ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ヤクシマルリシジミ(開翅)

2020-10-28 17:41:52 | チョウ/シジミチョウ科

 ヤクシマルリシジミ Acytolepis puspa ishigakiana (Matsumura, 1929)は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)/ヤクシマルリシジミ属(Genus Acytolepis)のチョウで、和名は、屋久島で最初に発見されたことによる。翅の開張は27mm内外。ルリシジミに似ているが、雄の翅表の黒縁は幅広く、翅裏の黒点斑は強い。ただし季節型があり、高温期と低温期では、翅裏の斑紋や翅表の色が異なる。
 国内では20年程前まで紀伊半島南部、四国南部、九州南部、南西諸島に分布が限られていたが、最近では地球温暖化のためか急速に分布が拡大しており、2008年7月の 東京大学本郷キャンパス内昆虫調査では、関東圏では初めてヤクシマルリシジミを発見している。研究では、東京産の個体が日本本土内の移動によって分散したことが明らかにされているが、分散経路としては分布拡大に伴う飛来発生よりも、植栽による人為的導入の可能性が高いことが示唆されている。
 年に数回発生し、夏から秋に多い。越冬態は不定だが、1月末に三重県熊野市で観察報告があることから、成虫で越冬している場所もあるようである。
 本種は、2016年11月に撮影しているが、その時はオスの写真は1枚のみで、しかも半開翅写真であった。今回は、同じ場所でオスの開翅も撮影したので紹介したいと思う。日陰で全開翅した時の青色が美しく、印象的であった。

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ヤクシマルリシジミの写真

ヤクシマルリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 2000(撮影地:和歌山県串本町 2020.10.24 9:20)

ヤクシマルリシジミの写真

ヤクシマルリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 640(撮影地:和歌山県串本町 2020.10.24 9:34)

ヤクシマルリシジミの写真

ヤクシマルリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:和歌山県串本町 2020.10.24 9:36)

ヤクシマルリシジミの写真

ヤクシマルリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:和歌山県串本町 2020.10.24 9:37)

ヤクシマルリシジミの写真

ヤクシマルリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200 +2/3EV(撮影地:和歌山県串本町 2020.10.24 9:38)

ヤクシマルリシジミの写真

ヤクシマルリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 1000 +2/3EV(撮影地:和歌山県串本町 2020.10.24 9:41)

ヤクシマルリシジミの写真

ヤクシマルリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 1250 +1EV(撮影地:和歌山県串本町 2020.10.24 9:40)

ヤクシマルリシジミの写真

ヤクシマルリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200(撮影地:和歌山県串本町 2020.10.24 10:02)

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サツマシジミ

2020-10-26 21:42:51 | チョウ/シジミチョウ科

 サツマシジミ Udara albocaerulea albocaerulea (Moore, 1879) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)/タッパンルリシジミ属(Genus Udara)のチョウ。南方系で、本州(三重、和歌山、広島、山口の沿岸部)、四国と九州の沿岸部等に分布しているが、近年では、温暖化の影響により、大阪府南部や静岡県の藤枝市でも見ることができる。食樹は、サンゴジュ、クロキ、モチノキなどである。

 サツマシジミは2015年から追いかけ、2015年5月に三重県で、今年の5月に高知県で撮影しているが、何れも翅裏の様子だけ。過去には、和歌山へ2回、高知と三重にも1回ずつ遠征しているが、この時は出会うことさえ叶っていないチョウである。普通種ではあるが、生息場所が限られており、また遠方であるため発生のタイミングがつかめないことが原因であろう。
 今年は、新型コロナウイルスの感染予防のための自粛と長梅雨の影響で、チョウの撮影予定をすべて中止にしていた。唯一、5月の高知遠征時に、偶然イシガケチョウを撮っただけであった。今回、 このサツマシジミの開翅写真を撮ることを主目的として、和歌山県を訪れた。単にチョウの姿を撮るだけならば、出会いさえ叶えばそんなに難しくはないが、ゴマシジミを代表するように翅を全開にして止まることが少ない本種の開翅写真撮影は、長年の大きな課題である。

 この地は、今回で3回目の訪問である。タムロンのAF70-200mm MACRO レンズを使うのも、随分と久々である。前日入りして車中泊。朝7時から探索を開始した。日当たりの良い道をゆっくりと歩きながら探すとクロマダラソテツシジミ、ヤマトシジミ、ヤクシマルリシジミ、ウラナミシジミは多いが、本種は見つからない。この道には、ほとんど花が咲いていないので、探索場所を変え、センダングサの花が沢山さいている草地に絞ることにした。ただし、山の影になっているため太陽が当たるのは9時半を過ぎてからになった。
 朝日が当たり始めると、様々なチョウたちがセンダングサの花で吸密を始めた。一番多いのはヤクシマルリシジミである。10時をすぎて、ようやくミゾソバで吸密している1頭のサツマシジミ(オス)を見つけた。この日は10時の時点で気温が23℃。活性が高いためか翅を開いてくれない。他に個体は見当たらない。翅表は、最後にほんの少しだけ垣間見られた程度で、林の上へ飛んで行ってしまった。
 来年は、秋の高知にてヘイケボタルの幼虫観察を予定しているので、サツマシジミも探しに行って見ようと思う。

 以下には、サツマシジミ(2015年撮影を2枚含む)の他、今回見られたクロマダラソテツシジミ、ウラナミシジミ、ヤマトシジミも掲載した。クロマダラソテツシジミは、翅裏の模様に個体変異(変異と言うより、低温期型の特徴と教えて頂いた。)があり、ヤマトシジミのメスは青い鱗粉がのった低温期型であることが分かる。尚、ヤクシマルリシジミは次の記事で紹介したいと思う。

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サツマシジミの写真

サツマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 250(撮影地:和歌山県 2020.10.24 10:06)

サツマシジミの写真

サツマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 320(撮影地:和歌山県 2020.10.24 10:08)

サツマシジミの写真

サツマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 640(撮影地:和歌山県 2020.10.24 10:21)

サツマシジミの写真

サツマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 800(撮影地:和歌山県 2020.10.24 10:21)

サツマシジミの写真

サツマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 2000(撮影地:三重県 2015.5.17)

サツマシジミの写真

サツマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 2000(撮影地:三重県 2015.5.17)

クロマダラソテツシジミの写真

クロマダラソテツシジミ(低温期型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 800(撮影地:和歌山県 2020.10.24 10:21)

クロマダラソテツシジミの写真

クロマダラソテツシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 2000(撮影地:和歌山県 2020.10.24 9:22)

ウラナミシジミの写真

ウラナミシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 160(撮影地:和歌山県 2020.10.24 7:33)

ウラナミシジミの写真

ウラナミシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 250(撮影地:和歌山県 2020.10.24 7:34)

ヤマトシジミの写真

ヤマトシジミ(低温期型メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 1000(撮影地:和歌山県 2020.10.24 9:48)

ヤマトシジミの写真

ヤマトシジミ(低温期型メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 1600(撮影地:和歌山県 2020.10.24 9:50)

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橋杭岩

2020-10-25 14:58:22 | 風景写真/海

 橋杭岩は、和歌山県串本町にある奇岩群。およそ1,500万年前の火成活動により、泥岩層の間に流紋岩が貫入したものである。貫入後に差別侵食により、柔らかい泥岩部が速く侵食され、硬い石英斑岩が杭状に残されたもので、大小約40の岩が南西一列におよそ850メートルもの長きにわたって連続してそそり立っている。
 橋杭岩は、吉野熊野国立公園に属しており、国の名勝や国の天然記念物の指定も受け観光名所となっている。また橋杭岩を通して見る朝日はとても美しいと評判で日本の朝日百選の認定も受けている。2015年の5月に橋杭岩と朝日は撮影しているが、今回は夜間に訪れ、星々とともに撮影した。

 今回の和歌山へは、5月末に行った高知に次ぐ大遠征。今年初めてチョウを主目的としたもので、一人で自家用車を運転しての遠出も久しぶりである。チョウの撮影成果は後日の掲載として、まずは自然風景も計画に入れていたので紹介したいと思う。
 23日(金)に東京を出発したが、高速道路は約480km、残り120kmは一般道路を走らなければならない。途中の事故渋滞で時間がかかり、最初の目的地である和歌山県最南端の串本町まで9時間半かかってしまった。早速、「道の駅 くしもと橋杭岩」の駐車場に止め撮影を開始。月がまだ沈んでいなかったために写った星の数は少ないが、海の中に浮かび上がる橋杭岩とのコラボは、別の惑星にいるかのような不思議さを感じさせる一枚となった。天の川と写し込めば、さらに幻想的なものになるだろう。2015年にスマートフォンではあるが日の出時刻に撮ったものがあるので、一緒に掲載しておきたい。
 撮影後は、同じ串本町の「荒船海岸」に移動し車中泊。翌日はチョウを撮影し、スナップではあるが、荒船海岸の波打ち際を撮影。その次は、約130km離れた田辺市の「天神崎」へと向かった。「天神崎」は、引き潮時で潮位が150~140cm程度になると岩礁にたまった海水が綺麗に反射し、ウユニ塩湖のような景色になることで知られている。ちょうど、訪れる予定にしていた24日は、夕方に潮位の条件が合致する日であったので、計画に入れておいた。13時半に第一駐車場に到着し、ゆっくりとロケハン開始。
 ポイントを決めて待機するが、この日は西高東低の冬型の気圧配置。朝からずっと風が強く、夕方になっても風速5m以上の風が止まない。潮が引き始めて岩礁に海水がたまるが、波立ってしまい水鏡にはならなかった。冬型の気圧配置だから雲もなく快晴。ドラマチックな空もなし。集まった多くの観光客は、思い思いの場所で記念撮影。ある男女のカップルが写真を撮って欲しいと声をかけてきたので、借りたコンパクトデジカメでお二人を撮ってあげたら、出来栄えに感激していたが、私自身の写真の出来栄えは0点。証拠程度の一枚だけを掲載しておきたい。「美しい光景を一番美しい時に美しく撮る」という理念を達成できなかかったが、この場所の最高の一枚は、地元に住んでいないと撮れないだろう。

 天神崎を17時半に出発し、帰路に就く。帰りもおよそ600km。すべて高速道路、大阪経由で新東名高速。紀伊半島を一周したことになる。駿河湾沼津SAで仮眠をとり、25日午前6時に帰宅した。総走行距離は、1,350km。すべて自腹の Go to 和歌山でった。

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橋杭岩と星空の写真

夜の橋杭岩
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 15秒 ISO 1250(撮影地:和歌山県串本町 2020.10.23)

橋杭岩と星空の写真

夜の橋杭岩
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 15秒 ISO 400(撮影地:和歌山県串本町 2020.10.23)

橋杭岩と星空の写真

夜の橋杭岩
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 11秒 ISO 400(撮影地:和歌山県串本町 2020.10.23)

橋杭岩の写真

夜の橋杭岩
スマートフォンで撮影(和歌山県串本町 2015.5.2)

橋杭岩の写真

夜の橋杭岩
スマートフォンで撮影(和歌山県串本町 2015.5.2)

荒船海岸の写真

荒船海岸
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/100秒 ISO 100 +2EV(撮影地:和歌山県串本町 2020.10.24 10:53)

荒船海岸の写真

荒船海岸
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 100 +2EV(撮影地:和歌山県串本町 2020.10.24 10:56)

天神崎の写真

天神崎
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F18 1/25秒 ISO 100(撮影地:和歌山県田辺市 2020.10.23 16:45)

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西沢渓谷 三重の滝

2020-10-19 22:20:18 | 風景写真/滝

 西沢渓谷 三重の滝を撮ってきた。西沢渓谷は、秩父多摩甲斐国立公園内に位置し、国内屈指の渓谷美を誇り“一生に一度は行きたい!”と言われる景勝地。巨大な花崗岩を清流が浸食してできた渓谷は、いくつもの滝を作り、神秘的な魅力に満ちあふれている。中でも日本の滝100選に選ばれた「七ツ釜 五段の滝」は圧巻と言われている。
 渓谷には、一周4時間ほど(約10キロ)のハイキングコースが整備されているが、落石により登山道に大きな滑落箇所が確認され「三重の滝~カワズ池」間については工事のため、令和3年4月下旬まで通行止めとなっており、今回は西沢渓谷で最初のハイライトである「三重(みえ)の滝」だけを堪能した。

 西沢渓谷へは、今回が初の訪問。「渓谷は、雨上がりの曇天に撮るべし」と思っているため、10月になってからチャンスを伺っていたが、木々も色付き始めた18日に機会が訪れた。
 午前3時に起床して出発。紅葉のトップシーズンではないが、万が一人が多いことも考え、朝一番の光景を撮るための早起きである。中央道の勝沼ICで降り、フルーツライン(通称)を通って現地の市営駐車場(無料)に5時半着。すでに5台の車が止まっていたが、釣り人のようである。気温は8℃。空が明るくなってきたところで、早速、今年初の冬用コートを着て西沢渓谷へ向けて歩き出した。
 市営駐車場がある渓谷入口から「西沢山荘」までは、なだらかで歩きやすい舗装道路(一般車は通行止め)が続くが、「西沢山荘」を過ぎると道は細い登山道に変わる。幅は1.5mほどであろうか、右側は急斜面の崖。左側は谷で50m下に川。ふと、ここで熊に遭遇したらどうしようという不安が過る。走って逃げるか、戦うか・・・そんな事を考えながら進むと、道は行き止まりで右の谷側につり橋。「二俣吊り橋」である。笛吹川にかかる「二俣吊り橋」の長さはおよそ100m。若干揺れる。睡眠不足も相まって頭がクラクラする。足がすくんで周囲の光景を見る余裕はなく、真っすぐしか見ることが出来なかった。
 つり橋の先からは、急こう配の上りである。濡れた石で滑らないように設置された鎖に捕まって慎重に歩く。息を切らしながら小一時間歩いて、ようやく西沢渓谷 三重の滝に到着した。登山道から脇に降りる道があり、ここも鎖に捕まりながら降りると滝を眺めるための展望デッキがあり、そこからの撮影になる。

 西沢渓谷 三重の滝は、文字通り3段の滝。落差は10m程だが、流形の美しさは自然が造った芸術品と言える。ただし、決まった被写体を狭い展望デッキから撮るので、その場に行けば誰でもスマホでも撮れるし、インターネット上に掲載されている多くの「三重の滝」の写真は、どれも構図がほとんど同じである。それでもこの「西沢渓谷 三重の滝」の魅力を自分なりに写真として残しておきたいという思いがあった。そのために「雨上がりの曇天の早朝」を選んだのである。
 天気の良い日中では、周囲の花崗岩は乾いて白くなり、滝のいちばんの魅力である3段目の流れが引き立たない。雨後の朝であれば、岩肌は濡れて落ち葉も程よく付く。柔らかい光でコントラストが弱く、木々の葉も落ち着いた色合いになる。紅葉は、まだ色づき始めたばかりであるが、思った通りの状況の中、誰もいない展望デッキを独り占めにして西沢渓谷 三重の滝を堪能した。
 帰る頃には、青空が見えていたが、どこにも寄らず10時に帰宅した。

 次の週末は、和歌山へ行く予定である。サツマシジミの開翅写真が一番の目的だが、絶景と言われる風景も予定している。気象状況が良いことを祈りたいと思う。

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西沢渓谷 三重の滝の写真

西沢渓谷 三重の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / CPLフィルター使用 / 絞り優先AE F11 20秒 ISO 100 -1EV(撮影地:山梨県山梨市 2020.10.18 6:17)

西沢渓谷 三重の滝の写真

西沢渓谷 三重の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / CPLフィルター使用 / 絞り優先AE F11 13秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:山梨県山梨市 2020.10.18 6:32)

西沢渓谷 三重の滝の写真

西沢渓谷 三重の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / CPLフィルター使用 / 絞り優先AE F11 13秒 ISO 100 -1EV(撮影地:山梨県山梨市 2020.10.18 6:18)

西沢渓谷の写真

笛吹川と紅葉
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F11 1/20秒 ISO 100 -1EV(撮影地:山梨県山梨市 2020.10.18 7:23)

西沢渓谷の写真

笛吹川と鶏冠山
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F11 1/20秒 ISO 100 -1EV(撮影地:山梨県山梨市 2020.10.18 7:23)

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心の色

2020-10-17 17:37:46 | 風景写真/秋

 秋は紅葉の季節。野山は、春とは違った色彩で溢れるが、週末ごとに天気が悪く、予定していた場所に思う光景を撮りに行くことができていない。そこで、過去に撮影した写真からマクロレンズで撮った「秋の野花」を5点選んで掲載してみた。
 紅葉の風景とは違って彩は少ないが、優しい色で微笑む秋の野花を撮っている時は、こちらも優しい気持ちになり、心が安らぐものである。色に心理的、生理的影響を与えられているからだ。コンクリートジャングルの中で時間に追われて仕事をしている月~金とは「心の色」も違っているに違いない。平日の心の色は「灰色」か?
 試しにインターネット上で「心の色」の簡易診断をやってみた。(https://www.arealme.com/mental-color/ja/)結果は「青」。その意味内容は次の通りである。

「心の中が青色の人は、思考能力に長けており、感情を重視します。バランス能力もよく人間関係などの難しいこともバランスよくやり過ごします。ですが、完璧主義で他人にも自分にもとても厳しくあたり、他人の意見を聞かずに自分の意見をおし通すことが多いです。」当たっているかも知れない・・・

 実際は自分の「心の色」を見ることはできない。他人の心や気持ちも同様に見ることはできない。しかし、見えないものこそが大切なのではないだろうか。 私はキリスト教徒ではないが、聖書にこんな一節がある。「私たちは見えるものにではなく、見えないものに目を注ぎます。見えるものは過ぎ去りますが、見えないものは永遠に存続するからです。」 (新約聖書 コリントの信徒への手紙II 4章18節)ともすれば、あまりにも「目に見えるもの」にばかり縛られてしまう日常。その日々の中にあって、私たちは「目に見えない」ものを見る必要があるように思う。
 私たちが目を注ぐ、目には見えないけれども、決して過ぎ去らないもの・・・今日の自分がどんな心の色をしていようとも、他人を思いやり、優しい思いを渡せるようになりたいと思う。最後に、フランスの小説家であるアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの代表作「星の王子さま」にある名言で締めたいと思う。

「心で見なくちゃものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは目に見えないんだよ。」

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曼珠沙華の写真

曼珠沙華
Canon EOS 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/40秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:埼玉県日高市 2010.09.25)

秋桜の写真

秋桜
Canon EOS 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/800秒 ISO 200(撮影地:埼玉県日高市 2010.09.25)

ヒメツルソバの写真

ヒメツルソバ
Canon EOS 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/80秒 ISO 100(撮影地:東京都奥多摩町 2011.11.19)

ミゾソバの写真

ミゾソバ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 500(撮影地:東京都あきる野市 2011.10.16)

秋の野花の写真

秋の野花
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/800秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2011.10.16)

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秋の里山の虫たち

2020-10-06 21:22:07 | その他昆虫と話題

 この春に新型コロナウイルス感染拡大による非常事態宣言が出された頃、本ブログに「春の里山の虫たち」という記事を投稿した。外出自粛から撮影や観察に出かけることができず、外付ハードディスクに保存している膨大なRAWデータから、過去に撮影した写真セレクトし再現像して投稿したものである。
 それからおよそ半年が過ぎ、新型コロナウイルスの感染は終息してはいないものの、経済活動は平常に戻りつつあり、私自身の活動も「ホタルの会」の活動を除いては、6月以降はほぼ予定通りに遠征も行ってきた。この10月は、月末に「サツマシジミ」撮影の大遠征を予定しているが、紅葉などの風景には、まだ少し早いため投稿する写真に新しいものがない。そこで、今回は「秋の里山の虫たち」と題して、過去に撮影した写真から、この時期に見られるものを幾つか選び再現像して並べてみた。

 私のデジタル一眼レフでの撮影は、すべてRAWで撮影し、のちにパソコンでLightroomというソフトを用いてRAW現像している。人によっては、RAW現像が面倒くさいという理由から、jpegで撮影しそのままSNS等に投稿するいわゆる「撮って出し」の方も大勢いらっしゃるようだが、私は、撮影時のPicture Style設定(Canon)を階調優先の「ニュートラル」にしてRAWで撮影し現像している。
 この「ニュートラル」は、明暗差が大きい被写体でも繊細な質感を残したい時、鮮やかな色彩の中の微妙なニュアンスを表現したい場合に適している。コントラストは控えめに、彩度は強調を行わないため、他のスタイルに比べて白飛びや色の飽和が起きにくく、抑制のきいたしっとりとした表現となる。より豊富なディテールが情報として残っているため、後のPCでの現像に適した画質が撮影できるのである。
 私の写真の根本理念は「美」を追求し「美しいものを 一番美しい時に 美しく写す。」である。30年以上もフィルムで撮影してきたが、デジタルに変わった今でも、その理念に基づき撮影を行っている。RAW現像については本ブログ記事「デジタル写真~現像とフォトレタッチ」で記述したように、自然風景写真においても昆虫写真においても、元になるRAWデータとかけ離れるような画像調整やレタッチは施してはいないが、前々回の記事「エゾトンボの静止飛翔」では、ご存知のように次のようなコメントを頂いた。

「どの写真も彩度上げすぎなのか色合いが不自然に感じる。見たままの再現にもこだわった方がいいのではないか」

 写真をご覧いただいた方からの有難いご指摘であるが、先に記したようにRAWデータとかけ離れるような画像調整やレタッチはしていない。具体的には、コントラストを少し下げ、シャドウ部を少し持ち上げ、明瞭度を若干上げた程度である。色温度や彩度等のカラー部分はまったく調整していないが、コメントを頂いた方の眼には「色合いが不自然」と映ったようだ。
 それは、ある意味当然かもしれない。明るい背景で、しかも半逆光で被写体を撮る場合は、被写体が黒く潰れてしまうのを防ぐためにストロボを補助光として発光させ、適正露出を得たが、写った写真は見ままとは異なっている。色合いも違う。トンボの細部まで2方向からの光が回っており、更には1000分の1秒という一瞬である。カメラのセンサーの特性やレンズ特性もあるから見た目と違うのは当然である。このRAWデータを最小限に調整しながら現像すれば、肉眼では決して見ることのできない「色あい」が表れるのである。
 「見たままの再現にもこだわった方がいい」このコメントは「見たままの色合いが自然である」ということを意味していると思う。写真は絵画ではなく実写であるから、これも当然であろう。しかしながら、カメラメーカーやイメージセンサー、そしてレンズによっても色再現性は異なるし、特にヒガンバナのような赤色の再現は難しいと言われている。またフィルムでもベルビアやプロビア、かつてのコダクロームでも色合いは全く違う。更には、撮影時の天候でも異なる。ギラギラの太陽光が降り注ぐ日中と曇り空では、同じ色も違って見えることも理解しなければならない。

 本記事の最初の写真は「カトリヤンマ」を掲載した。これは秋の日の曇天の午後14時頃の撮影である。背景は、稲刈りが終わった田んぼで、枯れた稲とわずかな緑だけ。この単純な色彩がカトリヤンマの美しさを引き立てている。最後には、参考までにご指摘をいただいたエゾトンボの写真において、元のRAWデータをまったく画像調整を行わずjpegに変換した写真とブログに掲載した写真を並べてみた。これら全ての写真を比較しながら、今一度コメントの意味を考えたいと思うが、これからも「美」を追求し「美しいものを 一番美しい時に 美しく写す。」ことに拘っていくことに変わりはない。

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カトリヤンマの写真

カトリヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 800 +1EV(撮影地:神奈川県 2016.10.23)

アキアカネの写真

アキアカネ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 200 -1EV(撮影地:神奈川県 2016.10.29)

アキアカネの写真

アキアカネ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 500 +1EV(撮影地:福島県 2011.10.08)

秋の野の写真

秋の野

スカシバの写真

スカシバ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/1600秒 ISO 200(撮影地:東京都 2010.10.02)

秋の野の写真

秋の野

モンシロチョウの写真

モンシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/3200秒 ISO 200(撮影地:東京都 2010.10.02)

エゾトンボの写真

エゾトンボ(未調整のRAWデータをjpegに変換)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 1250(撮影地:長野県 2020.9.12)

エゾトンボの写真

エゾトンボ(LightroomeでRAW現像)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 1250(撮影地:長野県 2020.9.12)

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