ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

心ないホタル観賞が、ホタルを滅ぼす

2009-06-28 01:32:54 | ホタルに関する話題

人は何故、ホタルに懐中電灯を向けるのか?

光害によって、確実にホタルは減少、絶滅する

 今年は、毎年東京で観察を続けている場所を離れ、各地のホタル生息地に出かけているが、行く先々でたいへんがっかりしてしまう。何故なら、ホタル観賞に訪れる人々が懐中電灯を照らすからである。足下だけを照らすのならまだしも、ホタルに向けて照らす人々の何と多いことか!足下を照らすだけでも、ホタルは谷戸の茂みから出てこれず、谷戸全体を悠々と乱舞することができず、暗い茂みの中だけで繁殖行動をせざるを得ない。それにも関わらず、人々はホタルのいる暗い茂みに懐中電灯を向けるのである。ホタルは光るのを止めてしまう。つまり、子孫を残すための繁殖行動ができないのだ。

 ひっきりなしに訪れるホタル観賞者。そのほとんどの手に懐中電灯。遠くまで明るく照らすLEDを子供は無邪気に振り回す。ホタルを見に来ているのか、それともホタルを殺したいのか!「明かりは足下だけにしてください」と大きな声で叫ぶと、「写真を撮っているおじさんがいるから、明かりを消しなさい。」母親が子供に注意する。そうではない!写真のためではなく、ホタルのために私は叫んだのである。
 ホタルは、発光によってのみコミュニケーションを図っている昆虫だ。暗闇があってはじめて会話が成立する。月明かりでさえ嫌うのだ。このままの状態が続けば、確実にホタルは減少する。ホタル保存会がホタル幼虫やカワニナを放流して一時的にホタルが増えたとしても、ホタル観賞のマナーを改善しなければ、確実にホタルは絶滅する。人間は、何て無知で身勝手なのだろうか。私は、懐中電灯は一切使わない。ホタルの観察に懐中電灯を持っては行くが、ホタルが飛んでいる場所では一切照らさない。照らす必要もない。日没前からそこにいれば、目が慣れるからだ。

 お願いだから、懐中電灯で照らすのは止めてほしい。赤いセロファンもダメだ!これは、私からではなく、ホタルからの切なる願いである。

東京ゲンジボタル研究所/古河義仁

ホタルを滅ぼすホタル観賞 これが光害だ!!

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東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ホタル撮影2009 その2. フィルム VS デジタル

2009-06-21 08:46:42 | その他
 左:EOS-10D(デジタル) 右:EOS-3(フィルム)

 ホタルの風景写真撮影における銀塩カメラ(フィルム)の一番の弱点は、背景を美しく撮るのが難しいということである。ホタルが光りながら舞う光景は、その背後にある自然環境を写してこそ意味がある。しかし月が出ていたり、街灯などの明かりが近くにあるような場所では、適正露出が得られるまで露光すると昼間のような写真になってしまうし、谷底の真っ暗な場所では、数十分露光しても写るのはホタルの光跡だけで、背景はほとんど写らないこともある。露光時間が長くなればフィルムの相反則不軌によってカラーバランスが崩れ、色の再現性も悪くなる。リバーサルフィルムならラチチュードの範囲が狭いから、思うように写すことはたいへん困難だ。満足できる写真は、試行錯誤の上、何年もかけてようやく1枚撮影できるかできないかといった具合である。

 一方、デジタルカメラでのホタル風景撮影は簡単である。薄暗い時に予め撮影しておいた背景に、短い露光で数十枚撮影したホタルの光跡を合成すればよい。ホワイトバランス、色調等はパソコンで補正すればよいから、見栄えのたいへん良いホタルの風景写真が出来上がる。マナーの悪い鑑賞者の懐中電灯や、通りかかった車のライトなどの悪条件は、コマをカットすればよい。一発勝負の銀塩に比べれば、パソコンでいくらでも作り出すことができるのである。

 私はこれまで銀塩カメラしか持っていなかったが、今年ようやく友人から譲り受けてデジタルカメラを手にした。しかし、ホタルの風景写真は、先に述べたようなデジタルカメラの撮影技法で撮影するつもりは全くない。よく、銀塩カメラで3分露光したものと、デジタルカメラで30秒露光したものを6枚合成したものは同じだと言う人がいる。しかし、これは全くの別物だ。なぜならデジタル特有の撮影技法の場合、出来上がったものには、時間の連続性がないからだ。どんなに美しい出来栄えでも、とぎれとぎれの時間を重ね合わせたものは意味がないと思っている。ホタルの風景写真は、ホタルの生態写真でもあるべきと考えているからだ。

 デジタルカメラでも、銀塩カメラと同じように撮影すればよい。30秒~2分程度の露光時間で十分結果が得られる。何カットも合成してホタルの数を増やす必要などない。飛んでいるホタルの数が少なければ、写る光跡もわずかだが「美的観点からホタルの光が少ない」そんなことを思うのは、今そこに生きるホタルの生態と生息環境の記録を残す重要性は重んじない創作家である。30秒の生きたドラマを写せばいい。

 以下の写真2点は、初めてデジタルカメラで撮影したホタルの舞う風景である。





撮影データ
キャノン EOS-10D/シグマAFUC28-80/3.5-5.6MZマクロⅡ/ISO200/F3.5/30秒露光/合成なし

下は、フィルムで撮影したホタルの風景



撮影データ
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / FUJICOLOR PRO400 Professional

他のホタルの写真は、こちら。ゲンジボタル生態写真集

東京にそだつホタル>東京ゲンジボタル研究所/古河義仁

ホタル鑑賞に懐中電灯は禁物

2009-06-21 00:17:29 | ホタルに関する話題
 今月は、毎週各地のホタル生息地に出かけているが、先週もそして今日もたいへんがっかりしたことがある。なぜ、ホタルを見るのに「懐中電灯」が必要なのかということである。今日は思わず「ライトを消せ!」と怒鳴ってしまった。こんなことをしていたら、ホタルは光害によって絶滅してしまう。

 ここは、地元の人々が夜中までホタルパトロールという腕章をつけてパトロールをしている。自然発生のホタルを乱獲して販売するという不届き者がいるからである。何という世の中であろうか。

 今日は、カメラのレリーズを紛失するし、いらいらの1日だった。

東京にそだつホタル>東京ゲンジボタル研究所/古河義仁

トウキョウサンショウウオ

2009-06-17 21:05:48 | 動物
 東京で最初に発見されたトウキョウサンショウウオは、体長約10cmの有尾類。 有尾類は日本全体で17種、東京には4種類生息している。この他にハコネサンショウウオ、ヒダサンショウウオ、ニホンイモリが生息しており、ハコネサンショウウオは主に渓流の源流部、ヒダサンショウウオは山間部の渓流に生息しているのに対して、ニホンイモリは、丘陵地の谷戸田やきれいな溜池に、トウキョウサンショウウオは丘陵地の谷戸の小さな湧水とその周辺の雑木林を生息場所としている。トウキョウサンショウウオは、一生を水中で生活するオオサンショウウオ等とは異なり、普段は水場近くの雑木林の林床で、落ち葉の下のミミズ等を食べて生きている。そして3~5月の繁殖期にだけ、湧水の溜まった池や小さな流れに入り、クロワッサン状の一対の卵嚢を枯れ枝等に産み付ける。孵化した幼生はミジンコ等を食べ、秋までには上陸して林床生活に入る。

 写真は幼生で、この時期、里山の小さな流れや溜め池でみることができる。ホタル同様に里山の象徴だが、開発により激減している。

ホタル撮影2009 その1. オリンパスOM-2 VS キャノンEOS-3

2009-06-16 22:12:56 | ホタルに関する話題
 昭和50年(1975年)に発売されたと同時に購入し、34年たった今も現役の愛機オリンパスOM-2。絞り優先の電子制御シャッターを装備した自動露出機とズイコーマクロレンズは、これまで様々な昆虫のクローズアップを写してきた。とりわけ発光するホタルの接写は、OM-2でなければ撮れないと思う。また、ホタルが乱舞する風景写真にも、その威力を発揮する。このカメラは、測光機構として、世界初となるフィルム面の反射を測るTTLダイレクト測光が採用されているのだ。これによって撮影中の露出制御が可能になり、ホタル風景などの長時間露光も自動露出だ。この愛機は、これからもずっと使い続けたい。

 今年、このOM-2に仲間が加わった。キャノンEOS-3である。この歳になって初めてオートフォーカスを手にした。OM-2に比べると大きくて重いが、その分様々な機能が搭載されている。まだまだ使いこなせないが、かなかなシャープな画像が得られる。

 どちらも銀塩(フィルム)カメラだ。デジタルカメラも持っているが、ホタルの風景写真は、フィルムで撮るべきだと思っている。いや、フィルムでなければならないとさえ思う。ホタルの風景写真は長時間露光を行う。3分~長ければ60分間、シャッターは開けっ放しにする。その間、ホタルは美しい光跡を残す。と同時に絶え間なく生き続け、活動している。つまり、連続した時間を写し込むことが、風景写真であり、ホタルの生態写真だと思っている。勿論、デジタルカメラでも長時間露光で撮影するなら同じ事だが、2分くらいが限度である。よく行われる方法は、背景をまず薄暗い時間に予め撮影しておき、その後暗くなってからホタルの光跡だけを30秒ほど露光する。これを何枚、何十枚とインターバルで撮影し、後はパソコンで合成するのである。とぎれとぎれをつなぎ合わせるから、時間に連続性がない。写真の質としては美しいものが出来上がるが、ホタルの生態写真にはならない。

 さて、オリンパスOM-2 VS キャノンEOS-3 。ホタルの風景撮影においては、カメラは関係ないようだ。(レンズの性能は大きく影響するが・・・)どちらも、それなりの結果が出せるカメラである。
 場所は違うが、FUJICOLOR PRO 400 Professional というネガフィルムで撮影した写真を比較していただきたい。

ホタルの写真は、ホタルの写真に掲載。 東京にそだつホタル>東京ゲンジボタル研究所/古河義仁

シュレーゲルアオガエル

2009-06-14 13:05:32 | 動物
 昨日は、横須賀市までゲンジボタルの観察に行き、深夜に帰宅後レポートをまとめた。今日は6時に起床し、里山へ。モリアオガエルの卵塊の写真を撮りに行くためだ。7時過ぎに現地に着いたが、朝の里山は気持ちがいい。すがすがしい。空気が旨い。



 早速、モリアオガエルが産卵する池へと向かう。すると林道で思わぬ出会いがあった。何とキツネである。東京の里山にキツネが棲んでいるのである。これには驚いた。写真を撮ろうと追いかけたが、藪の中に消えてしまった。
 しばらく歩くと池が視界に入った。肝心のモリアオガエルの白い卵塊が見えない。おかしいと思いながら近づくと、すでに卵塊は溶けて、池の中にはオタマジャクシが泳いでいた。今年は昨年に比べてかなり早いような気がする。また、卵塊の数も少ない。昨年は6つ以上はあったが、今年は3つ。雨が少ないからだろうか。理由は分からない。

 雨で溶けたモリアオガエルの卵塊

 広い里山をぶらぶらと散策する。別の池ではシュレーゲルアオガエルに出会えた。このカエルもモリアオガエル同様に白い卵塊を作る。ただし、池に張り出した木の枝ではなく、畦の泥の中である。なかなか綺麗なカエルである。カエルツボカビ病が広がり、カエルの絶滅が危惧される地域もあるが、ここのカエルは大丈夫のようである。

 シュレーゲルアオガエル

 シュレーゲルアオガエル

 今日は、友人から譲り受けたデジタル一眼レフカメラ Canon 10D に2,000円で購入した中古のシグマのズームレンズを着けて持ってきた。80mm ではマクロ機能が使えて1:1/2まで接写が可能だ。
 これまで銀塩一筋だったが、ようやくデジカメを手にした。しかし、あくまでもスナップ用としてのサブカメラ。ホタルの飛翔風景を撮るつもりはない。とは言え、フィルムの事を気にせず、とりあえず撮れる気軽さがいい。足下にたくさんいるムネクリイロボタルを撮ってみる。オリンパスOM-2 に比べて重量があるので手持ちはきつい。ろくに説明書も読んでいないため少々手間取ったが、とにかくバチバチと撮ってみた。(この記事の写真は、すべてCanon 10D で撮影したものである。)

 ムネクリイロボタル(う~んピンぼけ)

レンズの性能と使いこなせていないためだろう。これはいいと思える写真は撮れなかった。ちなみにオリンパスOM-2 にマクロレンズを着けてフィルムで撮るとこうなる。ムネクリイロボタル

ホタル撮影

2009-06-08 21:51:02 | その他
「ホタルの独り言」は、移転しました。
新しいURL は、こちら http://www.tokyo-hotaru.com/blog/

幻想的なホタルの風景を撮影する



 私は、プロの写真家ではなく某企業のサラリーマンである。未だに古い銀塩カメラ(オリンパスOM-2)を使用してホタル撮影をしているが、デジタルカメラの普及に伴って写真愛好家が増えている。そしてホタルの時期になれば、成虫の飛び交う光景を撮影する人々も増加している。

 デジタルカメラでのホタル撮影の方法は2種類ある。1つは、銀塩と同じ長時間露光であるが、15分~20分という長時間露光ではノイズがひどいらしい。その防止には、ISOを高く設定し露光時間を短くすればよいが、周囲の明るさやホタルの数を考慮しないと、昼間のような写真に少ないホタルというものになってしまう。もう1つの方法は、風景を明るい時間にまず撮影しておき、暗くなってホタルが飛び始めたら、10~20秒という短い露光時間でホタルの光跡を何十枚も撮影する。短い露光では背景は写らず真っ黒で、そこに黄緑色のホタルの光だけが写る。そして、自宅に戻ったらphotoshopで背景の1枚とホタルの光数十枚を合成するのである。この方法ならば、背景は絞り込んだシャープな画像が得られるし、ホタルもたくさん飛んでいるように見せることが出来るのである。デジタルの特性を生かした良い方法であると思う。

 これまで、デジタルで撮影した多くのホタル写真を見たが、ホタルのマクロ撮影はたいへん美しいと思うが、暗闇にホタルの乱舞という写真は、どうしても露光時間が短いために1匹ホタルの長い飛翔を追うことはできず、バラバラの光跡になってしまい、本来のホタルの飛翔風景とは少し違う感じがしてしまう。また、合成する背景は、薄暗い時間に撮影するので、実際にホタルの飛翔している光りと陰とは違ってしまい、かなり不自然さを感じる写真になってしまう難点もあるが、ホワイトバランスは、パソコン上での現像時に設定できるから、見た目に近い色が再現できる。銀塩では撮影できない映像や高画質は、デジタルならではのものである。
 掲載している写真は、銀塩一眼でリバーサルフィルムを使用して撮影したホタルの舞う風景である。フィルムは、一発勝負で修正も利かない。デジタルよりも絵画的とでも言うべきだろうか。
その他ホタルの写真は、東京にそだつホタルに掲載。

スジグロボタル

2009-06-07 18:15:10 | その他ホタル
 スジグロボタルの観察と写真撮影に東京の高尾の程近い谷戸田に行って来た。谷戸田は放棄水田で、カサスゲが茂り湿地になっているが、スジグロボタルの絶好の生息地となっている。昨年は写真撮影に失敗したので、今年こそは美しい姿を収めたい。朝9時。湿地脇の山道をゆっくりと歩いていると、湿地から生えている草の葉の上に、スジグロボタルを発見。おそらく羽化して地上に出てきたばかりなのだろう。何匹ものスジグロボタルが、同じように葉の上でじっとしていた。1年待った甲斐があった。昨日の源平合戦を撮影したフィルム(プロビア400F)の残りを全て撮り尽くした。
 
 10時半に家に帰ったが、ふとカメラのフィルム感度の窓を見ると、何と昨日のゲンジボタルの乱舞風景を撮影した時のままISOが200ではないか!これでは、露出オーバーで真っ白かもしれない。何たることか。また失敗か!時期といい、天候といい、こんなチャンスはもう無いかも知れない。また行くしかない。直ぐさま近くのカメラに行き、プロビア100を買って、高尾へUターンである。
 
 12時。再度、撮影開始である。しかし今度は、肝心のスジグロボタルがいない。気温が高くなり、日光が湿地を照らしている。おそらく葉の陰か、雑木林の中まで移動してしまったのだろう。辛抱強く探すこと1時間。ようやく1匹のスジグロボタルを発見。日陰になっている谷戸田の最上部、地表近くのシダの葉の上にいた。近寄ろうとすると、飛び立ってしまった。体調1cmのスジグロボタルを追いかけた。2mほど飛んだところで、草の葉へ。慎重にピントを合わせ、24枚を撮り尽くした。

 この写真は、ホームページ(東京にそだつホタル

源平合戦

2009-06-07 00:17:09 | ゲンジボタル
 この数年、毎年訪れている千葉県の房総にホタルの写真を撮りに行ってきた。昨日からの雨がなかなか止まずにやきもきしたが、17時にはすっかり止んで晴れ間も見えるようになった。昨年は、大雨と低温でホタルが飛ばす寂しい思いをしたが、今年は無風で湿度も高い。気温20℃。まずまずのホタル日よりである。

 まずは周囲を散策。水田ではタニシがゴロゴロと、かなり多い。水たまりでは、イモリとトウキョウサンショウウオの幼生が泳いでいる。そしてカエルの合唱。空気も旨い。これこそ、ホタルが自然発生する里山環境なのである。

 暗くなるまで2時間待つ。19時15分に、ようやく小川にせり出した木々の葉の中で、ゲンジボタルが光り出す。次第に発光する数が増え、19時40分に飛び出す。いつしか小川の上はかなりの数のゲンジボタルが同調しながら飛び交い、小川の横に広がる水田では、ヘイケボタルがチカチカと明滅していた。これこそが源平合戦である。

 広い里山に私と友人だけがホタルと戯れ、ホタル本来の姿に感動していた。

写真は、東京にそだつホタル