では、昨日の方が発光飛翔する数が多いようであった。メスも発生していることから、発生のピークは昨日今日あたりではないかと思われる。

 今回撮影した場所は、鳥居もあって写真映えがし、更にはこの地域で唯一まとまったヒメボタルの写真が撮れる場所であろう。しかし、都道府県が発行するレッドリスト(2019年改訂版)では、最重要保護生物(特に留意が必要な種)として記載されている。埼玉県のヒメボタル生息地のように、足元にいるヒメボタルを踏みつけても何とも思わない、単にインスタ映えする写真を撮りたいというだけのカメラマンが押し寄せることを防ぎ、ヒメボタルと自然環境を保全する観点から、今回は撮影場所を都道府県名さえも記載しないことにした。貴重な記録として、以下には、横構図の写真2点、飛翔の様子が分かるものと見栄え重視のものと、同じ位置から撮影した縦構図の写真、そしてフルハイビジョンの映像を掲載した。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 10秒×27 ISO 1600~3200(2023.6.11)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 10秒×110 ISO 1600~3200(2023.6.11 22:05~23:53)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM(焦点距離26mm) / マニュアル露出 F2.8 15秒×56 ISO 2500~3200(2023.6.11 21:46~23:47)
杜に舞うヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE
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スジグロボタル(映像)

2023-06-07 18:55:35 | その他ホタル

 スジグロボタル Pristolycus sagulatus sagulatus Gorham, 1883 は、ホタル科(Family Lampyridae)スジグロボタル属(Genus Pristolycus)のホタルで、北海道、本州、九州に分布し、近畿亜種と奄美亜種がある。四国には、同属のシコクスジグロボタル Pristolycus shikokensis Ohbayashi et M. Sat , 1963 が分布している。
 体長は7mm~9mmで、ヘイケボタルを一回り大きくしたくらいのの大きさである。ホタルではないベニボタルに似るが、卵・幼虫・蛹・成虫ともに発光するホタルの仲間である。ただし、成虫は昼行性なのでほとんど発光しない。谷戸の最上部の樹林に囲まれた冷たい湧水が流れ込む薄暗い湿地等に生息し、幼虫はカワニナ等の巻貝や湿地に生息する多様な生物を食べる時だけ水中に入る半水生のホタルである。今回は、久しぶりに生息地を訪れ、未撮影であった映像を収めてきた。

 3日の土曜日は、日本ホタルの会の観察会があり、終了後に久しぶりに会った親友と食事をしたので帰宅は23時近く。翌4日は、三鷹市でのホタルの講演会と観察会であり、ホタルの映像の編集などで深夜までかかってしまった。このところ、平日の仕事の疲れで休日の朝は、なかなか起きられず、特にこうしたイベントが続くと体力的に辛い。一度撮影した被写体であると「また、同じような絵を撮ってもつまらない」と、起きる時に葛藤があり、結果、出掛けるのを止めてしまうことが多いのだが、今回は、スジグロボタルの映像を残しておきたいという気持ちの方が勝ったようで、朝5時に目が覚めた。
 5時半に自宅を出発し、現地に6時過ぎに到着。長靴に履き替えて、早速、谷戸の奥の湿地へ踏み込んだ。密生している草の葉上を丁寧に見て回ると、スジグロボタルを発見。あちこちに7頭ほど見つけることができ、映像を撮影することができた。5年ぶりの訪問だが、環境に大きな変化はなく、無事に生息していることを確認できたことも嬉しい。
 この湿地には、アカシジミ、ウラナミアカシジミ、ミドリシジミが多く生息し、トンボではサラサヤンマを見ることができる。今年は、多くの場所で発生が早く、当地においても平地性ゼフィルスは終盤なのかもしれない。この日は、ウラナミアカシジミが1頭と帰りがけにミドリシジミのメス1頭を見ただけであった。尚、ミドリシジミのメスの翅には遺伝的多型があって4つの型に分けられるが、今回は識別しずらい中間型OA型だろう。
 参考までに、過去にこの場所で撮影したオスのミドリシジミの写真も掲載した。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

スジグロボタルの写真
スジグロボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/80秒 ISO 3200(撮影地:埼玉県 2023.6.05 7:02)
スジグロボタル(再生時は、設定からHDお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
ミドリシジミ(メス)の写真
ミドリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 1000(撮影地:埼玉県 2023.6.05 8:00)
ミドリシジミ(オス)の写真
ミドリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 -1/3EV ISO 1250(撮影地:埼玉県 2018.6.02 10:37)
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三鷹市大沢のホタル

2023-06-05 14:41:50 | ゲンジボタル

国分寺崖線(ハケ)の湧水に生きるホタル

 三鷹市大沢のホタルについて、講演会と観察会および写真撮影を行ってきた。

 東京都三鷹市市スポーツと文化部生涯学習課(共催:ほたるの里・三鷹村)の依頼により、6月4日三鷹市教育センターにて「ほたるの一生-大沢ほたるの生態を知る-」と題して 講演会を行い、終了後に大沢の里(ほたるの里)に移動してホタルの現状を観察し撮影を行ってきた。講演会は、定員70名で満員御礼。市内はもちらん、市外からも大勢おこし下さり、2時間の講演は無事に終了。 大多数は年配の方々であったが、お子さんも4名ほどおり、最後まで私の話を聞いてくれたのが、何より嬉しい。

 さて、先週は自然発生している「野川のホタル」を観察し撮影したが、今回、講演会の終了後に訪れた三鷹市大沢のホタルは、前回の撮影場所(小金井市)からおよそ800mほど野川を下った場所で、住所は三鷹市大沢の大沢の里(ほたるの里)である。国分寺崖線と野川、水田、湧水が保全され、三鷹のかつての農村風景が見られる公園として整備されている。
 公園化される以前は、昭和40年頃までホタルが沢山飛翔していたそうだが、野川の水路を固定し、水田や水路が埋め立てられ市街地化が進む同時に、湧水が減り、ホタルの数も少なくなったそうである。 そこで、昭和60年頃に、現在の公園部分の市街地化を止め、公園として残すための機運が高まり、同時にホタルを保全する取り組みが始まったとのことである。水田の管理やホタル生育のための環境整備は、地元のボランティア団体「ほたるの里・三鷹村」が昭和63年(1988年)から行っている。
 大沢の里の大きな特徴は「ハケ」と呼ばれる環境になっていることである。JR中央線の南側を流れる野川の北側には、高低差が15~20mの崖ないしは急な斜面が東西に走っている。この崖は、多摩川が10万年以上の歳月をかけて武蔵野台地を削り取ってできた河岸段丘で、斜面地が東京都の立川市から世田谷区までおよそ30kmも続いており、国分寺崖線と呼ばれている。この国分寺崖線を武蔵野地方の方言で「ハケ」と言う。
 ハケの周辺には、里山の雑木林として利用されてきたコナラ、クヌギ、イヌシデ等の落葉広葉樹が中心の雑木林があり、武蔵野の面影を残している。また斜面から染み出す湧き水による小さな水路や湧水池などがあり、豊かな自然環境が残されており、ホタルも生息しているのである。「ハケ」という環境に生息するホタル(ゲンジボタル)は、とても貴重である。
 三鷹市大沢のホタルでは、ホタルの他に貴重なものがある。江戸時代後期から三鷹市大沢地区で栽培され、現在、江戸東京野菜にも登録されている「三鷹大沢わさび」である。 「三鷹大沢わさび」は約200年前の文政2(1819)年、大沢地区の国分寺崖線の豊かな湧水に着目した伊勢出身の箕輪(小林)政右衛門が、故郷の五十鈴川流域から持ち込んで栽培を始めたと伝えられている。
 「三鷹大沢わさび」は、国内にほとんど残っていない在来種(幻のワサビ)であることがワサビ研究の第一人者で岐阜大学の山根京子准教授の分析で判明している。DNA鑑定の結果、岐阜県山県市の山間部で自生している野生種と一致しており「岐阜県西南部がルーツで、伊勢神宮周辺に持ち込まれ、さらにそれが三鷹に持ち込まれた」と推測している。その原種が、大沢の里(ほたるの里)のワサビ田に生き残っており、その上をホタルが舞うのである。

 講演会が終了したのち、早速、大沢の里周辺を散策。古民家(かつての箕輪家)の隣に「三鷹大沢わさび」のワサビ田がある。ワサビ田の手前は湿地になっており、ブライダルブーケに使われるサトイモ科のカラーの白い花(正確には、ミズバショウと同じ葉が変形した仏炎苞)が目立つ。同じく白い看板や百葉箱、木の構造物などがあり、更には柵越しに遠くから眺めるため、ホタルが飛んでも写真的には絵にならない。しかし、貴重な光景は、是非とも残しておきたい。そこで、現場では映像のみを撮影することにした。(ゲンジボタルのマクロ写真は、別の東京都内で撮影したものである。)
 気温24℃、晴れで無風。満月であるが、昇ってくるのは20時近くで、ワサビ田の背後は国分寺崖線と林があるため、月明かりの心配はいらない。18時半過ぎからカメラをセットし待機。19時頃になると、地元の家族ずれが増えてきた。ワサビ田を覗ける範囲が10mほどしかないため、人々が列をなす。お子さんたちが多く、活発に動き回る。19時半を過ぎてホタルが発光飛翔を始めると、皆、歓声を上げていた。
 小さなお子さんも、安心してホタルの観賞ができる場所であり、三鷹市でホタルが飛ぶという素晴らしい環境であるが、この時は、広げた三脚にドンドンとぶつかってくるので、撮影は行ったものの良い映像にはならなかった。また、生息しているホタル(ゲンジボタル)は、東日本型であることを期待したが、発光を見る限り、残念だが西日本型であった。野川のホタルが、中部地方から移入したとのことであるから、こちらも西日本から移入したと思われる。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

三鷹まるごと博物館講座パンフレット
三鷹まるごと博物館講座パンフレット(ほたるの一生)
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
三鷹市大沢のホタル -国分寺崖線(ハケ)の湧水に生きるホタル-(再生時は、設定からHDお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
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