竹林に生息するヒメボタルの観察と撮影を行ってきた。
は、ブナの天然林や杉の人工林、雑木林、竹林、そして畑地なそ様々な環境に生息しており、日本各地でそれら環境下で発光飛翔する姿を観察し写真という記録に収めてきた。しかしながら、竹林の写真は秩父の生息地と中部地方の2枚であり、秩父では竹林というよりはアズマネザサも繁茂した竹藪で、放置された竹林内は、毎年発生する竹と枯死した竹が密生しヒメボタルも生息しにくい状態であった。中部では道路わきの崖に茂った手入れのされていない竹林で、ヒメボタルが生息しているのではなく、単にそこを飛んでいるというものであった。そこで、知人の写真家の方にお願いして、美しい竹林に生息している場所を案内いただき、竹林に生息するヒメボタルの観察と撮影を行ってきた。
車での遠征は、昨年10月以来である。距離は、およそ382km。そこそこの長旅である。前日は勤務であったため、帰宅は翌日のあさ5時。徹夜なので4時間ほど仮眠をして、13時半に自宅を出発した。現地近くの待ち合わせ場所には18時半に到着。その後、知人が来られて、早速、竹林へと足を運んだ。竹林は、渓畔林の一部であり、手入れがされていないところもあるが、手入れがされている竹林は、竹と竹の間は広いが、密度は薄くないため下草は伸びていない。また一部分は、ぽっかりと穴が開いたように開けた空間(ギャップ)もあり、成虫の飛翔に必要な空間が十分に提供されていた。
知人の話では、ヒメボタルは深夜型で午前0時位にならないと発光飛翔せず、その後は午前2時、3時まで盛んに発光飛翔するとのことであったが、19時半に竹林に向かうと、すでに数十頭が発光を始めていた。まだ盛んに飛び回るという感じではなかったが、驚きの事実である。
他地域における活動開始時刻が23時過ぎの深夜型のヒメボタルでも、20時くらいからチラホラ光りだす個体もいるが、やはり23時過ぎにならないと本格的には発光飛翔はしない。しかしながら今回の竹林では、深夜型にも関わらず20時半頃には数百というヒメボタルが飛び交っていた。
今回訪問した前日は午後から雨で、深夜には1時間当たり16mmという降水量で明け方近くまで降っていた。その後は、くもり一時晴れ。気温は23度まで上がったが夕方には16度。少々肌寒い感じ。月明りはまったくなかったが、曇り空に街明かりが反射して、竹林の中は意外と明るかった。そんな状況で、深夜型のヒメボタルが早い時間帯から活動していることが信じられなかった。薄暮型かとも思って知人に確かめたが、いつもは午前0時にならないと光らないと言う。単に雨が降った後だからとも言えず、何とも不思議な生態のヒメボタルである。ちなみに、知人が3日後に訪問し20時から待機したが、光り始めたのは22時で、しかもわずかな数だけ。23時後半から本格的に発光飛翔が始まり、観察を終えた午前2時でも盛んに発光飛翔していたとの事であった。
竹林全体では、おそらく数千頭のヒメボタルが生息していると思われる。22時半頃では、フィルムで撮っていた頃の撮影方法の一発露光で撮影しても、かなりの光で埋め尽くされる写真になるほどであった。(写真5及び6)予定では、午前0時から撮影を開始し、2時頃まで撮るつもりでいたが、結局23時時点で十分に観察と撮影ができたので撤収することにし、帰路に就いた。
途中のサービスエリアで1時間ほど仮眠し、朝5時に帰宅した。
今回、案内いただいた竹林のヒメボタル生息地は、他者には知られていないため、十分な観察と撮影が行えたが、知人の話では、最近のヒメボタル撮影者はたいへんマナーが悪いという。注意をすると逆切れされたと言う。
私も経験があるが、ヒメボタルの生態を知りもしないで撮影に来るカメラマンが実に多いのは悲しいことである。環境の悪化や破壊で絶滅してしまう方が多いが、自分勝手なカメラマンが一人でもいればヒメボタルは求愛行動を邪魔され、複数人が毎日来れば、激減してしまう。以下には、数分から数十分という多重露光の写真も掲載したが、このような光景を写真に残すには、カメラの操作方法や撮影方法ではなく、まずヒメボタルの生態を学んでほしいと思う。ヒメボタル生息地では「ホタルが優先」である。
最後に、今年も案内いただいたI氏に改めて御礼申し上げたい。
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Canon 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 6秒 ISO 1600 90秒相当の多重(撮影地:中部地方 2025.5.25)

Canon 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 6秒 ISO 1600 4分相当の多重(撮影地:中部地方 2025.5.25)

Canon 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 30秒 ISO 3200 90秒相当の多重(撮影地:中部地方 2025.5.25)

Canon 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 10秒 ISO 3200 30分相当の多重(撮影地:中部地方 2025.5.25)

Canon 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 30秒 ISO 3200(撮影地:中部地方 2025.5.25)

Canon 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 30秒 ISO 3200(撮影地:中部地方 2025.5.25)
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