モリアオガエル Zhangixalus arboreus (Okada et Kawano, 1924) は、アオガエル科(Family Rhacophoridae)アオガエル属(Genus Zhangixalus)に分類されるカエルで日本の固有種で、本州と佐渡島に分布する。
体長はオスが42~60mm、メスが59~82mmほどで、地方個体群毎にかなりの差異が見られる。指先には丸い吸盤があり、木の上での生活に適応している。体色は個体差が大きく、全身が緑色を呈する個体もいれば、全身に褐色の斑紋が出る個体もいる。また、体表にはつやがなく、目の虹彩が赤褐色なのも特徴である。
山間部から平野部までの森林に生息している。非繁殖期はおもに森林に生息するが、繁殖期の4月から7月にかけては生息地付近の湖沼や水田、湿地に集まり産卵を行う。この産卵形態がモリアオガエルを語る上で最も顕著な特徴である。モリアオガエルは水面上にせり出した木の枝や草の上などに白い泡で包まれた泡巣を作り、その内部に卵を産みつけるのである。メスが産卵場所にやってくるとオスが背中にしがみつき、産卵行動が始まるが、卵塊の形成が進むに連れて1匹のメスに数匹のオスが群がる場合が多い。足でかき回し、受精卵を含んだ白い泡の塊を作るのである。
尚、アオガエル属の仲間は、白い泡で包まれた泡巣を作り、その中に産卵する。同属のシュレーゲルアオガエルは水田や池の畔などの地面のくぼみに泡巣を作る。また、佐渡ヶ島のモリアオガエルも、地面に泡巣を作る。
孵化したオタマジャクシは泡の塊の中で雨を待ち、雨で溶け崩れる泡の塊とともに下の水面へ次々と落下し、池の待ち受けるアカハライモリや多くに水生昆虫の餌食になっていまうが、何とか生き延びたオタマジャクシは、藻類や動物の死骸などを食べて成長する。1ヶ月ほどで前後の足が生えてカエルの姿になった幼体は上陸し、しばらくは水辺で生活し、その後森林で生活を始める。
モリアオガエルは、その産卵形態から、水面まで植物が覆い茂るようなうっそうとした森の中の水たまり、あるいは里山の谷戸や棚田が必要であるが、残念ながら近年、その様な環境は急速に減りつつある。
生態系豊かな生息環境の減少を原因として多くの地域で減少傾向にあり、環境省版レッドリストには記載はないものの、都道府県版レッドリストにおいては、21の都府県で絶滅危惧種としており、福島県の「阿武隈高地のモリアオガエル」は、ふくしまレッドリスト(2022年版)において「絶滅の恐れのある地域個体群」として記載している。また、福島県双葉郡川内村平伏沼の繁殖地、岩手県八幡平市の大揚沼モリアオガエルおよびその繁殖地が国指定の天然記念物に指定されている他、各自治体レベルでの天然記念物指定は数多く、県指定天然記念物では全国で9カ所、市指定の天然記念物として9カ所、町指定天然記念物として4カ所が指定されており、この場所での採取はもちろん、個体に触れる事さえ条例で禁止されている。
私は、小学生の時からホタルの研究を続けているが、ホタル以外にもカブトムシやクワガタ、チョウやトンボなど昆虫類、カエルやサンショウウオなどの両生類が好きで、様々な種の飼育観察もしていた。カエルの仲間では、アフリカツメガエルを飼っていたが、何といっても憧れはモリアオガエルであった。当時、種村ひろし 著の「モリアオガエルの谷」(学習研究社 1972年01月 発行 ISBN:9784050035335)を、本がぼろぼろになるまで何度も読んでおり、その本は、今でも本棚にある。今では、どこに行くのも自由であるし、情報量も圧倒的に多いが、子供頃は行動範囲が狭く、情報は本や新聞記事以外には、ほとんどない。遠くへ行くのも親の車に乗って連れて行ってもらうことが多かったが、小学6年生の時、同級生3人と本の舞台である東京都檜原村に電車とバスを乗り継いで出かけたことがある。境内の裏にある小さな池で夕方から朝まで徹夜でモリアオガエルを観察し、何枚も写真に撮った。
この時期は、ホタルの成虫が光り舞う季節である。ゲンジボタルの生息地の近くには、モリアオガエルが生息しているところも少なくない。泡の卵塊を見るたびに、46年前を思い出し、またカメラを向けてしまう。

Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/320秒 ISO 320(撮影地:静岡県富士宮市 2010.07.10)

Canon 7D / EF 100-300/4.5-5.6 USM / 絞り優先AE F8.0 1/60秒 ISO 400 ストロボ使用(撮影地:東京都あきる野市 2011.5.29)
以下のサムネイル写真は、46年前にリバーサルフィルムで撮影したものをフィルムスキャナーでスキャンしてデジタル化したものです。クリックしますと別窓で1920×1280ピクセルで拡大表示されます。
OLMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm Electronic Flash T32 / Kodachrome 64 Professional(撮影地:東京都西多摩郡檜原村 1979.6)
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