ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態や生息環境を研究し保全活動をしていますが、様々な昆虫や美しい日本の四季
自然風景の写真も撮っています。

スナアカネ

2018-10-21 16:39:29 | トンボ/アカネ属

 スナアカネ Sympetrum fonscolombei (Selys, 1840)は、トンボ科(Family Libellulidae)アカネ属(Genus Sympetrum)で、体長37~46mmと小さく、雌雄ともに複眼の下面が青みを帯びるのが大きな特徴である。北アフリカ、中東、モンゴル、インドを含む南西アジア、および南部ヨーロッパ等に広く分布しており、ヨーロッパでは、1990年代以降年々北上し、スウェーデンやアイルランドなどでも発見されている。
 日本国内では、台風等に乗って飛来する、いわゆる「飛来種」と考えられているが、同じ「飛来種」であるタイリクアキアカネ Sympetrum depressiusculum やオナガアカネ Sympetrum cordulegaster のように日本海側だけに見られるのではなく、太平洋側の海岸沿いでも、主に9月から11月にかけて多く目撃される。

 スナアカネは、沼地、湖沼、池、河川(季節的河川を含む)等、幅広い環境で繁殖し、主に5月から10月頃に見られるが、地中海とその周辺では、年間を通じて成虫を見ることができるという。他のヨーロッパに分布するトンボとは異なり、本種は卵の期間が約10日、幼虫期間が76日~141日で年に1回以上発生し、生息地によっては幼虫で越冬すると言われている。雌雄のペアは連結打水産卵を行うが、連結したまま海上を飛び、海水にも産卵することが知られている。
 国内で世代交代している報告はないが、愛媛県では羽化が確認されており、また福岡県や静岡県では産卵も確認されている。日本トンボ学会会員で松山市在住の飯田 貢 氏の観察によれば7月18日に羽化殻を確認。その後、7月20日~7月27日までに雌雄の羽化を確認している。7月に羽化が確認されるということは、4月から5月頃に産卵したことになる。その時期、ユーラシアからの偏西風のジェット気流は日本の太平洋側を通るので、おそらくはそれに乗って飛来することもあるかも知れない。また、本種の環境適応性を鑑みると、すでに定着して世代交代している可能性もある。

 スナアカネの撮影は、年頭に掲げた撮影目標にはなかったが、見てみたいトンボではあった。今年、愛媛県で7月に羽化が確認されたことで、この秋に行けば撮れるかも知れないと思い、他のトンボ類の撮影も含めて10月の7日と8日に愛媛県まで遠征した。撮影した他のトンボ類の写真は、先に掲載した通りで、オオキトンボやナニワトンボのように関東では見ることのできない種の産卵シーン、カトリヤンマの青い複眼のメス等であり、主目標であったスナアカネも海岸の砂浜にてメス1頭を撮影することができた。

 今回はオスを撮るべく、静岡県に行ってみることにした。Googleマップの航空写真で見当を付けて訪れてみると、すぐにスナアカネのオスを見つけることができた。最初はヒメアカネと思ったが、複眼の下面が青いので分かった。全部で3頭のオスを確認。メスは確認できなかった。(採卵のために捕獲された可能性もある。)愛媛でもそうであったが、スナアカネは、飛翔する時は水面でも地面でもかなり低空を飛び、静止する時も砂地や低めの草茎のことが多い。飛翔の範囲も狭く、遠くに飛んでいくことはなかった。
 確認したオス3頭ともに成熟した個体であるが、翅はまったく擦れていない美しい個体である。太平洋側にも強風をもたらした台風24号が日本付近を通過してから3週間が経過し、偏西風も日本海を通るこの時期、果たして飛来した個体なのだろうか?この場所は海岸近くの池であるため、ここで羽化した個体である可能性もあるが、確証はない。

 スナアカネは、初見初撮影の種で「昆虫リストと撮影機材」「蜻蛉目」で103種類目となる。愛媛においては、日本トンボ学会会員の飯田 貢 氏、山本 桂子 氏に現地をご案内いただき、多くの成果を得ることができた。心より御礼申し上げたい。

参考文献

  1. 鵜飼 貞行 日本国内におけるスナアカネに関する知見 Tombo 38, 63-65, 1995-12-01 日本蜻蛉学会
  2. Selys-Longchamps, de, E. 1840. Monographie des libellulidees d'Europe. Libellula fonscolombii p. 39, Librairie Roret, 220 pages, Paris

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

スナアカネの写真

スナアカネ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200 +1EV(撮影地:静岡県 2018.10.20)

スナアカネの写真

スナアカネ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/800秒 ISO 200 +1EV(撮影地:静岡県 2018.10.20)

スナアカネの写真

スナアカネ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200 +1EV(撮影地:静岡県 2018.10.20)

スナアカネの写真

スナアカネ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200 +1EV(撮影地:静岡県 2018.10.20)

スナアカネの写真

スナアカネ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200 +1EV(撮影地:静岡県 2018.10.20)

スナアカネの写真

スナアカネ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 200 +2/3EV(撮影地:静岡県 2018.10.20)

スナアカネの写真

スナアカネ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 200(撮影地:愛媛県 2018.10.07)

スナアカネの写真

スナアカネ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 250 +1 2/3EV(撮影地:愛媛県 2018.10.07)

スナアカネの写真

スナアカネ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 200 +1EV(撮影地:愛媛県 2018.10.07)

スナアカネの写真

スナアカネ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 200 +1EV(撮影地:愛媛県 2018.10.07)

スナアカネの写真

スナアカネ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 200 +1EV(撮影地:愛媛県 2018.10.07)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2018 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

コメント