ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

エゾトンボ科の飛翔

2023-09-08 17:29:19 | トンボ/エゾトンボ科

 先月、ホソミモリトンボを撮ることができたので、今回はエゾトンボ科の飛翔写真をまとめてみた。日本に分布するエゾトンボ科は以下の4属13種であるが、そのうち小笠原、北海道、南西諸島等に分布する種を除いた3属7種を撮影しており、それぞれ1枚ずつ飛翔の写真を掲載した。尚、撮影済みの種には各々の記事へのリンクを貼っておいたので参照頂きたい。

  1. ミナミトンボ属(Genus Hemicordulia
    • ミナミトンボ Hemicordulia mindana nipponica Asahina, 1980
    • オガサワラトンボ Hemicordulia ogasawarensis. Oguma, 1913
    • リュウキュウトンボ Hemicordulia okinawensis Asahina, 1947
  2. トラフトンボ属(Genus Epitheca
  3. カラカネトンボ属(Genus Cordulia
  4. エゾトンボ属(Genus Somatochlora

 写真は、昆虫少年だった頃からフィルムで撮っており、今でも趣味として続いている。美しい自然の風景やチョウやトンボ、様々な動植物に出会い、それらを一枚に残すことで、実に多くのことを学ぶことができる。私は、ホタルの生息環境や生態について細かく調べ保全活動をしているが、その学びはホタルの保全にも役立っている。ホタルは里山環境の結晶であるから、ホタルについてだけ詳しくてもダメなのである。そんな理屈からあちこち出掛けては、チョウやトンボを追いかけ、各種の生息環境や生態を学ぶとともに、各種の図鑑的写真や生態写真を残したいと思っている。
 私はプロの写真家ではないが、アマチュアの誰もが思っている「各種の特徴がわかる美しい図鑑写真」を私も撮りたい。チョウならば翅の裏と表を撮る。開翅写真には苦労するが、花や葉上等にいてさえすれば撮ることはできる。トンボの場合は、アカネ属のように枝などに止まれば、それぞれの種が分かる写真が撮れる。羽化などの生態写真では、被写体がその場から移動しないので、構図もピントも思いのままの場合が多いが、成虫はなかなか枝などの撮影しやすい場所に止まってくれないトンボも多い。そのような種は、止まるまで待つか、あるいは飛んでいる姿を撮るしかないのである。

 トンボの仲間では、同じ場所でホバリングしながら静止飛翔する種がいる。ルリボシヤンマもその1種で、体は大きく10秒以上も同じ位置で静止飛翔するから、それなりの結果が残せるが、静止飛翔しなかったり、ホバリングしても数秒だけの種類も多い。エゾトンボ科がそうである。
 ヤンマに比べて体が小さく、飛び回りながらあちこちでランダムに静止飛翔する。その瞬間を撮ろうと言うのだから、フィルムだったら何本無駄にするか分からない。ところが、最新のデジタルカメラ(オリンパス)では、AI技術の一種であるディープラーニング技術を用いて開発された「インテリジェント被写体認識AF」に「鳥認識」を追加することで、カメラが自動で鳥を検出し、鳥の瞳に対して優先的にフォーカス・追尾するため、撮りたい瞬間を逃さず、構図に集中して撮影することができるという。さらに、この鳥認識AFはトンボも認識するというのである。技術の進歩は素晴らしいが、新たにカメラとレンズを購入する余裕はない。

 私は、自然風景は2009年に購入した Canon EOS 5D Mark Ⅱ を使用し、昆虫は2010年に購入した Canon EOS 7D を未だに使っている。レンズも新しいものではない。この記事で掲載している写真のほとんどは、中古で購入した Tokina AT-X 304AF 300mm F4 というレンズで撮っており、オートフォーカスは遅く、勿論、手振れ補正などない。機能では最新機種に太刀打ちできないが、時間をかければ何とか図鑑的な飛翔写真を写せるようになってきた。ただし、トラフトンボ属を除くエゾトンボ科の同定は、尾部付属器の形状が重要になり、その尾部付属器の形状までを飛翔写真1枚に写すことは種によっては不可能である。それは、最新機種でも同じであろう。
 飛び回るだけでまったく静止飛翔しないトンボに対しては、流し撮りのテクニックが必要で、昨年、沖縄においてカラスヤンマを撮った時は、ピンボケでブレブレの写真しか撮れなかった。こんな出会いのチャンスが少ない時でも、最新機種ならば良い結果を残せるのだから羨ましいが、今後も古い機種で頑張りたいと思う。
 今回は、エゾトンボ科の飛翔写真をまとめたが、「アカネ属の連結飛翔と産卵」もブログに掲載しているので、ご覧頂ければ幸いである。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

トラフトンボの写真
トラフトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 200(撮影地:千葉県 2013.5.05 13:58)
オオトラフトンボの写真
オオトラフトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 2500 +1/3EV(撮影地:新潟県 2017.5.27 12:16)
カラカネトンボの写真
カラカネトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 800(撮影地:新潟県 2017.5.20 6:11)
タカネトンボの写真
タカネトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500 +2/3EV(撮影地:東京都 2010.08.28)
エゾトンボの写真
エゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 1250(撮影地:長野県 2020.9.12 9:53)
ハネビロエゾトンボの写真
ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Nissin i40 / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 100 +1EV(撮影地:栃木県 2022.8.15 7:29)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 200(撮影地:本州中部 2023.08.27 12:46)
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ホソミモリトンボ(ホバリング)

2023-08-28 14:05:31 | トンボ/エゾトンボ科

 ホソミモリトンボ Somatochlora arctica (Zetterstedt, 1840)は、国内では北海道と本州に分布し、本州では、これまで福島、栃木、群馬、長野、新潟、岐阜の6県で記録があるが、いずれも局所的であり、近年では確認されていない場所も多い希少種である。10年間探し続け、今年の7月下旬にようやく確実な生息地を自力で見つけ、観察と撮影を続けてきた。4回目の訪問となる今回は、初訪からおよそ一か月後でも出現しているのかを確認すること、そして出現しているならば、ピントの合った飛翔写真を撮る、この2つが目的である。

 ホソミモリトンボの生息地には6時半に到着。天候は快晴。早速、これまで毎回のように飛翔していた場所で待機することにした。前回8月11日に比べて、アキアカネの数が激減していた。多くが麓に降りて行ったのだろう。また、クロヒカゲなどのチョウの姿もほとんど見かけなかった。それだけ季節が進んだということである。
 気温が上がってきた8時。体感的にはこれまでと変わらないが、小さな虫を捉えるために飛び回るアキアカネの姿はない。前回は、すでにホソミモリトンボのオスの飛翔が確認でき、メスも産卵にやってきたが、 今回はその姿もない。もう、いなくなってしまったのか、あるいは前日の午後に激しい雷雨があったようなので、その影響も考えられるが、定かではない。その代わりに、ルリボシヤンマのオスが長いホバリングを行いながら飛び始め、別の場所ではオオルリボシヤンマのオスが縄張り飛翔を始めた。この2種が発生したとすると、体の小さいホソミモリトンボは追い立てられるので、その影響も心配である。
 待機から3時間以上経過した10時。ようやく湿原のはるか遠くを飛んでいるホソミモリトンボ1頭を発見。11時になると、いつも飛翔している場所とは違う湿地で、比較的長いホバリングを交えて飛んでいる ホソミモリトンボを発見。この場所では3頭のオスを確認。ただし、こちらに近い方でルリボシヤンマが縄張り飛翔をしており、20mほど先からなかなか近くに寄ってこないため、小さくしか写らず撮っても証拠写真にもならない。
 そして12時。いつもの場所で飛び回るオスが現れた。この個体は、メスが産卵に訪れる水路がある一定の範囲を2~3秒のホバリングを行いながら細かく移動していた。4回訪れた中で、一番ホバリングの時間が長い。途中、疲れたのか湿原の草むらに降りて止まったりもしていた。13時頃になると、ようやくメスが産卵に訪れたが、近くには寄ってくることはなく、しばらくして見失ってしまった。オスも飛んでくることがなくなり、今回は、現地を13時半に引き上げることにした。
 帰路は、相変わらずの渋滞。中央道は小仏トンネル手前から20kmの渋滞で上野原IC手前では事故も発生。韮崎では工事車線規制で6kmの渋滞。写真が撮れていなければ、疲れただけの遠征であっただろう。

 ホソミモリトンボを4回観察したなかでの結果をまとめてみた。勿論、個体や気象条件(今年は4回ともに早朝から快晴)によっても違いがあると思われる。

  • 出現期間は、およそ一か月である。(7月下旬~8月下旬)
  • メスは、7月下旬から産卵する。
  • オスの飛翔開始時刻は、季節が進むごとに遅くなる。
  • 季節が進むほど、ホバリングの時間が長くなる。
  • 季節が進むほど、産卵開始の時刻が遅くなる。

 今回の目的の1つであった「ピントの合った飛翔写真を撮る」ことは、何とか達成できた。トンボの静止飛翔(ホバリング)の撮影は、広角レンズのパンフォーカスで背景も写し込む方法や望遠レンズで背景をぼかして被写体だけをクローズアップする方法等があるが、今回の撮影場所では、被写体までの距離が遠いため、望遠レンズで撮るしかない。静止飛翔(ホバリング)は、トンボの種類や気象条件、活動時間、個体によっても違うが、ルリボシヤンマのように数10秒も同じ位置でホバリングしていれば、撮影は簡単であるが、本種のように移動しながら2~3秒のホバリングであるならば、難易度が高い。
 最新のデジタルカメラならば、被写体と認識した昆虫にピントを合わせ、動きを追尾するAI自動追尾機能やオートフォーカスが早いAF駆動用超音波モーターのレンズであれば、簡単に最良の画像を撮影することができるであろう。しかし、私の機材はそうではない。未だに、Canon EOS 7D に今回のレンズは Tokina AT-X 304AF 300mm F4 である。頭の先から尾の先端までピントが合い、触覚や細毛までブレることなく細かく描写でき、そして色彩等の特徴も分かる真横からの構図を撮ることは容易ではない。
 カメラとレンズで合計約2kg。長玉であるから三脚に付けなければ手振れしてしまう。上下左右に動くようにし、左目でトンボを追いながら右目でファインダーを覗いてレンズ内に収めようとするが、望遠レンズの狭い画角内にトンボを収めるのに一苦労する。オートフォーカスは使えないから左手の親指でピントリングを回す。ピントが合う前にトンボは移動してしまう。運よくピントが合ったと思ったらシャッターを切るが、合焦音がなることは稀である。トンボが3秒以上静止してくれれば成功率は高いが、それ以下ならば撮った写真は、ほとんどがゴミ箱行きである。
 今回は、4回の訪問の中で比較的長い2~3秒ほどのホバリングを繰り返し行ってくれたので、連写した1割くらいの確率で飛翔写真を残すことができた。尚、1と2枚目、3枚の体色が異なって写っているのは、個体差ではなく、1と2枚目は順光、3枚目は逆光での撮影の違いからである。また、背後からのカットでは、ホソミモリトンボのオスの特徴である尾部付属器が弧状に湾曲した様子も捉えることができた。
 来年は、本種の産卵の様子を詳細に観察すること、交尾態の撮影を目標に訪れたいと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 200(撮影地:本州中部 2023.08.27 12:46)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 125(撮影地:本州中部 2023.08.27 12:38)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 160(撮影地:本州中部 2023.08.27 11:40)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 200(撮影地:本州中部 2023.08.27 12:51)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 200(撮影地:本州中部 2023.08.27 11:41)
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ホソミモリトンボ(飛翔と静止)

2023-08-13 09:54:00 | トンボ/エゾトンボ科

 ホソミモリトンボ Somatochlora arctica (Zetterstedt, 1840)は、前々回の記事「ホソミモリトンボ」において証拠程度の写真ではあるが、初掲載として紹介したものの、やはりピンボケの証拠写真では気が済まない。8月4日にも再訪したが、個体の確認はしたものの写真撮影までには至らなかった。そこで、今回8月11日に3回目の訪問である。
 天候は晴れ。8月4日同様に、現地に5時半から待機。6時過ぎには湿原全体に太陽があたり、徐々に気温が上がっていく。初回は7時には飛翔が確認できたが、2回目は8時になってから、ようやく現れた。今回は7時半頃に現れたが、湿原上空で摂食飛翔するばかりでなかなか降りてこない。8時を過ぎると、メスが産卵にやってきた。今回も同じ場所での産卵であり、湿原に茂みの中に潜ってしまうので、どのように産卵しているのかは全く見えなかった。今回も産卵個体を確認できたことで、本種の確実な生息地であると言えるだろう。
 8時半頃になると、オスが頻繁に探雌に現れるようになった。今回は、3回訪れた中で一番個体数が多く、こちらからそれほど遠くない位置で短いホバリングも行っていた。また、飛翔の合間に草や枝で静止する様子も見られた。

 3回目の訪問となると、当地におけるホソミモリトンボの飛翔範囲や行動パターンが分かってきた。オスは、メスが産卵する場所の近くをこまめに移動しながら、1~2秒足らずの短いホバリングを行う。この飛翔を撮影するのは、撮影場所が限られるため難易度が高い。チャンスは何度もあったが、なかなかジャスピンが得られない。
 草や枝に止まれば、撮影は難しくはない。周囲を群れ飛ぶアキアカネより若干大きいかなというくらいの体長。同属の普通種であるタカネトンボに比べれば、かなり細身で小さい。飛翔時では確認することは困難であるが、静止時は、ホソミモリトンボのオスの特徴である弧状に湾曲した尾部付属器を確認することができる。顔面が意外に毛深いことも分かる。
 ホバリングや産卵の様子など、写した結果にはまだまだ課題が多く残る。また、いつまで出現するのかも知りたいところ。今季もう一度訪問して、更なる観察と撮影を行いたいと思う。(→こちら ホソミモリトンボ(ホバリング)8月27日訪問参照)

 前回は、正午まで6時間も直射日光を浴び続けたところ、翌日に体調を崩してしまったので、今回は午前10時で撤収することにした。お盆と三連休の初日でもあり、上りとは言え午後になると渋滞が怖い。さすがに帰路はまったく渋滞がなく、正午には自宅に到着した。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 160(撮影地:本州中部 2023.08.11 8:34)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 160(撮影地:本州中部 2023.08.11 8:34)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 160(撮影地:本州中部 2023.08.11 9:29)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 200(撮影地:本州中部 2023.08.11 9:07)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 3200(撮影地:本州中部 2023.08.11 9:15)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/200秒 ISO 3200(撮影地:本州中部 2023.08.11 9:15)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 500(撮影地:本州中部 2023.08.11 9:15)
ホソミモリトンボ(メス)の写真
ホソミモリトンボ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 100(撮影地:本州中部 2023.08.11 8:19)
ホソミモリトンボ(メス)の写真
ホソミモリトンボ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 100(撮影地:本州中部 2023.08.11 8:19)
ホソミモリトンボのの飛翔及び産卵場所の写真
ホソミモリトンボの飛翔及び産卵場所(湿原の中に細流があり、産卵場所となっている)
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ホソミモリトンボ

2023-07-31 14:27:12 | トンボ/エゾトンボ科

 ホソミモリトンボ Somatochlora arctica (Zetterstedt, 1840)は、エゾトンボ科(Family Corduliidae)エゾトンボ属(Genus Somatochlora)で、1840年にヨハンウィルヘルムゼッターシュテットによって最初に記載された。体長50mmほどの細身で、同属の他種とは、オスの尾部付属器が上から見ると弧状に湾曲すること、メスの腹部第3節背面に独特の丸い黄斑があること、産卵弁が後方に板状に突出することで区別できる。
 本種は、ヨーロッパ北部から中国東北部、シベリアなどに広く分布し、国内では北海道と本州に分布する。北海道では平地の湿地でも見られるが、グループの中では最も好寒性が強く、本州では、高冷地のミズゴケ、スゲ類が繁茂する遷移が進んだ浅い湿原に生息し、これまで福島、栃木、群馬、長野、新潟、岐阜の6県で記録があるが、いずれも局所的であり、近年では確認されていない場所も多い。
 環境省版レッドリストには記載されていないが、都道府県版レッドリストでは、栃木県で絶滅危惧Ⅰ類に、群馬県で絶滅危惧Ⅱ類に、新潟県と長野県で準絶滅危惧種としている。

ホソミモリトンボの分布図
図:ホソミモリトンボの分布図(環境省 自然環境局 生物多様性センター/ 「日本の動物分布図集」第3部 動物分布図(昆虫類 トンボ類)より)クリックで拡大表示

 ホソミモリトンボは、2011年7月に尾瀬で見たのが最初であるが、証拠にもならない写真しか撮れなかった。その後、毎年のように文献に記載された場所を訪れ探索を続けてきたが、一昨年、上高地の田代池で目撃できたのみで、他では確認すらできていなかった。
 さて、今年はどうするか。北海道に遠征すれば、撮影できる確率は高いのだろうが、本州で見つけたい。何回通っても確認できていない湿地に再訪して探索を続けても徒労に終わる可能性が極めて高い。それなら生息が確実な上高地へ行くか。しかし、上高地は観光客が非常に多く、限られた撮影場所に飛んできてくれる確率はかなり低い。そこで今年は、文献にも載っておらす、これまでに訪れたことがない湿原をgoogleマップで探し行って見ることにした。これまで訪れた中で、一番標高が高い場所になる。

 現地には6時半に到着し、まずはロケハン。誰もいない。生息環境に適していなければ、すぐに帰ろうと思ったが、生息の条件に合致していたため、カメラを準備して7時より探索を開始した。すると、すぐさま2頭のエゾトンボ系のトンボが飛び回っているのが目に入った。朝の食事タイムのようである。時折、目の前を通過する。どうも、これまで見てきたエゾトンボの仲間とは違ってスリムである。しかし、種類が判別できない。
 9時半頃になると、湿地の草原で短いホバリングを行うようになった。しばらくするといなくなり、数十分後にまた現れ、決まった場所で数秒のホバリングを繰り返していた。距離は6m。カメラを向けるが、ピントが合う前に移動してしまう状況。
 10時半頃になると、交尾をしながらタンデム飛翔する個体が遠くに見えた。この日は、全部で3組のタンデム飛翔を確認。すべて低空で飛翔し、近くの低木の枝に止まっている。ただし、距離は10m以上もあり撮影はできなかった。そのうち1頭が目の前の草むらに入って行くのが見え観察していると、メスが産卵に訪れたようである。完全に草むらで、地面が濡れているのかも分からない。何カ所か移動しながら草むらの潜っていく。長いと3~4分ほど出てこない。どのように産卵しているのかも見えなかった。その時に写した写真をモニターで確認すると、腹部第3節背面に独特の丸い黄斑がある。この特徴でホソミモリトンボであることが分かった。
 この個体は、見失ってしまったが、正午近くなって別のメスが産卵に訪れ、この個体も草原の中の非常に小さな窪みに降りて行くことが見られた。その時刻には、オスはまったく現れることはなかった。夕方にもオスのホバリングが見られると思い待機したが、この日は現れることはなかった。
 10年間探して求めていたホソミモリトンボをようやく間近で確認でき、証拠程度ではあるが写真に撮ることができた。たまたまこの湿原に飛んできた個体ではなく、数頭を確認したこと、タンデム飛翔と産卵も確認しているので、確実な生息地であろうと思われる。エゾトンボ科では、これまでタカネトンボ、エゾトンボ、ハネビロエゾトンボ、カラカネトンボを観察し撮ってきた中で、本種は、生息環境が他の種とはまったく異なっており、また昨年まで本種を探索していた湿原や湿地とも異なっており、改めて生息できる環境を学ぶことができた。
 ホソミモリトンボは、写真初掲載のトンボで、ブログ記事「昆虫リストと撮影機材」「蜻蛉目」で113種類目となる。

 ホソミモリトンボを撮るまでに10年以上を要したが、残念ながら今回はピンボケ写真が多く、オスの決定的図鑑写真ではない。近いうちに再度訪れ、ホバリングや静止写真、運が良ければ交尾態の写真を狙ってみたいと思う。(後に静止とホバリングの写真撮影は叶った。参照投稿記事をご覧頂きたい。)
 他の昆虫でも、撮影までに時間を要した種は多い。例えば、オオキトンボを撮るために兵庫県に、ヒロオビミドリシジミは大阪府まで何度も通ったが、ゴマシジミ(青ゴマ)の開翅を撮るためには、長野県に5年間で10回通い、サツマシジミの開翅を撮るために和歌山まで8年間で10回通って撮影した経験がある。これらは確実に生息している場所で、目前に多くの被写体を前にしている状況での事である。ヒサマツミドリシジミは、北陸まで8年間で9回通い撮影できたことを思いだす。ヒサマツミドリシジミでは、生息地ではあっても、一度もオスを確認できておらず、9回目でやっと出会うことができた。これらすべて、各種生態の基本的知識を学ぶことは勿論、遠征の経験から得た知見が何より役立った。これらは、「撮影できた」という結果だけではなく、各種の保全にも役立つものである。
 今回撮影できたホソミモリトンボでも同様で、10年以上探索した経験と今回得た知見は、本種の保全に欠かせないものであると思う。今後も継続して訪問し、本種の本州における生息環境と生態を調べていきたい思う。
 尚、今回の撮影場所は、論文などで発表すれば、ホソミモリトンボの生息地としては、分布上かなり貴重な場所であると思われる。しかしながら、本種の幼虫期は3~4年と推定され、同属よりも比較的長いこと、湿原の遷移という環境変化が進行していることから、あと何年生息できるか分からず、また、インターネット上で地名がある程度公表された場所では、採集者も多いため、保全の観点から生息地の情報は一切、記さないこととしたい。
 帰路は中央道を使ったが、談合坂SA手前5km地点から小仏トンネルまで20kmの渋滞。特に談合坂SA手前から上野原ICまでは、まったく動かないことも多々あり、拷問のような渋滞であった。八王子JCからはスムーズであったが、八王子の料金所からは、また渋滞。今度は事故で、降りる国立ICまで50分の表示。仕方なく、八王子から一般道で自宅に帰った。

参照投稿記事

引用:環境省 自然環境局 生物多様性センター / 「日本の動物分布図集」第3部 動物分布図(昆虫類 トンボ類)

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 160 -2/3EV(撮影地:本州中部 2023.07.30 7:43)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:本州中部 2023.07.30 7:44)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:本州中部 2023.07.30 7:47)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 250 -2/3EV(撮影地:本州中部 2023.07.30 9:53)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 250 -2/3EV(撮影地:本州中部 2023.07.30 9:58)
ホソミモリトンボ(メス)の写真
ホソミモリトンボ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 200 -2/3EV(撮影地:本州中部 2023.07.30 10:33)
ホソミモリトンボの産卵場所の写真
ホソミモリトンボの産卵場所(湿原の中に細流がある)
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ハネビロエゾトンボ(飛翔)

2022-08-17 17:46:26 | トンボ/エゾトンボ科

 この時期は、未だに見たことも撮影したこともないチョウやトンボを追いかけて行って見たい場所があるが、13日土曜日は出勤でしかも台風8号が関東を通過。翌14日は台風一過とはならず、休日の15日も遠征計画場所は天候不順のため断念。
 8月になってからどこにも行っていないストレスもあり、15日は、一昨年に撮影不十分な結果で終わった「ハネビロエゾトンボの飛翔」および未撮影の産卵シーンを撮っておこうと生息地へ向かった。自宅を午前5時に出発し、現地には7時に到着。まだお盆休み中なのだろう、平日でも高速道路は車の数が少なかった。
 早速、生息地である河川を見てみると1頭のハネビロエゾトンボが飛翔していた。ただし、台風の影響だろうか、川は増水し、またつる性植物が繁茂していて河川に近づくことができない。別の河川の下流域も見てみたが、目前でハネビロエゾトンボは飛んではいるものの、偵察的飛翔ですぐに姿を消してしまい撮影不可能な状況であった。仕方なく最初のポイントに戻り、飛翔している本種にカメラを向けてみることにした。
 飛翔以外にも羽化や産卵など撮影したいシーンは多くあるが、まずは飛翔シーンである。ただし、飛んでいる姿においてハネビロエゾトンボの特徴を写さなければ意味がない。本種が属するエゾトンボ科は互いによく似ている。種の同定は、オスの副性器や尾部上付属器、メスの産卵弁の形状から判断するが、アカネ属のように枝等によく止まってくれれば簡単だが、そうでなければ飛んでいる場面で写すしかない。種によっては空中で静止しながら飛翔(ホバリング)してくれるが、それも長くて数秒であるから簡単ではない。
 本種の場合、まず早朝は飛んでいる虫を食べる食事の飛翔。その後、他のオスの侵入を防ぐパトロール飛翔と産卵に訪れたメスを探す探雌飛翔をテリトリーの範囲で行う。この間に短いホバリングを行う。今回は、川下から川を見下ろす固定位置で、本種までの距離は最低で3mだが、川上までを行ったり来たりしている。しかも逆光である。観察していると、1~2秒ほどのホバリングするポイントがあり、撮影開始である。
 トンボの飛翔撮影は、撮影者によってその方法は様々だ。広角レンズで置きピンして撮る方法もあるが、私の場合は望遠レンズでマニュアルフォーカス。ファインダー内でトンボを追いかけながらピントが合ったと思った瞬間にシャッターを切るスタイルである。長いことフィルムカメラで撮っていた癖なのだろう連写はしない。10枚撮ってピントが合っているのは1~2枚である。そして特徴がわかる図鑑写真となれば、1パーセントにも満たない。
 今回は制約のある条件下であり、思うような成果は得られなかったが、以下には5枚を掲載した。6枚目は一昨年に撮影したものを比較として掲載した。
 気温32℃。湿地帯でもあり将にサウナ状態。蒸し暑さで蚊も元気がない。汗がこれでもか!というほど噴き出る状況で、午前10時には耐え切れなくなり、この場を引き上げることにした。サウナでは、水風呂へ交互に入ることで交感神経が刺激され、血流が良くなることで陶酔感いわゆる「整う」という感覚が得られるというが、この場で水を浴びなくても陶酔感が得られるトンボの写真を撮りたいものである。機会があれば、今度は産卵シーンを撮りたいと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

ハネビロエゾトンボの飛翔写真
ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 100 +1EV ストロボ発光(撮影地:栃木県 2022.8.15 7:29)
ハネビロエゾトンボの飛翔写真
ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 100 ストロボ発光(撮影地:栃木県 2022.8.15 7:26)
ハネビロエゾトンボの飛翔写真
ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 800 +2/3EV(撮影地:栃木県 2022.8.15 8:43)
ハネビロエゾトンボの飛翔写真
ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 100 +1EV ストロボ発光(撮影地:栃木県 2022.8.15 7:29)
ハネビロエゾトンボの飛翔写真
ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/80秒 ISO 400 ストロボ発光(撮影地:栃木県 2020.9.04 7:25)

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エゾトンボの静止飛翔

2020-09-15 16:07:58 | トンボ/エゾトンボ科

 エゾトンボの静止飛翔は、8月22日に撮影し記事「エゾトンボ」の中で6枚掲載済であるが、今回、同じ湿地を訪れた際、まだ多くのエゾトンボがおり、あちこちの湿地上で静止飛翔(ホバリング)をしていたので、前回よりも奇麗に撮りたいという欲に駆られてカメラを向けた。
 このブログは「今日はこんな所に行ってきました」と過去に掲載した同じような写真を連ねる日誌ではないと申し上げているが、撮影した結果に満足できなければ何度でも撮り直す。自然風景も昆虫の生態においても「何とか残せた」という証拠程度の写真を掲載することもあるが、根本理念は「美」を追求し「美しいものを 一番美しい時に 美しく写す。」である。まずは自己満足できる結果を残し、そして写真をご覧頂いた方々からも高評価を得られるものでなければならない。そのために何年もの月日を費やすこともある。良い結果が残せれば、その後は次の目標やテーマ、更に深い領域へと進むことになる。

 さて、トンボの静止飛翔(ホバリング)の撮影は、広角レンズのパンフォーカスで背景も写し込む方法や望遠レンズで背景をぼかして被写体だけをクローズアップする方法等があるが、私の場合は、常に後者の方法で撮影している。
 静止飛翔はトンボの種類や気象条件、活動時間、個体によっても違うが、同じ位置に止まっているのは2~3秒、長いと5~10秒ほどである。テリトリーの範囲を飛び回っている中での行動であるから、構図が難しい。頭の先から尾の先端までピントが合い、触覚や細毛までブレることなく細かく描写でき、そして色彩等の特徴も分かる真横からの構図を基本と考えて撮っている。素早く飛び回りながらある場所で数秒間静止飛翔するトンボを真横から狙ってピントを合わせてシャッターを切るのであるから、カメラやレンズの性能ではなく撮影者の勘と腕が試される。
 私の場合は、カメラはCanon EOS 7D、レンズは中古で購入した古いトキナーの単焦点300mmの組み合わせが多い。三脚にカメラを固定し上下左右にカメラを動かせる状態にする。置きピンではなく、左目でトンボを追って右目でファインダーを覗きながら画角に収まったらマニュアル・フォーカスでピントを合わせる。ピントリングは左手の親指で瞬時に回し、ピントが合ったと思ったらシャッターを切る。その間はおよそ3秒。トンボが3秒以上静止してくれれば成功率は高い。連写はしないが、フィルムでは決して撮らないだろう。また以前は使っていなかったが、昨今ではストロボも発光させている。半逆光(逆光とトップライトの中間)で撮ることが多いからである。
 エゾトンボ科は、複眼と胸部の金属光沢のある緑の輝きが特徴で、それは光線によって変化する。今回、様々な角度と光線で撮影し、前回に掲載した写真よりもエゾトンボの魅力や特徴が分かる飛翔写真に少しだけ近づけたと思う。また、今回は9月12日においても発生を確認したという「記録」の意味もあり、再度、エゾトンボの静止飛翔を掲載した。

参照:エゾトンボ

以下の掲載写真は、1024*683 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で表示されます。

エゾトンボ(静止飛翔)の写真
エゾトンボの静止飛翔
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 1250(撮影地:長野県 2020.9.12 9:53)
エゾトンボ(静止飛翔)の写真
エゾトンボの静止飛翔
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 1250(撮影地:長野県 2020.9.12 9:53)
エゾトンボ(静止飛翔)の写真
エゾトンボの静止飛翔
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 1250 -2/3EV(撮影地:長野県 2020.9.12 8:55)
エゾトンボ(静止飛翔)の写真
エゾトンボの静止飛翔
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 1250 -2/3EV(撮影地:長野県 2020.9.12 11:00)
エゾトンボ(静止飛翔)の写真
エゾトンボの静止飛翔
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 1250 -2/3EV(撮影地:長野県 2020.9.12 8:58)
エゾトンボ(静止飛翔)の写真
エゾトンボの静止飛翔
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/1250秒 ISO 1250 -2/3EV(撮影地:長野県 2020.9.12 9:17)
エゾトンボ(静止飛翔)の写真
エゾトンボの静止飛翔
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 1250 -2/3EV(撮影地:長野県 2020.9.12 8:56)
エゾトンボ(静止飛翔)の写真
エゾトンボの静止飛翔
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 1250 -2/3EV(撮影地:長野県 2020.9.12 8:57)
エゾトンボ(静止飛翔)の写真
エゾトンボの静止飛翔
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 1250(撮影地:長野県 2020.9.12 11:03)

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ハネビロエゾトンボ

2020-09-05 14:15:15 | トンボ/エゾトンボ科

 ハネビロエゾトンボ Somatochlora clavata Oguma, 1913 は、エゾトンボ科(Family Corduliidae)エゾトンボ属(Genus Somatochlora)で体長約57mm~ 70mm。北海道・本州・四国・九州に分布し、エゾトンボ属ではもっとも南方まで分布する。同属のタカネトンボが池沼性、 エゾトンボが湿地性に対して、ハネビロエゾトンボは、平地から低山地の周囲が樹林に囲まれた薄暗い細流や湿地の細流、河川上流域のうす暗い渓流などに生息する流水性種である。幼虫は流れが干上がってもいきているようである。
 6月~7月頃に羽化し、羽化直後の若い個体は羽化水域から離れた疎林で生活、成熟する8月には流域に戻り、オスは流水の上にホバリングを交えて縄張りを形成し、9月頃まで見ることが出来る。
 本種の色合いは、光沢感少なく黒みが強く、体型は太く短い感じである。未成熟のオスは胸部の黄斑が目立つが、成熟すると一部を残して消える。メスは成熟しても胸部側面の黄斑が顕著である。また他のエゾトンボ属各種と同様、オスの場合は尾部付属器の形状で、メスの場合は産卵弁の形状で区別できる。

 ハネビロエゾトンボは、環境省カテゴリでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)に選定され、実に39の都道府県のRDBに絶滅危惧種として記載されている。東京都と神奈川県では「絶滅」、撮影した千葉県では絶滅危惧Ⅰ類及び最重要保護生物種に選定、栃木県では準絶滅危惧種に選定されている。
 農薬などの流入による水質汚濁、開発などに伴う生息地の破壊や消滅、森林伐採などに伴う生息地の乾燥化、谷津田の放棄による植生遷移などが減少の原因と考えられる。

 前々回の記事では「エゾトンボ」を紹介したが、今回は同属であるハネビロエゾトンボの飛翔の様子を撮影したので、2012年に千葉県で撮影した静止写真とともに掲載したい。
 今回の撮影場所は、肉眼でも簡単に判別できるほど明るい細流であるが、農業用水路のためか、ほとんど流れが干上がっており、極一部に水が溜まっているという状況であった、また時期が遅いこともあり、確認できた個体は2頭のオスのみであった。オスは、朝日が当たり始めた午前7時過ぎから飛翔を開始。流れ上の狭い範囲を短いホバリングを交えて行ったり来たりしながら縄張り飛翔を繰り返し、8時頃になると流れから離れて摂食飛翔を行っていた。
 千葉県の生息地に比べて明るいことから撮影はし易いものの、午前7時台は活動時間的なものだろうかホバリングが1~2秒と短い。また、シオカラトンボやアカネ属のトンボ多く、それらを追い払うので頻繁に移動する。更にはカメラとストロボの設定ミスからシャッタースピードが遅くなってしまい、静止飛翔の様子をキッチリと撮ることができなかった。昼近く、または午後ならばもっと長いホバリングをするのかもしれないが、直射日光のあたる気温34℃の蒸し暑さに耐え切れず、証拠程度の写真で撤収することにした。
 来年は最盛期に訪れ、再度、静止飛翔を狙うとともに産卵シーンも収めたいと思う。

参照:日本のレッドデータ検索システム

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ハネビロエゾトンボの写真

ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F6.3 1/80秒 ISO 400(撮影地:栃木県 2020.8.30 7:25)

ハネビロエゾトンボの写真

ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F6.3 1/200秒 ISO 400(撮影地:栃木県 2020.8.30 7:25)

ハネビロエゾトンボの写真

ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 400(撮影地:栃木県 2020.8.30 7:28)

ハネビロエゾトンボの写真

ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F6.3 1/100秒 ISO 400(撮影地:栃木県 2020.8.30 7:28)

ハネビロエゾトンボの写真

ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F6.3 1/40秒 ISO 400(撮影地:栃木県 2020.8.30 7:37)

ハネビロエゾトンボの写真

ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 内部ストロボ使用 / 絞り優先AE F9.0 1/60秒 ISO 400(撮影地:千葉県 2012.8.04 6:30)

ハネビロエゾトンボの写真

ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 内部ストロボ使用 / 絞り優先AE F9.0 1/60秒 ISO 3200 -1 1/3EV(撮影地:千葉県 2012.8.04 6:37)

ハネビロエゾトンボの写真

ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 内部ストロボ使用 / 絞り優先AE F9.0 1/20秒 ISO 400 -1 2/3EV(撮影地:千葉県 2012.8.04 6:40)

ハネビロエゾトンボの生息環境写真

ハネビロエゾトンボの生息環境

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エゾトンボ

2020-08-24 22:04:25 | トンボ/エゾトンボ科

 エゾトンボ Somatochlora viridiaenea (Uhler, 1858)は、エゾトンボ科(Family Corduliidae)エゾトンボ属(Genus Somatochlora)のトンボ。体長約5cmで、体は全体に金属光沢のある金緑色で美しい。
 北海道・本州・四国・九州に分布。平地から山地の豊かな樹林に囲まれた明るい湿地に生息している。北海道や東北では平地で普通に見られるが、中部地方では特に高層湿原に多く見られる。環境省カテゴリに記載はないが、26の道府県においてレッドデータブックに記載しており、東京都及び千葉県では絶滅。(ただし、東京都内では細々と生息)埼玉県、静岡県、福岡県、熊本県では絶滅危惧Ⅰ類としている。いずれも産地の限定と生息環境の悪化が原因となっている。
 エゾトンボは、かつて本州産の後翅長40ミリ以上のものを亜種として区別しオオエゾトンボ Somatochlora viridiaenea atrovirens Selys,1883 と呼んでいたが、 個体のサイズはヤゴの栄養状態や生育年数による違いであることが証明されており、またDNA解析でも明確な差異がないことから、現在はこの和名は使われていない。

 今回訪れたのは、長野県のこれまで寄ったことがない標高約1,400mの湿地。主目的は某ヤンマのオス型メスであったが、目撃はできたものの撮影には至らなかった。 再び現れるのを待つ間、湿地上でホバリングするエゾトンボ科を撮影することにした。エゾトンボ科は、飛んでいる時に見ただけでは区別するのが難しい。種によって 生息環境が異なるためある程度は同定できるが、オスの尾部付属器の形状で区別するのが確実である。
 リリースを前提に網で捕獲して形状等を調べるのも一つの方法であるが、できれば写真でも同定できる画像を撮りたい。幸いホバリングの時間が3~5秒と長いため、トンボの真横からピントを合わせて撮影することができた。今回撮影した画像をみると、何度も撮っているタカネトンボとは違う。生息環境もタカネトンボやハネビロエゾトンボとは異なっている。帰宅してから専門書等で調べると本種は「エゾトンボ」であることが分かった。本種は、2011年8月に福島県会津若松市にてメスを撮影しているが、オスは今回が初撮影である。
 エゾトンボは、午前8時半頃にはオスが日当たりの良い湿地上で3頭がホバリングしており、メスも1頭産卵にきた。撤収する午前11時頃にはホバリングするオスも姿を消した。当地では、数年前から某トンボを探索しており未だに見つけられていないが、この湿地ならば生息している可能性が大である。また、某ヤンマのオス型メスの生息も確認できたため、再訪して目的を達成したいと思う。

参照

  1. カラカネトン
  2. タカネトンボ

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エゾトンボの写真

エゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/5000秒 ISO 2000 Speedlite 550EX E-TTLハイスピードシンクロ(撮影地:長野県 2020.8.22 8:55)

エゾトンボの写真

エゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/4000秒 ISO 2000(撮影地:長野県 2020.8.22 9:00)

エゾトンボの写真

エゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/4000秒 ISO 2000(撮影地:長野県 2020.8.22 9:00)

エゾトンボの写真

エゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/5000秒 ISO 2000 Speedlite 550EX E-TTLハイスピードシンクロ(撮影地:長野県 2020.8.22 9:01)

エゾトンボの写真

エゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/1600秒 ISO 2000(撮影地:長野県 2020.8.22 8:58)

エゾトンボの写真

エゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/4000秒 ISO 2000(撮影地:長野県 2020.8.22 8:55)

エゾトンボの写真

エゾトンボ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/4000秒 ISO 2000(撮影地:長野県 2020.8.22 8:55)

エゾトンボの写真

エゾトンボ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F3.5 1/320秒 ISO 200(撮影地:福島県会津若松市 2011.8.7)

エゾトンボの写真

エゾトンボ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/2500秒 ISO 1250(撮影地:長野県 2020.8.29 8:21)

エゾトンボの写真

エゾトンボ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 1250 +1EV(撮影地:長野県 2020.8.29 8:22)

エゾトンボの写真

エゾトンボ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/2500秒 ISO 2000(撮影地:長野県 2020.8.29 9:47)

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タカネトンボ(静止と産卵)

2017-08-26 20:33:28 | トンボ/エゾトンボ科

 タカネトンボ Somatochlora uchidai Forster, 1909 は、エゾトンボ科(Family Corduliidae)エゾトンボ属(Genus Somatochlora)で、北海道・本州・四国・九州・屋久島に分布している。和名の“タカネ”は、高嶺(高い山、高い峰の意)にちなんでいると言われるが、標高300mほどの丘陵地から標高1,600mの高地まで分布し、周囲を樹林に囲まれた閉鎖的で小規模な池沼等に生息している。

 この時期は、タカネトンボの最盛期である。東京都内の低山地や丘陵地の神社の池や林内の水たまり・・・どこでも見かける。オスは、池の上でこまめに移動しながらホバリングし、縄張りを見張っている。そんな様子を見ると、ついカメラを向けてしまう。過去に何度も撮影し本ブログ記事においても「タカネトンボ」として写真を掲載しているが、今回もカメラを向けてしまった。ただし、今回はホバリングを撮るためのレンズを持っていなかったので、静止と産卵の撮影に挑戦した。
 東京都内では珍しい種ではないが、環境省カテゴリでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)に選定され、青森、秋田、山形、宮城、新潟、長野、石川の各県RDBでは絶滅危惧Ⅰ類に選定されており、岩手と富山県では絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。

 タカネトンボの美しさと魅力は、鮮やかな金緑色に輝く複眼とメタリック・グリーンの胸部であろう。枝に止まったところで、ストロボを自動調光で発光させて撮影。また自然光のみでも撮影した。(後日、9/18に自然光のみで撮影した写真を2枚追加した。)
 池上からオスが姿を消すと、それほど間を置かずにメスが産卵にやってくる。メスは、一度、池面に腹部を付けて腹端に水を含ませ、その後、泥の岸辺や苔むした石等に卵と水滴を一緒に飛ばして貼り付けるという産卵方法である。そのためだろうか、メスの産卵時の腹端は大きく上下に開いているのが特徴である。
 過去にも産卵の様子は撮影し「タカネトンボ(産卵)」として掲載しているが、今回も産卵そのものの瞬間ではなく、産卵飛翔の証拠程度の写真しか撮ることができなかった。薄暗い池においてストロボを使用すると、夜に撮影したかのような画面になり、またタカネトンボの体色はギラギラした感じに写ってしまうので、ストロボは使いたくない。しかし、明るいレンズでなければ、シャッタースピードを稼げずに被写体ブレの写真になってしまう。なかなか難しい撮影である。
 これもピンボケで証拠程度であるが、過去に撮影したタカネトンボの産卵の動画を参考までに掲載した。この動きを写真で撮るのは、至難の業である。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、すべて1024*683 Pixelsで掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

タカネトンボの写真

タカネトンボ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/50秒 ISO 400 -1/3EV ストロボ使用(2017.8.26)

タカネトンボの写真

タカネトンボ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/40秒 ISO 400 ストロボ使用(2017.8.26)

タカネトンボの写真

タカネトンボ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 3200 -2/3EV(2017.8.26)

タカネトンボの写真

タカネトンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/125秒 ISO 3200(2017.9.18)

タカネトンボの写真

タカネトンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 3200(2017.9.18)

タカネトンボ産卵の写真

タカネトンボ(産卵飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/100秒 ISO 3200(2017.8.26)

タカネトンボ産卵の写真

タカネトンボ(産卵飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 3200(2017.8.26)

タカネトンボ産卵の写真

タカネトンボ(産卵飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F4.0 1/50秒 ISO 3200(2017.8.26)

タカネトンボ(産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / (2014.9.14)

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オオトラフトンボ(飛翔と産卵)

2017-05-29 22:30:42 | トンボ/エゾトンボ科

 オオトラフトンボの飛翔と産卵を撮るべく、一週間前に訪れた池を再訪した。前回は羽化個体は撮影したが、成熟個体は1頭を見かけたのみ。今回の再訪では、多くの成熟個体が池面上を飛んでいたことから、羽化から10日ほどで成熟して池に戻ってくることが分かった。
 同属のトラフトンボのオスは数秒というホバリングを行うが、オオトラフトンボのオスは全くホバリングをしない。岸辺から数メートルの所を左右10mほどの範囲を縄張りとして行ったり来たりの飛翔を繰り返す。時々、他のオスが侵入してくれば、激しい空中戦で追い払う。
 全くホバリングをしないオオトラフトンボの飛翔を撮るのは容易ではない。いわゆる「流し撮り」で撮るが、相手は小さく距離もある。移動するオオトラフトンボをファインダー内に収めながら ピントリングを回して、ピントが合ったと思った瞬間にシャッターを切るしかない。一週間前に撮影したカラカネトンボの飛翔撮影が楽に思える。当然、ピンボケ写真の量産であるが、まぐれで撮れることを期待して、とにかく撮りまくる。成功率は5%以下であったが、以下に飛翔写真を掲載した。
 前回、羽化殻を見つけた時に気になっていたが、今回も飛翔撮影中に見たオオトラフトンボの脚の長さが気になる。エゾトンボ科は全般に脚が長いが、特にトラフトンボは長く、中でも後脚が長い。生態における必然で、必要であるからこのように進化したのだと思うが、その理由は分からない。メスが卵塊を作る際に姿勢を保つのに有利であったり、ヤゴが羽化場所に移動するために有利であると考えられるが、仮説にもならない勝手な推論である。
 飛翔を狙っていると、時々、メスを見つけたオスが交尾態となる。トラフトンボの場合は、池上をタンデム飛翔した後に池の草に止まる。しばらくすると離れてメスは産卵体制に入るが、 オオトラフトンボの場合は全く違う。交尾態のまま隣接する林内の高い梢へと飛んでいく。目撃はできても、撮影は困難であった。それよりも、メスが、いつ、どこから戻ってくるかが分からない。両種ともに、メスは植物などに止まって数分間かけて腹端に卵塊を作り、1回だけ打水してその卵塊を沈水植物に絡ませるような産卵を行うのであるが、交尾を終えたメスを発見できなければ、産卵の様子を撮影することができないのである。
 午後になり、オスの飛翔を撮っていると、目の前にメスが飛んできて茎に止まった。しかも、腹部先端に紐状の卵が付いている。おそらく、卵塊を作った後に打水はしたものの、上手く沈水植物に絡まなかったのであろう。このメスは、再度、打水して産卵を終えて飛び去っていった。卵塊を作る瞬間は撮れなかったが、今回の瞬間も、お目にかかることは多くはないだろう。

 前回の記事同様に、本ブログでは撮影地の記載をしておりません。またお問い合わせにもお答えできませんのでご了承お願い致します。

参照

  1. オオトラフトンボ(羽化個体)
  2. トラフトンボ

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、すべて1024*683 Pixelsで掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

オオトラフトンボの写真

オオトラフトンボ(オスの飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 2000 +2/3EV(撮影日:2017.5.27 9:26)

オオトラフトンボの飛翔写真

オオトラフトンボ(オスの飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 2500 +1/3EV(撮影日:2017.5.27)

オオトラフトンボの飛翔写真

オオトラフトンボ(オスの飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 1600 +2/3EV(撮影日:2017.5.27)

オオトラフトンボの飛翔写真

オオトラフトンボ(オスの飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 800 +2/3EV(撮影日:2017.5.27)

オオトラフトンボの飛翔写真

オオトラフトンボ(オスの飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 2000 +1/3EV(撮影日:2017.5.27)

オオトラフトンボの飛翔写真

オオトラフトンボ(オスの飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 640 +1/3EV(撮影日:2017.5.27)

オオトラフトンボの産卵写真

オオトラフトンボ(産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 1600 +1/3EV(撮影日:2017.5.27 12:42)

オオトラフトンボの産卵写真

オオトラフトンボ(産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/640秒 ISO 200 -2/3EV(撮影日:2017.5.27 12:43)

オオトラフトンボの生息池の写真

オオトラフトンボの生息池
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 1250 +1/3EV(撮影日:2017.5.27 12:43)

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オオトラフトンボ(羽化個体)

2017-05-24 22:55:42 | トンボ/エゾトンボ科

 オオトラフトンボ Epitheca bimaculata sibirica Selys, 1887 は、エゾトンボ科(Family Corduliidae)トラフトンボ属(Genus Epitheca)の北方系トンボで、北海道と本州(長野県以北)に分布し、北海道や青森県等では、平地の池でも見られる。その他の地域では、標高の高い寒冷地の山岳地域の森林に囲まれた池に生息しているが、局所的で数も少ない。早い地域では5月中旬頃から羽化し、未熟な個体は、池から離れた林内で生活し、成熟すると池に戻り、繁殖活動を行う。同属のトラフトンボ Epitheca marginata (Selys, 1883)に似るが、一回り大きい。
 オオトラフトンボは、環境省RDBに記載はないが、宮城県と群馬県のRDBでは絶滅危惧Ⅰ類に選定され、栃木県のRDBでは絶滅危惧Ⅱ類、秋田県、山形県、長野県では準絶滅危惧種に選定されている。

 オオトラフトンボの撮影は、過去に日光白根山で行い記事「オオトラフトンボ」として掲載しているが、未成熟個体の写真であったため、その後、成熟個体の飛翔と産卵の様子を収めようと思いながら達成できずにいた。今回、独自の調査方法で新たな生息地を見つけ、撮影を試みた。
 池に到着後、周囲を探索すると、いくつもの羽化殻を発見。面白いことに、ほとんどが水辺から数メートル、遠いものでは7mも離れており、羽化殻は極めて狭い範囲にまとまって見られた。 ほとんどが背の低い葉(シダ等)の葉裏であり、地面は乾燥した場所であった。
 ムカシトンボは、羽化の一か月前くらいに上陸して、川から数メートルも離れた場所で羽化するが、他のトンボの仲間では、ほとんどが水辺である。今回観察した事実は、オオトラフトンボ特有の行動なのか、あるいは地域特性なのかは、他のオオトラフトンボ生息地との比較をしなければ分からないが、いずれにせよ、オオトラフトンボの生態における新たな発見であると思う。

 この日は、羽化したばかりの個体と羽化不全の個体が見られたが、成熟個体は捕食行動で飛び回っていた1頭のみを見かけただけであった。おそらく、羽化したばかりの個体が多く、それらは羽化水域からかなり離れた林に移動して生活をしているものと思われる。自宅からの距離は遠いが、素晴らしい環境の生息地を見つけたので、次の課題は、飛翔と産卵の撮影である。尚、翌週に再訪問し、何とか撮影が叶っている。オオトラフトンボ(飛翔と産卵)

 以前採集者が入り、多くのオオトラフトンボを採集していったと地元の方から伺った、ようやく、個体数も増え始めたとのことである。従って、本ブログでは撮影地の記載をしていない。またお問い合わせにもお答えできないのでご了承願いたい。

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オオトラフトンボの写真

オオトラフトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 200(撮影日:2017.5.20)

オオトラフトンボの写真

オオトラフトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 200(撮影日:2017.5.20)

オオトラフトンボの写真

オオトラフトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 200(撮影日:2017.5.20)

オオトラフトンボの写真

オオトラフトンボ(羽化不全)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/640秒 ISO 200(撮影日:2017.5.20)

オオトラフトンボ(羽化殻)の写真

オオトラフトンボ(羽化殻)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 200(撮影日:2017.5.20)

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カラカネトンボ

2017-05-21 21:00:15 | トンボ/エゾトンボ科

 カラカネトンボ Cordulia aenea amurensis Selys, 1887 は、エゾトンボ科(Family Corduliidae)カラカネトンボ属(Genus Cordulia)のトンボで、タカネトンボやエゾトンボ等のエゾトンボ属に似ているが、カラカネトンボ属として分類されている。オスは、尾部下付属器が上付属器よりわずかに短いだけなので、エゾトンボ属の種との区別は難しくはない。ちなみに、日本に分布するエゾトンボ科は以下の3属13種である。

  1. ミナミトンボ属(Genus Hemicordulia
    • ミナミトンボ Hemicordulia mindana nipponica Asahina, 1980
    • オガサワラトンボ Hemicordulia ogasawarensis. Oguma, 1913
    • リュウキュウトンボ Hemicordulia okinawensis Asahina, 1947
  2. カラカネトンボ属(Genus Cordulia
    • カラカネトンボ Cordulia aenea amurensis Selys, 1887
  3. トラフトンボ属(Genus Epitheca
    • オオトラフトンボ Epitheca bimaculata sibirica Selys, 1887
    • トラフトンボ Epitheca marginata (Selys, 1883)
  4. エゾトンボ属(Genus Somatochlora
    • クモマエゾトンボ Somatochlora alpestris (Selys, 1840)
    • ホソミモリトンボ Somatochlora arctica (Zetterstedt, 1840)
    • ハネビロエゾトンボ Somatochlora clavata Oguma, 1913
    • コエゾトンボ Somatochlora japonica Matsumura, 1911
    • モリトンボ Somatochlora graeseri Selys, 1887
    • キバネモリトンボ Somatochlora graeseri aureola Oguma, 1913 (モリトンボの黄斑翅タイプで同種)
    • タカネトンボ Somatochlora uchidai Forster, 1909
    • エゾトンボ Somatochlora viridiaenea (Uhler, 1858)

 カラカネトンボは、北海道と東北、上信越と北陸の山岳地帯に分布し、福井県大野市が西限で岐阜県白鳥町が南限とされ、 抽水植物や浮葉植物が適当に生え、開水面がある樹林に囲まれた沼や湿原の池に生息している。5月中旬頃から8月頃まで見られ、羽化した未熟個体は水域を離れ、かなり遠くまで分散して生活をする。成熟した個体は池沼に戻り、オスは岸に沿って時々停飛しつつ占有飛翔を行う。メスは、岸近い水面上を低く飛びつつ、単独で打水産卵する。
 環境省RDBに記載はないが、栃木県、富山県で絶滅危惧Ⅱ類、石川県、福井県、岐阜県で準絶滅危惧種として選定している。

 カラカネトンボは、2011年に尾瀬で飛翔を撮影して以来の出会いである。今回訪れた池では早朝から多数のオスが占有飛翔を行っていた。池を一周してみると、どの場所でもオスが飛んでおり、個体数がとても多いのに驚いた。カラカネトンボのオスは、岸辺近くの水面上を2秒ほどのホバリングをしながら、忙しなく移動し、他のオスとの縄張り争いを繰り返しながら探雌を行い、メスを見つけるとすぐに周囲の林内に連れ去っていった。
 オスの飛翔撮影は、トンボ撮影の醍醐味の一つではないだろうか。ホバリングが短時間のため簡単ではないが、チャンスはいくらでもあるので、楽しい一時を過ごせる。私の場合は、300mmレンズでマニュアル・フォーカス。ストロボも使わない。置きピンではなく、空中静止したトンボに素早くピントを合わせてシャッターを切る。カラカネトンボは岸と平行ではなく、岸に対して若干斜めにホバリングするので、全身にピントを併せることはできなかった。
 メスは植物が茂った岸辺で打水産卵しており、その様子をしばしば観察できたが、植物が邪魔で撮影までには至らなかった。また産卵を繰り返し行っていたメスが、疲れたためか、岸の 広葉の上に止まったことが一度だけあった。しかしながら、ピント合わせが間に合わず、撮影前に飛んでしまったので、本記事では、オスの飛翔のみの掲載である。

 今回訪れた池の標高は270mほどしかないが、岸辺の多くは泥炭層になっており、池の規模は大きいが高層湿原の池塘にも似た環境で、周囲周辺の自然環境も大変豊かである。また、池内にはブラックバス等の外来生物もいない。「幼虫期における主な死亡要因は被食である(*1)」と推定されていることからも、この池がカラカネトンボの生息に最適であると言えるだろう。ただし、近くにあるもう1つの池は、湿原化が進んでおりハンノキの侵入も著しい。将来的には、湿性遷移により池はなくなってしまうと考えられる。カラカネトンボの生息する池も数十年先には、湿原化している可能性もある。

 余談であるが、早朝から池畔でじっと動かずにカラカネトンボの飛翔を撮っていると、気が付けば、手はブヨに何か所も刺されて腫れ上がる始末。朝夕は、ブヨの活動時間なので、今後は対策をして臨みたい。

参考文献(*1)
生方 秀紀
カラカネトンボの生存曲線と羽化個体数の年次変動
日本生態学会誌 Vol. 31 (1981) No. 4 p. 335-346

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カラカネトンボの写真

カラカネトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 800(撮影日:2017.5.20)

カラカネトンボの写真

カラカネトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 1600(撮影日:2017.5.20)

カラカネトンボの写真

カラカネトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 400(撮影日:2017.5.20)

カラカネトンボの写真

カラカネトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 250(撮影日:2017.5.20 7:02)

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タカネトンボ

2016-08-28 16:58:28 | トンボ/エゾトンボ科

 タカネトンボ Somatochlora uchidai Forster, 1909 は エゾトンボ科(Family Corduliidae)エゾトンボ属(Genus Somatochlora)で、北海道・本州・四国・九州・屋久島に分布している。タカネトンボは、ミナミトンボ属(Genus Hemicordulia)を除くエゾトンボ科の中で最も南方まで分布する種である。和名の“タカネ”は、高嶺(高い山、高い峰の意)にちなんでいると言われるが、標高300mほどの丘陵地から標高1,600mの高地まで分布し、周囲を樹林に囲まれた閉鎖的で小規模な池沼等において、6月上旬頃から10月下旬頃まで見られる。オスは縄張りを持ち、時折ホバリングをしながら水域の周囲を旋回する様子がしばしば観察できる。
 成熟した成虫の複眼は鮮やかな金緑色に輝き、胸部も金属光沢を帯びた緑色で美しい。エゾトンボ科は、近似種が多いが、オスの尾部付属器の違いで区別することができる。タカネトンボは、環境省RDBに記載はないが、千葉県では絶滅危惧Ⅰ類(重要保護生物)、高知県、宮崎県、長崎県では準絶滅危惧種に選定している。

 タカネトンボは、先日、標高1,600mの池にて撮影したが、過去にも多く撮影しており、本記事ではそれらから選別して掲載した。静止写真は、比較的じっくりと撮影できるが天候や光の当たり具合、ストロボのあて具合で複眼と体の色が違って見え、どれもタカネトンボの美しさを綺麗に写すことができていない。一方、飛翔写真は、ピンボケや被写体ブレが多い。撮影方法は、シャッター・スピード優先でもなく、ストロボも使わない。また、置きピンではなく、ファインダーでトンボを追いかけてホバリングした時にマニュアルでピントを合わせてシャッターを切る方法。最低でも5~6秒ほどホバリングしてくれれば、撮る自信はあるが、タカネトンボのホバリングは、ほとんどがその半分の時間で、しかも忙しなく移動するので難易度が高い被写体である。産卵の様子も撮影し「タカネトンボ(産卵)」として掲載しているが、ピンボケばかりである。Canon EOS 7D では、AF-ONボタンでピントを合わせる親指AFとAIサーボを組み合わせる方法もあるが、現在使用しているAFが遅いタムロン・レンズでは有効ではない。「いかに美しく撮るか。」今後の大きな課題である。

追 記
 複眼の美しいタカネトンボであるが、羽化したばかりは茶色で、このような輝きはない。同様にヤンマを含むすべてのトンボ類がそうであり、成熟するに従って色づいてくる。不思議である。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

タカネトンボ

タカネトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 400 -1 1/3EV ストロボ使用(2016.8.20)

タカネトンボ

タカネトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 200(2012.8.25)

タカネトンボ

タカネトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 320 -2/3EV ストロボ使用(2011.9.18)

タカネトンボ

タカネトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500 +2/3EV(2010.8.28)

タカネトンボ

タカネトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F3.2 1/320秒 ISO 400(2016.8.20)

タカネトンボ

タカネトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F3.2 1/320秒 ISO 400(2016.8.20)

タカネトンボ

タカネトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F3.2 1/320秒 ISO 1600 +1EV(2015.8.1)

タカネトンボ

タカネトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F4.0 1/640秒 ISO 200 -1/3EV(2014.9.23)

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トラフトンボ

2016-05-04 13:34:57 | トンボ/エゾトンボ科

 トラフトンボEpitheca marginata Selys, 1883)は、エゾトンボ科(Corduliidae)トラフトンボ属(Epitheca)で、5月上旬に繁殖を迎えるエゾトンボの仲間である。エゾトンボの仲間は、全身が光沢を帯びているが、トラフトンボは、名前にあるように黄色と黒の虎斑模様が特徴である。ただし、複眼は成熟すると 金属光沢のあるグリーンになり、エゾトンボの仲間らしい。
 4月中旬頃に羽化した未熟個体は水域を離れ、林などで生活をする。成熟した成虫は羽化水域に戻り繁殖行動を行うが、トラフトンボの大きな特徴として、メスの産卵行動を挙げることができる。
 産卵は、午後に行われる。オスは、数秒というホバリングをあちこちで行ってはメスを探す。メスを見つけると、雌雄がつながりながらのタンデム飛翔が始まる。産卵場所を求め広範囲を飛び回る交尾態のカップルは、しばらくすると雌雄が離れ、メスは水面近くの植物などに静止し、産卵弁の間に卵を600~800個ぐらい放出して卵塊を作り始める。その後、1回だけ打水してその卵塊を沈水植物に絡ませるのである。卵塊はすぐに数cmから10cmぐらいの乳白色をした細長い紐になってゆっくりと沈み、抽水植物が枯れて倒れた茎などに絡みつくのである。
 トラフトンボは、本州、四国、九州に分布し、挺水植物や浮葉植物が繁茂する比較敵深くて大きい池沼に限って生息している。環境省RDBに記載はないが、生息環境の消失や悪化により、都道府県のRDBでは、東京都、神奈川県、青森県で絶滅、多くの県で絶滅危惧Ⅰ類やⅡ類に選定されるほど数が減ってきている。

 トラフトンボ属は、国内にもう一種、オオトラフトンボ(Epitheca bimaculata sibirica Selys, 1887)が生息しており、2014年7月に未成熟のメスを撮影しているが、 今年は、オオトラフトンボの成熟した個体と産卵の様子を撮影することが目標である。

参照:オオトラフトンボ(飛翔と産卵)

注釈:本記事は、過去に様々な地域や場所において撮影し個別に公開していた写真を、時節柄の話題として提供するために再現像し編纂したものです。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

トラフトンボ

トラフトンボ(未成熟オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 400(2012.4.29)

トラフトンボ

トラフトンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 200(2012.5.5)

トラフトンボ

トラフトンボ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/80秒 ISO 400(2012.5.5)

トラフトンボ

トラフトンボ(ホバリング)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 200(2013.05.05)

トラフトンボ

トラフトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 800(2012.06.30)

トラフトンボの産卵

トラフトンボの産卵
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 3200(2013.05.05)

トラフトンボの産卵

トラフトンボの産卵
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 3200(2013.05.05)

トラフトンボの卵塊

トラフトンボ(卵塊)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 800(2012.06.30)

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