ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態や生息環境を48年研究し保全活動をしていますが、趣味で撮影した昆虫や
美しい自然風景写真も掲載しています。

ゲンジボタル(8月)

2020-08-09 18:17:47 | ホタル

~志賀高原のゲンジボタル~

 志賀高原のゲンジボタルを観察し撮影を行ってきた。

 「ホタル」といえば、昔は個人的に8月と言う印象である。48年前に行っていたヘイケボタルの飼育観察では、ヘイケボタルは8月の今頃が旬であったからだ。今では7月上旬~中旬頃がピークであるように思う。ゲンジボタルにおいては7月になってから観察したものだが、今では九州や四国などでは5月中旬から見られ、青森の最北でも7月上旬が発生のピークである。いずれも発生している期間は2~3週間程度だ。それなのに8月に「ゲンジボタル?」と思うだろうが、標高およそ1,600mに生息する志賀高原のゲンジボタルは、今でも見ることが出来るのである。
 志賀高原のゲンジボタルは、7月下旬から8月上旬を発生のピークとしながらも、気温が5℃しかない5月から発生が始まり、氷点下の気温で雪が舞い始める10月になっても出現する。2008年年3月にはその特性が認められ、志賀高原<石の湯のゲンジボタル>は国の史跡名勝天然記念物に指定されている。
 石の湯周辺は約25万年前に活動した志賀火山の溶岩が川(角間川)をせき止めてできた湖の中心に当たる。このせき止め湖には厚さ50mほどの土砂が堆積。その後、角間川の浸食がすすみ湖は干上がり湖底が顔を出す。角間川に流れ込む岩倉沢川の水は、志賀山の西部山地にしみこんだ雨水や雪解け水が岩倉沢川に湧きだしたものであるが、岩倉沢川沿いの3箇所では温泉水が流入し、河川水の水温を高めている。その岩倉沢川に生息する<石の湯のゲンジボタル>は湧出する温泉水に依存し、生息地の標高が1,580m~1,620mと日本で一番高いこと、ホタルの発生期間が長いこと、成虫の寿命が長いこと、明滅周期が長いなど他の生息地にない多くの特徴があるのである。ちなみに、2番目に標高が高い生息地は、文献上840m(山梨県)である。

 志賀高原のゲンジボタルは、2010年7月31日に訪れ撮影しているが、今回10年ぶりに訪れてみた。国の天然記念物に指定されている<石の湯のゲンジボタル>は、観賞だけなら自由にできるが、写真撮影にはかなり厳しいルールがある。志賀高原自然保護センターのサイトによれば、写真撮影可能期間は、2020年8月1日(土) ~ 8月30日(日)で、写真撮影可能時間は、20時半以降に限られる。知人のカメラマン・西川祐介氏が1999年に通称「ホタル橋」からフィルムで15分の長時間露光によって撮影した写真があるが、20時半からデジタルで背景の生息環境も同時に美しく写しこむのは難しいだろう。

 今回も10年前同様に「石の湯」ではない場所にて観察し撮影を行った。標高は1,617m。渓流には温泉が流れ込んでおり、環境とゲンジボタルの生態特性は石の湯と変わりない。10年前も数は少ないもののゲンジボタルの飛翔が観察できたこと、石の湯周辺では、8月5日時点で176頭の飛翔が石の湯ロッジのスタッフによって観測されていることから、当地でも少なからず見られるだろうとの予測で出かけた。
 自宅を11時半に出発。圏央道青梅ICから乗り、途中上信越道の東部湯の丸SAで食事をし、信州中野ICで降りて一路志賀高原へ。三連休初日であるが、出発が遅かったためか渋滞はなし。志賀高原もほとんど人影すらない状況。現地には16時半到着。10年前に撮影した場所は草木が茂り、また街灯ができたために別のポイントを探すが、なかなか絵になる場所がない。小一時間ほど散策してポイントを決め待機した。その場所にゲンジボタルが飛ぶかどうかは分からないが、ホタルの生態と生息環境を48年見てきた勘である。標高1,617mを流れる川にも関わらず、中流域と同じような腐食的な匂いがし、石には珪藻類が繁殖していた。水生昆虫も多く生息しているが、カワニナの存在は確認できなかった。
 19時。気温21℃。曇りで微風。目の前を大きなヤンマが通り過ぎた。川面を飛ぶ小さな虫を捉えての摂食行動の様だ。ただ、暗くてヤンマの種類が分からない。高標高の場所からオオルリボシヤンマかと思われるが、30分近く、かなり暗くなるまで飛び回っていた。
 19時半。誰も来ない川岸。ゲンジボタルは光らない。場所が悪いのか?天候の影響か?熊の出現を心配しながら、後10分待って光らなかったら撤収しようと諦めかけた時、遠くで発光を確認。しばらくすると飛翔し始めた。やはり数は少なく300mの範囲で発光数は10頭。その内4頭がカメラのフレーム内を飛んでくれた。飛翔スピードはゆっくりで直線的であった。明滅周期は、個体数が少なく同期明滅が見られなかったので分からないが、DNAの判定では、長野県に生息するゲンジボタルのDNAパターン3種のうちの1つで、西日本型でも東日本型でもないフォッサマグナ型(3.3秒)という地域固有種とされている。
 数は問題ではない。標高1,600mを超える高地にて8月に舞うゲンジボタルを再びこの目で確認し、観察できたことが重要である。証拠となる写真も、良い結果が残せたと思う。

 今年は、いつもと違う夏である。新型コロナウイルスの感染が再び拡大しているに他ならないが、コロナ渦と長梅雨によって、今年は4月以降、8割近くの予定をキャンセルせざるを得なかった。ゲンジボタルに関しては120%の達成率であるが、ヒメボタルは50%、他の昆虫類、特にチョウ類の 撮影目標達成率は0%である。この三連休初日も、知人とここ4年毎年挑戦している高山蝶の撮影で、今年は木曽駒ケ岳へ行くことにしていたが、仕方なく断念。単独で志賀高原のゲンジボタルだけ行ってきたのである。今後も新型コロナウイルスの感染拡大防止に留意しつつ、個人的目標を達成できるよう進めていきたいと思う。
 以下には、今回撮影した写真と10年前に撮影した合成無しの一発露光の写真も掲載した。尚、ゲンジボタルの成虫のマクロ写真は、以前に志賀高原ではない別の場所で撮影したものをイメージとして掲載した。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ゲンジボタル(志賀高原)の写真

ゲンジボタル(志賀高原)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 230秒相当の多重 ISO 400(撮影地:長野県下高井郡山ノ内町 / 標高1,617m 2020.8.08)

ゲンジボタル(志賀高原)の写真

ゲンジボタル(志賀高原)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 162秒 ISO 400 合成なし(撮影地:長野県下高井郡山ノ内町 / 標高1,634m 2010.7.31)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル

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森の妖精 ヒメボタル

2020-07-25 13:44:40 | ホタル

 森の妖精 ヒメボタルの写真と映像を撮影してきたので紹介したい。

 ヒメボタルは、本州・四国・九州に分布し一生を陸地で生活する陸生のホタルである。20年ほど前までは「森の妖精」あるいは「森のホタル」と呼ばれてきたが、実際は、標高およそ150m~1,700mの雑木林、竹林、杉林、桑畑、河川敷、お堀など様々な環境に生息しており、2010年に桑畑や隣接する開けた草地を発光しながら飛翔する光景を見た時は驚いたものである。まだ謎の多い生態に興味を惹かれるのは勿論なのだが、どのような環境においても、ゲンジボタルやヘイケボタルとはまったく異なるヒメボタルの0.7~1秒間隔のフラッシュ発光が生み出す幻想的な光景は心を惹きつけて止まない。
 これまで様々な場所で生態と生息環境を調査し、多くの知見を得てきた。また多くの生息地において撮影をし、写真という記録を残してきたが、今回は「森の妖精」と言われてきたヒメボタルに相応しい光景を映像として残すことを目的として、自宅から直線で100km県内のヒメボタル生息地では一番発生の遅い某所を訪れた。

 「森」と言えば、ジブリ作品の「もののけ姫」に描かれた森をイメージする方が多いだろう。平地では里山に見る「雑木林」が多いが、寒い地域や標高の高い山地等では「森林」となる。その森林の代表的なものが「ブナの原生林」である。ブナを中心に様々な落葉樹が太古から生育している天然林であり、生物多様性や土壌の発達を支える重要な役割を果たしているが、古来の姿、いわゆる原生林を保っている場所は多くはない。
 「もののけ姫」の森は、屋久島と白神山地の「ブナの原生林」がモデルになっているが、2006年から2018年にかけて訪ねた岩手県二戸市の折爪岳にもブナの原生林があり、豊かな森林に住む精霊“木魂(こだま)”が切株の上に見えるような森である。その折爪岳では「森の妖精 ヒメボタル」の写真と映像を収めており、ブログ記事「ヒメボタル(岩手県折爪岳)」に掲載している。今回は、別の苔むしたブナの巨木が佇む原生林において撮影した森の妖精 ヒメボタルを紹介したい。

 この生息地を始めて訪れたのは、2011年の7月。当時は、撮影者は勿論、観察者も他に誰一人といなかった。当地のヒメボタルは深夜型で、22時を過ぎたころから少しずつ光り始め、本格的に乱舞するのは23時を回ってからであるため、一人での観察には、かなりの勇気が必要であった。親友とも何度か訪れ撮影をしたが、写真としては駄作ばかりで、その後もなかなか上手く撮れず、昨年にようやく「それらしい」写真を残せたが、まだ納得がいかなかった。
 現地には17時に到着。先客がすでに2名。テレビで紹介されたことや口コミで情報が広がり、この5年で撮影者や観賞者が多く来るようになり、車が20台以上も並んでいる時もある。ヒメボタルが飛び始めてから来る方もいるが、私は、どの場所でもそうだが、生息環境が分かる写真を写すことを目的としているため、日の入り前に現地入りする。特に、車で現地近くまで行く場合は、光害の影響をなくすためにも明るい時間に行くことは、ホタル撮影、ホタル観賞の鉄則である。しかし、薄暮型と違って6時間近く待機しなければならない。と言っても、チョウでもトンボでも遠方の撮影地であれば前日入りするし、自然風景写真の撮影で、ポイントの前で14時間も待機したことがあるので、良いものを残すためには当たり前の行動である。
 当地へは何回も通っているので、ブナの森のどの辺りをどのように発光飛翔するのかは分かっている。明るいうちに三脚とカメラをセットして、後は車内で待機である。念のため22時半に目覚ましをセットし、車内でテレビを見ていたら、いつの間にか爆睡。たまたま当ブログをご覧頂いている方が現地にいらして、私に気が付き、22時20分頃「飛んでいますよ!」と声を掛けて頂き目が覚めた。
 22時43分。遊歩道から森の中へ入っていき撮影開始。気温21℃で無風。漆黒の森の中で、あちこちで黄金の光が音もなく点滅している。時間が経つにつれ光の数が増えていく。地面ではメスが発光しており、発生のピークであると思われる。午前1時過ぎまで乱舞は続くが、単に同じようなカットを撮り続ける必要もないため、0時31分に最後のカットを撮影し撤収。帰路に就いた。
 午前2時半に帰宅。眼が冴えて寝ようにも寝られないのでPCを起動させ、早速RAW現像開始。2枚の写真を仕上げたらお昼。午後から動画を編集し、終わったら夜であった。勿論、睡魔と戦いながら、途中何回も眠りこけている。

 私は、プロの写真家ではないし、カメラマンと呼ばれるのも好きではない。ホタルの研究家として、写真はその生態と生息環境の記録を残しているが、いい加減なものは残したくない。当然、苦労と経験の積み重ねの上に理念とセンス加えて初めて結果となる。まだまだ勉強が足りないが、今回は、カメラ2台で2方向の光景を撮影した。EOS 7D は写真のみを EOS 5D Mark Ⅱでは動画も記録し、写真は重ねる枚数を変えた3枚を掲載した。
 1枚目は、森の妖精 ヒメボタルの生息するブナの原生林を写した写真である。森そのものの美しさをご理解頂けると思う。2枚目は、そこに乱舞するヒメボタルである。23mmの広角レンズで撮っているので光の点が小さくなっている。
 3枚目は、90秒の露光時間に相当する写真である。昨今、掲載した「ヒメボタル(東京2020)」の写真と同じように「ヒメボタルの発光飛翔の生態写真」である。1頭1頭が、どのような環境をどのようなルートで飛翔しているのかが分かる。メスを探して地上をくまなく飛翔しているのである。また、飛ぶ速度と発光の点滅の間隔が一定であることも分かり、これが「森の妖精 ヒメボタルだ」と言えるものだと思っている。
 ここで同日に撮影していた十数人のカメラマンは、おそらくこれと同じ写真にはしないだろう。ヒメボタルは、見ての通り、その発光の様子から写真では光の点となり、それが幾重も重なったいわゆる「インスタ映え」する写真は、見る人を魅了する。以下に掲載した写真1及び4と5は、25分や18分という露光時間に相当するカットである。生態学的には飛翔範囲が分かる程度の価値しかないが、美の表現方法の1つである創作写真としてご覧いただきたい。
 生態写真でも創作写真でも、ホタルの発光飛翔の写真は、肉眼で見た光景とはまったく違う。写真とはそう言うものである。そこで、なるべく見た目に近い光景も残したいと思い、数年前から動画も記録し、編集した映像を公開している。漆黒の森ではなく、背景(環境)が分かるように明るくしてはいるが、ヒメボタルの発光飛翔そのものである。映像の中には、地面で発光するメスと、その近くで発光するオスの様子も収められている。Youtubeは、是非ともチャンネル登録をお願いしたい。

 昨今、ホタルは勿論、チョウやトンボでも撮影現場で「もしかして古河さんですか?」とお声を掛けて頂くことが多い。情報交換もさせて頂き、喜ばしい限りである。

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ブナの原生林の写真

森の妖精 ヒメボタルが生息するブナの原生林
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F18 焦点距離 23.0mm 8秒 ISO 100(撮影日:2020.7.23)

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 焦点距離 23.0mm 25分露光相当の多重 ISO 1600(撮影日:2020.7.23)

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 1分30秒露光相当の多重 ISO 1600(撮影日:2020.7.23)

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 18分露光相当の多重 ISO 1600(撮影日:2020.7.23)

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 18分露光相当の多重 ISO 1600(撮影日:2020.7.23)

森の妖精 ヒメボタル

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光らないホタルたち

2020-07-18 18:41:41 | ホタル

 ホタルは、世界でおよそ2,700種類、日本には49種類が生息している。発光器を持ち、卵、幼虫、蛹、成虫と一生を通じて光るから「ホタル」なのであるが、中には、 成虫になるとほとんど発光しない種も存在する。同属の中でも成虫が発光する種としない種がいるから面白い。これらの特徴は、複眼が小さく触覚が発達しており、主に昼間に活動する。光を雌雄のコミュニケーションツールとしては利用せずに、メスが発するフェロモンを感知することで繁殖を行っているのである。
 東京都内には、9種類のホタルが生息しているが、成虫がピカピカと盛んに発光するのは、何と3種類だけである。ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタルである。その他の6種類のホタルは、 「光らないホタルたち」である。本ブログでは写真だけの紹介とし、各々の詳細な生態や生息環境等の記載は省略するが、どの種も発光器はあり、まったく光らない訳ではない。特にクロマドボタルでは、夜に活動し発光することもある。また、沖縄等に生息するマドボタル属の成虫は、全て夜行性でよく発光する。

オバボタルの前胸背板の赤斑の変異について

 表題とは違う話になるが、オバボタルにおいては、前胸背板の赤斑に地域差や個体差が見られるので紹介しておきたい。特に、皆川 みちる 氏から提供頂いた新潟県のオバボタル (写真8~9)は、赤斑が小さく別種かと思う程であるし、赤斑ではなく黄斑の個体も存在する。

参照

  1. 日本産ホタルリスト
  2. 陸生ホタルの生態と生息環境

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ムネクリイロボタルの写真

ムネクリイロボタル Cyphonocerus ruficollis Kiesenwetter, 1879

クロマドボタルの写真

クロマドボタル Pyrocoelia fumosa (Gorham, 1883)

カタモンミナミボタルの写真

カタモンミナミボタル Drilaster axillaris Kiesenwetter, 1879

スジグロボタルの写真

スジグロボタル Pristolycus sagulatus sagulatus Gorham, 1883

オオオバボタルの写真

オオオバボタル Lucidina accensa Gorham, 1883

オバボタルの写真

オバボタル Lucidina biplagiata (Motschulsky, 1866)

オバボタルの写真

オバボタル Lucidina biplagiata (Motschulsky, 1866)

オバボタルの写真

オバボタル (皆川 みちる 氏提供)

オバボタルの写真

オバボタル (皆川 みちる 氏提供)

オバボタルの写真

オバボタル (黄斑型)

光らないホタルたち ~クロマドボタルとオバボタル~

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ヒメボタル(東京2020)

2020-07-12 18:45:12 | ホタル

 ヒメボタルは、東京都内にも生息している。東京には、自身のこれまでの調査・観察で、かなり広範囲にヒメボタルが分布していることが分かっているが、いずれも人里離れた山奥であり、観賞者や撮影者もほとんどいない。今年訪れた場所は、2004年に私が生まれて初めてヒメボタルを見た場所であり、2009年に撮影した私の写真(写真3)が、おそらく初めて「東京都内のヒメボタル」を記録したものであろう。
 この場所は、国道から沢沿いのすれ違いのできない細い道を5Kmほど進み、さらに悪路な林道を3Km弱登った所である。2004年から観察と撮影で通い始めた。2004年は、雨が降っておりヒメボタルも数匹しか飛んでいなかったが、2005年は、数え切れないほどのヒメボタルが乱舞していた。しかしながら、撮影技術が確立しておらず、まったく写らなかった。2006年に訪れた時は、発生がゼロの状態。ヒメボタルの発生期間は、およそ10日ほど。私は週末の土曜日しか訪れることができない。つまり、ヒメボタルの発生ピークと私の都合が合致しなければならない。そして次に天候状況がよくなければならない。ゲンジボタルと同じで、月明かりのがなく気温が高くなければ発光飛翔は少ないのである。結局、6年の月日が過ぎ、ようやく2009年7月11日に条件が合致した。
 18時、まだ明るい時間に到着し、カメラを据える。静かに夜を待つ。19時半。ヒメボタルが光り始める。落ち着いてシャッターを切る。OLYMPUS OM-2 に ZUIKO 50mm F1.8 、ISO1600のネガフィルムで長時間露光である。勿論、合成写真ではない。露光している長い間は、ヒメボタルの行動をじっくりと観察。21時。辺りは真っ暗で、一寸先も見えない。静寂の中に、時折、鵺(ぬえ-トラツグミ)の声が林に響き、落ち葉が斜面を転がる音がする。横溝正史の長編推理小説「金田一耕助シリーズ」の一つ「悪霊島」の映画のキャッチコピー「鵺の鳴く夜は恐ろしい…」の鵺である。確かに不気味な感じた。
 その静寂をうち消すように、背後の雑木林から下草を力強く踏みしめる大きな音がしてきた。ゆっくりと右へ左へ、そして近づいてくる。ツキノワグマである。山間部で頻繁に出没しているらしいが、まさかこの場所で出くわすとは思わなかった。ましてこんな所に一人きりである。音を出せばよいのか、静かにしていればよいのか・・・ただ、6年かけてやっと遭遇したこのチャンスを逃すわけにはいかず、恐怖と戦いながら撮影を続けた。十分な露光時間が過ぎたのを確認した後、急いで撤収。麓までの長い道のり、恐怖心は続いていた・・・

 この東京のヒメボタル生息地には、昨年10年ぶりに訪れデジタルカメラで撮影したが、思うような結果が得られなかった。2009年のフィルムよりも美しい写真を デジタルで撮影し、どうしても残しておきたい。そこで、本年も挑戦したのである。
 今年も徒歩である。カメラ2台と三脚2本を背負いながら濡れた悪路を登る。蒸し暑さに汗が噴き出る。生息場所には18時前に到着し、ヒメボタルの通り道2カ所にカメラをセットした。後はひたすら待機である。今回は、持ったきた携帯ラジオを付けた。情報では5月頃にクマが出たというので、クマよけのために大音量で流した。
 気温23度で曇り。無風。曇り空は、夜になっても雲が都会の明かりを反射して明るいので最高の条件とは言えないが、蒸し暑さに期待が膨らむ。19時半に近づく頃が一番不安に駆られる。周囲は暗くなり、そろそろ光始める時間であるが、光らなければ恐怖が襲い掛かるからだ。今回は、何とか19時34分に1頭が光ってくれたので一安心。後は、どのくらい発生しているかだが、なかなか後が続かない。何となく何頭かの光は見えるような気はするが、一向に飛ばない。ようやく数頭が発光飛翔を始めたが、すべてフレーム外の場所。今年カメラを向けた方向は、通り道ではあるものの、曇り空の影響で下草が明るくなっていることが原因だろう。
 20時半になり、随分と暗さが増したが、肝心のヒメボタルは谷の下では発光しているが、なかなか斜面を登ってこない。何故だろう?試しに、クマよけのために大音量で流していたナイター中継を消してみたところ、杉林に静寂が広がり、谷の下からヒメボタルが上がってくるようになった。より暗さが増したことによるのか、音の影響かは定かではない。ゲンジボタルは、轟音のする渓流でも飛んでいるため「音」が飛翔に影響していることはないと思うが、ヒメボタルは音に敏感だと言う方もいるので、根拠はないが、ひょっとしたら音波振動を感知しているのかも知れない。
 21時。急に霧が立ち込めてきて、ヒメボタルも発光しなくなったため、カメラをカバンにしまっていると雨が降ってきた。晴れ間もでる予報であったため傘はない。仕方なく、生い茂る木々の下を通りながら、登ってきた林道3km弱を下った。幸運にもクマは出現せず、何年経ってもヒメボタルの変わらぬ光景を観察できたことに感謝したい。

 インターネットで「ヒメボタル」の画像を検索すると、たいへん多くの写真がヒットする。そのほとんどがデジタル写真で、ヒメボタルの光溢れるものばかりである。勿論、ヒメボタルの生息地によっては多数が乱舞し、1分足らずの一発露光でも光の絨毯に写るところもあるが、これら写真の多くは多重合成によって作られた写真である。それはそれで1つの創作作品として評価してよいとも思うが、昨今の撮影者は、インスタ映えするそのような写真を撮ることだけを目的に、生息地に群がり撮影している。これには、疑問を感じてしまう。また、写真を見る側も、そうした写真を「美しい」と評価してしまうことも問題だ。
 私は、プロの写真家ではないし、カメラマンと呼ばれるのも好きではない。ホタルの研究者として、その生態や生息環境を調べており、ヒメボタルも記録として写真を撮影し残している。当然、今ではデジタルカメラで撮影しているが、写真はインスタ映えを狙ってこれでもか!というように多重合成したものではなく、どのような自然環境をどのように発光飛翔しているのかが分かるように、そして構図なども考えながら、生態写真となるよう撮ってきたつもりである。今回は、これが、ヒメボタルの発光飛翔の生態写真、これが、東京のヒメボタルだ!と言える価値あるものが残せたように思う。
 これは、翅がなく飛ぶことが出来ない可憐な彼女と結ばれたいと飛び回る健気な彼氏の愛の光跡である。

 次週以降は、初めて訪ねるヒメボタルの生息地の光景、そして何度も写真を撮影している所での動画撮影を予定している。

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ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 3分相当の多重 ISO 640(撮影地:東京都 2020.7.11)

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 7D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 3分相当の多重 ISO 1600(撮影地:東京都 2020.7.11)

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / FUJICOLOR NATURA 1600 / バルブ撮影 F1.8 60分(撮影地:東京都 2009.7.11)

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東京の山間渓流部のゲンジボタルが激減

2020-07-05 15:21:00 | ホタル

~2019年の台風19号による影響でホタルも壊滅的な打撃~

 東京山間部の渓流に棲むゲンジボタルが激減している。

 5月22日の高知県から開始したゲンジボタルの観察と撮影。6月には、千葉県と山梨県、そして東京都内2カ所で行い、最後は、東京都内でも一番発生の遅い渓流の源流部近くで行った。 この場所は、風景撮影では何度も訪れているが、ゲンジボタルの観察と撮影では初である。一度、6月26日にロケハンを兼ねて行ってみたが、発生はゼロ。今回の7月4日が二度目である。
 駐車場から林道を歩くこと15分。前回のロケハン時に決めておいた位置にカメラをセットし、17時から待機。この時間でも外国人の家族ずれや大学生のグループなど数組の観光客がいる。大学生のグループは、私がカメラを向けている方向の川に素足で入り込み、果敢に沢登り。迷惑ではないが、滑って頭でも打ったら大変だと、私の子供のような年頃の学生たちに頭を抱えた。30分もすると、深い森の沢に私一人。かなり心細いが、観賞者も光害もない条件のもと、日が暮れて暗くなるのをひたすら待った。
 19時20分に一番ボタルが発光を始める。1頭光れば、ホッと一安心である。しかしながら、ゲンジボタルはなかなか数が増えない。結局、わずか2頭のオスのみ。しばらくすると飛翔を始めたが、すぐにスギの梢に止まって、静かに発光するだけの状況。気温が20℃と低く、時折上流から冷たい風が吹き下ろしていた事が要因だと思う。その後、1頭が飛び出したが、強い雨が降ってきたため、またすぐに葉に止まってしまった。
 発生時期の最盛期であるにも関わらず発生数が極端に少ない。これは、予想していた。原因は1つ。昨年(2019年)10月12日から13日未明に東海から関東地方を通過した台風19号の影響である。ゲンジボタルが生息する地域における、この二日間の期間総雨量は610mmにも達し、渓流は濁流となって直径1mもある岩をも流した。これにより、ゲンジボタルの幼虫やカワニナの多くも流されてしまったのである。
 ブログ6月21日の記事「東京のゲンジボタル」では、冒頭「東京のゲンジボタルは、今年も美しい光を放っていた。」と書きだしたが、この小川は、丘陵部の小さな河川で、台風通過時の雨量も多くはなかったので、今年も無事に発生したが、多摩西部の山地渓流では、今回訪れた場所以外でも、ほとんどのゲンジボタル生息地で発生数が少なくなっているのである。
 今年、私は行かなかったが、ここ数年毎年訪れている河川(東京のゲンジボタル その2)では、ゲンジボタルの数よりもカメラマンの方が多かったと聞いた。4月にムカシトンボの様子を観察しに同河川を訪れた時に、様子の激変に驚愕し、今年のゲンジボタルの発生は少ないと予想していたが、その通りの状況だったらしい。

 ゲンジボタルは、一年ですべての幼虫が成虫になるわけではなく、最長4年かかる個体も存在する。つまり、常に川の中には成長年数に応じた様々なサイズの幼虫が生息している。おそらく、環境変化の大きい河川において、種を存続させるための戦略だと思われる。こうして甚大な台風被害の翌年でも、数頭が発生するということは、流されていない幼虫もいるわけだが、元の発生状況に戻るには、今後何の影響がない状況でも3~5年はかかると思われる。しかしながら、この夏も台風の被害がないとは言えない。場合によっては、10年以内に絶滅してしまう可能性もある。これは、私自身が個体群動態の数理モデルを用いたコンピューター・シミュレーションに基づく個体群存続可能性分析で推定を行っている。(ゲンジボタルの個体群動態解析及び存続可能性分析
 昨日7月4日は、停滞する梅雨前線の影響で九州地方で記録的な大雨となり、土砂崩れや大規模な河川の氾濫に見舞われている。被害に遭われた方々には、心よりお悔やみ申し上げたい。こうして、台風以外でも大雨は年々、激しさを増しており、河川に棲むゲンジボタルも各地で減少している。5月に高知県でお会いした写真家の小原玲氏との会話では、写真集「蛍」の中に掲載した生息地の多くは、現在、大雨で壊滅状態だと仰っていた。
 ホタル観賞者による光害、八王子市川町にみる開発と放置、そして大雨による河川氾濫・・・ゲンジボタルが生き抜くためには、いくつもの試練を乗り越えなければならないが、いずれも根本原因は我々にあるということを忘れてはならない。
 今回、写真的には「絵」になるものが撮影でき残すことができたが、この美しくも儚い命の灯が、「最後の光景」にならないことを祈るばかりである。

 この一枚で、今年のゲンジボタル(成虫)の観察と撮影は終了である。次の週末からは、いよいよヒメボタルである。本年は、昨年に引き続き東京のヒメボタルから始め、7月末まで関東近辺の生息地数か所を巡る予定である。初訪問の場所もあるので、新たな生息環境や生態の新知見を得られるだろう。今から楽しみである。
 また今回、当ブログにご訪問頂いている方と現地でお会いした。何とも嬉しい出会いである。様々な情報もご提供いただき、この場を借りて御礼申し上げたいと思う。

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ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 60秒 ISO 200(撮影地:東京都 2020.7.04)

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ホタル舞う谷戸を埋めるな!

2020-06-28 17:55:01 | ホタル

ゲンジとヘイケが同時に舞う貴重な自然 ~東京都八王子市川町 大沢川源流の谷戸~

 私のブログでは、ホタルをはじめとする昆虫類の記事では、撮影場所の明記は都道府県までとしているが、この記事に関しては、地名の詳細を記している。 これは、地元の方々のご意向でもあり、日本全国の皆様に現状を知って頂きたいという願いからである。

 東京都八王子市川町を流れる大沢川の源流部には、0.2haほどの小さな谷戸がある。雑木林と小川、そして湿地(以前は水田)という典型的な里山環境を呈している。この谷戸には、ゲンジボタルとヘイケボタルが生息し、6月末~7月上旬には、両種が同時に舞う光景が見られる。2種が生息する場所は都内では他にも存在するが、同時期に2種が飛翔する所は極めて珍しい。しかしながら、「源平合戦」の貴重な谷戸は、無くなる危機にある。民間の事業者が大量の建設残土で埋め立てを行い、スポーツ施設を作ろうとしているのである。谷戸は、すでに事業者が土地所有者から買い取り、大部分が立ち入り禁止になっている。しかしながら、事業者にはスポーツ施設を作り、運営するだけの資金がなく、おそらく各地の建設現場で発生する捨て場に困っている建設残土で谷戸を埋める事業だけで終わるだろうと言われているのである。
 この谷戸のホタル保全には、開発以外にもう一つ問題がある。現在は放棄放置されているため、湿地の植生遷移が進行し大部分が草原となっており、ヘイケボタルの生息が危ぶまれている、また、周囲の雑木林も何の手入れもされていない(手入れすることができない)状態のため、急斜面では昨年の台風で崩落が進み、ゲンジボタルの幼虫が生息する小川に大量の土砂の流入が見られた。大木も傾きかけており、このままでは更に大規模な崩落があるかもしれない。里山環境は、放棄放置によって環境悪化が進むのであるが、今は、悪化を見ているだけの状況なのである。

 当地には昨年の7/5に初めて訪れ、ゲンジボタルとヘイケボタルが舞う「源平合戦」を写真に収めているが、今回は、映像を撮ることを目的に27日に再訪した。当初の予定では、7/4に行く予定であったが、地元の「八王子市川町の環境を守る会」の方々から連日観察報告がメールであり、発生状況と天気・天候から6/27に行ってみることにした。
 天気は曇りで無風。19時の気温は26℃で、まさにホタル日和である。林道で待機していると、19時20分。足元と背後の草むらでヘイケボタルが発光を始めた。20分後に飛翔を開始。ヘイケボタルは、あまり広い範囲や高い位置まで飛びまわることは少ないが、当地の暗くて風のない谷戸では、湿地中央や雑木林の高い梢の方まで飛んでいく。
 20時を過ぎると、湿地と雑木林の間を流れる小川上をゲンジボタルが飛び始めた。昨年10月の台風19号の影響で幼虫が流されたのであろう、ゲンジボタルは10頭ほどの飛翔数であったが、ヘイケボタルは100頭以上が湿地のあちらこちらで飛び回っていた。
 20時40分頃になるとヘイケボタルはどの個体も雑木林脇の下草や、高い梢に止まり、静かに発光するようになった。しばらくすると発光も止め、活動時間は終了となった。ゲンジボタルもいつの間にか姿を消していた。

 この「源平合戦」が見られる東京の貴重な自然が、開発と放棄放置によって失われる危機にあることを一人でも多くの方々に知って頂きたいと思う。そして、一刻でも早く良好な里山環境が維持できる状況になるよう、微力ながら地元の方々に協力していきたいと思う。

 今年のゲンジボタル(ヘイケボタル)の調査・観察・撮影は、来週末が最後である。その後は、7月末までヒメボタルの連続になる。

参照:東京のホタル(源平合戦の危機)川町の残土埋立に反対する住民集会

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ゲンジボタルとヘイケボタルが舞う谷戸の写真

ホタルの生息地
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F1.4 3分相当の多重 ISO 250(撮影地:東京都八王子市川町 2020.6.27)

ホタル舞う谷戸を埋めるな!ゲンジとヘイケが同時に舞う貴重な自然~東京都八王子市川町 大沢川源流の谷戸~

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東京のゲンジボタル

2020-06-21 13:25:13 | ホタル

 東京のゲンジボタルは、今年も美しい光を放っていた。東京と言っても、都市部のホテルの庭園や公園のビニールハウスではない。広大な雑木林に囲まれた大自然の中。 流れる小川に天然のゲンジボタルが舞うのである。
 このゲンジボタル生息地には、2003年から通っており、2008年にTBSテレビ「ニュース23」に出演した時にキャスターを案内した。当時は、たいへん多くのゲンジボタルが乱舞していたが、その後、水枯れ等の影響で減少。 一時は絶滅も危ぶまれたが、徐々に発生数は回復傾向にあり、昨年は「日本ホタルの会」の観察会が当地で行われた。その日は、残念ながら雨で気温が低く、あまり飛翔せずに葉上で発光する個体が多かったが、東京都内における素晴らしい自然環境を実感して頂けたと思う。
 さて、今年はどうであろうか?前日は雨で、この日の日中は晴で28℃まで気温が上がり、日の入り時の気温は23℃。曇りで無風。まさにホタル日和である。自宅からは小一時間の距離で16時に到着。今回は、ホタルが飛翔している写真より「映像」を残すことを目的としているため、まずは周辺の環境の映像を撮影。その後、位置を決めてカメラをセットし待機した。
 19時32分。茂みの中で1番ボタルが発光。19時50分から飛翔が始まった。当地は、先週の山梨県のホタルの里のような「光害」は一切ない。地元の方もほとんど来ないが、後から来られた数名の話し声の中に、聞き覚えのある声。日本ホタルの会 理事の 井上 務 氏であった。私も理事であるが、新型コロナウイルスの影響で理事会はずっと行っておらず、今年の観察会も中止にしたため、久しぶりにお会いした。井上氏は、定期的に当地で観察を行っておられ、今年の幼虫の上陸は5月16日がピークであったと言う。
 ゲンジボタルの羽化までの積算温度は、私の理論では発育零点8.02℃、有効積算温度408.4日度であるから、今年の上陸(5/16)後の気温を計算すると、6月17日に有効積算温度419.54日度になり当てはまる。この日は、メスが発生していなかったため、次の週末あたりが発生のピークだと思われる。
 また井上氏によれば、サンプルとして3頭を採集して、日本ホタルの会 副会長の鈴木浩文 氏に遺伝子解析を依頼したところ、2頭が東日本型で当地固有の遺伝子型であったが、1頭は西日本型であったと言う。かつて、人為的に一部移植がなされたと思われるが、今後は交雑が進まず、貴重な固有種が存続することを臨みたい。

 以下には、2005年にフィルムで撮影した写真と今回デジタルで撮影した写真、そして編集した映像を掲載した。デジタルの写真は、光跡を幾らでも写真上に増やせるが、フィルムと同程度の露光時間の多重に留めた。ここは、15年経過しても、一時期の渇水以外は自然環境の変化は少ない。そして「光害」は全くない。これは、ホタル観賞に訪れる方がほとんどいないことを意味している。俗にいう「穴場」であるが、多くの人々が訪れれば「光害」によって一気に状況は悪化してしまうだろう。この光景を守るためにも、そして豊かな生態系を保全する上でも、場所をご存知の方は、公表を控えていただきたいと思う。

 今は、ホタルシーズンの真っ只中である。5月の高知遠征に始まり、千葉県、山梨県と巡り、この週末からは4週連続で東京のホタル(ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタル)の観察と撮影を行う予定である。その後は、山梨県のヒメボタルで成虫の飛翔シーズンを締めたいと思う。そして、所々にチョウとトンボを挟んでいきたい。

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東京のゲンジボタルの写真

東京のゲンジボタル
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / Ektachrome 320T Professional (東京都 2005.6.23)

東京のゲンジボタル生息地の写真

東京のゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F16 6秒 ISO 100 -1/3EV(東京都 2020.6.20)

東京のゲンジボタルの写真

東京のゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 1/125秒 ISO 400 2分相当の多重(東京都 2020.6.20)

東京のゲンジボタル その3

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オオマドボタル

2020-06-15 17:23:19 | ホタル

 オオマドボタル Pyrocoelia discicollis Kiesenwetter,1874は、ホタル科(Family Lampyridae)マドボタル属(Genus Pyrocoelia)で、一生を陸地で過ごす陸生ホタルである。成虫は時折しか発光せず、メスが発するフェロモンを感知して交尾が行われる。山地から丘陵地の二次林内、竹林、林道脇などに生息している。

 マドボタル属は、前胸部に1対の透き通った窓があるのが大きな特徴で、日本国内には9種1亜種が生息しており、本州・四国・九州には2種、オオマドボタルとクロマドボタルが生息している。両種の生息環境や生態、幼虫の形態は酷似しているが、オス成虫ではオオマドボタルは前胸部に赤斑があり、クロマドボタルは赤斑が無く黒色である。
 両種は分布域が異なっており、これまでオオマドボタルは近畿地方以西、クロマドボタルは近畿地方以東に生息すると言われていたが、最近の調査では、オオマドボタルは南限が九州鹿児島県で、北限が宮城県。ただし東日本には少ない。一方、クロマドボタルは、北限が青森県で南限は九州の熊本県。ただし、中部・北陸・東海以西には少ない事が分かっている。また、両種の境界地域となっている近畿地方には、前胸部の赤斑について様々な変異を持った個体が見られるのも興味深い。
 両種は、交尾器の形状やコミュニケーション・システムなどにも大きな違いが認められないので同一種と考えられることもあるが、日本ホタルの会 副会長の鈴木浩文 氏に聞いたところ、両種のミトコンドリアCOⅡ遺伝子を分析し系統樹を作成すると、東北~近畿、近畿、近畿~九州という3つのグループ分けられ、東北から近畿のグループがクロマドボタルに対応するかもしれないが、まだ何とも言えない状況であるという。ただし、東北~近畿のグループと近畿~九州のグループには、ゲンジボタルの東西型以上の違いがあるとの結果が得られている。

 オオマドボタルは、環境省RDBや地方自治体のRDBにも記載がなく珍しい種ではないが、関東地方で撮影するのは困難なため、これまで関西方面に遠征に行くたびに探していたが、見つけることが出来ていなかった。先月に訪問した高知県においても探索を試みたが、発生時期が早かったこともあり、1頭も見られなかった。今回、高知県ホタルネットワークの石川憲一 氏のご厚意により、採集した個体を1頭郵送いただき、自宅にて撮影することができた。ゆえに本写真は、生態写真ではなく図鑑写真としての撮影である。この場を借りて、生体を提供して下さった石川憲一 氏に対し御礼申し上げたい。
 オオマドボタル(このオスの場合)は体長が15mmあり、クロマドボタル(オス)の体長10mm~12mmより大きい。今後は標本とし、研究のために保存したいと思う。以下には、比較のためにクロマドボタルの写真も掲載した。いずれもオスである。メスは、下記参照ページ「クロマドボタル」をご覧頂きたい

参照:クロマドボタル

参照:高知県ホタルネットワーク

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オオマドボタルの写真

オオマドボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F4.5 1/125秒 ISO 2000 -1/3EV(高知県土佐市産 2020.6.13)

オオマドボタルの写真

オオマドボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F4.5 1/160秒 ISO 2000 -1/3EV(高知県土佐市産 2020.6.13)

オオマドボタルの写真

オオマドボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F4.5 1/125秒 ISO 3200 -1/3EV(高知県土佐市産 2020.6.13)

オオマドボタルの写真

オオマドボタル(腹部背面に見える発光器)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F4.5 1/160秒 ISO 2000 -1/3EV(高知県土佐市産 2020.6.13)

オオマドボタルの写真

オオマドボタル(腹部背面に見える発光器)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F4.5 1/160秒 ISO 2500 -1/3EV(高知県土佐市産 2020.6.13)

クロマドボタルの写真

オオマドボタル(腹部の発光器)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F4.5 1/160秒 ISO 2500 -1/3EV(高知県土佐市産 2020.6.13)

クロマドボタルの写真

クロマドボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/125秒 ISO 500(撮影地:静岡県富士宮市 2010.7.03)

クロマドボタルの写真

クロマドボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/160秒 ISO 640(撮影地:静岡県富士宮市 2010.7.03)

クロマドボタルの写真

クロマドボタル(前胸部の窓がはっきりしていない個体)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/125秒 ISO 800(撮影地:山梨県北杜市 2010.7.08)

クロマドボタルの写真

クロマドボタル(前胸部の窓がはっきりしていない個体)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 1000(撮影地:山梨県北杜市 2010.7.08)

クロマドボタルの写真

クロマドボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/125秒 ISO 400(撮影地:静岡県富士宮市 2010.7.03)

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ホタルを滅ぼすホタル観賞 これが光害だ!!

2020-06-14 15:29:14 | ホタル

 今月はゲンジボタル、来月はヒメボタルの生息環境の調査・研究を進めるための計画を立てているが、この週末は伊豆方面に遠征する予定であったが、悪天候であったため、急遽、場所を変更し、山梨県内の生息地へと足を運んだ。
 その場所は、ゲンジボタルの自然発生地であり、幼虫の上陸観察には何度も訪れているが、成虫が舞う時期の訪問は、2005年6月11日以来である。15年もの間、6月に一度も行かなかったことには理由がある。それは、あまりにもホタル観賞者が多いからである。ホタル祭りが行われ、観光バスや乗用車が何十台も来る。川沿いは人で溢れる。当然のことながら「光害」が酷く、ゲンジボタルは、ほとんど発光飛翔しないのである。その光景が、とても悲しく、悔しい思いをしたので、二度と行くまいと思っていた。
 ところが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のために「ホタル祭り」は中止となったため、また、最盛期でもあり、更には天候も雨のち曇りという予報であったことで当地に行って見ることにしたのである。

 13日の14時に自宅を出発。途中の中央道は本降りの雨。現地には16時半にし、日暮れを待った。
 19時には雨も止み、川沿いで待機していると、19時24分、一番暗い茂みの中で一番ボタルが発光を始めた。ホタル祭りが中止となった影響だろう、観賞者は私以外には一組だけであった。気温は22℃。蒸し暑く、まさにホタル日和。次第に発光する数が増え始め、飛翔するようになった。
 20時近くになると、川沿いの県道を通る車がいきなり多くなった。小さな集落はあるが、車は地元の方ではなく、すべてホタル観賞に訪れた車である。車が通るたびに、少しの間だけヘッドライトの明かりが河川に当たるが、それほどの影響はない。問題は、駐車場所である。ゲンジボタルが飛び交う河川に横づけで止め、しかもヘッドライトを消さない。ハザードは付けたまま。路上には、それが何台も止まっているのである。ちょっと見たら帰る。ドライブスルー的ホタル観賞である。
 当地には、大きな駐車場があるのだが、祭りが中止のために駐車場も閉鎖。(この駐車場にも問題があり、駐車した車のライトがすべて川に当たるのである。)私は離れたスペースに車を止めたが、他の観賞者はすべて路上駐車である。当然、ゲンジボタルは発光を止める。車がいなくなり、やっと暗がりが戻っても、すぐには発光飛翔を再開しない。茂みの中から徐々に発光を始めるが、また車のライトが当たる。今度は、遊歩道を懐中電灯を照らしながら歩いてくる。またゲンジボタルは発光を止めてしまう。ずっと、その繰り返しであった。私は、終始無口を通したが、懐中電灯を振り回すお子さんが私の横を通り過ぎようとした時、「写真を撮っているから灯りを消しなさい」という声。相変わらず、分かっていない。私は軽く会釈はしたが、心の中で「ホタルのために灯りを消してほしい」と言った。結局、今回もやるせない気持ちで当地を後にした。当地にはホタル保存会が存在するが、いったい何のために活動しているのか疑問である。先々週に訪れた千葉県は、保存会すらない、まったくの自然のままの里山である。そこがいかに素晴らしいかが良く分かる。
 この日は、当地のゲンジボタルの発生時期のピークであると思うが、発生数はここ15年で10分の1にまで減っているように思う。

 以下の写真は、当地での光景であるが、上記の現状を表してはいない。19時半の光り始めから、9秒間の露光を1秒間隔で光終わる21時まで撮影したカットの中で、ホタルが発光飛翔したカットだけを全て重ねたものだからである。その露光時間はのべ8分である。つまり、ホタルの活動時間約90分の中で、ホタルがまともに光りながら飛べたのは、わずか8分ということになる。
 ホタルは、光る昆虫である。オスは光ながら飛ぶ。メスは、飛ばずに下草で光っている。メスは、飛んでいる光を見つけると下草で光りだす。オスは、飛びながら、メスの光を見つけるとメスのいる所へ降りていく。そして、光で会話が始まるのである。フラれてしまうオスもいる。メスは、たくさんいるオスの中で一番、光の強いオスを選び、結ばれるのだ。お互いの光は、暗闇でなければ見えない。0.1Luxの月明りでさえ、ホタルの会話を邪魔するのだ。
 暗闇が必要なホタルに車のライトが当たる。懐中電灯が当たる。ホタルは、光ることを止めてしう。これが「光害」である。ホタルは、灯りの当たらない僅かな瞬間で会話をしなければならないのである。こうしたホタル観賞がホタルを滅ぼすのだ。
 ホタル観賞に車で行く時は、ホタルが光りだす前の19時に行く。帰るのは、光終わった21時。(私の車はハイブリッド車で、生息地近くではEVモードで走行している。)あるいは遠くに車を止めて歩いてくる。日暮れ前の19時から小川のほとりで待っていれば、目が慣れるので懐中電灯は必要ない。これは、ホタル観賞のマナーではない。ホタルと自然環境を保全する鉄則だ。そうしなければ、ホタルは滅びてしまうのだ。
 こう書くと「お前も来てほしくない部類だ」とか「カメコはわがままだ」という批判をコメントで頂くが、まずは、光害の動画を是非ともご覧頂きたい。それから議論したい。私は撮影者として、研究者として現場に立っているが、本来は、私も含めて誰も行かなければホタルにとっては幸せなんだろうと思う。ただ、こうした現状を多くの方々に理解していただくことも必要である。このような記事がホタルと自然環境の保全に少しでも役立てば幸いである。

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ゲンジボタルの飛翔風景の写真

ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 8分相当の多重 ISO 800(撮影地:山梨県 2020.6.13)

ホタルを滅ぼすホタル観賞 これが光害だ!!

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ヒメボタルの写真について

2020-06-07 17:41:20 | ホタル

 ヒメボタルの写真は、単にインスタ映えするという理由から昨今ではインターネット上に大変多くの写真が溢れ、またそれを撮ろうとヒメボタルの生息地には、大勢のカメラマンが群がっている。
 ちなみに、ここで言うヒメボタルの写真とは、マクロ撮影ではなく、乱舞している光景の写真についてである。

 私がホタルの写真を撮り始めたのは、今から40年以上も前からであるが、ほとんどが成虫等を接写した生態写真であった。勿論フィルムである。飛翔風景はネガでもポジでも難しく、何とか見せられる写真が撮れるようになったのは2000年頃であった。ヒメボタルの写真を撮り始めたのは2004年だったが、ゲンジボタルやヘイケボタルよりも難易度が高く、やっとフィルムで奇麗な写真が撮れたのは2009年で、ISO1600のネガフィルムで1時間近く露光したものである。
 フイルムで苦労していたところ、2006年あたりからデジタルカメラが広く普及し始め、私も2009年の秋からデジタル一眼レフ(現在も愛用の Canon EOS 5D Mark Ⅱ)を使い始めたが、デジタルで、フィルムと同じような長時間露光でホタルの飛翔風景を撮ろうとすると、数分が限度で、あまり長い時間露光するとノイズがひどくて良い結果は得られなかった。
 ところが、新しい撮影方法により、フィルムに勝るとも劣らない画像を得られるようになった。それが、パソコンソフトによる合成である。今では、デジタルカメラも進化し、撮影時にカメラ内で自動で背景と光を重ね合わせてくれる機種も登場しており、パソコンソフトでの作業とともに、ホタル撮影では一般的な方法となっている。フィルムにおいても、長時間露光ではなく、予め撮影した背景に多重露光によってホタルの光を重ねることもできたが、露出計算が難しく、結果は現像してからでなければ分からなかったが、デジタルは楽である。(参照:ホタル写真の変遷
 誰でも簡単にホタルの飛翔風景が撮れるようになった昨今、インスタ映えするヒメボタルの写真にカメラマンが群がっているのである。

 ヒメボタルの写真は、確かに幻想的で美しい。撮るのは自由である。私も各地で撮影しているが、私は撮影者であると同時に観察者として現場に立っている。ホタルの生態や生息環境について調べ始めて48年以上経ったが、未だに分からないことが多い。そのため、ホタルの飛翔風景写真を撮影する場合は「ホタルがどんな環境に生息し、どのように光りながら飛んでいるのかが分かるように、そして、その貴重な場面を証拠として残すこと」を目的としている。ヒメボタルでもゲンジボタルでも、他のホタルでも同様である。
 では、インターネット上に溢れる多くのヒメボタルの写真はどうだろうか。そんなに飛翔していなくてもパソコンソフトで何十枚、何百枚と重ねて、光あふれるように作ったり、実際は飛んでいない場所に合成している写真も目に付く。写真芸術という観点から逸脱するものも目立つが「創作」を前提にしたならば、これらに苦言を呈する気はない。問題なのは、写真という結果を求めるだけで、ヒメボタルの生態を理解せずに生息地に群がるカメラマンの姿勢と態度である。更には、乱舞の様子を軽々しく報道するメディアである。

 これは高知県のヒメボタルの生息地での出来事である。いつもは誰もいない夕方の散歩コースに自動車が何台も止まっていたという。ある人物が、ヒメボタルの写真を撮らせようと県外からも大勢を呼び寄せたのだと言う。写真が撮れれば良いだけで、生息場所を荒らすなどの行為も目立ち、更には、撮った写真を新聞社に売り込んだと言う。地元の方々は、「県外への移動自粛が今月末まであるのに呼ぶ方も来る方も許し難い。自然破壊、生息地荒らしなど何にも考えない人間に風景写真は撮らせたく無い!」と叫んでいる。新聞社は、何枚も合成された光溢れる写真とともに「儚い命・・・」として記事にしている。
 私が10年前に撮影していたヒメボタルの生息地数か所では、当時は誰もおらす私一人で撮影と観察をしていたが、今ではカメラマンで溢れている。撮るのは自由である。ただし、ヒメボタルの生態は、予め学んでくるべきである。写真を撮りたいから「光害」に関してはある程度気を使っているが、メスや幼虫がいるであろう生息地内に踏み込む行為も散見される。マナー云々の問題ではなく、自然保全の鉄則は守らなければならない。
 今年も、7月末まで各地でヒメボタルが舞う。是非ともヒメボタルの写真は、単にインスタ映えの自己満足に終わらせることなく、貴重なヒメボタルと自然環境を保全するための一枚になるようお撮り頂きたいと思う。またメディアも、何も考えず安易に報道するのではなく、その記事の裏側や行く先を良く考えて書いて欲しい。

 以下には、過去にデジタル一眼レフで撮影したヒメボタルの写真を数点掲載した。過去の撮影であるにも関わらず、今回初めてRAW現像した写真と動画もある。飛翔写真6枚は、背景もヒメボタルの飛翔時刻に同時に撮影したもので、1と2枚目は、これでもかという位にヒメボタルの光を重ね合わせたものである。背景となる木立のカットがなくても、ヒメボタルの光だけで木立の様子が分かる。乱舞する生息地に違いないが、実際に一度にこれほどの数が飛翔しているわけではない。3枚目は、畑の上を飛ぶヒメボタルの光跡を撮影したものだが、写真を見る一般の方々に受けるのは、写真1、2であることが悲しい。
 人々の興味や感情はうつろいやすいものである。「インスタ映え」を目的としてパソコン上で作り出した偽りではなく、真に感動を表現した写真でなければ、その内、飽きられてしまうだろう。写真を見る方々も、騙されることなく冷静になって撮影者の心を見抜く力を養っていただきたいと思う。
 私は「ホタルがどんな環境に生息し、どのように光りながら飛んでいるのかが分かるように、そして、その貴重な場面を証拠として残すこと」を目的とし、感動の写心を撮れるよう努力していきたい。

昨年、最後に撮影したヒメボタルの写真は、こちら「ヒメボタル(東海)

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 20分相当の多重 ISO 6400(撮影地:静岡県 2017.7.23)

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 20分相当の多重 ISO 6400(撮影地:静岡県 2017.7.23)

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 3分相当の多重 ISO 1600(撮影地:埼玉県 2016.6.05)

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 3分相当の多重 ISO 1600(撮影地:埼玉県 2016.6.05)

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 3分相当の多重 ISO 800(撮影地:埼玉県 2010.6.06)

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 3分相当の多重 ISO 1600(撮影地:埼玉県 2012.6.08)

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / KODACHROME64 Professional(撮影地:東京都 2009.7.06)

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 6秒 ISO 400(撮影地:埼玉県 2011.6.04)

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 映像からの切り出し(撮影地:山梨県 2010.7.19)

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE(撮影地:埼玉県 2016.6.5)

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源氏蛍(千葉県にて)

2020-05-31 20:31:15 | ホタル

 源氏蛍の様子を千葉県にて観察してきた。

 昨年、千葉市付近に上陸した台風15号と台風19号による被害が大きく、ホタルが生息する河川もダメージがあり、今年の発生の状況を心配していた。生息地はいくつもあるが、その内の1つである谷戸には、20014年から定期的に観察に訪れている。その生息地は、千葉県内でも発生時期が早く、5月の中旬頃から発生が始まり、下旬にはピークを迎える。昨年の様子は「ホタルの乱舞~里山で舞う東日本型ゲンジボタル~」として、今年の4月は幼虫の上陸の様子を「ゲンジボタルの幼虫上陸」として本ブログに掲載している。幼虫の上陸観察では、時期が遅かったこともあり数が少なく、やはり成虫の発生数がどうなるのか危惧していたところ、親友から今年も多くのゲンジボタルが出ているとの連絡を受け、早速、30日(土)行ってきた。

 午前中は、東京都内の湿地にてサラサヤンマの産卵を撮影し、午後から千葉県へ向かった。現地には17時に到着し、谷戸の最奥から環境を細かく調べ、昨年とは違った場所がベストポイントであると推察し、カメラを据えた。
 19時半になると、茂みの中でゲンジボタルが発光を始め、徐々に発光数が増えて行った。水田と雑木林の間に幅60cm程の細い流れがあり、幼虫はそこを住処にしている。場所によっては細流を木々が覆いつくしており、それが暗い空間を提供しており、その空間では、まさにクリスマスイルミネーションのごとく、たいへん多くのゲンジボタルが発光を始めた。
 ここに生息するゲンジボタルは、東日本型の遺伝子であるため、先週に見てきた高知県の西日本型ゲンジボタルとは全く違う谷戸という生息環境。そして発光間隔も西の2秒に対して、こちらは4秒である。また、飛び方もたいへんゆっくりで優雅である。
 気温は20℃で無風。カメラを向けた方向でも多くが飛び始めたが、この日は月齢7.4で半月。地面に自分の影が映るほそ明るい。案の定、ゲンジボタルたちも雑木林脇の細流上を飛び回ることが多く、隣接する明るい水田まではほとんど飛んでは行かなかった。これで、車のライトや観賞者の懐中電灯が当たれば大きな打撃だが、この生息は車が通ることもなく、観賞者は地元の方々がほんの数名。人為的光害からは守られているのは安心である。

 20時半を過ぎると飛翔数が減り、雑木林の木々の葉や下草に止まって光るようになった。今回は飛翔風景だけではなく、成虫が発光している様子をマクロレンズで動画撮影することも目標であった。丁度、下草で発光しているオスがいたので、ファインダーを覗きながら発光する発光器にマニュアルでピントを合わせて写真と動画映像を撮影し、下記に掲載した。(成虫のマクロ写真は、月明りだけで撮影。飛翔風景は、生息環境をご覧頂くために明るめにRAW現像している。)
 6月には1~2カ所、出来ればこれまでに行ったことはないゲンジボタル生息地で観察と撮影をしたいと思っており、7月にはヒメボタルを2~3カ所において観察と撮影を計画している。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。また動画においては、Youtubeで表示いただき、 HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

夕暮れの水田の写真

夕暮れの水田
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F3.5 1/125秒 ISO 2500 -1/3EV(撮影地:千葉県 2020.5.30 18:52)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / バルブ撮影 F2.8 6秒 ISO 6400(撮影地:千葉県 2020.5.30 20:42)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / バルブ撮影 F2.8 6秒 ISO 6400(撮影地:千葉県 2020.5.30 20:50)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 9秒 ISO 200 12分相当の多重(撮影地:千葉県 2020.5.30 19:31~20:22)

ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / F1.4 ISO 6400(撮影地:千葉県 2020.5.30)

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宿毛のゲンジボタル

2020-05-27 15:48:20 | ホタル

 宿毛のゲンジボタルは高知県内でも有数な名所である。

 四万十川の沈下橋とホタルを観察した翌日は、宿毛市にある「蛍の郷」へ。この場所は、40年以上にわたってカワニナの餌を団子状にしてパチンコで川へと飛ばしたり、 大雨で土砂が流入した際は、幼虫を陸に上げないように丁寧に作業したりする等、堀内慶治氏一個人によって保護されている「蛍の郷」である。川に設けられた幾つかの堰周辺でゲンジボタルが多く飛ぶが、中でも「蛍の郷」の400mにわたる岸辺は、無数のゲンジボタルが乱舞し、光が水面にも映り込む幻想的な光景が見られる。堀内慶治氏によれば、川岸が光のウエーブのようになり、両岸が光の輪に包まれる日が年に1~2度あると言う素晴らしい場所である。
 23日(土)は、まず四万十市トンボ自然公園で昼近くまでトンボを観察。その後、高知県ホタルネットワークの石川憲一氏と合流して昼食を済ませ、石川氏の案内で、アマチュアながら自費でホタルの写真集を出版している地元の会社員 田村昌之氏と会った。その後宿毛に移動し「蛍の郷」へ15時に到着。周辺を探索しロケハンを済ませると、ホタルの写真集も出されているプロの動物写真家「小原玲」氏が来られた。石川氏と田村氏の手引きでの初対面。川のほとりにて2時間余りホタル談義に花が咲いた。

 18時半頃からポイントで待機。ここでも一番ボタルの発光は19時半で、カメラを向けていない右側の岸辺であった。気温20℃で無風。20時を過ぎると無数のゲンジボタルが飛び交い、将に大乱舞という状況になった。オスの同期明滅は、西日本型特有の2秒間隔。ここでの飛翔スピードは、沈下橋に比べると穏やかで、多くのゲンジボタルは岸辺の草むら上を飛んでいた。カメラを向けた方向は堰と堰の間で、無風という条件も相まって、岸辺を乱舞するゲンジボタルの光が水面に反射する光景も素晴らしく美しく、この場所においても、大変多くことを学んだ。
 以下に掲載した写真は、いずれもデジタル一眼レフカメラによって撮影したものであるが、写真2~4はフィルムと同じ一発露光(30秒の長時間露光)である。フィルムの適正露出を得るための長時間露光と違って、デジタルでの多重合成・多重露光は、単に見栄えを良くするものである。写真5~6は30秒露光の写真をパソコンにて数カット多重合成した結果である。実際のゲンジボタルの様子は、最後に掲載した映像をご覧頂きたいが、多くのカットを重ねたホタル写真は「こんなに飛んでいるの!?」と見た方に誤解を与えかねない。写真家の小原玲氏は、昨今の素人が作るホタル写真は重ね過ぎだと嘆いていており、私も同感だが、悲しいことに写真を見た方々の評価は、本ブログ掲載写真2~4よりも、写真5~6なのである。
 映像は、ほぼ見た目に近いが、写真は長時間の露光になれば実写でありながら創作でもある。更にタイムラグがあるカットを重ねることは時間の連続性という写真芸術の観点や、ホタルの飛翔という生態学的観点から外れることにはなるが、1つの創作写真としてご覧頂きたい。掲載写真は、ゲンジボタルがどうような環境で飛翔発光するのかが分かるように、背景を明るめに処理している。

 宿毛市にある「蛍の郷」は大変すばらしい自然環境であり、高知県ならではのゲンジボタルの生息環境や生態的特性も学ぶことができ、目的達成、大満足の遠征であったが、残念だったのは、川のすぐ横が観賞者用の駐車場であること。ゲンジボタルが光り始めてから来る車のライトが、ゲンジボタルが乱舞する場所を容赦なく照らしてしまう。そのたびに発光をやめ、雌雄のコミュニケーションは阻害されていた。ここでも、悲しいことに光害という人的汚染にホタルたちは嘆いていた。
 ホタル観賞をする方々の中には、ホタルが発光する理由をご存じない方が多い。知っていれば、暗くなってホタルが乱舞している所へ車のヘッドライトを向けるはずがない。車で来なければならないのならば、明るい時間帯に来るしかない。私もその場所に駐車したが、前述のように15時には到着し、ヘッドライトが川とは反対側になるように止めていた。そして、ホタルの発光飛翔が終了した21時過ぎに引き上げた。車はハイブリッドで電気モーターだけで走行するようにした。今後も、この環境を維持するには、時間を決めて車の侵入を禁止するなどの対策が必要であろう。

 日本各地の有名なホタルの生息地は、どうしても観賞者やカメラマンが大勢訪れる。見るのも自由、撮るのも自由である。しかしながら、ホタルの生息地は、観賞者優先でもカメラマン優先でもない。ホタルが最優先である。ホタルは発光によって雌雄がコミュニケーションを図っていて、暗闇でしかお互いの光を確認できない。従って、ホタルが十分に繁殖を行えるように人工的な灯りは一切照らしてはならないのである。これはマナーではない。自然保全の鉄則である。「観賞者とカメラマン、お互いが気持ち良く・・・」そうではなく、ホタルが光によって会話できるように、そして配偶行動ができるようにそっと見守ることが、訪れた者の責務であると思う。そうしなければ、この光景は、直ぐにでも失われてしまうだろう。

 こう書くと「一日数回、懐中電灯の灯りや車のヘッドライトが当たっただけで、ホタルは全滅しないだろう」と言う方がいる。「それは、お前のエゴだ。極論だ!」と反発する方もいる。「そう言うお前はどうなんだ!」と問題をすり替え逆切れする方もいる。
 では、ゲンジボタルの生態を考えてみたい。この場所の発生期間を仮に3週間とする。メスは10日ほど遅れて羽化してくるから、雌雄が出会える日数はおよそ11日である。変温動物であるから、夜の気温が15℃を下回れば活動は鈍くなる。月明りがあれば、飛び回るオスの数は減少する。雨は問題ないが風が強ければ、やはり飛び回るオスは少ない。これら悪条件を除くと、雌雄が出会える日数は更に減って5日くらいになるかもしれない。そして、一日の内で雌雄が出会える時間は、1時間半ほどしかない。そのわずかな時間の中で、オスは下草で発光するメスを見つけ、メスは寄ってきたオスの中から、発光が一番強いオスを選んで交尾するのである。人為的な灯りは、この少ない貴重なチャンスを更に少なくしてしまうのである。
   光害の影響は、科学的にも昆虫学的にも証明されている。反論があれば、無記名で誹謗中傷するくだらないコメントを安易に書き込むのではなく、科学的根拠を示しながら、自然保全や精神論についても論じて頂きたい。
 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が解除されても3密を防ぐために、今年は日本各地で「ホタル祭り」等のイベント中止が決まっている。個人的には嬉しい思いが強い。私を含め人々が 来なければ、人為的光害はなくなり、ホタルは幸せだろう。今後も、ホタルの自然発生地においては、私を含めた観賞者もカメラマンも人間様様の態度や考え方を改め、自然に接しなければならない。

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蛍の郷の写真

蛍の郷の環境
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F9.0 1/60秒 ISO 100(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23 15:15)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 30秒 ISO 800(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23 19:53)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 30秒 ISO 800(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23 19:54)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 23秒 ISO 1000(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23 19:58)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 11分相当の多重露光 ISO 1000(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 6分相当の多重露光 ISO 800(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23)

宿毛のゲンジボタル(映像)設定をHDにしてフルスクリーンでご覧ください。
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE (撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23)

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沈下橋とホタル

2020-05-25 18:39:05 | ホタル

 沈下橋とホタルは、高知県が誇る日本の原風景である。

 高知県には、2017年10月にホタル講演会の講師として香南市を訪れたが、是非一度、ホタルが舞う季節に行って見たいと思っていた。
 四国のゲンジボタルは西日本の遺伝子を持ったグループである。現在、東京都内においても移植によって定着した西日本型のゲンジボタルを見ることができるが、西日本型本来の生息環境や発光、飛翔の様子などは、本場でなければ確認できない。そこで、発生時期と新月が重なる日を選定し、5月22日~24日の二泊三日で遠征する計画を本年頭に立てていた。
 しかしながら、大きな問題が発生。新型コロナウイルスの感染拡大である。高知遠征は県をまたがる移動ではあるが、ホタルの研究はライフワークであり不要不急ではない。これだけは、何としても実行したい。私は、4月7日以降は自粛を守り、不要不急の外出は一切せず、風景や昆虫の写真撮影は自宅の庭だけに留めた。そして多くの方々の我慢によってウイルス拡大は収束に近づき、4月7日に発令された緊急事態宣言は、5月14日に39県が解除され、21日には関西3府県の解除が決まった。そして本日、首都圏の1都3県と北海道でも解除となったが、危惧されたことは航空機の減便であった。実際の所1日6往復あった便は1日1往復に減便。予約した便は欠航となってしまったが、振替によって搭乗することが可能になり、計画通りに遠征できることとなった。

 5月22日の羽田空港第一ターミナル。出発ロビーに人影はほとんどない。搭乗手続きを済ませ 14:15発 JAL495便 に搭乗。通常はボーイング737だが、今回は95人乗りのエンブラエル190。機内を見れば、全部で30人ほどしか乗っていない。ソーシャルディスタンスは十分。私は、クラスJの席04A、一列シートでゆったりである。ちなみに帰路は24日 16:20発 JAL496便 クラスJの席02Aに搭乗であった。
 高知空港からは、レンタカーで移動。カローラを予約していたが、まだ16,000kmしか走っていないプリウスが用意されていた。全行程約300km走行したが、燃費は26km/lで、返却時の燃料満タンでは11リットルの給油で済んだ。
高知遠征の計画時に、二晩の内一晩はヒメボタルとも考えたが、森中の乱舞では関東での状況と何ら違いがないことから、二晩ともゲンジボタルを観察することに決めていた。次の記事で紹介する「宿毛のゲンジボタル」をメインとして、初日は高知ならではの光景として「沈下橋とホタル」を選んだ。

 高知県では、1993年に四万十川流域の沈下橋を生活文化遺産ととらえ保存し後世に残すという方針を決定しており、2009年には、沈下橋を含む四万十川流域の流通・往来を通じて生じた景観が国の重要文化的景観として選定されている。その景観に、更にゲンジボタルが舞うのである。
 空港から走ること2時間半。訪れたのは、四万十市にある勝間沈下橋。橋の長さはおよそ150mm。四万十川は、川岸も含めると川幅が約300m、流れの幅だけでも約120mもある。こんな大きな川で、果たしてゲンジボタルが飛ぶのであろうか?
 日の入りは19時過ぎ。川辺で待機していると19時半に対岸の川岸でゲンジボタルが発光を始めた。驚くことに、向こうからこちらへ幅100m以上もある川の上をかなり早いスピードで飛んでくるオスがいるのである。全体的には対岸の茂みがある川岸近くを多く飛翔しているが、数頭は沈下橋の真ん中あたりで橋の上下を飛んでいた。関東では有り得ない光景である。四国最長の流れを誇る雄大な清流にゲンジボタルが飛び交う様子は圧巻で、これほどのスケールは全国的にもあまり例がないだろう。ちなみに、ホタルを鑑賞する風情あるホタル船は、コロナの影響で休業であった。
 一週間ほど気温の低い日が続いたことにより、まだ発生初期の段階で大乱舞ではなかったが、たいへん貴重な光景を観察し撮影することができた。

 次の記事では「宿毛のゲンジボタル」を記載するが、今回の遠征では四万十のトンボ公園にも立ち寄っており、そこで出会ったトンボとチョウも後日掲載したいと思う。また、本記事では、トンボ公園にて撮影したホタル科ミナミボタル属のカタモンミナミボタル Drilaster axillaris Kiesenwetter, 1879 とホタル科オバボタル属のオバボタル Lucidina accensa Gorham, 1883 も掲載しておきたい。目的に中にはマドボタル属のオオマドボタルPyrocoelia discicollis (Kiesenwetter, 1874)もあったが、まだ発生時期には早かったようで、残念ながら出会うことができなかった。

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勝間沈下橋の写真

勝間沈下橋
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F5.0 1/5秒 ISO 800 -1 1/3EV(撮影地:高知県四万十市 2020.5.22 19:24)

沈下橋とホタルの写真

沈下橋とホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / バルブ撮影 F2.8 20分相当の多重露光 ISO 640(撮影地:高知県四万十市 2020.5.22)

四万十川とホタルの写真

四万十川とホタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 7分相当の多重露光 ISO 800(撮影地:高知県四万十市 2020.5.22)

カタモンミナミボタルの写真

カタモンミナミボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/100秒 ISO 1000(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 7:33)

オバボタルの写真

オバボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/100秒 ISO 3200(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 7:36)

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東京で舞う西日本型ゲンジボタル

2020-05-17 21:40:40 | ホタル

 今年もホタルが舞う季節がやってきた。すでに九州や四国ではゲンジボタルやヒメボタルが飛び始めており、関東でも神奈川県の一部で発生しているが、関東での最盛期を前に本記事を掲載しておきたい。

 ゲンジボタル Luciola cruciata Motschulsky, 1854 は、遺伝子の違いから6つのグループに分けられるが、フォッサマグナを境に西と東に分布する本種には、オスの集団同期明滅時の発光間隔に大きな相違が認められる。それは気温でも変化するが、おおむね20℃では西日本が2秒、東日本が4秒と言われている。また飛翔にも大きな違いがあり、東日本のゲンジボタルは、かなりゆったりと飛ぶという特徴がある。また、長崎大学の研究により五島列島のゲンジボタルは、発光間隔が「1秒に1回」で、全国で最も速く点滅することが最近明らかにされている。これらの相違は遺伝子型の相違による。
 東京の多摩地域では、公園ではない自然の河川や里山でゲンジボタルを見ることができるが、実は、その多くが西日本型の遺伝子を持つゲンジボタルである。それは、ゲンジボタルを増やそうと人為的に 持ち込まれたことによる。ただし、ゲンジボタルの遺伝子型の相違が明らかになったのは20年ほど前のことである。それ以前に、見た目にはまったく同じゲンジボタルに遺伝子型に違いがあり、発光にも違いがあることなど分かるはずもなく、人為的放流は無理もない。
 本来、分布域には生物地理学上生じた「地域固有性」がある。もし、もともとホタルが生息している場所に遺伝子の違う他地域のメスを種ボタルとして持ってきた場合、DNAは母性遺伝するために、他地域の遺伝子が急速に広がる可能性が極めて高い。つまり、その地域に固有の遺伝学的特徴が失われたりする「遺伝学的汚染・遺伝子攪乱」が生じ、その地域固有の生態的・形態的な特性も失われてしまうのである。
 ホタルの遺伝学的汚染や遺伝子攪乱は、東京都内だけでなく既に全国的に広がっている。他地域のホタルを移動し定着させても、生態系にはほとんど影響がない場合もあるが、元来、ゲンジボタルの生息北限は青森県だが、現在ではブラキストン線(本州と北海道の間に引かれた生物分布境界線)を越えて北海道にも人為的に持ち込まれている。長野県の上高地に人為的に持ち込まれ定着したゲンジボタルは、環境省によって外来種として駆除されたこともある。見た目には何も変わることのないホタルであり、繁殖して増えれば嬉しいものだが、それぞれ特徴を持った地域固有種は守らなければならない。五島列島に他地域の個体を放せば、発光間隔が「1秒に1回」という特徴は失われてしまう。安易な人為的移動と放流は、ホタル保護でも自然保護でもないということを知らなければならない。
 すでに他地域のゲンジボタルが定着した所では、ホタルに罪はなく、上高地のような理由がなければ駆除する必要はないが、今後は、遺伝子型を踏まえた保護・保全、再生活動をお願いしたい。

 ゲンジボタルの発光の違いや飛び方の違いは、肉眼で見ると明確に区別することは難しいが、長時間露光(多重露光)による写真では、その違いが顕著に表れる。
 以下に掲載した写真3~5は、東京都内におけるゲンジボタルの自然発生地で撮影したもので、写真6及び7は、千葉県の自然発生地で撮影したものである。写真2及び3の生息地は、かつて西日本のゲンジボタルを放流したことが明白であり、遺伝子解析からも西日本型であることが分かっており、写真4及び5は、東日本型であることが分かっている。2つの地域を比較すると、光跡の違いがよく分かる。ちなみに、五島列島の写真はこちら「メクル第453号 全国で最も速く点滅する!?「五島列島型」ホタル

 ゲンジボタルの発生は、千葉県は今週末から6月中旬まで、東京では6月中旬から7月上旬頃が発生時期であるが、昨年の台風15号と台風19号による豪雨で河川が氾濫しており、そのため多くの幼虫が流された可能性がある。従って今年のゲンジボタルの発生は、かなり少ないかもしれない。
 また、新型コロナウイルスの影響で「ホタル祭り」等のイベントは中止になっている地区が多い。ホタル観賞やインスタ映えするからという撮影目的だけで生息地に来る方々の中には、ホタルの生態を知らず、自身の目的達成のためにホタルを滅ぼす行為をする方々がとても多いので、保全の観点からも良いだろう。また、遺伝子型など考慮せずに、ホタルを単なる見世物、客寄せパンダ同様の商品として養殖する業者、自然発生地から乱獲してホテル等に販売している業者にとっては、ホタル関連のイベントが中止なれば商売が成り立たなくなるが、私としては、こんなに嬉しいことはない。これを機に永遠に止めて頂きたい。
 個人的にホタルの観察や撮影、観賞に行かれる場合は、ホタルの生態を十分に学んだ上で、新型コロナウイルス感染拡大防止のための対策を十分に行って頂きたいと思う。

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ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 9秒 ISO 1600(撮影地:東京都 2012.6.19 19:45)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 2秒 ISO 400(撮影地:東京都 2011.6.11 21:50)

ゲンジボタルの飛翔写真

西日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F1.4 16秒 ISO 200(撮影地:東京都 2011.6.21 20:58)

ゲンジボタルの飛翔写真

西日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F2.8 180秒分の多重 ISO 200(撮影地:東京都 2011.6.25 20:50)

ゲンジボタルの飛翔写真

西日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F1.8 180秒分の多重 ISO 200(撮影地:東京都 2011.6.25 21:13)

東日本型ゲンジボタルの飛翔風景の写真

東日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 12分相当の多重 ISO 200(撮影地:千葉県 2019.5.31)

東日本型ゲンジボタルの飛翔風景の写真

東日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 640 5分相当の多重(撮影地:千葉県  2019.6.08)

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ゲンジボタルの幼虫上陸

2020-04-05 15:02:05 | ホタル

 ゲンジボタルの幼虫上陸が各地で始まっている。幼虫は、蛹になるために水中から出て陸地を目指す。腹部第8節にある2つの発光器を光らせながら上陸する光景はとても幻想的であり、まだまだ謎の多い生態の神秘的な1ステージでもある。
 ゲンジボタルは、遺伝子型によって大きく2つのタイプ、西日本型および東日本型に分けられ生息環境や生態にも違いが認められ、幼虫の生活場所と上陸行動にもそれぞれ特徴がある。この記事では、成虫が乱舞する様子を何度も観察し撮影(ホタルの乱舞~里山で舞う東日本型ゲンジボタル~)している東日本型ゲンジボタルの生息地である千葉県某所での幼虫上陸の観察を記したいと思う。

 当生息地は、全体が典型的な谷戸になっており、谷戸の最奥から転々と発生場所がある。上陸を観察したところは、谷戸の入口付近で、水田脇の用水路である。コンクリート3面張りで、壁の高さはおよそ60cm、水底には泥が堆積し、水深は約15cm。カワニナはかなり多く生息している。ここより上部は小さな用水路で、台風や大雨でも濁流になるようなことはほとんどない。人為的な幼虫の放流やカワニナの放流など一切行われていない全くの自然発生地であり、谷戸全体では、毎年多くのゲンジボタルが発生している。
 千葉県内では最も成虫の発生時期が早く、5月中旬から見られ、ピークは5月下旬頃である。上陸してから羽化発生するまでの潜土期間はおよそ50日であるから、当地の幼虫の上陸時期は3月中旬頃からと予測できるが、幼虫は幾つかの条件が合致しなければ上陸を開始しない。これは遺伝子型の違いとは関係なく基本的な条件は以下の4つになる。

  • 日長時間が、12~13時間であること。
  • 上陸時の気温が、約10℃以上であること。
  • 降雨時、または降雨後で陸地が濡れていること。
  • 0.1lux以下であること。(満月の夜の地表面は0.2lux、街灯下は50~100lux)

 ゲンジボタルの終齢幼虫は、室内の人工飼育において、室内灯を照らすなど屋外の日長時間と異なる場合は、自然界とは違う時期に上陸しようとすることから、体内時計によって日長時間の変化を計り上陸時期を見極めていると思われる。日長時間が12~13時間くらいになると、幼虫は岸辺の水際に集まってきて、時々水面から頭部を出して水上を伺うような行動をする。おそらく気温や雨の状況を確認しているものと思われる。そして条件が揃えば夜間に上陸が行われるのである。
 まずは当生息地において日長時間が12時間を超えた今年3月1日から4月1日までの降水量と上陸開始時間である19時の気温をグラフで表してみる。(グラフ1)上陸は19時以降になってからも行われるが、19時の気温で考察することとした。

降水量と気温変化のグラフ

グラフ1.千葉県A市のゲンジボタル生息地における降水量と気温(19時)の変化 2020.3/1~4/1(気象庁のデータより作成)

 グラフ1の中で先の上陸の条件と完全に合致する日を見ると、3月10日と19日、28日、そして4月1日が該当するので、次にそれぞれの日の1時間ごとの降水量と気温の変化を表してみる。(グラフ2)

降水量と気温変化のグラフ

グラフ2.千葉県A市のゲンジボタル生息地における3月10日、28日、4月1日の気温と降水量(気象庁のデータより作成)

 このグラフから、3月10日と19日は上陸したであろうことが推定できる。(残念ながら3月10日および19日は観察を行っておらず、実際に上陸したかどうかは確認できていないので、あくまで気象データからの推定である。)以前、4月9日に千葉県の房総にて上陸を観察しているので、3月10日の上陸は時期的にかなり早いように思うが、温暖化の影響なのであろう千葉県内の他の地区では、ここ数年、上陸の時期が少しずつ早くなってきているという観察もある。今年は桜の開花も東京では3月14日で、1953年の観測開始以来最も早い開花となった。 当地のゲンジボタルの幼虫が3月10日に上陸しても不思議ではない。
 次の19日は、21時を過ぎてから雨が降り始めている。かつて、ゲンジボタルの幼虫が上陸を開始するには「朝から雨が降り続いていること」が条件と言われていたが、筆者が山梨県と千葉県の生息地で観察した結果では、上陸の時期であり、気温が10℃以上であれば、夜になって(深夜からでも)雨が降ってくれば上陸を開始することが分かった。ただし、霧雨ではダメで、地面がしっかりと濡れるまとまった雨でなければならない。(雨が夕方になって止んだ場合でも、陸地が十分に濡れていれば上陸を開始することも分かっている。)従って、これも推定ではあるが、19日もおそらく上陸したと思われる。
 次に合致する28日は、知人と観察に訪れたが、天気予報よりも雨の降り出しが遅く、18時の時点で霧雨。からからに乾燥した土壌を湿らすには、ほど遠い状況。気温は11℃。予報では、どんどん気温が下がり深夜から降雪の予報。実際に翌29日は、東京都内では雪が積もった。その日は19時を過ぎても水際で発光する幼虫の姿がなかったため、早々と諦めて撤収してしまったが、知人は、千葉県内のゲンジボタルの生息地をいくつか回った後、再び当地を訪れると、23時過ぎに10頭ほどの幼虫が上陸しているところを確認し、写真を撮影している。気温は7℃まで下がり、上陸が続くことはなかったと記載している。その記事はこちらになる。「オヤヂのご近所仲間日記」(ゲンジボタル 幼虫上陸の頃
 28日は遅い時間になればまとまった雨が降ることは分かっていたが、気温が下がってしまうことから早々と諦めて撤収してしまったことに、写真云々ではなく、ホタルの研究家として後悔の念に駆られたが、次のチャンスに恵まれ、夕方に現地入りし観察と撮影を行った。

 当日は、グラフ2で分かるように朝から雨で気温も18時で13℃と高かった。水路をのぞいていると、18時半におよそ10頭のゲンジボタルの幼虫が一斉に水際で発光を始めた。カメラのフレーム内では、1頭がゆっくりと壁を登り始めた。この1頭は22分かけて高さ約60cmの垂直のコンクリート壁を登ったが、なかなか後が続かない。途中で水中に戻ってしまった個体もいた。19時過ぎに、ちょうど発達した南岸低気圧が南海上を通過したため、かなりの土砂降り。まとまった雨が上陸の条件ではあるものの、土砂降りでは上陸も躊躇するようである。
 また不思議なことに、この生息地では、写真で見ると奥の壁しか登らない。手前側(カメラで撮影している側)は、すぐに田んぼになっており、畔は草刈りがされている。奥では、壁を登り切った先の斜面は草刈りがされていないのである。潜土したり隙間で蛹になるホタルは、少なくとも2か月は安定した環境でなければ羽化できない。幼虫は、安定した環境がどちらなのか分かっているのであろか?
 20時を過ぎると上陸幼虫も、水際で発光する幼虫も見えなくなった。ここのゲンジボタルの遺伝子は東日本型であるから幼虫の集団性もあまりない。更には上陸時期が終盤で個体数も少なくなっているのであろう。写真としての見栄えには物足りなさもあるが、この場所におけるゲンジボタルの生態の証拠写真と新たな知見を得ることが出来た。
 これら上陸した幼虫たちは、前蛹期間を経て蛹化、そして羽化して成虫となるが、蛹化までの日数は有効積算温度で決定される。この後の気温変化にもよるが、早ければGW明けには少しずつ成虫の発生が始まり、5月20日頃がピークになるかもしれない。関東地方では、これから上陸が始まる地区が多くある。チャンスがあれば、山梨県、東京都内の自然発生地において、引き続き上陸の観察と撮影を行いたいと思う。また、今年は、5月22日から2泊3日で高知県までゲンジボタルの観察と撮影に行く予定である。高知県におけるホタルの上陸報告から、おそらく高知も5月22日頃が発生のピークと思われるので、期待に胸が膨らむ。

 以下には、過去に撮影した水際でカワニナを食べるゲンジボタルの幼虫と上陸している幼虫の写真、そして今回撮影した上陸幼虫の光跡写真、120枚の写真1枚1枚をタイムラプス動画にして掲載した。尚、タイムラプス動画は、約15倍速のスピードになっている。先にも記したが、一番左の幼虫は、コンクリート壁を登りきるのに実際は22分かかっている。

参考:ホタルの幼虫上陸

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。尚、Facebookでは、以下掲載写真の一部を1920*1280 Pixelsで投稿しています。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタルの幼虫の写真

水際でカワニナを食べるゲンジボタルの幼虫
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F9.0 1/160秒 ISO 2000(撮影地:千葉県 2011.3.19 7:49)

ゲンジボタルの幼虫の写真

水際でカワニナを食べるゲンジボタルの幼虫(水中撮影)
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F20 1/25秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:千葉県 2011.3.19 8:19)

上陸するゲンジボタルの幼虫の写真

上陸しているゲンジボタルの幼虫(腹部第8節の左右両側に発光器がある)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 16秒 ISO 400(撮影地:千葉県 2011.4.09 20:24)

上陸するゲンジボタルの幼虫の写真

上陸しているゲンジボタルの幼虫の光跡
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F2.8 30秒 ISO 640 約60分の多重露光(撮影地:千葉県 2020.4.01 18:37~19:43)

ゲンジボタルの幼虫上陸の光跡(タイムラプス動画)

上陸するゲンジボタルの幼虫の写真

上陸しているゲンジボタルの幼虫の光跡
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 /バルブ撮影 F2.8 560秒 ISO 400(撮影地:千葉県 2011.4.09)

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