ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

沖縄のトンボ

2022-06-30 20:56:56 | トンボ

 今回の沖縄遠征におけるトンボの目的は、すでに掲載したリュウキュウハグロトンボ以外に、トビイロヤンマカラスヤンマの撮影であった。トビイロヤンマは早朝と夕方のみ活動する種なので、那覇市内に予約したホテルには泊まらずにレンタカーで移動し、夜明け前(日の出は5時36分)の5時から生息地と思われる場所で探索を開始した。湿地の周りを歩いていると、多数のトンボが水路の上や低木の周りを飛び回る姿が目に入った。トビイロヤンマである。
 トビイロヤンマは意外と小さいという印象。薄暗い中でも水色の複眼は確認できる。小さな虫を捕まえて食べるために、かなりのスピードで飛び回るので、カメラで捉えることは不可能である。上空を飛ぶ姿を何とか撮ったが、証拠にもならない1枚。かなり広範囲を20~30頭が飛んでいたように思われる。朝日が顔を出すころにはほとんどの個体はいなくなり、6時にはまったく飛翔しなくなった。夕方は、18時半頃から日の入り時刻を過ぎるまで飛翔するようである。

 この湿地では、真っ黒な翅の大きなヤンマが滑空していた。カラスヤンマのメスである。急いでカメラを向けたがピントが合わず、それ以後はチャンスがなかった。この近くの海岸沿いの松林では、その上を群飛するらしいという情報も得たが、産卵シーンならばチャンスも多そうだと思い、清流で昼過ぎまで待機したが、この日は結局現れず撮影することはできなかった。
 夜は那覇でホタルの観察と撮影をし、ホテルに宿泊。トビイロヤンマカラスヤンマが心残りである。実はリュウキュウハグロトンボにも出会えていなかった。ただし、ホテルからポイントまで2時間以上の道のり。ホテルであれこれ考え、インターネットで別のポイントを探して、翌日はカラスヤンマとリュウキュウハグロトンボに的を絞ることにした。
 密林の中を流れる渓流。到着後、早速リュウキュウハグロトンボに出会う。ただし、例によってカバンからカメラを出した途端にレンズが曇る。その後、リュウキュウハグロトンボは無事に撮影でき、渓流を下って行くと堰によって川の水が溜まった場所で、カラスヤンマが産卵中であった。(10時)ただし、カメラを向けた時には頭上高く飛び去り、大木の中へと消えてしまった。
 しばらくまっていると、流れの上を行き来するトンボが見えた。カラスヤンマのオスである。ホバリングはしない。10mくらいの範囲を行ったり来たり探雌&パトロール飛翔しているのである。15分ほど経つと頭上の木々の中へと消えていった。その後12時過ぎに2頭のオスが、再び飛翔し始めた。メスも来るに違いない。メスが来るまでの間、置きピンでオスの飛翔を撮影。数十枚撮ったがすべてピンボケ。かろうじて種類が分かる程度の3枚を以下に掲載した。メスは結局現れず、蒸し暑さからの体力の限界も近く、仕方なく諦めて帰ることにした。

 トンボの撮影に2日間かけたが、これまでに紹介した種の他に、ハラボソトンボ、アオビタイトンボなども撮影し、写真には撮れなかったが、オオキイロトンボのタンデム飛翔も見た。以下に掲載した写真の中には初見初撮影の種もあるが、証拠にもならない程度のものばかりであるから、自身の「撮影済み昆虫リスト」には加えない事とした。
 今回はカラスヤンマ探索に多くの時間を割いたため、トゲオトンボやイトトンボ類など沖縄にしかいないにも関わらず出会えなかった種も多い。初めての沖縄において、正確な情報もないまま自身の勘を頼りに探索をしたが、一週間くらい滞在しないとすべての目標は達成できないように思う。今回は多くの事を学んだので、来年また絶対に再訪し、多くの種を奇麗な写真に収めたいと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

トビイロヤンマの写真

トビイロヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.0 1/400秒 ISO 200(撮影地:沖縄県 2022.6.23 6:02)

カラスヤンマの写真

カラスヤンマ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / シャッタースピード優先AE F2.8 1/640秒 ISO 1000(撮影地:沖縄県 2022.6.24 12:08)

カラスヤンマの写真

カラスヤンマ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / シャッタースピード優先AE F2.8 1/640秒 ISO 800(撮影地:沖縄県 2022.6.24 12:09)

カラスヤンマの写真

カラスヤンマ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / シャッタースピード優先AE F2.8 1/640秒 ISO 500(撮影地:沖縄県 2022.6.24 12:09)

ハラボソトンボの写真

ハラボソトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/400秒 ISO 2500(撮影地:沖縄県 2022.6.23 5:49)

アオビタイトンボの写真

アオビタイトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 1600 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.23 9:06)

ショウジョウトンボ沖縄個体群の写真

ショウジョウトンボ沖縄個体群
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 1000 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.23 8:58)

ショウジョウトンボ沖縄個体群の写真

ショウジョウトンボ沖縄個体群
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 1000 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.23 8:58)

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オキナワチョウトンボ

2022-06-29 15:14:17 | トンボ/トンボ科

 オキナワチョウトンボ Rhyothemis variegata imperatrix Selys, 1887 は、トンボ科(Family Libellulidae)チョウトンボ属(Genus Rhyothemis)のトンボで、奄美大島以南の南西諸島の島々に分布し、平地・丘陵地の植生のある池や沼、ダム湖などに生息している。翅が鼈甲模様に似ていることから、以前はベッコウチョウトンボとも呼ばれていた。
 本種は、2012年9月9日に宮古島にて前翅の先端が無色透明なメス(写真一番下)を撮影している。翅の模様も異なっているが、地域変異と個体変異によるものである。ある用水路にて様々なトンボを追いかけていると、ほんの数頭ではあったが、本種がひらひらと舞うように飛んでおり、時折枝先や葉上に止まったりしていた。宮古島ではあまり撮れていなかったので、今回は少々時間をかけて追いかけた。
 次の記事では、沖縄遠征における「トンボ」のまとめを掲載したいと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

オキナワチョウトンボの写真

オキナワチョウトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 1250 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.23 9:09)

オキナワチョウトンボの写真

オキナワチョウトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 1250 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.23 9:14)

オキナワチョウトンボの写真

オキナワチョウトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 1600 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.23 9:14)

オキナワチョウトンボの写真

オキナワチョウトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 400 +1EV(撮影地:沖縄県 2022.6.23 9:26)

オキナワチョウトンボの写真

オキナワチョウトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 800 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.23 9:27)

オキナワチョウトンボ(メス)
Canon EOS 7D / EF100-300mm f/4.5-5.6 USM / 絞り優先AE F10 1/500秒 ISO 640(撮影地:沖縄県宮古島市 2012.09.09)

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リュウキュウルリモントンボ

2022-06-28 21:04:00 | トンボ/モノサシトンボ科

 リュウキュウルリモントンボ Coeliccia ryukyuensis ryukyuensis Asahina, 1951 は、モノサシトンボ科(Family Platycnemididae)ルリモントンボ属(Genus Coeliccia)のトンボである。モノサシトンボ科は世界では26属205種が知られているが、日本では3属6種1亜種が確認されている。
 リュウキュウルリモントンボは、初見初撮影の種で「昆虫リストと撮影機材」「蜻蛉目」で106種類目となる。本種撮影でモノサシトンボ科は5種類撮影したことになる。

モノサシトンボ科(Family Platycnemididae)
  1. ルリモントンボ属(Genus Coeliccia)
    • マサキルリモントンボ Coeliccia flavicauda masakii Asahina, 1951
    • リュウキュウルリモントンボ Coeliccia ryukyuensis ryukyuensis Asahina, 1951
    • アマミルリモントンボ Coeliccia ryukyuensis amamii Asahina, 1962
  2. モノサシトンボ属(Genus Copera)
    • モノサシトンボ Pseudocopera annulata (Selys, 1863)
    • オオモノサシトンボ Pseudocopera rubripes (Navas, 1934)
  3. グンバイトンボ属(Genus Platycnemis)
    • グンバイトンボ Platycnemis sasakii Asahina, 1949
    • アマゴイルリトンボ Platycnemis echigoana Asahina, 1955

 リュウキュウルリモントンボは、奄美群島、沖縄本島とその周辺の島々に分布するが、奄美個体群と沖縄個体群との間には遺伝的差異があり別亜種とされている。奄美個体群(アマミルリモントンボ)では腹部第10節が淡青色なのに対して、本種は沖縄個体群は第9、10節が黄色になっており、たいへん美しい。腹長35mm~45mmほどで胸部背板に瑠璃色の紋が二つあるのも特徴である。
 樹林内や林縁の小河川や細流、湿地状の流れ、流れから切り離された水たまりなどに生息し、林道の側溝などでも見られる。気温のやや低い冬季を除き、南西諸島ではほぼ一年中見られる。

 6月23日の午前中は、やんばるの林道を探索。所々に小さな流れや滝、そして湧水が染み出している。そのような場所を通過するたびに車を止めて探索。すると、山側の薄暗い茂みで飛ぶ姿が目に入った。腹部の先端が黄色で複眼はブルー。リュウキュウルリモントンボである。三か所で1頭ずつの出会い。残念ながら、この林道では他のトンボやチョウにはまったく出会う事ができなかった。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

リュウキュウルリモントンボの写真
リュウキュウルリモントンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.0 1/25秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.23 7:33)
リュウキュウルリモントンボの写真
リュウキュウルリモントンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/30秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.23 7:54)
リュウキュウルリモントンボの写真
リュウキュウルリモントンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/50秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.23 8:14)
リュウキュウルリモントンボの写真
リュウキュウルリモントンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/30秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.23 8:19)

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リュウキュウハグロトンボ

2022-06-27 17:00:32 | トンボ/カワトンボ科

 リュウキュウハグロトンボ Matrona japonica Forster, 1897 は、カワトンボ科(Family Calopterygidae)タイワンハグロトンボ属(Genus Matrona)のトンボで奄美大島、徳之島、沖縄本島、渡嘉敷島に分布し、山間の森林に囲まれた渓流、川岸に植物が多い清流に生息している。本土に分布するハグロトンボ Atrocalopteryx atrata (Selys, 1853)と見かけは似ているが、本種は属を異にし、オスの翅基部が光沢のある青色が大きな特徴である。

 今回の沖縄遠征では、絶対に撮っておきたい種であった。成虫は沖縄本島では2月から12月下旬まで見られるとあり、やんばるの渓流では普通に見られる種と思っていたが、初めに訪れた場所ではまったく姿を見ることができず、予定を変更して翌日に行った渓流で、ようやく出会う事ができた。
 最初に出会ったオスの個体は未成熟なのであろう。渓流に接するジャングルの中の葉上に止まっていた。とても敏感でカメラを向けるとすぐに飛び立ち、どんどん奥に行ってしまった。渓流沿いの道を進むと、2カ所で見られた。1カ所はメスのみ。もう1カ所でオスが1頭川面にせり出す葉上に止まっていた。時折翅を開き、基部の青色が美しい。

 リュウキュウハグロトンボは、初見初撮影の種で「昆虫リストと撮影機材」「蜻蛉目」で105種類目となる。日本に生息するカワトンボ科は以下の7種であるが、本種撮影でクロイワカワトンボを除いて撮影したことになる。

  • クロイワカワトンボ Psolodesmus kuroiwae Oguma, 1913
  • ニホンカワトンボ Mnais costalis Selys, 1869
  • アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa Selys, 1853
  • アオハダトンボ Calopteryx japonica Selys, 1869
  • ミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia Selys, 1853
  • ハグロトンボ Atrocalopteryx atrata (Selys, 1853)
  • リュウキュウハグロトンボ Matrona japonica (Forster, 1897)

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

リュウキュウハグロトンボの写真

リュウキュウハグロトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/60秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.24 10:38)

リュウキュウハグロトンボの写真

リュウキュウハグロトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.24 10:38)

リュウキュウハグロトンボの写真

リュウキュウハグロトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.24 10:38)

リュウキュウハグロトンボの写真

リュウキュウハグロトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F16.3 1/30秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.24 10:36)

リュウキュウハグロトンボの写真

リュウキュウハグロトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/200秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:沖縄県 2022.6.24 10:37)

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沖縄本島のホタル

2022-06-27 09:37:48 | その他ホタル

 沖縄本島のホタルは、以下の8種類が生息している。しかしながら、成虫(オス)が発光する種は2種で、クロイワボタルとオキナワスジボタルしかいない。他のホタルはほとんどが昼行性であり、タテオビヒゲボタルのようにメスのみが発光する種もある。

  • オキナワクシヒゲボタル Cyphonocerus okinawanus okinawanus Nakane, 1983
  • オキナワアカミナミボタル Drilaster fuscicollis fuscicollis Nakane, 1977
  • オキナワクロミナミボタル Drilaster okinawensis Nakane, 1977
  • ナンザンミナミボタル Drilaster tenebrosus Kawashima, F. Satou et Sat ,2005
  • タテオビヒゲボタル Stenocladius azumai Nakane, 1981
  • クロイワボタル Luciola kuroiwae Matsumura, 1918
  • オキナワスジボタル Curtos okinawanus Matsumura, 1918
  • オキナワマドボタル Pyrocoelia matsumurai matsumurai Nakane, 1963

 沖縄本島では、森に入ればどこでもホタルを見ることができる。那覇市の中心街に近い末吉公園でも発光する2種クロイワボタルとオキナワスジボタルを見ることができる。発生時期はクロイワボタルは年1回、4月下旬から5月中旬に活動のピークが見られ、オキナワスジボタルは年2回、5~6月に加えて、9~10月に活動のピークが見られるとのことであるので、今回の沖縄遠征では目的の1としてホテルからも近い末吉公園で観察と撮影をすることにした。
 日中はやんばるでトンボとチョウを追いかけ、15時過ぎに公園駐車場に到着。まずは手ぶらでロケハン。駐車場近辺は整備された都市公園と言った感じだが、少し進むと熱帯のジャングルである。そして、とにかく暑い。汗が噴き出るのを我慢しつつ歩くが、途中で耐え切れなくなり、車に戻って待機。
 18時から再始動。ポイントとなる場所へは歩いて10分ほど。駐車場が21時で閉まってしまうため、撮影は遅くとも20時半には止めて戻ってこなければならない。どの辺をどのように飛ぶのかは、全く分からない。陸生のホタルであるからジャングルから出てきて、それなりの空間を飛ぶのだろうとの予測でカメラをセットした。
 なかなか暗くならない。それもそのはず。東京よりも南方のため、この日の日の入り時刻は19時25分。残照があるから、暗くなるのは20時近くだろう。幾分涼しくはなったとは言え、相変わらず汗が流れる。時折、散歩の方が通り過ぎる程度で、寂しく待機。19時45分。ようやく一番の暗がりで1頭が発光を開始した。がなかなか後が続かない。20時を過ぎた頃に数頭が飛翔を開始するが、カメラを向けていない所ばかりである。どうやら、発生の末期であるようだ。見渡せる範囲で20頭ほどしか発光飛翔しなかった。しかも石垣島のヤエヤマヒメボタル同様に、発光を始めてから30分程度で終了。まったく光らなくなった。
 写真には辛うじて2種類のホタル、クロイワボタルとオキナワスジボタルが写っている。この2種の発光パターンは異なり、クロイワボタルはヒメボタルに似て黄色く鋭く点滅するのに対し、オキナワスジボタルは青緑色に線を引くように発光することが分かって頂けると思う。
 20時20分に三脚をたたんで撤収。駐車場までは真っ暗な林道を戻るが、林道わきの茂みでは無数のホタルの光。まるでイルミネーションのようであった。明滅はしないオキナワマドボタルの幼虫たちである。これほどの数のマドボタル属の幼虫の発光は見たことがない。素晴らしい光景であった。

 末吉公園では、たいへん残念なこともあった。20時を過ぎた頃、10名ほどの団体がホタルのポイントに近づいてきた。すると一人が、かなり明るい懐中電灯を照らし、何かを説明している。「これがオオウナギです・・・」どうやら、年配ボランティアのガイドらしい。ホタルがまだ発光を続けているにも関わらず、そんなことは一切お構いなし。これには腹が立った。こちらからは何も言わなかったが、ガイドをする資格はないのではないだろうか。オキナワマドボタルの幼虫たちが発光している所では、「今はここがホタルのメインになっています」おそらく、幼虫が発光していることなど知らないだろう。ガイドならば、もっと学んで頂きたい。

 後で知ったが、末吉公園は様々な怪奇現象が起きることから心霊スポットとしても知られているという。霊感もなく時間も早かったからか、何も感じることも見ることもなく、無事に駐車場から出て、ホテルに戻った。

参考文献

  • 塚本 康太 (2016)沖縄本島に生息する2種のホタル:クロイワボタル Luciola kuroiwae、オキナワスジボタル Curtos okinawanus 成虫の野外における季節消長と日消長.保全生態学研究 (Japanese Journal of Conservation Ecology) 21 : 193-201

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

クロイワボタルとオキナワスジボタルの写真

クロイワボタルとオキナワスジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 400 30秒相当の多重(撮影地:沖縄県那覇市 2022.6.23 19:50~20:15)

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沖縄の天の川

2022-06-26 17:45:52 | 風景写真/星

 沖縄の天の川は、今回の遠征において一番最初に撮影した光景である。

 6月22日から25日まで、3泊4日で沖縄本島に遠征してきた。目的は、3月に石垣島で撮れなかった夏の天の川とトンボ類、そしてチョウ類とホタルである。昆虫類は、いずれも沖縄本島でしか見られない種を中心として撮影計画を練った。石垣島では初日を除いて雨だったが、沖縄は2日前に梅雨明けが発表され、連日晴れの予報である。多くを期待しての出発である。
 石垣島は羽田空港からJALで飛んだが、今回は成田空港から格安のpeachにて22日15:25発MM505便で向かった。那覇空港には18:30着。トヨタレンタカーでヤリスを借りて、まずは那覇市内のホテル「西鉄リゾートイン那覇」でチャックイン。天候が悪ければホテルに宿泊したが、見上げれば快晴。部屋に必要のない荷物を置いて、すぐに出発。今夜は車中泊である。

 翌23日は日の出前からやんばる地域でトンボを撮影する計画。那覇からは高速道路を使っても約2時間の道のり。天の川がちょうど良い角度で撮れるのは22時過ぎから。そこで、やんばるに向かう途中で天の川を撮影することにした。沖縄で絶景の星空を眺められるスポットはいくつかあるが、天の川が昇る方向は南東であるから、今回は「古宇利島」から撮ることにした。
 古宇利島は沖縄北部、国頭郡今帰仁村にある小さな島だが、橋が開通しており本島から車で行くことができる。沖縄の人も絶賛するほど透明度が高いエメラルドグリーンの海の上を車で走り抜けることができるが、残念ながら通過時は22時で真っ暗。橋を渡った所の駐車場に止め、早速ビーチに出てみると空には雲が一面に広がっており、星が全く見えない状況。1時間待って雲が切れなければ諦めようと、しばらく車内で待機していたところ、どんどん雲が無くなり満天の星。天の川も肉眼でくっきりと見える。早速、撮影の準備に取り掛かった。
 ここでちょっとした問題発生。カバンからカメラを取り出し三脚に付けるとレンズが曇っている。夜でも30℃の気温。そして何より湿度が高い。拭いてもすぐに曇る。10分ほどすると、やっと曇らなくなり撮影開始。
 翌朝は5時から次の現場で撮影したいので、タイムラプスは撮らず、十カットほどの撮影で終了。トンボが優先なので、星景ロケーションは二の次。個人的感想では、5月に撮った乗鞍高原よりも天の川はよく見えたので、場所を変えれば、更に美しい天の川や星空が見え、撮れるに違いない。
 今回は、単に「沖縄の天の川」を撮っただけ。それでもここ数年撮った天の川の中では一番美しいかも知れない。自身における今後の参考資料として掲載したいと思う。関連写真として、2012年に宮古島で撮影した天の川も掲載した。これは、APS-Cサイズのカメラとマクロ50mmレンズという組み合わせで撮った写真。それでも、ここまで写るのである。いつかまた宮古島に再訪して、フルサイズのカメラと広角レンズで撮り直ししたいと思う。水平線の彼方まで星で輝く光景を残したい。

 次は、沖縄で撮影した昆虫たちを紹介していきたいと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。

沖縄の天の川の写真

沖縄の天の川(古宇利島より)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 25秒 ISO 2000(撮影地:沖縄県国頭郡今帰仁村/古宇利島 2022.6.22 22:32)

沖縄の天の川の写真

沖縄の天の川(古宇利島より)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 25秒 ISO 2000(撮影地:沖縄県国頭郡今帰仁村/古宇利島 2022.6.22 22:23)

沖縄の天の川の写真

沖縄の天の川(古宇利島より)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 25秒 ISO 2000(撮影地:沖縄県国頭郡今帰仁村/古宇利島 2022.6.22 22:31)

宮古島の天の川の写真

沖縄の天の川(宮古島より)
Canon EOS 7D / SIGMA MACRO 50mm F2.8 EX DG / バルブ撮影 F2.8 11秒 ISO 6400(撮影地:沖縄県宮古島市 2012.9.08 21:03)

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日本ホタルの会主催 ヒメボタル観察会・写真撮影講習会開催のお知らせ

2022-06-20 20:31:23 | ホタルに関する話題

日本ホタルの会では、コロナ禍により2年連続で開催を見合わせていた発生地でのホタル観察会を再開します。今年度は、掲載した写真の場所の静岡県でヒメボタルを観察します。また、ヒメホタルの写真撮影講習会も行います。どなたでもご参加頂けます。以下をご一読の上、メールにて参加申し込みをお願いします。尚、写真撮影の講師は、私、古河が担当します。

日  時 2022年7月23日(土) 19時ころから23時 雨天決行
観察場所 富士山麓(静岡県・掲載写真の場所)
募集人数 20名(先着)

集合場所及び観察会の流れ
集合場所  道の駅すばしり(静岡県駿東郡小山町須走338-44)足湯前
集合時間  16時までに参集
事前説明  足湯近辺で事前ミーティング
      ・全体スケジュール説明
      ・ホタル観察のレクチャー(ヒメボタルとは、ホタル観察の諸注意)
      ・ホタル発生地保全のお願い
      ・保険の適用について
      ・ホタルの撮影方法講習について(希望者のみ)
夕 食  各自レストラン等で食事、再集合時間までは道の駅内で自由行動
再集合  18時00分に足湯前に再集合
出 発  駐車場の場所(所在地)をナビに入力してもらい出発(道の駅から目的地まで30分ほど)
到着後  観察地の概要及び時間・観察方法を再レクチャー。写真撮影者はスタンバイ。
待 機  発光開始時間までは、各自星空の観察など自由に過ごしてください。ただし、駐車場外には出ないようお願いします。
観察会  ホタルの発光が始まる頃にお声がけしますので、集合してください。
     ホタル観察の注意事項及びポイントをご説明しますので、スタッフの指示に従って行動してください。観察時間が長くなるので、途中で帰る場合はスタッフに申し出てください。
     23時ころに終了とする予定です。ヒメボタルは、23時ころから乱舞しますので、残っていただくことは可能ですが、最後のスタッフが引き上げるときには、
     必ずご一緒くださるようお願いします。
参加費  無 料
申込方法 メールによる事前申し込み      お名前(代表者名)と参加人数、写真撮影講習希望の方はその旨記載してください。
      hotarunokaijimukyoku@gmail.com
申込期限  2022年7月15日(金) 参加申し込みされた方には、後日、確認のメールを事務局より致します。

ご参加にあたって
・現地集合、現地解散の観察会です。道の駅から観察場所までの交通手段はありませんので、自家用車でご参加ください。
・ヒメボタルは、雨でも発光しますが、濃霧の場合は見られないことがありますので、あらかじめご承知おきください。
・夜になると気温が下がること、また、自然の中での活動になりますので、長袖、長ズボンでの参加をお勧めします。上に羽織るものがあるとより良いと思います。
・駐車場にトイレはあります。
・ヒメボタルの観察は、暗い場所になりますので、あるきやすく滑りにくい、はきなれた履物での参加をお願いします。
・懐中電灯は、使用できませんので、ご注意ください。(ホタルへの影響があり、写真撮影をしている人の妨げにもなります)
・帰りの道中(自動車移動も含む)は、深夜となりますので、十分に注意してください。

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高知県いの町のヒメボタル保全

2022-06-20 12:40:37 | ホタルに関する話題

 「仁淀ブルー」の愛称で知られる高知県の仁淀川。いの町の波川地区には、仁淀川の河川敷に木漏れ日公園があり、観光客を誘致しようと公園を整備するなどの事業を進めているが、今年の5月になってから木漏れ日公園内の林でヒメボタルが乱舞していることが分かった。
 この情報はSNSで拡散され、「いの町の仁淀川でヒメボタル見頃 暗闇に光を放ち飛び回る」とNHKのニュースでも取り上げられ、地元の関係者、学識者、いの町、国土交通省でヒメボタルの観察会を実施したところ、ヒメボタルの生息を確認。公園整備事業とヒメボタル保全の両立が課題となった。
 そこで、高知県ホタルネットワークの石川憲一氏を介して国土交通省 四国地方整備局 高知河川国道事務所より連絡があり、私がヒメボタル保全のための現地視察と指導に呼ばれることとなった。

 6月18日の19時羽田発で高知へ。その日は西鉄イン高知はりまや橋に宿泊。翌19日は10時より木漏れ日公園にて「第2回 波川地区かわまちづくり推進協議会」に参加する形で視察を行った。参加者は、高知河川国道事務所長、いの町の町長をはじめとする各関係者の他、NHKと高知新聞社も取材に来ており、保全の本気度が伺える。NHKのインタビューも受け、早速19日夕方には高知県内で放送された。「仁淀川流域の公園整備事業 ホタルの保全との両立目指し調査
 ヒメボタルのより良い生息環境の整備と維持、そして公園整備の両立ための課題が明確になり、幼虫の生息調査など今後も指導を行っていくこととなった。19日は16時20分発のJALで羽田へ。

 以下には、スマートフォンでの撮影だが、ヒメボタルが生息する木漏れ日公園や、視察後に高知県ホタルネットワークの石川憲一氏にご案内いただいたゲンジボタルやヒメボタルの生息地の写真を紹介した。どこにでもゲンジボタルやヒメボタルが生息しているといった感想だが、ヘイケボタルにおいては、放棄水田が多く、かなり減少傾向にあるという。
 来年の飛翔時期には、木漏れ日公園をはじめ各生息地を訪れたいと思っている。

ヒメボタルが生息する木漏れ日公園の写真

ヒメボタルが生息する木漏れ日公園(高知県いの町波川地区)

ヒメボタルが生息する木漏れ日公園の写真

ヒメボタルが生息する木漏れ日公園(高知県いの町波川地区)

ヒメボタルが生息する木漏れ日公園の写真

ヒメボタルが生息する木漏れ日公園(高知県いの町波川地区)

ヒメボタルが生息する木漏れ日公園の写真

ヒメボタルが生息する木漏れ日公園(高知県いの町波川地区)

ゲンジボタルが乱舞する川の写真

ゲンジボタルが乱舞する川(高知県)

ヒメボタルが乱舞する神社の写真

ヒメボタルが乱舞する神社(高知県)

ヒメボタルが生息地の写真

ヒメボタルが生息する山林(高知県)


郡上和良のホタル

2022-06-13 20:46:01 | ゲンジボタル

 郡上和良のホタル通称「和良蛍」の里に行ってきた。
 結果から言うと、発生の初期でまだ少なく、夜の気温17℃という低温、更には月齢12.6(満月の3日前)の明るい月が川面を照らしており、ほとんどが草むらでの発光。しかしながら、高知県宿毛のゲンジボタルに匹敵する数の発光数であり、西日本型ゲンジボタル特有の2秒間隔の集団明滅発光も見られた。

 岐阜県郡上市の東に位置する和良町は、日本一の鮎・和良鮎が育ち、特別天然記念物であるオオサンショウウオが生息している。さらには、川面を埋め尽くすようにゲンジボタルが飛び交い、幻想的な風景を目にすることができる。7月上旬~中旬には森の中でヒメボタルも観察することができるのである。2017年に有志が集い「和良蛍を守る会」が発足。和良蛍を守っていくための活動を行っている。
 和良蛍は、今回が初めての訪問である。守る会がインターネットで発信している発生情報でも出始めという文字。おそらく18日くらいがピークと思われたが、あいにく次の週末は高知県にヒメボタルの保全対策指導の予定があり、その後は沖縄遠征。11日土曜日は夜まで仕事のため、12日の夜しかチャンスがない。場合によっては、土曜の夜から大阪へ向かい、翌朝一番で三草山でウラジロミドリシジミ、或いは北陸へ向かって午前中はヒサマツミドリシジミを撮ってから郡上へ移動とも考えたが、一週間の疲れでそれは断念。
 12日日曜は良い天気である。郡上へ向かう途中にグンバイトンボとハッチョウトンボの生息地がある。そこに寄るためには、朝3時半に出発しなければならず、10年前に撮影していることから、これも断念。結局、自宅を12日午前9時に出発し、中央道の諏訪経由、土岐ジャンクションから東海環状自動車道の郡上八幡ICで降り、あとは一般道で和良町まで片道およそ430kmの遠征である。途中、駒ケ岳SAで昼食。一番のおすすめというソースカツ丼を頂く。
 現地近くの道の駅に14時半到着。快晴で気温は27℃。かなり蒸し暑い。早速、ロケハンである。公開されているホタルマップを見ながら歩くが、一番のポイントになる場所まで2.5kmもあった。ロケハンで5kmも歩き疲労困憊。道の駅から車をポイント近くの駐車場に移動させ、夕方まで休憩。
 到着時はかなり風が強かったが、夕方には無風状態。これはこれまでの経験通りである。18時から出動開始。実際にどこでどのように飛翔するのかが分からない。子供ずれで散歩をしていた奥様方に尋ねると、昨日はこの辺で沢山飛んでいたと教えていただき、これまでの知識と経験、そして写真映えする場所にカメラをセットした。
 待つこと1時間半。19時40分に1頭が林の中で発光。45分には、いきなり発光数が増えたが、なかなか飛び出さない。気温17℃で肌寒い。おまけに明るい月が山から顔を出し、こちら側の川岸を照らしている。私自身の影がはっきとみえるほどである。
 散策路は川沿いに500mほどで、観賞者も10数人に増えたが、私の後ろで歓声が上がっている。振り向けば、カメラを向けていない私の斜め後ろ側の対岸で、100頭ほどのゲンジボタルが集団明滅していたのである。川幅は30mほどで、中州や草の茂みは一切なく、堰の上部であるため流れが非常に緩やかである。その対岸の林が迫る岸辺である。集団明滅の光が川面にも映って素晴らしい。まさか、そこで多数のゲンジボタルが発光するとは思わなかった。ただし、カメラを向けた方向と同じで川面には一切飛び出して来なかった。

 和良蛍の里を21時に引き上げ、帰路も同じルートを進んだ。中央道の双葉SAに23時半に到着し、日本そばを食べて車中泊。午前4時半に出発し、国立インター近くのスタンドで洗車し6時に帰宅した。
 今年は、千葉県のゲンジボタル、埼玉県のヒメボタル、今回の郡上和良のゲンジボタルと観察と撮影をしてきたが、観察では十分な事を学んでいるものの、写真では今回も残念ながら良い結果が出せていない。和良蛍の発生ピーク時は、山が動くほどの乱舞だと言うので、来年は時期を合わせて再び訪れてみたい。(2023年に訪れた時は、まさに乱舞であった。→「和良蛍」)
 今後の予定は、沖縄のホタル、東京都内のゲンジボタルとヒメボタル、仙台と静岡のヒメボタルを観察し撮影する計画となっている。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

和良蛍の写真

ゲンジボタルの飛翔風景(和良蛍)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 400 2分相当の多重

和良蛍の写真

ゲンジボタルの飛翔風景(和良蛍)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 51秒 ISO 400

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ヒメボタル 埼玉2022

2022-06-06 15:42:05 | ヒメボタル

 今年最初のヒメボタルの観察と撮影は、2010年に私が発見した埼玉県の生息地へ6年ぶりに訪れた。
 ヒメボタルは、かつて「森のホタル」と呼ばれ、雑木林やブナ林、杉林、竹林内で見られることが多いが、埼玉県の生息地は開けた畑や草地を発光しながら飛翔する。街灯がある民家の庭先にも飛んでいる。中部地方では河川敷や城跡のお堀に生息するヒメボタルがいるが、開けた何もない草地上を乱舞するヒメボタルは伊吹山等の他ではほとんど見ない。関東地方のヒメボタルでは一番発生時期が早く、また成虫の形態にも特徴がある貴重な生息地である。

 2010年の生息地発見当時は、地元の人も誰一人としてヒメボタルを見ている方はいなかった。深夜型のヒメボタルであるから、地元の人も気が付かなかったのだろう。勿論、カメラマンもいなかったが、2010年から2012年に撮影した写真を当時ブログで公開(市の名称までを記載)したところ、場所を教えて欲しいとの問い合わせがあった。丁重にお断りすると私の写真(下記掲載写真4及び5)をプリントアウトし、市内で聞き取りを行って場所を突き止めた方がいた。そして自身のホームページで生息地までの行き方まで詳細に公開したのである。ヒメボタルはかなり広範囲に生息しており、近くの河川敷に遊歩道が整備された緑地には、ヒメボタル生息地として看板も設置され、それらの情報は瞬く間に広がり、2016年に訪れた時にはカメラマンで溢れかえっていた。
 あまりのカメラマンの多さにうんざりし、その後訪れていなかったが、今回生息地の様子と発生の状況を確認するため6年ぶりに訪れてみた。この生息地のヒメボタルは深夜型で23時過ぎからがピークになる。かつて観察していた場所には民家が増えたので迷惑等も考慮し、今回は数百メートル離れた河川敷の緑地に行って見ることにした。

 天候条件から4日(土)に行くことに(関東甲信地方は6日(月)に平年より1日早く梅雨入り)したが、あいにく19時まで仕事。仕方なく職場からそのまま現地へ向かった。21時頃に緑地の駐車スペースに着くと、すでに30台以上の車が止まっており、懐中電灯なしで遊歩道を進んで竹藪がある場所に行くと、遊歩道の両側には大勢のカメラマンが三脚を並べて待機中であった。
 かつてこの竹藪では、ほとんどヒメボタルを見ることがなかった、しばらく訪れないうちにカメラマンがこれだけ増えたということは、それなりに飛ぶのであろう。ただし、緑地全体は10年前に比べて自然度が高くなっていたが、草刈りはほとんどされていない状況。竹藪は、文字通り藪で荒れ放題である。
 背景の前撮りができない時間帯の到着であるが、一応カメラも持っていったので写真も撮ることにした。ただし、竹藪内は真っ暗で何も見えないため、カメラを向ける方向も構図も適当である。

 22時を過ぎると、竹藪の外の遊歩道脇にある草地でヒメボタルがチラホラと発光を始めた。カメラマンの足元でも光っているが、こちらが声を掛けなければ踏んでしまう。竹藪内ではまだ光らないが、草地では飛翔も始まった。
 23時を過ぎると、ようやく竹藪の中でも光が確認できたが、それほどは多くはなく、しかも手前の方ばかりで奥にはいない。人が入り込むことが出来ない程の藪では、メスの存在もないのだろう。これまで観察と撮影をしてきた近くの乱舞地では、道路脇の草地で多くのメスを発見している。他の地域の生息地でもそうだが、メスは林内よりも道路脇の茂みに多い。この場所でも遊歩道脇の草の茂みにいる可能性が高い。
 2009年に発見された岐阜県の長良川河川敷のヒメボタル生息地は、それまで長い間竹藪であったが、地元ボランティアが竹と竹の間隔を「人が傘をさして通れるほど」空けるという竹藪管理の格言の基に活動を行った結果、健康な竹林が回復し、ヒメボタルが乱舞し発見に至ったと言われている。この埼玉県の生息地においても、放置ではなく、適正な管理を行うことが必要である。
 竹藪では午前0時半頃まで観察と撮影を行い、駐車場に戻ろうと遊歩道を歩いていると、窪地になった開けた草地でヒメボタルが乱舞しており、改めて生息域の広さと生息数の多さを実感する。この緑地におけるヒメボタルの保全は、竹藪の適正な管理とカメラマンの「マナー向上」であろう。深夜ではあるが、誰もが気軽にヒメボタルを観察できる場所だけに、徹底しなければならないと思う。

 ホタルの写真撮影の鉄則について、この時期だからこそ記しておきたいと思う。

 ホタルの本格的な季節となり日本各地で美しい光景が見られ、インターネット上でも今年撮影されたホタル写真が多く公開されるようになってきた。フィルムカメラの時代では、フィルムの選択から始まり、長時間露光の露出設定、街明かりによる緑被り対策に苦労しながら撮影し、現像結果が分かるのは数日後。ヒメボタルの撮影方法を見つけ撮るまでに6年もかかったものである。しかしながら、現在のデジタルカメラでは、いとも簡単にホタルの写真が撮れてしまう。カメラ任せでも撮れるし、自宅に帰ってからパソコンで処理すれば美しいホタルの飛翔風景写真となる。
 ホタルの写真を上手く撮りたいと皆思う。知識不足の方々のために、プロの写真家のみならず多くのアマチュアカメラマンがインターネットやYoutubeでホタルの撮り方、写真現像の仕方を公開し、DVDまで販売している。これらで学ぶのも良いだろう。ただし、1つ注意しなければならない。こうしたプロの写真家もアマチュアカメラマンも「ホタルの専門家」ではないということである。私の知人であるプロの写真家の中には、日本ホタルの会の会員になり、ホタルについて学んでいる方もいらっしゃるが、こうした方は一部であり、多くはホタルに関しては素人である。ホタルの専門家ではないアマチュアカメラマンやプロの写真家の言うことは、当然のことながら写真撮影が主目的の内容になっている。
 写真の撮り方の説明の中には、ありきたりな「マナー」については書かれている。例えば

  • 光を出さない(車のヘッドライト、懐中電灯、カメラのランプはNG)
  • 虫除けスプレーを使わない
  • 不用意に茂みに入らない
  • ホタルを捕まえて持ち帰らない

 この程度である。こんな記述もある。「ホタルは光を嫌うことはすでに述べた。とはいえ、真っ暗な中で撮影の準備を行うのは大変。そこでホタルへの影響をできるだけ少なくするために、赤い光を発光できるヘッドライトを用意しよう。・・・」なぜ、真っ暗な中で撮影の準備をするのであろうか?なぜ、灯りを点ける必要があるのだろうか?確かに、ホタルの赤色に対する分光感度は比較的低いことから、灯火や懐中電灯に赤色フィルターをつけると影響を少なくできると書かれた論文は多くあるが、赤色でも1ルクスになると約25%が行動しなくなり、産卵にも遅れが生じるという報告もある。「影響を少なくできる」とは、「少なからず影響がある」ということである。
 高知県に住む知人の話では、私も行ったことがある沈下橋において、大きな赤い投光器をホタルが飛んでいる対岸に向けて照らしていた男女二人組のカメラマンを目撃している。点滅ではなくずっと照らしていたらしい。ゲンジボタルやヘイケボタルの成虫では、概ね0.1~0.2ルクス以下で正常に近い行動がみられる。0.3ルクスの満月でもオスの飛翔は抑制される。お互いの発光をコミュニケーションツールとし、繁殖行動しているホタルにとって暗闇は必須条件なのである。人間が写真を撮るという勝手な行為のために、少なからず繁殖行動に影響がある事を行ってはならない!

 こういった事を書くと、必ず反論がある。生息地に行くこと自体がホタルに影響があるのではないかといった極論まで頂くが、それは、ホタルの生息環境を考えれば論外な意見。「そういうお前もストロボを使っているだろう」この指摘に関しては、誤解をなくしたい。私が撮影したホタルのマクロ写真でストロボを照射したものが何枚かある。映像においてもホタルにライトの反射光を照らしたものもある。ストロボを使った写真は、すべて卵から飼育して羽化させた成虫を自宅の室内で撮影したものである。生息地におけるライトを使った映像は、ホタルの飛翔活動(繁殖活動)が終了し、葉に止まりだした時刻から0.2ルクス以下の弱い照射で撮影をしているので、繁殖行動にはまったく影響がない。

 ホタルの撮影や観賞において、よく「マナー」という言葉が使われているが、そもそもマナーとは、その場面でしかるべきとされる行儀・作法のことを指し、それ自体に強制力はないから、ホタルの撮影や観賞において守るべきことは「鉄則」という言葉を使いたい。「鉄則」とは「鉄の様に硬く絶対的な規則」である。「原則」は例外を認めるが、「鉄則」は例外を認めない。以下の鉄則を守って、ホタルの写真を撮って頂きたいと思う。

ホタルの写真撮影の鉄則(最低限)

  • 生息地には明るい時間に行き、ロケハンする
  • カメラは明るい時間にセットし、設定も完了させる
  • ホタルの飛翔が始まったら、デジタルカメラの背面モニターは黒い布で覆う
  • 懐中電灯は勿論、赤いライトなど灯りは一切持たない照らさない
  • 林道・遊歩道以外は、絶対に入らない
  • 帰るのは、ホタルの繁殖飛翔時刻が終了してから

 以下には、今回撮影した3枚の写真と2012年に撮影した写真2枚、そして今回と2012年に撮影した映像を編集した動画も併せて掲載した。写真は、いずれも1920*1280 Pixels であり、写真をクリックすると拡大表示される。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにすると高画質でご覧いただける。

ヒメボタルの飛翔風景の写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 1/125秒 ISO 2000 2分相当の多重(撮影地: 埼玉県 2022.6.05 23:30)

ヒメボタルの飛翔風景の写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 1/125秒 ISO 1600 90秒相当の多重(撮影地: 埼玉県 2022.6.05 0:11)

ヒメボタルの飛翔風景の写真

ヒメボタル(1枚目と2枚目の写真と発光色が異なっているのは、カメラの色温度設定のためによる)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 1/125秒 ISO 1600 1分相当の多重(撮影地: 埼玉県 2022.6.05 0:37)

ヒメボタルの飛翔風景の写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 1/125秒 ISO 1600 3分相当の多重(撮影地: 埼玉県 2012.6.08 23:37)

ヒメボタルの飛翔風景の写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 1/125秒 ISO 1600 2分相当の多重(撮影地: 埼玉県 2012.6.09 0:18)

ヒメボタル 埼玉県

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