ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態や生息環境を48年研究し保全活動をしていますが、趣味で撮影した昆虫や
美しい自然風景写真も掲載しています。

イシガケチョウ

2020-05-30 23:07:37 | チョウ/タテハチョウ科

 イシガケチョウ Cyrestis thyodamas mabella Fruhstorfer, 1898 は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)イシガケチョウ族(Tribe Cyrestidini)イシガケチョウ属 (Genus Cyrestis)のチョウ。南方系の種で、本州の三重県あたりが分布の北限となっているが、温暖化により北上しているチョウであり、国内では年々分布域を広げている。国外ではインドから中国南部まで広く分布している。
 翅は、和名通りの石崖・石垣模様を持ち、メスはやや大型で、地色が白色と黄色の2型があるが、オスは白い地色のみである。食樹はクワ科のイヌビワ・イチジク・オオイタビなどで、渓谷沿いの照葉樹林や疎林に多く生息し、ひらひらと紙切れが舞うように飛ぶ。秋までに年3~5回発生し、成虫で越冬する。

 今回の高知遠征は、ゲンジボタルがメインであるが、トンボの観察と撮影も計画に入れていた。前記事のコフキヒメイトトンボの他、四国にしか生息していないシコクトゲオトンボ、そしてミナミヤンマも目的で、その生息地を訪れたが、羽化まで1週間ほど早かったようで出会うことは出来なかった。
 その代わりに、イシガケチョウの集団吸水に出会ったのである。渓流沿いの砂地のごく狭い範囲に6頭ほどが集まっての吸水。本種は、東京では八王子市の多摩動物公園内のチョウの温室では見たことがあるが、自然の中で生きているのは初見であり大変嬉しい出会いであった。

 イシガケチョウは、初見初撮影の種で、PartⅠを含めたブログに掲載した鱗翅目では、140種目となる。参照「昆虫リストと撮影機材

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イシガケチョウの写真

イシガケチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/320秒 ISO 250(撮影地:高知県日高村 2020.5.24 9:31)

イシガケチョウの写真

イシガケチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/250秒 ISO 500 +2/3EV(撮影地:高知県日高村 2020.5.24 9:34)

イシガケチョウの写真

イシガケチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/250秒 ISO 400 +2/3EV(撮影地:高知県日高村 2020.5.24 9:34)

イシガケチョウの写真

イシガケチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/250秒 ISO 500 +2/3EV(撮影地:高知県日高村 2020.5.24 9:39)

イシガケチョウの写真

イシガケチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/320秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:高知県日高村 2020.5.24 9:39)

イシガケチョウの写真

イシガケチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/250秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:高知県日高村 2020.5.24 9:38)

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クロヒカゲ

2019-10-22 19:52:58 | チョウ/タテハチョウ科

 クロヒカゲ Lethe diana (Butler, 1866) は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)ジャノメチョウ亜科(?Subfamily Satyrinae)ヒカゲチョウ属(Genus Lethe)で日本全土に分布する。山地性・森林性が強く、薄暗い林内などに生息している。学名の「diana」は「月の神(ディアナ)」という意味をもっている。(英語読みではダイアナ)

 ヒカゲチョウやジャノメチョウの仲間は、色彩が地味で林内の暗い場所にいる種が多いことから、一部を除いては私的に撮影対象外のチョウにしてきたが、偶然に出会ったときに撮影してみると、羽化後間もない新鮮な個体であれば、その美しさに気づくこともある。クロヒカゲもそんな一種である。特に翅裏の蛇の目紋を取り囲む青紋が発達して、色鮮やかな個体もいるというから興味をそそられる。来年は、そんな点に注目して積極的に撮影していきたい。
 掲載写真は、クロヒカゲの他に、同属のヒカゲチョウ(ナミヒカゲ)とジャノメチョウ、ツマジロウラジャノメも掲載した。

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クロヒカゲの写真

クロヒカゲ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F6.3 1/800秒 ISO 400 +1 1/3EV(撮影地:岐阜県 2019.9.14)

クロヒカゲの写真

クロヒカゲ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 200(撮影地:長野県東御市 2011.7.23)

クロヒカゲの写真

クロヒカゲ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 800 +1/3EV(撮影地:長野県 2017.8.13)

ヒカゲチョウの写真

ヒカゲチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F4.5 1/160秒 ISO 2000(撮影地:東京都青梅市 2011.9.10)

ジャノメチョウの写真

ジャノメチョウ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 2000(撮影地:東京都立川市 2011.7.24)

ツマジロウラジャノメの写真

ツマジロウラジャノメ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 250(撮影地:山梨県 2015.9.11)

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ベニヒカゲ

2019-09-01 15:27:38 | チョウ/タテハチョウ科

 ベニヒカゲは、2015年に長野県の浅間山系で撮影しているが、今回、8月半ばに北アルプスでも撮影したので、浅間山系の写真と併せて紹介したい。

 ベニヒカゲ Erebia neriene (Bober, 1809) は、 タテハチョウ科(Family Nymphalidae)ジャノメチョウ亜科(Subfamily Satyrinae)ベニヒカゲ属(Genus Erebia)で、国外ではヨーロッパからアジアに至るユーラシア大陸、北アメリカに分布し、北緯30°付近から北緯75°付近までの寒冷地や高山に多い。日本国内では、北海道および本州中部地方以北に分布し、北海道にはベニヒカゲ北海道亜種(Erebia neriene scoparia Butler, 1882)、本州にはベニヒカゲ本州亜種(Erebia neriene niphonica Janson, 1877)が生息している。
 北海道では低山地にも生息するが、本州では高山地に生息するいわゆる高山蝶の一種である。ちなみに、日本には14種類の高山蝶が知られているが、北海道特産の5種を除くと、本州に産するものは9種類ベニヒカゲ、クモマベニヒカゲ、タカネヒカゲ、クモマツマキチョウ、ミヤマシロチョウ、ミヤマモンキチョウ、オオイチモンジ、コヒオドシ、 タカネキマダラセセリである。
 ベニヒカゲは、全体が黒褐色で、前翅の両面と後翅表面には眼状紋を囲む橙赤斑があるのが大きな特徴である。雌は翅表の眼状紋内に白点がある他、縁毛が白く目立ち後翅裏面中央に白ないし黄色の帯が現れる。また地域固有の変異と個体変異があり、日本産だけでも20程が知られている。
 ベニヒカゲ本州亜種は、環境省カテゴリでは準絶滅危惧(NT)としており、地方自治体では、群馬県のRDBで絶滅危惧Ⅰ類、岩手・秋田・山形・福島・新潟・岐阜・福井各県のRDBでは準絶滅危惧種として記載している。また、昭和50年2月には長野県の天然記念物に指定され、長野県と群馬県では採集が禁止されている。
 昨今では温暖化の影響で生息域が高標高化の傾向にあり、生息域が縮小しているにも関わらず、登山者が多い生息地では、食草であるイネ科のイワノガリヤスやカヤツリグサ科のヒメカンスゲが踏み荒らしによって消失したり、ニホンジカによる草本の食害やスキー場の開発による生息地の改変、更にはマニアによる乱獲も減少の原因となっている。

 今回訪れた北アルプスでは、標高1,400mから1,800mの間を散策したが、草原や湿地で数多くのベニヒカゲが見られた。陽の光には敏感に反応し、陽が差すと草の中から飛びだし草上をゆるやかに飛翔するが、日が陰ると草むらに隠れるという行動が見られた。
 当日の一番の目標は、同じ高山蝶であるクモマベニヒカゲであったが、標高1,800m以上はガスの中であったため登山を断念。また下山途中でゴマシジミ八方尾根・白山亜種を見つけたが、リフトに乗っていたため撮影はできなかった。その他、湿原ではルリボシヤンマのオスを1頭、標高1,400m付近では、既に掲載したヒメキマダラヒカゲとアイノミドリシジミを撮影した。

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ベニヒカゲの写真

ベニヒカゲ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/160秒 ISO 125 (撮影地:長野県白馬村 2019.8.10 7:19)

ベニヒカゲの写真

ベニヒカゲ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/160秒 ISO 160 (撮影地:長野県白馬村 2019.8.10 7:18)

ベニヒカゲの写真

ベニヒカゲ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.0 1/160秒 ISO 100 (撮影地:長野県白馬村 2019.8.10 8:55)

ベニヒカゲの写真

ベニヒカゲ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 500 +1EV (撮影地:長野県東御市 2015.9.05 8:30)

ベニヒカゲの写真

ベニヒカゲ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 800 (撮影地:長野県東御市 2015.9.05 7:49)

ベニヒカゲの写真

ベニヒカゲ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 500 +1/3EV (撮影地:長野県東御市 2015.9.05 8:33)

ベニヒカゲの写真

ベニヒカゲ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 200 +1EV (撮影地:長野県東御市 2015.9.05 8:29)

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ヒメキマダラヒカゲ

2019-08-28 17:35:33 | チョウ/タテハチョウ科

 ヒメキマダラヒカゲ Zophoessa callipteris (Butler, 1877) は、タテハチョウ科(Family Papilionidae)ジャノメチョウ亜科(Subfamily Satyrinae)ヒメキマダラヒカゲ属(Genus Zophoessa)のチョウ。
北海道・本州・四国・九州に分布し、北海道では平地~山地、本州では低山地~山地のササ類の生える樹林に生息する。 年1回7~8月に発生し、幼虫で越冬。分布域は広いが、生息地が分断されており、成虫の移動性も低いため、地域により翅の斑紋等に多少の変異がみられる。
 環境省カテゴリーに記載はないが、香川県で絶滅、福岡県では絶滅危惧Ⅰ類に、茨城県では絶滅危惧Ⅱ類、京都及び大阪府のRDBでは準絶滅危惧種として記載している。本種の食草となるササ類が、ササ枯れとシカの食害減少のために急激に個体数が減少していると考えられる。

 お盆三連休の長野県への遠征。目的は高山蝶その他。早朝、標高1,500mの高原脇にある林縁でゼフィルスの登場を待っていたが、5時半に飛び始めたのは、このヒメキマダラヒカゲ。高い梢を20頭以上が乱舞。あまりの高さに、最初、種類を特定できなかったが、何頭か低い所に降りてきたので撮影した。ジャノメチョウの仲間は地味なイメージが強く、普段、見かけてもカメラを向けることが少ないが、本種は、記録ということで撮影。

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ヒメキマダラヒカゲの写真

ヒメキマダラヒカゲ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 500 (撮影地:長野県白馬村 2019.8.10 5:54)

ヒメキマダラヒカゲの写真

ヒメキマダラヒカゲ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 640 (撮影地:長野県白馬村 2019.8.10 5:36)

ヒメキマダラヒカゲの写真

ヒメキマダラヒカゲ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 400 (撮影地:長野県白馬村 2019.8.10 5:55)

ヒメキマダラヒカゲの写真

ヒメキマダラヒカゲ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 800 +1/3EV (撮影地:長野県富士見町 2017.8.13)

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スミナガシ

2019-08-19 22:04:07 | チョウ/タテハチョウ科

 スミナガシ Dichorragia nesimachus nesiotes Fruhstorfer, 1903 は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)スミナガシ属(Genus Dichorragia)のチョウで、日本からヒマラヤまでを含む東南アジアに分布し、低地から山地の雑木林に生息している。和名は、黒地に青緑色を帯びた独特の翅模様が「墨流し」で作った模様に似ていることから付けられた。赤い口吻(ストロー)とモノトーンの翅裏も心象的である。ちなみに「墨流し」は日本古来の伝統芸術で、千年以上もの歴史を持つ。その起源は、川の水面に墨をおとし、流れによってうまれる模様の変容を楽しんだ9世紀頃の宮廷遊びと言われている。
 幼虫はアワブキやヤマビワなどを食草とし、成虫は花を訪れることは少なく、樹液や熟した果実、動物の糞などを吸汁する。年に2回~数回(稀に1回)発生し、春型と夏型の季節型がある。春型と夏型では、夏型の方が色が濃いが、白斑と黒斑は個体差によるものが大きく、春型と夏型による明確な違いはない。また、雌雄も色彩や斑紋等で明確な違いはない。
 環境省カテゴリーに記載がないが、雑木林の減少や放棄放置で生息数が減少している地域もあり、千葉県のRDBでは絶滅危惧Ⅰ類に、大阪府、香川県、宮崎県のRDBでは準絶滅危惧種としている。

 スミナガシは、いつも偶然の出会いでの撮影。春型は、ミヤマカラスアゲハの撮影で待機中に飛んできた。今回の夏型も、ミヤマカラスアゲハの探索中に飛んできた。嬉しい出会いではあるが、単なるスナップ的な絵で終わっている。来年は、スミナガシを撮ることを主目的にした遠征も予定し、もっと美しい写真に収めたいと思う。ちなみに、夏型は初見初撮影である。

 スミナガシの夏型に出会った週末は、台風一過で撮影のチャンスと思い、先に述べたように「ミヤマカラスアゲハの夏型」を撮ることを目的として遠征したが、場所の選定には迷いがあった。過去に「ミヤマカラスアゲハの春型」を何度も撮影しているポイントがあるが、自宅からおよそ70kmある山奥。もう一つの候補が、これまで一度も訪れたことのないポイントで、距離は50kmの山奥。さて、どちらにするか・・・
 年々、体力の低下を感じており、また昨年末の前立腺がんの全摘手術後は、気力も低下気味。月~金は、今までと同じように会社でハードワークをこなしていることもあり、趣味でさえも「どうせ行っても撮れない」とか「撮っても他人と同じ絵」であるとか「以前に一度撮っているから」と色々と理由を付けて、行く前から諦めようとすることが多くなってきた。今回も、場所の選定は勿論、行くことさえ止めようかという迷いがあった。この迷いは夢の中にも出てきた。
 7:00起床。家族と一緒に朝食を済ませ、結局、時間的に近距離である山奥に行ってみることにした。現地に着いて、砂利道の林道を歩く。カラスアゲハは、あちこちで吸水していたが、ミヤマカラスアゲハは、1頭だけ緑色に輝く翅を見せつけながら、私の周囲を飛び回り去って行った。ミヤマカラスアゲハは、崖から湧水が流れて砂利道が湿っているような場所が好きである。舗装された林道の水たまりでは、吸水しないことが再確認できた。天候的にチャンスがあれば再訪しようと思うが、ダメならば、来年にミヤマカラスアゲハの春型を撮りに来ようと思う。

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スミナガシの写真

スミナガシ(春型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 200 +1 1/3EV(撮影地:山梨県塩山市 2013.5.25 9:27)

スミナガシの写真

スミナガシ(春型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 200 +1 1/3EV(撮影地:山梨県塩山市 2013.5.25 9:29)

スミナガシの写真

スミナガシ(春型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/4000秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2011.5.8 13:16)

スミナガシの写真

スミナガシ(夏型)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 400 -2/3EV(撮影地:東京都奥多摩町 2019.8.17 10:15)

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テングチョウ

2018-11-13 19:46:31 | チョウ/タテハチョウ科

 テングチョウ Libythea celtis Moore, [1858]  は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)テングチョウ属(Genus Libythea)で、国内には本種1種のみが生息している。ただし、日本本土亜種 Libythea celtis celtoides と琉球亜種 Libythea celtis amamiana に分けられ、北海道亜種 Libythea celtis matsumurae は絶滅している。頭部の触角の内側に前方に伸びる突起(下唇髭)があり、これが天狗の鼻のように見えることが和名の由来である。下唇髭は他のチョウにもあるが、本種は複眼径の3倍以上も伸びているのが特徴になっている。
 平地から山地を生息域とし、幼虫の食樹であるエノキが生える雑木林や、森林の河川や渓谷など幅広い場所でよく見られる。成虫は年1回(稀に年2回発生)6月頃に発生し、盛夏には休眠する。秋に再び活動してそのまま成虫で越冬し、春先から再び活動して5月頃に産卵する。
 青森県のRDBでは準絶滅危惧種として記載しているが、他の地域では普通種であり、昨今、広島、兵庫、和歌山など西日本各地や山梨など東日本でもテングチョウも大量発生が話題となっている。 猛暑や少雨、天敵との関係などが推察されているが、詳しい原因は分かっていない。

 テングチョウは、東京都内の多摩西部では普通に見られるチョウで、時折、撮影もしていたが、単独の記事としてまとめたことはなかった。過去に撮影した写真を整理すると、雌雄の違いが分かる写真と、小集団ではあるが、20頭ほどが集団吸水していた写真を撮っていたので掲載することにした。

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テングチョウの写真

テングチョウ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 1250(撮影地:埼玉県 2018.05.26)

テングチョウの写真

テングチョウ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 640(撮影地:東京都 2012.06.17)

テングチョウ集団吸水の写真

テングチョウ(集団吸水)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 1250 +2/3EV(撮影地:東京都 2016.06.12)

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キタテハ属

2018-09-09 14:28:40 | チョウ/タテハチョウ科

 日本におけるタテハチョウ科(Family Nymphalidae)キタテハ属(Genus Polygonia)は、以下の2種が生息している。

  1. キタテハ属 Genus Polygonia
    • キタテハ Polygonia c-aureum c-aureum(Linnaeus, 1758)
    • シータテハ Polygonia c-album hamigera (Butler, 1877)

 キタテハは、北海道(南西部の渡島半島のみ)から九州まで分布し、幼虫の食草は、アサ科のカナムグラ、ホソバイラクサなどで、平地から低山地にかけて、林やその周辺、川原などでよく見られる。
 一方、シータテハは北海道から九州まで分布する。北海道では普遍的に生息するが、本州での分布は不連続でやや標高の高い山地に限られ、四国・九州では個体が少ない。環境省カテゴリにはないが、徳島県、香川県、愛媛県、島根県のRDBで絶滅危惧Ⅰ類に、神奈川県、高知県、大分県、鹿児島県のRDBで絶滅危惧Ⅱ類に選定している。幼虫はクワ科のホップ、ニレ科のハルニレ、アキニレ、エノキなどを食草としている。
 両種は、翅の縁の切れ込みの深さや後翅の表にある水色斑で容易に区別でき、両種ともに初夏から真夏にかけて現れる夏型と、秋に現れてそのまま越冬する秋型がある。また、後翅の裏にはC字型の小さな模様があり、学名の「c-aureum」(金色のC)と「c-album」(白色のC)の由来となっている。

 シータテハは、東京近郊では山梨県の標高の高い所へ行かなければ見ることができないが、キタテハは、東京でも多摩西部に行けば普通に見られるチョウである。これまで何度となく出会い、時々撮影はしていたが、過去の写真を集めてみると、雌雄の夏型と秋型、またそれぞれの翅表と翅裏をすべて撮っていたかというとそうでもない。身近な種をキッチリと撮影していないことを反省せざるを得ない。

 秋雨前線の影響で、目的地は二週連続で天候不良。そのため、8月26日以来遠征無しの週末続きである。仕方なく、写真を整理して未掲載写真を含めてまとめた。

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キタテハの写真

キタテハ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/200秒 ISO 200(撮影地:東京都 2011.09.04)

キタテハの写真

キタテハ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 320(撮影地:東京都 2011.10.23)

キタテハの写真

キタテハ(夏型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1600 -1/3EV(撮影地:埼玉県 2012.06.17)

キタテハの写真

キタテハ(秋型)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F11 1/100秒 ISO 1600(撮影地:千葉県 2013.03.20)

シータテハの写真

シータテハ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.5 1/800秒 ISO 200 +2/3EV(撮影地:長野県 2011.09.10)

シータテハの写真

シータテハ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/200秒 ISO 200(撮影地:群馬県 2012.08.25)

シータテハの写真

シータテハ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/200秒 ISO 200 +1/3EV(撮影地:群馬県 2016.09.10)

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ヒオドシチョウ属

2018-08-15 21:50:30 | チョウ/タテハチョウ科

 日本におけるタテハチョウ科(Family Nymphalidae)ヒオドシチョウ属(Genus Nymphalis)は、以下の3種が生息している。

  1. ヒオドシチョウ属 Genus Nymphalis
    • エルタテハ Nymphalis vaualbum ([Denis et Schiffermuller], 1775)
    • キベリタテハ Nymphalis antiopa (Linnaeus, 1758)
    • ヒオドシチョウ Nymphalis xanthomelas japonica (Stichel, 1902)

 上記の進化上近縁な3種は、いずれも羽化後に標高の高い所に移動し、晩夏から初秋になると標高の低い所に降りてきて越冬し、翌年の5月頃まで生きる長命なチョウであるが、今回、これまで撮影していなかったエルタテハの翅裏を撮ることができたので、ヒオドシチョウ属として3種をまとめて掲載した。単に個々に写真を撮るだけではなく 進化上近縁である種の形態や生態、生息環境などを学び、さらに実際の知見によって生態系を理解でき、自然保全を考えることができるのではないだろうか。
 尚、キベリタテハ及びヒオドシチョウの詳細については下記リンクを参照頂き、本記事ではエルタテハについて記しておきたいと思う。

 エルタテハは、ユーラシア大陸とアフリカ大陸北部の旧北区のほぼ全域と北アメリカ大陸に分布し、日本では北海道と中部地方以北の本州に分布する。北海道では平地から山地にかけて、本州では主に標高1,000 m以上の食樹であるニレ科植物(ハルニレなど)やカバノキ科植物(ダケカンバ、シラカンバなど)がある落葉広葉樹林等に生息している。同属のヒオドシチョウと形態が似ているが、本種は、後翅の裏面中央部に和名の由来となっている白色のL字紋があるのが特徴である。
 ノリウツギやナナカマド等の花を吸蜜することもあるが、ダケカンバ等の樹液、獣糞を吸ったり、腐った果実に集まったり、地面で吸水したりすることが多い。また、コンクリートの擁壁に止まり、エフロレッセンス(白華)現象によって生じた炭酸カルシウムの結晶を吸っている様子を見ることも多い。
   本種はもともと個体数が少なく、植林に伴う自然林の消滅や生息環境の少しの変化によっても個体群が維持できなくなる可能性がある。環境省カテゴリにはないが、新潟県のRDBには準絶滅危惧種として記載している。

参照

キベリタテハ/キベリタテハがいない?
ヒオドシチョウ

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

エルタテハの写真

エルタテハ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 1250 +1EV(撮影地:長野県佐久市 2018.08.12)

エルタテハの写真

エルタテハ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F4.8 1/320秒 ISO 200(撮影地:群馬県吾妻郡嬬恋村 2012.08.25)

エルタテハの写真

エルタテハ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 320 +1EV(撮影地:長野県佐久市 2018.08.12)

キベリタテハの写真

キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F11 1/160秒 ISO 200(撮影地:群馬県嬬恋村 2012.08.25)

キベリタテハの写真

キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 200(撮影地:群馬県嬬恋村 2012.08.25)

ヒオドシチョウの写真

ヒオドシチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 500(撮影地:山梨県北杜市 2013.06.08)

ヒオドシチョウの写真

ヒオドシチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 1600(撮影地:山梨県韮崎市 2013.06.23)

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キベリタテハ(2018)

2018-08-13 22:06:37 | チョウ/タテハチョウ科

 キベリタテハ Nymphalis antiopa (Linnaeus, 1758) は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae<)/ヒオドシチョウ属(Genus Nymphalis)で、和名にあるように翅表外縁に黄色の太い縁取りがある。翅全体は小豆色でベルベットのような光沢があり、黄色の縁取りの内側には、青色の斑紋が一列に並ぶ。これに似たチョウは世界的にみても他にない。
 幼虫の食草はカバノキ科のダケカンバ、ウダイカンバ、シラカバ、ヤナギ科のオオバヤナギ、バッコヤナギ、ドロノキなどで、そのシックな色合いから日本では「高原の貴婦人」とも呼ばれており、アメリカでは、Mourning Cloak(喪服のマント)と呼ばれ、イギリスでは、Camberwell Beauty(キャンバーウェルの美人)と呼ばれている。北海道から本州中部(標高約1,000m以上の山岳)以北に生息し、雄大に滑空するたいへん優美なチョウである。
 本種は、標高1,000m前後の発生地において、7月下旬から8月中旬、9月上旬頃の3回くらいに分かれて羽化する。7月下旬から8月中旬に羽化した個体は、涼を求めて標高1,500m以上の高山へ移動し、9月中旬前後には標高1,000m前後の発生地に戻り越冬の準備をすると言われている。

 この日の主目的はエルタテハで、その撮影のために標高約2,000mのポイントに向かうと、林道沿いのコンクリートが吹き付けられた崖には、エルタテハ以外にキベリタテハがミネラルを吸うために飛来していた。本種は、過去に何度も撮影しているが、見かければカメラを向けてしまうチョウである。長野県の北信エリア、東信エリアの北部では、その姿をほとんど見ることができなくなったしまったが、東信エリアの南部や南信エリアでは、今年も数多く見られた。
 背景がコンクリートの壁では絵にならず、キベリタテハの色彩を再現するのが難しく、今後の課題ではあるが、今回は、ヤマハンノキで樹液を吸う姿も観察したので紹介したい。

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キベリタテハの写真

キベリタテハ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 2000 +1 2/3EV(撮影地:長野県松本市 2018.08.11 13:49)

キベリタテハの写真

キベリタテハ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 2000 +1 2/3EV(撮影地:長野県松本市 2018.08.11 13:49)

キベリタテハの写真

キベリタテハ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 1600 +1 2/3EV(撮影地:長野県佐久市 2018.08.12 9:07)

キベリタテハの写真

キベリタテハ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 800(撮影地:長野県佐久市 2018.08.12 9:20)

キベリタテハの写真

キベリタテハ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 1600(撮影地:長野県佐久市 2018.08.12 8:54)

キベリタテハの写真

キベリタテハ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 1600 +1 2/3EV(撮影地:長野県佐久市 2018.08.12)

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コヒョウモンモドキ

2018-07-03 21:50:18 | チョウ/タテハチョウ科

 コヒョウモンモドキ Melitaea ambigua niphona Butler, 1878は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)ヒョウモンモドキ属(Genus Melitaea)のチョウ。ヒョウモンモドキ属は、日本には3種生息しているが、本州に限られ、しかも局地的な分布である。

  • ヒョウモンモドキ Melitaea scotosia Butler, 1878
  • ウスイロヒョウモンモドキ Melitaea protomedia Menetries, 1858
  • コヒョウモンモドキ Melitaea ambigua niphona Butler, 187

 コヒョウモンモドキは、ユーラシア大陸に広く分布し、国内では本州(関東地方北部から中部山岳地帯)にのみ分布している。林縁や林間の明るい草原に生息し、幼虫の食草はクガイソウ、ヒメトラノオで、越冬後はオオバコを食べることが知られている。成虫は7月頃に出現し、緩やかに飛んでクガイソウ、オカトラノオ等で吸蜜する。鳥獣類の排泄物や動物の死体に群がることもある。
 昨今、人為的放置による草原の樹林化(日本列島の草地面積は、20世紀初頭には1割ほどであったが、現在では1%程度であるという。)やシカの食害による食草の減少で、絶滅が危惧されている。また本種は、大型・黒化型などの地域変異が見られ、マニアによる採集圧も問題になっている。
 本種は、環境省カテゴリでは絶滅危惧ⅠB類、都道府県のRDBでは、栃木県では絶滅、群馬県、新潟県、富山県で絶滅危惧Ⅰ類に、山梨県、長野県では絶滅危惧Ⅱ類として記載されている。

 個人的趣味から、ヒカゲチョウやヒョウ柄のチョウは、見かけてもほとんど撮ることがなく、知識もあまりない。本種も当然のことながら撮影計画にはなく、今回の遠征での偶然の出会いであった。車から降りると、私の腕に止まって汗を吸い始めたのである。生息地が局所的で絶滅が危惧されていることを知っていれば、もっと丁寧に翅裏等も撮影したのであるが、悔やんでも仕方がない。またの出会いを期待したい。
 コヒョウモンモドキは、初見初撮影の種で「昆虫リストと撮影機材」「鱗翅目」で139種類目となる。

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コヒョウモンモドキの写真

コヒョウモンモドキ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 250(撮影地:長野県 2018.06.30)

コヒョウモンモドキの写真

コヒョウモンモドキ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 200 -2/3EV(撮影地:長野県 2018.06.30)

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ヒオドシチョウ

2018-06-06 22:20:40 | チョウ/タテハチョウ科

 ヒオドシチョウ Nymphalis xanthomelas japonica (Stichel, 1902) は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)タテハチョウ亜科(Subfamily Nymphalinae)タテハチョウ族(Tribe Nymphalini)ヒオドシチョウ属(Genus Nymphalis)のチョウで、北海道から九州に分布し、食樹はエノキで、低地から山地の樹林や雑木林に生息する。鮮やかな赤みのある緋色をしていることが、紅で染められた紐を使った緋縅(ひおどし)の鎧を連想させることから和名がつけられた。
 本種は、年1化で5月中旬頃に羽化しそのまま冬を越して翌年の5月頃まで生きる長命なチョウだが、7月頃から翌春までその姿を見ることはほとんどない。詳しい生態は分かっていないが、低地で発生した本種は、発生後、しばらくすると標高の高いところに移動して夏眠・冬眠して降りてくるからだと言われている。同属のエルタテハ Nymphalis vaualbum ([Denis et Schiffermuller], 1775)やキベリタテハ Nymphalis antiopa (Linnaeus, 1758)も同じような生態である。
 環境省カテゴリにはないが、都道府県のRDBで千葉県で絶滅危惧Ⅰ類、埼玉県・長崎県で絶滅危惧Ⅱ類、福岡県、鹿児島県では準絶滅危惧種に選定している。

 他のチョウでもそうであるが、翅が擦れていない美しい姿を撮るには羽化したばかりの時期しかない。参考に越冬後の写真も掲載したが、長命ゆえに翅はこれほどまでボロボロになってしまう。これもヒオドシチョウの生態写真であり、このチョウの生きざまであるが、筆者の昆虫写真は、生態写真は次の段階で、まずは特徴が分かる図鑑写真が基本。チョウ類では、翅裏と翅表を撮ることが必須であるが、美しい翅表を撮ることは容易ではない。
 掲載写真のヒオドシチョウは、脚が4本しか写っていないが、これは欠落しているのではない。タテハチョウ科に見られる特徴で、前脚は極端に小さくなっていて前胸部に折りたたまれているのである。

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ヒオドシチョウの写真

ヒオドシチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 500(撮影地:山梨県北杜市 2013.06.08)

ヒオドシチョウの写真

ヒオドシチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400(撮影地:山梨県甲州市 2018.5.27)

ヒオドシチョウの写真

ヒオドシチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 400(撮影地:山梨県甲州市 2018.5.27)

ヒオドシチョウの写真

ヒオドシチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400(撮影地:山梨県甲州市 2018.5.27)

ヒオドシチョウの写真

ヒオドシチョウ(越冬後)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2012.5.12)

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キベリタテハ(2017)

2017-09-10 19:52:32 | チョウ/タテハチョウ科

 キベリタテハ Nymphalis antiopa (Linnaeus, 1758) は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae<)/ヒオドシチョウ属(Genus Nymphalis)で、和名にあるように翅表外縁に黄色の太い縁取りがある。翅全体は小豆色でベルベットのような光沢があり、黄色の縁取りの内側には、青色の斑紋が一列に並ぶ。北海道から本州中部(標高約1,000m以上の山岳)以北に生息している。

 昨年、当ブログで「キベリタテハがいない?」という記事を書いた。本年も長野県の北信エリア、東信エリアの北部では、ほとんどその姿が見られないと言う。筆者も、以前撮影した東信エリアの北部(標高1,680m)に8月下旬に行ってみたが、まったく見ることができなかった。しかしながら、東信エリアの南部や南信エリアでは、数多くのキベリタテハが見られた。山梨県内でも復活の兆しがあるようで、過去の時期において減少の原因の仮説としてたてた「異常な気象条件による成長の悪化」と「気象条件による高地への移動変化」は、関係がなさそうである。
 撮影当日は、 エルタテハ Nymphalis vaualbum ([Denis et Schiffermüller], 1775) の翅裏の撮影が目的であった。ヒオドシチョウ属3種をまとめるに当たって、エルタテハの翅裏の写真が無かったからである。標高1,580mの発生地において午前7時~11時まで探索したが、結局、見つけることはできなかった。どうやら、標高の低い越冬地へと移動してしまったようである。
 その代わりにキベリタテハが2頭、その優雅な姿を披露してくれた。毎年、撮影しようと出かけているわけではないが、2013年以来の出会いである。木陰にある獣糞で吸汁した後、日当たりの良い砂利道で翅を開いて日光浴し、その後は近くの白樺の梢で休止。こうした行動を数回繰り返して、どこかへ飛んで行ってしまった。
 キベリタテハは、標高1,000m前後の発生地において、7月下旬から8月中旬、9月上旬頃の3回くらいに分かれて羽化する。7月下旬から8月中旬に羽化した個体は、涼を求めて標高1,500m以上の高山へ移動し、9月中旬前後には標高1,000m前後の発生地に戻り越冬の準備をすると言われている。今回の出会いは、高標高の場所から越冬地へと移動の途中であったのだろう。以前撮影した東信エリアの北部の個体に比べて、若干、色が褪せていた。(参照として、2012年に撮影したキベリタテハの写真も掲載し、下記にリンク先も記した。)

参照:キベリタテハキベリタテハ(動画)

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キベリタテハの写真

キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 500(2017.9.10)

キベリタテハの写真

キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 500 +1/3EV(2017.9.10)

キベリタテハの写真

キベリタテハ(タテハチョウは、前脚2本を除いた4本しか見えない。)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 320(2017.9.10)

キベリタテハの写真

キベリタテハ(2012年撮影)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 1/160秒 ISO 200(2012.8.25)

撮影場所の風景

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ツマグロヒョウモン

2016-10-05 23:19:28 | チョウ/タテハチョウ科

 ツマグロヒョウモン Argyreus hyperbius hyperbius (Linnaeus, 1763) は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)/ドクチョウ亜科(Subfamily Heliconiinae)/ツマグロヒョウモン属(Genus Argyreus)に分類されるチョウである。有毒のチョウであるカバマダラに擬態していることからドクチョウ亜科に分類されているが、オスは豹柄模様のみで、メスが前翅の先端部表面が黒(黒紫)色地で白い帯が横断している。通常のチョウの仲間では珍しくメスの方が美しい。
 南西諸島、九州、四国、本州南西部に分布し、本州では1980年代まで近畿地方以西でしか見られなかったが、徐々に生息域が北上し、2016年現在、関東地方北部でもほぼ定着し普通種になりつつある。通常ヒョウモンチョウの仲間は山地や北の涼しい場所を中心に分布しているが、熱帯を中心とするツマグロヒョウモンの分布はヒョウモンチョウの仲間では珍しいと言える。ツマグロヒョウモンの北上については、単純に「地球温暖化」の題材として取り上げられることが多いが、幼虫は各種スミレ類を食草とし、野生のスミレ類のみならず園芸種のパンジーやビオラなども食べることも北上と分布拡大の一因だと思われる。
 成虫は4月頃から11月頃まで見られ、その間に4~6回発生する。他のヒョウモンチョウ類がほとんど年1回しか発生しないのに対し、多化性という点でも例外的な種類である。

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ツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモン / オス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 200(2016.10.2)

ツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモン / メス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 400(2016.10.2)

ツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモン / メス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/250秒 ISO 200(2016.10.2)

ツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモン / メス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/2000秒 ISO 200(2016.10.2)

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キベリタテハがいない?

2016-09-20 21:20:50 | チョウ/タテハチョウ科

 キベリタテハが今年は極端に少なく、各地でほとんど見かけないと言う。一体、何故なのだろうか?

 キベリタテハ Nymphalis antiopa (Linnaeus, 1758) は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)/ヒオドシチョウ属(Genus Nymphalis)で、和名にあるように翅表外縁に黄色の太い縁取りがある。翅全体は小豆色でベルベットのような光沢があり、黄色の縁取りの内側には、青色の斑紋が一列に並ぶ。そのシックな色合いから日本では「高原の貴婦人」とも呼ばれており、アメリカでは、Mourning Cloak(喪服のマント)と呼ばれ、イギリスでは、Camberwell Beauty(キャンバーウェルの美人)と呼ばれている。飛翔は素早いが、また雄大に滑空もするのでたいへん優美なチョウである。
 キベリタテハは、世界的に見るとユーラシア大陸と北アメリカ大陸をほぼカバーする広大な分布域を持っている。ヨーロッパやアメリカでは市街地の林でもよく見られる 身近なチョウで、しかも北米ではコロラド州の低地やカリフォルニアの海岸線では年に2化、バージニア州では年3化もすると言われている。このような広域分布を可能にしているのは、「酷寒と乾燥には非常に強いが、高温と多湿の組み合わせを嫌う種」であることが理由として挙げられている。日本国内においては、本州中部(標高約1,000m以上の山岳)以北に限って分布し、年1回7月下旬頃からようやく発生する。成虫で越冬し、翌年4月頃まで見られる。
 食樹は、カバノキ科のダケカンバやシラカンバ、ヤナギ科のオオバヤナギ等である。成虫は、訪花することはほとんどなく、樹液や腐った果実、獣糞などに好んで集まる。

参照

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キベリタテハ

キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F11 1/160秒 ISO 200(2012.8.25)

キベリタテハ

キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 640V(2013.8.10)

キベリタテハ

キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 200(2013.8.17)

キベリタテハ

キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 800 +1 1/3EV(2013.8.17)

キベリタテハ

キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F7.1 1/160秒 ISO 200(2012.8.25)

キベリタテハ

キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 200(2012.8.25)

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 さて、冒頭にも記したが、今年2016年は、キベリタテハが極端に少ないと言われている。他にもクジャクチョウやエルタテハも同様に少ない。 その基本的な理由として

  1. 生息環境の悪化や破壊
  2. バキュロウイルス等のウイルスによる感染の拡大
  3. 異常な気象条件による成長の悪化
  4. 気象条件による高地への移動変化
  5. 毎年の採集者による乱獲

以上の5つが考えれるが、キベリタテハにおいては、その生息地に訪れたところでは環境の変化は見当たらないし、開発が行われたという話もない。ウイルス感染については、可能性としては考えられるが、現状では研究がなされていないので不明である。では、気象についてはどうだろうか?
 まず、キベリタテハのある生息地における4月から8月までの毎月の平均気温と平年値を気象庁のデータより調べてみた。(グラフ1.)その結果、2016年の気温は4月から6月が平年よりも若干高めであることが分かる。一部愛好家に「幼虫の時期に気温が高かったので、幼虫の生育に支障があったのかもしれない。」という意見があるが、キベリタテハは高温を嫌うから、可能性はあるかも知れない。温暖化による高温が原因ならば、今後、本州中部地方から姿を消す可能性も考えられる。
 次に、4月から8月までの毎月の降水量を見てみると(グラフ2.)、標高1,000mの地区の6月が平年よりも若干多く、また8月が極端に多くなっているが、それ以外の月は平年を大きく下回っているのが分かる。今年は、関東において異常な水不足であったことは記憶に新しいが、乾燥ストレスに対して強いシラカンバ(食樹)と本種であるから、少雨であったことが、幼虫の生育に悪影響を及ぼしたとは考えにくい。
 では8月の1ヵ月間の降水量について、キベリタテハの発生が多かった2012年と2013年、そして極端に少ない本年(2016年)を比較してみると(グラフ3.)になる。2016年は、8月7日から15日を除くほとんどの日に雨が降っているのが分かる。グラフには表していないが、降雨の時間帯は夕立の場合もあるが、ほとんどの日が朝から夕方まで断続した降雨になっている。
 キベリタテハの生活史を見ると、標高1,000m前後の発生地において、7月下旬から8月中旬、9月上旬頃の3回くらいに分かれて羽化する。7月下旬から8月中旬に羽化した個体は、涼を求めて標高1,500m以上の高山へある程度の集団で移動し、9月中旬前後には標高1,000m前後の発生地に戻り越冬の準備をする。9月に羽化した個体は、移動はしないものと移動するものがおり、 高地へ移動した個体の中には、そのまま高地で越冬するものもいる。また、冷夏の年は、ほとんどの個体が高地へ移動することがないと言われている。
 つまり、以上のことから推察できるのは、本年は、幼虫の時期に気温が高く、幼虫の生育に何らなの悪影響があり、羽化までに至らなかったこと、もしくは7月下旬から8月中旬に羽化した個体が、雨のために高地への移動を妨げられたのではないかということである。キベリタテハの観察や写真撮影をする方の多くは標高の高いポイントに訪れるため、キベリタテハが高地へ移動していなければ、当然、見ることはできない。

 本年、キベリタテハが極端に少ない理由が、高地へ移動ができなかったという事だけならば、来年は、気象条件次第では、多くのキベリタテハが見られるかも知れない。しかしながら、標高1,000m前後の発生地において、温暖化の影響で多くが死んでしまった可能性もある。しずれにせよ、標高1,000m前後の発生地において検証したわけでもなく、単なる机上論の仮説でしかない。勿論、他の理由があるかも知れない。(クジャクチョウとエルタテハについては、未検証。)

グラフ1.キベリタテハの生息地における月別平均気温の推移(気象庁のデータより作成)

グラフ2.キベリタテハの生息地における月別降水量(気象庁のデータより作成)

グラフ2.キベリタテハの生息地における8月の降水量(気象庁のデータより作成)

 一番、心配なことは、毎年繰り返される採集者による乱獲である。個人の標本コレクション、あるいは標本の販売が目的の乱獲が横行しているのである。一人が1頭採集しても、100人が来れば100頭いなくなる。しかも、一人が1頭ではなく、捕れるだけ捕るのだから激減するのは当たり前だ。実は、毎年の採集者による乱獲が減少の一番の原因かも知れない。

参照:キベリタテハ(2018)

参考文献等
森下和彦, 1992. 世界のヒオドシチョウ属. Butterflies 3: 36-45
気象庁 過去の気象データ検索

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アサギマダラ

2016-09-06 22:39:18 | チョウ/タテハチョウ科

 アサギマダラ Parantica sita niphonica (Moore, 1883) は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)/ マダラチョウ亜科(Subfamily Danainae)/アサギマダラ属(Genus Parantica)にに分類されるチョウで、日本全土から朝鮮半島、中国、台湾、ヒマラヤ山脈まで広く分布する。分布域の中で下記のようにいくつかの亜種に分かれているが、日本に分布するのは亜種 Parantica sita niphonica とされる。

アサギマダラ属(Genus Parantica)

  1. アサギマダラ Parantica sita niphonica (Moore, 1883)
  2. ヒメアサギマダラ Parantica aglea maghaba (Fruhstorfer, 1909)
  3. ルソンアサギマダラ Parantica luzonensis luzonensis (C. Felder et R. Felder, 1863)
  4. タイワンアサギマダラ Parantica swinhoei (Moore, 1883)
  5. シロアサギマダラ Parantica vitrina vitrina (C. Felder et R. Felder, 1861)

 アサギマダラは、翅の水色の半透明な部分には鱗粉が少なく、名前の「アサギ(浅葱)」とは青緑色の古称で、この部分の色に由来する。気品のある色合いと優雅な飛び方に癒されるが、幼虫の食草となるガガイモ科植物はどれも毒性の強いアルカロイドを含んでおり、アサギマダラはこれらのアルカロイドを取りこむことで毒化し、敵から身を守っていると言われている。体内に毒を持っているため、一度食べた鳥は食中毒症状を起こして二度と食べなくなるという。
 また、成虫が好んで吸蜜するフジバカマやヒヨドリバナには、ピロリジジンアルカロイド(PA)が含まれ、オスは性フェロモン分泌のために ピロリジジンアルカロイドの摂取が必要と考えられている。ちなみにフジバカマ(藤袴)は、秋の七草の一つで「源氏物語」の巻立てがある花であり、環境省RDBにて準絶滅危惧種に選定されている。アサギマダラは、境省RDBに記載はないが、千葉県RDBでは準絶滅危惧種として選定されている。

 アサギマダラは、日本で唯一「渡り」をするチョウとして知られているが、最近の調査では、夏に日本で羽化したアサギマダラは、秋になると南西諸島や台湾まで南下し、そこで繁殖した子孫が春に北上し、日本に再び現れるという行動が明らかになっている(その逆のパターンもある)。 マーキング調査では直線距離で2,000km以上移動するものや、1日あたり200km以上も移動した個体もいるという。
 2012年8月に山梨県のある林道にて何十頭ものアサギマダラが乱舞する光景にであったことがある。谷から吹き上げられる気流に乗り優雅に舞う姿は、未だに忘れられない。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

アサギマダラ

アサギマダラ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/250秒 ISO 200 +2/3EV(2011.9.10)

アサギマダラ

アサギマダラ(フジバカマでの吸蜜)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F3.5 1/400秒 ISO 200(2011.9.10)

アサギマダラ

アサギマダラ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 800 +1/3EV(2015.9.11)

アサギマダラ

アサギマダラ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F11 1/200秒 ISO 200(2012.8.25)

アサギマダラ

アサギマダラ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 200(2012.8.25)

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