ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ホソミモリトンボ

2023-07-31 14:27:12 | トンボ/エゾトンボ科

 ホソミモリトンボ Somatochlora arctica (Zetterstedt, 1840)は、エゾトンボ科(Family Corduliidae)エゾトンボ属(Genus Somatochlora)で、1840年にヨハンウィルヘルムゼッターシュテットによって最初に記載された。体長50mmほどの細身で、同属の他種とは、オスの尾部付属器が上から見ると弧状に湾曲すること、メスの腹部第3節背面に独特の丸い黄斑があること、産卵弁が後方に板状に突出することで区別できる。
 本種は、ヨーロッパ北部から中国東北部、シベリアなどに広く分布し、国内では北海道と本州に分布する。北海道では平地の湿地でも見られるが、グループの中では最も好寒性が強く、本州では、高冷地のミズゴケ、スゲ類が繁茂する遷移が進んだ浅い湿原に生息し、これまで福島、栃木、群馬、長野、新潟、岐阜の6県で記録があるが、いずれも局所的であり、近年では確認されていない場所も多い。
 環境省版レッドリストには記載されていないが、都道府県版レッドリストでは、栃木県で絶滅危惧Ⅰ類に、群馬県で絶滅危惧Ⅱ類に、新潟県と長野県で準絶滅危惧種としている。

ホソミモリトンボの分布図
図:ホソミモリトンボの分布図(環境省 自然環境局 生物多様性センター/ 「日本の動物分布図集」第3部 動物分布図(昆虫類 トンボ類)より)クリックで拡大表示

 ホソミモリトンボは、2011年7月に尾瀬で見たのが最初であるが、証拠にもならない写真しか撮れなかった。その後、毎年のように文献に記載された場所を訪れ探索を続けてきたが、一昨年、上高地の田代池で目撃できたのみで、他では確認すらできていなかった。
 さて、今年はどうするか。北海道に遠征すれば、撮影できる確率は高いのだろうが、本州で見つけたい。何回通っても確認できていない湿地に再訪して探索を続けても徒労に終わる可能性が極めて高い。それなら生息が確実な上高地へ行くか。しかし、上高地は観光客が非常に多く、限られた撮影場所に飛んできてくれる確率はかなり低い。そこで今年は、文献にも載っておらす、これまでに訪れたことがない湿原をgoogleマップで探し行って見ることにした。これまで訪れた中で、一番標高が高い場所になる。

 現地には6時半に到着し、まずはロケハン。誰もいない。生息環境に適していなければ、すぐに帰ろうと思ったが、生息の条件に合致していたため、カメラを準備して7時より探索を開始した。すると、すぐさま2頭のエゾトンボ系のトンボが飛び回っているのが目に入った。朝の食事タイムのようである。時折、目の前を通過する。どうも、これまで見てきたエゾトンボの仲間とは違ってスリムである。しかし、種類が判別できない。
 9時半頃になると、湿地の草原で短いホバリングを行うようになった。しばらくするといなくなり、数十分後にまた現れ、決まった場所で数秒のホバリングを繰り返していた。距離は6m。カメラを向けるが、ピントが合う前に移動してしまう状況。
 10時半頃になると、交尾をしながらタンデム飛翔する個体が遠くに見えた。この日は、全部で3組のタンデム飛翔を確認。すべて低空で飛翔し、近くの低木の枝に止まっている。ただし、距離は10m以上もあり撮影はできなかった。そのうち1頭が目の前の草むらに入って行くのが見え観察していると、メスが産卵に訪れたようである。完全に草むらで、地面が濡れているのかも分からない。何カ所か移動しながら草むらの潜っていく。長いと3~4分ほど出てこない。どのように産卵しているのかも見えなかった。その時に写した写真をモニターで確認すると、腹部第3節背面に独特の丸い黄斑がある。この特徴でホソミモリトンボであることが分かった。
 この個体は、見失ってしまったが、正午近くなって別のメスが産卵に訪れ、この個体も草原の中の非常に小さな窪みに降りて行くことが見られた。その時刻には、オスはまったく現れることはなかった。夕方にもオスのホバリングが見られると思い待機したが、この日は現れることはなかった。
 10年間探して求めていたホソミモリトンボをようやく間近で確認でき、証拠程度ではあるが写真に撮ることができた。たまたまこの湿原に飛んできた個体ではなく、数頭を確認したこと、タンデム飛翔と産卵も確認しているので、確実な生息地であろうと思われる。エゾトンボ科では、これまでタカネトンボ、エゾトンボ、ハネビロエゾトンボ、カラカネトンボを観察し撮ってきた中で、本種は、生息環境が他の種とはまったく異なっており、また昨年まで本種を探索していた湿原や湿地とも異なっており、改めて生息できる環境を学ぶことができた。
 ホソミモリトンボは、写真初掲載のトンボで、ブログ記事「昆虫リストと撮影機材」「蜻蛉目」で113種類目となる。

 ホソミモリトンボを撮るまでに10年以上を要したが、残念ながら今回はピンボケ写真が多く、オスの決定的図鑑写真ではない。近いうちに再度訪れ、ホバリングや静止写真、運が良ければ交尾態の写真を狙ってみたいと思う。(後に静止とホバリングの写真撮影は叶った。参照投稿記事をご覧頂きたい。)
 他の昆虫でも、撮影までに時間を要した種は多い。例えば、オオキトンボを撮るために兵庫県に、ヒロオビミドリシジミは大阪府まで何度も通ったが、ゴマシジミ(青ゴマ)の開翅を撮るためには、長野県に5年間で10回通い、サツマシジミの開翅を撮るために和歌山まで8年間で10回通って撮影した経験がある。これらは確実に生息している場所で、目前に多くの被写体を前にしている状況での事である。ヒサマツミドリシジミは、北陸まで8年間で9回通い撮影できたことを思いだす。ヒサマツミドリシジミでは、生息地ではあっても、一度もオスを確認できておらず、9回目でやっと出会うことができた。これらすべて、各種生態の基本的知識を学ぶことは勿論、遠征の経験から得た知見が何より役立った。これらは、「撮影できた」という結果だけではなく、各種の保全にも役立つものである。
 今回撮影できたホソミモリトンボでも同様で、10年以上探索した経験と今回得た知見は、本種の保全に欠かせないものであると思う。今後も継続して訪問し、本種の本州における生息環境と生態を調べていきたい思う。
 尚、今回の撮影場所は、論文などで発表すれば、ホソミモリトンボの生息地としては、分布上かなり貴重な場所であると思われる。しかしながら、本種の幼虫期は3~4年と推定され、同属よりも比較的長いこと、湿原の遷移という環境変化が進行していることから、あと何年生息できるか分からず、また、インターネット上で地名がある程度公表された場所では、採集者も多いため、保全の観点から生息地の情報は一切、記さないこととしたい。
 帰路は中央道を使ったが、談合坂SA手前5km地点から小仏トンネルまで20kmの渋滞。特に談合坂SA手前から上野原ICまでは、まったく動かないことも多々あり、拷問のような渋滞であった。八王子JCからはスムーズであったが、八王子の料金所からは、また渋滞。今度は事故で、降りる国立ICまで50分の表示。仕方なく、八王子から一般道で自宅に帰った。

参照投稿記事

引用:環境省 自然環境局 生物多様性センター / 「日本の動物分布図集」第3部 動物分布図(昆虫類 トンボ類)

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 160 -2/3EV(撮影地:本州中部 2023.07.30 7:43)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:本州中部 2023.07.30 7:44)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:本州中部 2023.07.30 7:47)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 250 -2/3EV(撮影地:本州中部 2023.07.30 9:53)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 250 -2/3EV(撮影地:本州中部 2023.07.30 9:58)
ホソミモリトンボ(メス)の写真
ホソミモリトンボ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 200 -2/3EV(撮影地:本州中部 2023.07.30 10:33)
ホソミモリトンボの産卵場所の写真
ホソミモリトンボの産卵場所(湿原の中に細流がある)
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涼を求めて滝巡り③白糸の滝

2023-07-28 16:33:34 | 風景写真/滝

 白糸の滝は、静岡県富士宮市にある滝で、日本の滝百選にも選ばれている他、日本三大名瀑の1つと呼ばれることもある。また、国の名勝、天然記念物。「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産として世界文化遺産に登録されている。なお、名勝、天然記念物としての指定名称及び世界文化遺産・構成資産一覧では「白糸ノ滝」と表記されている。
 高さ20m、幅150mの湾曲した絶壁から、大小数百の滝が流れ落ちているが、上部の水を通す地層である新富士火山層と下部の水を通さない地層である古富士火山層の境から出ている。本滝の一部を除いてそのほとんどが富士山の湧水であり、その姿は白糸の名にふさわしく、幾筋もの絹糸をさらしているようである。ちなみに、白糸の滝という名の滝は、全国18の道県に22ある。

 さて、涼を求めて滝巡りの最後は白糸の滝である。当初、「鐘山の滝」と「陣馬の滝」の2カ所しか計画していなかったが、「陣馬の滝」から15分ほどで行ける距離であり、時間も早いことから観光客はまだ少ないだろうとの予測で、急遽、行ってみることにした。
 白糸の滝は、過去には昼間に2回、夜中に1度訪れており、夜では、星空と撮影し「白糸の滝(星景)」として掲載したが、昼間は観光で訪れていたため、写真はほとんど撮っていなかったこともあり、滝巡りの締めくくりとして臨んだ。
 500円を払って専用駐車場に止め、10分ほど歩いて滝へ向かう。観光客は、まだ少ないが外国人が目立っていた。階段を下りて撮影開始である。こうした観光地の光景では、自分の感性が問われる。何を感じ、何を表現したいのか、自問自答と自然との対峙を続けながら。結局は定番的な写真しか撮ることができなかった。
 8時半過ぎに撮影を終え、駐車場に戻ると、汗だく。涼を求めたつもりであったが、暑さしか印象に残らなかった。撮影した写真から涼を感じていただけるだろうか・・・

 この日は、午前3時に自宅を出発し、滝を三カ所巡り終えたのが午前9時前。夜にヒメボタルの観察と撮影を予定していたので、およそ10時間近く時間がある。近くの湿原に行ってみたが、チョウもトンボの姿は少なく撮影対象にはならない。ヤマキチョウやキリシマミドリシジミの撮影も考えたが、結局は道の駅などで時間を潰し、17時からヒメボタルの生息地で待機したが、何と、残念ながら、まさかのゼロ。1頭も光ることがなかった。早い時期から猛暑続きの今年は、例年より早い発生だったようである。
 現地を20時半に引き上げ、中央道で帰路に就いたが、日曜の夜で空いているだろうと思ったのは束の間、事故と自然渋滞で小仏トンネルまで17kmの渋滞。充実感のないまま、自宅に22時半に到着した。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

白糸の滝の写真
白糸の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F13 1/5秒 ISO 50 -1 1/3EV(撮影地:静岡県富士宮市 2023.07.23 8:34)
白糸の滝の写真
白糸の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F13 0.4秒 ISO 50 -1EV(撮影地:静岡県富士宮市 2023.07.23 8:27)
白糸の滝の写真
白糸の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F13 1/6秒 ISO 50 -1EV(撮影地:静岡県富士宮市 2023.07.23 8:32)
涼を求めて滝巡り(再生時は、設定からHDお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
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涼を求めて滝巡り②陣馬の滝

2023-07-26 20:24:52 | 風景写真/滝

 陣馬の滝は、静岡県富士宮市の五斗目木川にかかる滝で、源頼朝が富士の巻狩りで近くに陣を張ったことから「陣馬の滝」と呼ばれている。鐘山の滝の比べれば迫力に欠けるが、川からの直瀑と、溶岩層の隙間からの潜流瀑が何本か横から流れており、小さいながらも美しい滝である。

 陣馬の滝には、近くに10台ほどが止められる専用駐車場があり、滝へは遊歩道で1分である。鐘山の滝は、撮影場所が限られたが、こちらはどこからでも自由に撮ることができる。初めて訪問する場所は、事前にネットの画像検索で情報を得るが、ネットの写真と実際に行って見たギャップはあるが、「自分は何を美しく思い、ここから何を感じ、何を表現したいのか・・・」自然との対峙が始まる。
 直瀑は、まるで天女が舞い降りたかのようであり、周囲の潜流瀑は、それを祝う天子の宴のようにも思えた。

 陣馬の滝では、私より先にコスプレイヤーたちが撮影に興じていた。鬼滅の刃のコスプレなのか定かではないが、NHKの大河ドラマ・ファンの私が扮するなら、源頼朝か北条義時だろう。かつて源頼朝が行った「富士の巻狩り」は、源頼朝が征夷大将軍たる権威を誇示するためや軍事演習などの目的があったとされる。今では、陣馬の滝がある富士宮市こそないが、富士の周囲には自衛隊の北富士及び東富士演習場があり、軍事演習が行われている。2013年にユネスコ世界遺産委員会によって「富士山ー信仰の対象と芸術の源泉」として世界文化遺産に登録されたが、一部では、戦車が走り砲弾が飛び交っている。この滝の天女は、そんな歴史をずっと見てきたのだろう。ずっと平和であることを祈りたい。

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陣馬の滝の写真
陣馬の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 2秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:静岡県富士宮市 2023.07.23 6:53)
陣馬の滝の写真
陣馬の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 3.2秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:静岡県富士宮市 2023.07.23 6:48)
陣馬の滝の写真
陣馬の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 4秒 ISO 50 -2/3EV(撮影地:静岡県富士宮市 2023.07.23 6:56)
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涼を求めて滝巡り①鐘山の滝

2023-07-24 16:43:51 | 風景写真/滝

 鐘山の滝(かねやまのたき)は、山梨県の山中湖、忍野八海をもととする富士山伏流水も含まれる桂川の滝である。鐘山の滝は、鐘の音を響かせるという伝説がある。それは、武田信玄がのろしをあげる時を惜しんで、早鐘を打たせた際、勢いあまって懸け金がはずれてしまい、つり鐘は転げ落ちて桂川の大滝へと深く沈みいった。それ以来、滝からは鐘の音が聞こえるという。水量が多くなければ、滝は二条に分かれ美しい。

 22日、気象庁は「関東甲信と東北南部・東北北部が梅雨明けしたとみられる」と発表した。平年より関東甲信は3日遅いが、少し前より晴れが続いており、ほぼ例年通りと言ってよいだろう。梅雨明け前から猛暑続きで、体も暑さに慣れてきた昨今だが、やはり天然クーラーの涼しさが恋しくなる。
 先日、知人が自身のFacebookに滝の素晴らしい写真を投稿されており、その滝には一度行ってみようと思っていた、それが鐘山の滝である。今回、鐘山の滝も含め、三カ所の滝巡りをしてきたので、一カ所ずつ紹介したいと思う。

 鐘山の滝は、おそらく紅葉の季節も良いと思うが、周囲の緑との組み合わせで撮っておきたかった。また、位置関係から朝陽が逆光気味の遮光で差してくるので、滝と光芒を撮ろうと23日の午前3時に自宅を出発した。「道の駅富士吉田」の駐車場に4時半に到着し、早速徒歩で10分ほどの鐘山の滝へ向かった。ふじさんミュージアムを過ぎて左に曲がると滝の轟音が聞こえた。階段を降りると展望デッキが整備されており、そこから眺めることになる。展望デッキには、お洒落な椅子も設置してあり、そこに座ってゆっくりと滝を眺め、マイナスイオンを浴びることができる。気温は20℃。清々しい朝である。
  整備される前は、滝つぼの近くまで降りて行くことができたようだが、現在は、道はあるものの「危険の為立ち入り禁止」とある。水量が少なければ違うのだろうが、この時は梅雨明け直後で水量が多く、滝は二条には分かれておらず、凄まじい轟音とともに迫力があり、表示を無視して降りて行くことは、たいへん危険であると思った。
 写真は、展望デッキから撮ることになるため構図が限られ、誰が撮っても同じカットになる。そこで、朝日の光芒を狙って日の出時刻から待機したのだが、あいにく東方向に雲が浮かんでおり、太陽の直射がない。6時まで待ったが、雲越しの柔らかい日差しのみであるため、今回は諦めて、次の滝に向かうことにした。

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鐘山の滝の写真
鐘山の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F11 13秒 ISO 50(撮影地:山梨県富士吉田市 2023.07.23 4:50)
鐘山の滝の写真
鐘山の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1秒 ISO 400(撮影地:山梨県富士吉田市 2023.07.23 4:59)
鐘山の滝の写真
鐘山の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F9.0 1.3秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地富士吉田市:山梨県 2023.07.23 5:44)
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ヒメボタル(東京2023)

2023-07-17 16:51:04 | ヒメボタル

 ヒメボタルの東京都における生息地は、標高およそ700m~1,200mの山地に点在しており、2004年から観察と撮影を行っている。今年は、2021年から観察を開始した生息地に行き、発生状況や環境の変化などを調査観察をするとともに、いつものように写真に収めてきた。

 ヒメボタルは、全国的(本州、四国、九州)には標高0mからおよそ1,700mまで、ブナ・ミズナラの原生林から、天然林、杉林や竹林、河川敷や里山の雑木林などの人工林(二次林)、畑や堀など、様々な環境に適応して生息している。ちなみに、「人工林」は読んで字のごとく、人が植えて育てる森林のことで、「天然林」とは、伐採など人の手が加わっても、自然の力で維持されている森林を指す。それに対し「原生林」とは、過去に伐採されたことがなく、人為の影響のない森林のことを言う。
 今年も訪れた東京のヒメボタルの生息地は、標高およそ1,100mでブナ、ミズナラ、シラカンバ(白樺)の天然林と林道を挟んで反対側は杉林の人工林となっており、一度に違った生息環境を見ることができる。杉林はよく管理され、天然林においても笹などが低く茂っているため、ヒメボタルのオスの飛翔空間が広く保たれている。このような空間は、当然のことながら夜間でも暗く、オスは空間全体を飛び回っている。草木が生い茂った部分では飛翔しない。翅がなく飛ぶことができないメスは、こうした空間の一部におり、オスは空間全体を飛翔することでメスに存在をアピールしているものと思われる。

 東京都内におけるヒメボタルの発生時期は、7月上旬から中旬頃までで、この生息地は例年7月10日頃から発生が始まり、10日間ほどで期間は終了する。今年は、7日には知人が発生を確認しており、9日にはかなりの数が飛翔していたと連絡を受けた。連日、月がなく風も弱く、気温も19時で23℃以上あり、一気に発生数が増え、飛翔条件も良いことから、多くのオスが乱舞したのだろう。
 私が訪れたのは15日。現地には18時に到着。月明かりの影響がなかった2021年は、ブナ林の入口付近で19時24分から発光が始まり、月明かりがあった昨年は19時40分。今年も月はなく、気温は24℃。風もない。ただし、発光が始まったのは昨年同様に19時40分であった。20時を過ぎると発光飛翔数が増えてきたが、期待するほどの数ではなかった。飛翔数には波があり、まったく発光が見られない時間帯もある。21時を過ぎると次第に減り、最後は21時40分には、ほとんどが下草に止まり、発光を止めた。
 今年は、おそらく例年よりも4日ほど早い発生で、12日頃をピークとして訪れた15日は終息傾向であったと思われる。蛹から羽化までの期間は温度に関わらず一定と仮定し、前蛹から蛹化までは、ゲンジボタルと同様に積算温度が関係しているとして、昨年と今年の気象をグラフにし比較検証してみた。6月からの平均気温、最高気温を比較すると、7月になってからは若干今年の方が高いが、積算温度を見てみると、最終的に今年は昨年よりも10日度ほど高くなっていることが分かる。前蛹から蛹化までの期間であっただろう6月の間でも高いことから、前蛹期間が短くなり昨年に比べて発生が早かったことが理解できる。また、7月1日~10日までの夕立を含めた降雨日数が、昨年の6日間に対して今年は4日間で、しかも7月5日からまったく降っておらず、更には10日からは連日最高気温が30℃を超えたことが、羽化後の飛翔チャンスを多く与え、1頭の寿命も短くし、発生のピークを早めたとも考えられる。(参照:ホタルの発生に及ぼす温暖化の影響について
 東京のヒメボタル生息地には、鑑賞者も他のカメラマンも来ることはない。環境も安定しているので、また来年も定点観察地として訪れ、今度はメスの生息場所を突き止めたいと思う。

多摩地方の気象の図
多摩地方の気象(気象庁データより作成)

 ヒメボタルの観察と撮影も終盤になり、今年は次の週末が最後となる。写真においては、いつも、どんな場所でもそうだが、中望遠レンズで点景とともにヒメボタルの光を芸術的に入れた写真は撮っていない。私の写真をご覧いただければお分かり頂けるように、標準レンズや広角レンズでなるべく広い範囲を撮っている。それは、ヒメボタルが生息する自然環境とヒメボタルが舞う命をつなぐ光景を嘘偽りない記録として残しておきたいからである。「どのような環境で、どのような範囲を、どのように飛翔しているのか」これが重要な記録になる。
 生息場所によっては、当然、光跡の数はとても少ない。それでも、その写真はヒメボタルが生息している環境と生息の証拠として貴重な資料だ。光跡の少ない写真を掲載したところ「光が少なく観賞に耐えない写真」とコメントを頂いたことがある。単なるインスタ映えを狙った光ばかりのヒメボタルの写真があふれ、そのような写真ばかりを見ているからであろう。多少の悔しさも感じるので、それに近い写真も掲載することにしている。
 今回は、カメラ2台を杉林にセットし、発光飛翔の様子を収めた。1枚目は、飛翔がよくわかるように150秒相当の多重にとどめた。杉林の急斜面を下から上に、時には上から下に早いスピードで飛翔している。2枚目は同じ杉林において35分相当の多重である。3枚目は更にレンズの近くを飛翔した2カットを追加した。これらは見栄えは良いが、林床をどのように発光飛翔しているのかは全く分からない。ヒメボタルを知らない方では、林床が光で埋めつくされていると勘違いしてしまうかもしれない。また4枚目は、杉林とは林道を挟んで反対側にあるブナ、ミズナラ、シラカンバ(白樺)の天然林におけるヒメボタルの写真で、2021年に撮影した10分相当の多重のものを再現像して掲載した。今年は撮影しなかったが、映像は昨年に撮っているので、こちら「東京のヒメボタル生息地」を参考にして頂きたい。

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ヒメボタル(東京都)の写真
ヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 15秒×10カット多重 ISO 2000(撮影地:東京都 2023.07.15)
ヒメボタル(東京都)の写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 15秒×140カット多重 ISO 1600(撮影地:東京都 2023.07.15)
ヒメボタル(東京都)の写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 15秒×142カット多重 ISO 1600(撮影地:東京都 2023.07.15)
ヒメボタル(東京都)の写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 10秒×60カット多重 ISO 1600(撮影地:東京都 2021.07.10)
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沖縄の昆虫たち

2023-07-14 18:45:40 | その他昆虫と話題

 今回の沖縄遠征では、トンボ類は14種類を撮影することができたが、チョウ類はまったく縁がなかった。主目標にしたコノハチョウ、フタオチョウ、イワカワシジミは見ることすらできず、リュウキュウウラボシシジミは、3回目撃したにも関わらず撮ることができなかった。
 山奥の沢に行ったとき、とても小さなチョウがチラチラと飛んでおり、止まって所を観察すると、リュウキュウウラボシシジミであった。日本で最小クラスのチョウで、環境省版レッドリストで準絶滅危惧に選定されている。カメラを向けようとすると、ジャングルの奥に飛んで行ってしまった。その翌々日も訪れ2回ほど目撃したが、いずれもジャングルの奥へ飛んで行ってしまい、撮影することができなかった。どうも、曇りの日でないと林道まで出てきてくれないようだ。残念で仕方がない。
 ナガサキアゲハのメスは、南方ほど翅が白化するというので目標にはしていたが、出会えたのが2回だけで単なる証拠写真で終了。ナガサキアゲハは、今では東京でも普通種だが、やはり沖縄のナガサキアゲハのメスは美しかった。また今回も、オキナワハンミョウに多く出会った。砂地は彼らの楽園とばかりに、どこに行ってもチョロチョロと動き回っていた。川の近くの林道では、湿った落ち葉が多い場所に潜んでいたシリケンイモリにも出会った。
 4種類だけであるが、映像も撮影した。リュウキュウアブラゼミ、オキナワハンミョウ、ヤンバルトゲオトンボ、リュウキュウハグロトンボが写っている。リュウキュウアブラゼミは、鳴き方も違うのに 驚いてしまった。

 今回も課題を多く残した沖縄遠征であった。トンボ類も含めて主目標の達成率は2割ほどだが、目標をすべてクリアするには、1~2か月くらい滞在しないとダメかもしれない。今度は、まだ一度も昆虫撮影に行ったことがない「北の大地」 へ心が動いているので、その後、石垣島や西表島なども含めて、ホタルの時期に合わせて、また是非行ってみたいと思う。

以下の掲載写真は、サムネイル表示になっていますが、元画像は1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ナガサキアゲハの写真 ナガサキアゲハの写真 ナガサキアゲハの写真 ナガサキアゲハの写真 ナガサキアゲハの写真 アオバセセリの写真 タイワンクロボシシジミの写真 オキナワハンミョウの写真 オキナワハンミョウの写真 オキナワハンミョウの写真 シリケンイモリの写真 名護の海の写真 やんばるの森の写真
沖縄の昆虫たち(再生時は、設定からHDお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
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沖縄のトンボたち

2023-07-13 22:14:43 | トンボ

 今回の沖縄遠征で13種類のトンボを撮影したが、目標にしていたカラスヤンマ、アメイロトンボ、オオメトンボを撮ることができなかった。カラスヤンマは、昨年にオスの証拠程度の写真を撮り、メスも産卵していた場所と環境的にいるであろうと思われる新たな場所において、二日間で合計6時間待機したが、まったく姿を現さなかった。発生の時期が終わってしまったのか、単に運が悪かったのかは分からないが、たいへん残念である。アメイロトンボとオオメトンボについては、撮れればラッキー程度の目標で、しかも初日以外は早朝からの活動で、とても夕暮れまで体力が持たず、生息場所にも行けなかったので仕方がない。
 この記事では、今回撮影したトンボ類(過去に撮影済みの種類もある)をまとめて掲載したいと思う。尚、昨年掲載したショウジョウトンボ(沖縄個体群)は、本土に産するショウジョウトンボと染色体数が異なり、トカラ列島以南の南西諸島に分布する種は別亜種で、今回はタイリクショウジョウトンボと表記し「昆虫リストと撮影機材」「蜻蛉目」に112種類目として加えた。

この記事で写真を掲載したトンボの種類

  • リュウキュウハグロトンボ 昨年撮影しているが、今回はメスも撮影
  • オキナワチョウトンボ 2012年に宮古島で、昨年も撮影しているが、今回は交尾態を撮影
  • ヒメトンボ 2012年に宮古島で撮影済
  • コシブトトンボ 2012年に宮古島で撮影済
  • タイワンウチワヤンマ 2012年に宮古島で撮影済
  • ベニトンボ 2017年に高知県、2022年に石垣島で撮影済
  • タイリクショウジョウトンボ 初撮影
  • オオシオカラトンボ(沖縄諸島個体群) 初撮影

 尚、今回撮影したトビイロヤンマヤンバルトゲオトンボオオキイロトンボアオビタイトンボリュウキュウベニイトトンボについては、それぞれ個別の記事で掲載しているので、リンク先の各記事をご覧いただきたい。

以下の掲載写真は、サムネイル表示になっていますが、元画像は1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

リュウキュウハグロトンボの写真 リュウキュウハグロトンボの写真 リュウキュウハグロトンボ(メス)の写真 リュウキュウハグロトンボの写真 リュウキュウハグロトンボの写真 オキナワチョウトンボの写真 オキナワチョウトンボ(交尾態)の写真 ヒメトンボの写真 ヒメトンボの写真 ヒメトンボの写真 コシブトトンボの写真 タイワンウチワヤンマの写真 ベニトンボの写真 タイリクショウジョウトンボの写真 タイリクショウジョウトンボの写真 オオシオカラトンボ(沖縄諸島個体群)の写真 オオシオカラトンボ(沖縄諸島個体群)の写真
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リュウキュウベニイトトンボ

2023-07-12 18:36:10 | トンボ/イトトンボ科

 リュウキュウベニイトトンボ Ceriagrion auranticum ryukyuanum Asahina, 1967 は、イトトンボ科(Family Coenagrionidae)キイトトンボ属(Genus Ceriagrion)で、九州南部(熊本県、宮崎県、鹿児島県)及び南西諸島のほぼ全域と南北大東島などに分布している。九州南部では、同属でよく似たベニイトトンボと分布が重なっているが、リュウキュウベニイトトンボのメスは、腹部第7~10節の背面が黒い。また、オスの複眼は緑色であることから区別できる。挺水植物が繁茂している池・沼や田んぼ・湿地などで普通に見られるトンボである。
 昨年の遠征では、イトトンボの仲間には全く出会えなかったが、今回は様々な場所を訪問したことで、本種の撮影が叶った。しかしながら、環境的に上方から撮るしかなく、交尾態においては雌雄両方にピントを合わせることができなかったことが少々残念である。
 リュウキュウベニイトトンボは初撮影で、ブログ記事「昆虫リストと撮影機材」「蜻蛉目」で111種類目となる。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

リュウキュウベニイトトンボの写真
リュウキュウベニイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 1000 -1/3EV(撮影地:沖縄県 2023.7.7 7:14)
リュウキュウベニイトトンボの写真
リュウキュウベニイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 2000 -1/3EV(撮影地:沖縄県 2023.7.7 7:12)
リュウキュウベニイトトンボの写真
リュウキュウベニイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 2000 -1/3EV(撮影地:沖縄県 2023.7.6 7:31)
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アオビタイトンボ

2023-07-12 18:34:24 | トンボ/トンボ科

 アオビタイトンボ Brachydiplax chalybea flavovittata Ris, 1911 は、トンボ科(Family Libellulidae)アオビタイトンボ属(Genus Brachydiplax)のトンボで、その名の通り前額が金青色に輝く。1970年代以前の国内では、沖縄県の大東諸島以南にしか分布していなかったそうだが、本種は北上をしていることで知られており、1970年代後半にはそれより北の沖縄の島々周辺で見られるようになり、1986年には鹿児島県の南さつま市でも発見され、2022年には、広島の江田島市でも発見されている。
 前記事で紹介したオオキイロトンボを撮影した場所では、大きな池の周囲が湿地になっており、そこではアオビタイトンボが多く見られた。最初見た時は、小さいコフキトンボという印象で、やはり オスは成熟すると腹部の一部が黒化し、さらに白粉を生じて青灰色に変化する。気温34度の炎天下であり、トンボたちも熱中症対策で逆立ちポーズ(オベリスク姿勢)をとっていた。
 アオビタイトンボは、昨年に撮影はしているものの証拠程度の1枚だけであったので、今回、ブログ記事「昆虫リストと撮影機材」「蜻蛉目」で110種類目として記載した。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

アオビタイトンボの写真
アオビタイトンボ(オベリスク姿勢)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 250 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2023.7.6 13:25)
アオビタイトンボの写真
アオビタイトンボ(オベリスク姿勢)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 320 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2023.7.6 13:26)
アオビタイトンボの写真
アオビタイトンボ(オベリスク姿勢)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 400 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2023.7.6 13:30)
アオビタイトンボの写真
アオビタイトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 1000 -1/3EV(撮影地:沖縄県 2023.7.7 7:16)
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オオキイロトンボ

2023-07-11 16:17:23 | トンボ/トンボ科

 オオキイロトンボ Hydrobasileus croceus (Brauer, 1867)は、トンボ科(Family Libellulidae)オオキイロトンボ属(Genus Hydrobasileus)で、沖縄本島の他、渡嘉敷島、久米島、石垣島、西表島に分布する国内のトンボ科では最大種である。平地や丘陵地の挺水植物がよく繁茂する池沼や水田・水路に生息している。翅全体が黄橙色に着色しており、後翅の広角部に褐色の部分があり、サイズと独特の翅の模様で他種とは簡単に区別できる迫力あるトンボである。
 オオキイロトンボは、昨年、トビイロヤンマを観察していた場所で見ていた。黄色い大きな連結したトンボが突然現れ、あっという間に飛び去った。後からオオキイロトンボのペアであることが分かったが、その時は二度と飛んでくることはなかった。今年は、是非とも写真に収めたいと思っており、ダム湖の周囲で小さな池と湿地になっている場所を探して行ってみることにした。二日間で朝方と午後に訪れ、二日間ともに目撃し、タンデム飛翔する様子や産卵する場面も観察できたが、なかなか近くには飛んできてくれず、遠くで飛び回るだけであった。写真は、すべて望遠マクロで撮影しトリミングしたものである。
 オオキイロトンボは初撮影で、ブログ記事「昆虫リストと撮影機材」「蜻蛉目」で109種類目となる。

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オオキイロトンボの写真
オオキイロトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 1600 -1/3EV(撮影地:沖縄県 2023.7.7 7:42)
オオキイロトンボの写真
オオキイロトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 1250 -1/3EV(撮影地:沖縄県 2023.7.7 7:42)
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ヤンバルトゲオトンボ

2023-07-11 13:40:59 | トンボ/トゲオトンボ科

 ヤンバルトゲオトンボ Rhipidolestes shozoi Ishida, 2005 は、トゲオトンボ科(Family Rhipidolestidae)トゲオトンボ属(Genus Rhipidolestes)のトンボ。トゲオとは「棘尾」の意味で、オスの腹部第9節背面にトゲ状の小さな突起があることに因んでいる。トゲオトンボ科の種は、国内に7種1亜種の8分類群が分布しているが、これらいずれも分布が重なっていないので、基本的に一つの分布地域に1種(亜種)となる。本種は、沖縄本島北部の山原(やんばる)だけに分布している。沖縄本島では、名護市の多野岳の南西部および渡嘉敷島に分布する個体群は、オキナワトゲオトンボ Rhipidolestes okinawanus Asahina, 1951で、多野岳の北東部の山岳地帯に分布する個体群を本種としている。
 2020年に高知県にてシコクトゲオトンボ Rhipidolestes hiraoi Yamamoto, 1955 を探索したが見つからず、今回、トゲオトンボ科では初見初撮影で、ブログ記事「昆虫リストと撮影機材」「蜻蛉目」で108種類目となる。

 ヤンバルトゲオトンボは、山地の渓流に生息し、成虫は4月~7月ごろにだけ出現する。ヤゴは渓流沿いの水しぶきがかかる苔むした岩の上や、水が染み出した岩盤などに生息していると言われている。
 昨年も訪れた山奥に行ってみた。林道を進むと沢との出会いが幾つかある。その1つでは、去年も撮ったリュウキュウルリモントンボが数頭見られた。そこから数百メートル離れた別の沢に寄った見たところ、ヤンバルトゲオトンボを見つける事ができた。幸運にも交尾態も撮影することが叶った。そこでは、リュウキュウルリモントンボはいなかった。

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ヤンバルトゲオトンボの写真
ヤンバルトゲオトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/50秒 ISO 400 ストロボ使用(撮影地:沖縄県 2023.7.6 11:22)
ヤンバルトゲオトンボの写真
ヤンバルトゲオトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/60秒 ISO 400 -1EV ストロボ使用(撮影地:沖縄県 2023.7.6 11:26)
ヤンバルトゲオトンボの写真
ヤンバルトゲオトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/60秒 ISO 400 -1EV ストロボ使用(撮影地:沖縄県 2023.7.6 11:25)
ヤンバルトゲオトンボ(交尾態)の写真
ヤンバルトゲオトンボ(交尾態)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F3.5 1/160秒 ISO 400 -2/3EV ストロボ使用(撮影地:沖縄県 2023.7.6 11:31)
リュウキュウルリモントンボの写真
リュウキュウルリモントンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/50秒 ISO 400 -1EV ストロボ使用(撮影地:沖縄県 2023.7.6 10:57)
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トビイロヤンマ

2023-07-10 15:06:31 | トンボ/ヤンマ科

 トビイロヤンマ Anaciaeschna jaspidea (Burmeister, 1839)は、ヤンマ科(Family Aeshnidae)トビイロヤンマ属(Genus Anaciaeschna)のトンボで、成虫はオスメスとも体の地色は赤褐色で、和名の「鳶色」はここに由来する。性成熟したオス成虫の複眼は淡青色で、同属種のマルタンヤンマの深い青色の複眼とは違った魅力がある。日本では沖縄諸島以南の南西諸島に分布し、平地から山沿いの抽水植物が繁茂する湿原や、水田などに生息している。

 昨年は、日の出前に目前で数十頭が飛んでいる様子を見ながら、証拠にもならない飛翔写真1枚しか撮れなかったトビイロヤンマ。その悔しさから、今年も沖縄に行くことにした。昨年も3泊4日であったが、初日と最終日は東京と沖縄間の移動のみ。また、ホタルが撮りたかったためにホテルを那覇市内にしたため、沖縄北部との移動にも時間を要し、思うような探索ができなかった。その経験とロケハンを生かして、今年は十分に活動できるスケジュールで臨んだ。ちなみにホテルは名護市内のグリーンリッチホテル名護にした。主要な場所へは、いずれも30分ほどで行ける場所である。
 5日。那覇空港に11時過ぎに到着し、早速レンタカーで北部を目指す。昨年、生息を確認した場所には15時過ぎに着き、周囲を散策しながら夕暮れを待った。那覇には妹夫婦が住んでいるが、昆虫に詳しいわけではない。他に親しい知人がいるわけでもないので、すべて自力で環境を見ながら「ここならいるだろう」という勘で見つけた生息地である。
 トビイロヤンマは、黄昏飛翔性が強く朝より夕方の方が活発に摂食するという。その情報を頼りに待ったが、日が暮れても1頭も飛んでこない。かなり風が強かったからか?確かにエサになる小さな虫も飛んでいない。風が強ければ、風上に向かってホバリングすることを期待したが、結局、20時を過ぎても1頭も現れなかった。
 発生時期の狭間なのか、あるいは生息数そのものが減少したのか、幸先の悪さを感じながら、レンタルしたホンダのNワゴンで車中泊。(ホテルの宿泊予約は、もともと2日間だけ)昨年は朝5時から飛んでいたので、翌朝は3時半に起きて4時から探索開始である。日の出は5時40分。本来なら、まだかなり暗い時間なのだが、満月から3日目の明るい月があり、自分の影が見えるほどであった。5時半になっても、まったく出てこない。月明かりの影響なのか、やはりいないのか?
 5時50分。やっと出てきた。2頭のオスが高速で目の前を飛び回る。とても撮影どころではない。太陽も当たってきた。昨年の経験では、太陽が当たる時刻にはあっという間に姿を消してしまう。1頭を注意深く目で追っていると、茂みに下りて行くのが見えたので、慎重に近づいてみると、枝先に止まっているではないか!このチャンスは二度とないかもしれないと思いながら、カメラを向けた。これぞトビイロヤンマという写真を残しておきたい。まるで沖縄のサンゴ礁の海のような複眼の色。わずか1分程度で飛び去ってしまったが、前日と合わせて7時間も汗だくになりながら、ただひたすら待った甲斐があった。ホバリングや交尾、産卵といった生態写真ではなく図鑑的写真だが、特徴がよくわかるものを撮れたと思う。尚、トビイロヤンマは、初撮影の種で、ブログ記事「昆虫リストと撮影機材」「蜻蛉目」で107種類目となる。

 トビイロヤンマは、環境省版レッドリストで絶滅危惧ⅠB類に選定されており、絶滅の危険度が極めて高い。その原因は水田の減少であると言われている。沖縄では、明治末期には9,000ha近くあった水田が、1985年以降は871haとピーク時の1/10以下まで減少し、次々とサトウキビ畑に変わっているのが現状である。トビイロヤンマの複眼は、水色の涙で染まっているのかも知れない。

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トビイロヤンマの写真
トビイロヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/40秒 ISO 400 ストロボ使用(撮影地:沖縄県 2023.7.6 6:04)
トビイロヤンマの写真
トビイロヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 1600(撮影地:沖縄県 2023.7.6 6:05)
トビイロヤンマの写真
トビイロヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/200秒 ISO 3200(撮影地:沖縄県 2023.7.6 6:05)
トビイロヤンマの写真
トビイロヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.0 1/60秒 ISO 400 ストロボ使用(撮影地:沖縄県 2023.7.6 6:05)
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七夕の天の川(沖縄にて)

2023-07-09 15:56:49 | 風景写真/星

 七夕の天の川を沖縄にて撮影してきた。

 昨年に引き続き、本年も沖縄に4日間の遠征。トンボやチョウなど昆虫の撮影が主な目的であるが、今回も天の川の撮影を予定に組み込んだ。昆虫の写真や遠征記録は、次の記事から順に掲載しようと思うが、まずは天の川を掲載したい。
 2012年に宮古島で見た天の川の光景は忘れることができない。南の島の星空は、こんなにも素晴らしいのか!と感動し、初めて天の川を撮ったのだった。しかし、宮古島へはホタルの講演と観察で伺ったため、カメラは昆虫用で、レンズも50mmマクロレンズで撮るしかなかった。その後、いつか南の島で天の川を撮ろうと思っており、昨年は、沖縄本島ではあるが、今帰仁村の古宇利島から天の川を撮った。(沖縄の天の川)それなりに写ったが、本島越しでは街明かりが以外にも明るく、今回は、再挑戦である。沖縄遠征は7月5日から8日までの三泊四日(初日は車中泊)で、すべての夜に天の川を撮影できるように予定を組み、本島の東海岸から真っ暗な太平洋上で写そうと東村の高江展望台を撮影地に選んだ。
 沖縄は、すでに6月25日に梅雨が明け、連日晴続きであるが、2週目となるとなかなか快晴にはならない。遠征初日も晴れであるが、雲が多く断念。2日目も同様で断念。3日目が最後のチャンスで、しかも七夕である。 月が昇ってくるのは23時頃なので、月明かりも問題ない。朝からこまめにGPV気象予報で雲の状態をチェックし、一か八かで高江展望台に行ってみることにした。
 名護のホテルから現地までは、車でおよそ90分ほどの道のり。大宜味から平良湾へ出て、沖縄本島最北端まで続く県道70号線を進む。昆虫を撮りに頻繁に往復した名護からやんばるまでの国道58号沿いは、道の駅やコンビニがあるが、県道70号線には何もない。畑と森の中を進むだけである。小さな集落には「共同売店」がある程度で、沖縄の原風景を味わえる道である。
 少し心細くなるような道を走って、高江展望台に19時半に到着。日没は19時26分なので、まだまだ明るい。展望台の先は断崖絶壁で、太平洋を一望できる。運よく南から北東方向には雲がない。ただし、以前に千葉県の銚子から撮影した時もそうであったが、海上は湿度が高いので多少霞んでいる。とりあえずカメラをセットし、暗くなるまで待機である。
 20時半頃になると肉眼でも天の川が確認できるようになってきた。撮影した画像をモニターで確認すると、はっきりと天の川が写っている。単に海原の上に横たわる天の川の写真であるが、沖縄ならではの星空なので良しとしたい。石垣島は星空保護区に指定されているが、本島も早ければ2024年度の上半期にも「ダークスカイ・インターナショナル」(本部・米アリゾナ州)が認定する「星空保護区」への申請を予定しているという。貴重な財産を守ってほしいと思う。
 七夕といえば、織姫(琴座のベガ)と彦星(鷲座のアルタイル)が、年に一度7月7日の夜だけカササギ(白鳥座のデネブ)がつくる橋をわたって会える日。今夜は出会えたに違いない。21時に帰り支度をしていると、目の前の草地で1頭のホタルが光っていた。オキナワスジボタルであろう。きっとホタルも祝福していたのだろう。
 帰り道は、来る時よりももっと心細い。パイナップル畑の中の細い道を抜け70号線に出ると、何やら不気味な雰囲気。米軍の北部訓練場がすぐ近くにあるのである。ジャングルに鉄の門があり、兵士が立っていた。高江のやんばるの森を切り開いてオスプレイの着陸帯であるヘリパッドがいくつもあるらしい。静かで豊かな大自然の東村高江には、似つかわしくない光景であった。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

天の川の写真
天の川(沖縄にて)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 25秒 ISO 2000(撮影地:沖縄県東村 2023.7.7 20:41)
天の川の写真
天の川(沖縄にて)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 25秒 ISO 2000(撮影地:沖縄県東村 2023.7.7 20:50)
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