ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ホソミオツネントンボ

2024-04-29 14:09:13 | トンボ/アオイトトンボ科

 ホソミオツネントンボは、当ブログの記事「成虫で越冬するトンボ」で紹介しているが、単独での掲載はなく、またこれまで産卵の様子を撮影していなかったため、今回、産卵の撮影を行い、以下に過去の写真とともにまとめた。

 ホソミオツネントンボ Indolestes peregrinus (Ris, 1916)は、アオイトトンボ科(Family Lestidae)ホソミオツネントンボ属(Genus Indolestes)で、当ブログの記事「オツネントンボ」と同様に成虫で越冬するトンボである。ちなみに、成虫で越冬するトンボは3種のみで、他はホソミイトトンボである。(参照:成虫で越冬するトンボ)
 本種は、北海道、本州、四国、九州に分布するが、オツネントンボよりも寒さに弱く、北海道では極めて局所的で、東北地方でも数は多くない。平地~山地の抽水植物の繁茂する池沼、湿地、水田、緩やかな河川などに生息し、年1化、羽化は6~8月である。羽化後、しばらくすると林に移動して過ごす。水辺からかなり離れた所まで移動するが、11月頃になると水辺に比較的近い越冬場所に集まってきて、成虫のまま越年する。越冬中は、雌雄ともに褐色で、生息池付近の風当たりが少なく日当たりの良い低木の細い枝先などに脚を前に伸ばして頭部を枝に付けるようにして止まるため、将に枯れ枝のように見える。
 4月になると、オツネントンボよりほんの少し遅れて現れ、湿地や水の入った水田の縁などに集まり、4月の下旬から5月の上旬にかけて繁殖活動の最盛期を迎える。産卵後は一生を終えるが、夏頃まで生き残る個体もおり、7月頃では、羽化した新成虫(褐色)と生き残りの成虫(青色)が混在することもある。
 繁殖期になるとオスは全身が鮮やかな青色に、メスはくすんだ青緑色に変化する(褐色のままのメスもいる)が、一日の外気温の変化に応じて可逆的に体色を変化させるという特徴を持っている。実験では、雌雄ともに20℃以上に温度を上げると青色化がみられ、10℃まで温度を下げると褐色化したという。また、青色化は8~-20分で完了するのに対し、褐色化には6~12時間を要したという。
 ホソミオツネントンボは、環境省版レッドリストに記載はないが、都道府県版レッドリストでは、北海道および東京都で絶滅危惧ⅠB類に、静岡県で準絶滅危惧種として記載している。原因としては、主に土地開発と管理放棄が挙げられるが、池沼や湿地、水田の消失、植生遷移による乾燥化や乾田化も原因である。

 ホソミオツネントンボの産卵撮影のため、8年ぶりに多産地を訪れた。朝から晴天で最高気温は30℃の予想。風も弱く、産卵日和である。多産地は、雑木林、ため池、棚田、畑、湿地があり、典型的な里山風景を呈している。水田は、完全無農薬で多様性の宝庫とも言える状態が長年維持されており、トンボにとっては、将に楽園である。  現地に午前7時過ぎに到着すると、すでに池や田んぼの縁でオスたちが飛び回っていた。次の記事で改めて投稿するが、同じ越冬トンボのホソミイトトンボは、1つの水田に30頭以上が飛び交い、そこにホソミオツネントンボが混じって探雌飛翔をしていた。8時を過ぎると交尾態が見られるようになり、ペアは、水田わきの草が生い茂った斜面で30分ほど動かずに交尾を行っていた。その後、10時近くなるとペアで産卵する様子が観察できた。
 7時過ぎでは、どの水田にもオスが飛んでいたが、産卵の時刻になると、代掻き前の水田内に雑草がまばらに生えた一部の水田だけに集まるようになり、水田内や畔に生えた小さな雑草につかまって産卵を行っていた。11時近くになると、産卵ペアがいなくなり、こちらも撤収することにした。ゴールデンウイーク後半の連休には、連日、田植えを行うとのことであるから、撮影は良いタイミングであった。

参考文献 / 長谷部有紀 2020. ホソミオツネントンボの可逆的体色変化 ‐青色と褐色の異なる役割‐. つくば生物ジャーナル 卒業研究発表会要旨集 19:56.

以下の掲載写真は、1920×1080ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画も 1920×1080ピクセルのフルハイビジョンで投稿しています。設定の画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ホソミオツネントンボの写真
ホソミオツネントンボ(越冬中のオス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 200(撮影地:千葉県 2012.04.07 8:19)
ホソミオツネントンボの写真
ホソミオツネントンボ(越冬中のメス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 200(撮影地:千葉県 2012.04.07 8:36)
ホソミオツネントンボの写真
ホソミオツネントンボ(成熟したオス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 800(撮影地:千葉県 2011.06.02 14:02)
ホソミオツネントンボの写真
ホソミオツネントンボ(成熟しても体色の変化がないメス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/800秒 ISO 3200(撮影地:千葉県 2011.06.11 16:28)
ホソミオツネントンボの写真
ホソミオツネントンボ(交尾態)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200(撮影地:千葉県 2012.05.05 7:38)
ホソミオツネントンボの写真
ホソミオツネントンボ(交尾態)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200(撮影地:千葉県 2012.05.05 7:45)
ホソミオツネントンボの写真
ホソミオツネントンボ(交尾態)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F9.0 1/250秒 ISO 400 +2/3EV(撮影地:千葉県 2012.05.05 7:49)
ホソミオツネントンボの写真
ホソミオツネントンボ(産卵)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.0 1/2500秒 ISO 800(撮影地:埼玉県 2024.04.28 10:02)
ホソミオツネントンボの写真
ホソミオツネントンボ(産卵)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.0 1/2500秒 ISO 800(撮影地:埼玉県 2024.04.28 10:02)
ホソミオツネントンボの写真
ホソミオツネントンボ(産卵)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.0 1/2500秒 ISO 800(撮影地:埼玉県 2024.04.28 10:04)
ホソミオツネントンボの写真
ホソミオツネントンボ(産卵)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/640秒 ISO 800 +1/3EV(撮影地:埼玉県 2024.04.28 10:06)
ホソミオツネントンボの写真
ホソミオツネントンボ(産卵)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 800 +1/3EV(撮影地:埼玉県 2024.04.28 10:15)
ホソミオツネントンボの写真
ホソミオツネントンボ(産卵)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 1/160秒 ISO 200 -2/3EV(撮影地:埼玉県 2016.05.05 11:09)
生息環境の写真
生息環境(谷戸)
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F9.0 1/250秒 ISO 400 +2/3EV(撮影地:埼玉県 2024.04.28 7:49)
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オツネントンボ

2024-04-01 15:55:11 | トンボ/アオイトトンボ科

 オツネントンボ Sympecma paedisca(Brauer, 1877)は、アオイトトンボ科(Family Lestidae)オツネントンボ属(Genus Sympecma)のトンボで、ヨーロッパから中央アジアを経て中国東北部、日本に分布し、日本では北海道、本州、四国、九州北部に分布している。平地から山地にかけてのアシなど抽水植物が多く生えた池沼や湿原、水田などに生息している。トンボの多くが幼虫(ヤゴ)で越冬(アカネ属は、卵で越冬)するが、オツネントンボは、成虫のまま越冬する。それが越年(おつねん)という和名の由来である。日本の約200種いるトンボの中でも、成虫で越冬するのは、本種を含め、ホソミオツネントンボ、ホソミイトトンボの3種のみである。ちなみに英名で「winter damsel=冬の乙女」という名前がつけられてもいる。
 本種は、7~9月頃に羽化して新成虫となり、水辺を数百メートルも離れて草地や山林で過ごす個体もおり、未成熟成虫のまま越冬する。冬期は主に山林の木の皮の間や建物の隙間、積み上げられた薪の間などに潜んで越冬するが、暖かい日中は、そこから出てきて陽だまりで日光浴をすることもある。寒さには強く、雪が積もったり氷点下になっても耐えることができるが、越冬は過酷に違いなく、腹部が折れてしまう個体も少なくない。また、研究によれば、ひと冬通しての生存率は約42%と推定されている。
 越冬後の翌年春に発生地の池沼に戻り交尾をし、植物の組織内に産卵する。体色は淡い褐色で、春になると雌雄ともに成熟過程で複眼の上部の一部が青くなるだけで、ホソミオツネントンボのように全身が水色になるような体色変化はない。
 オツネントンボは、土地開発、管理放棄、池沼や湿地、水田の消失、植生遷移や乾燥化などの影響により各地で減少している。環境省版レッドリストに記載はないが、都道府県版レッドリストでは、東京都、千葉県、富山県、高知県で絶滅危惧Ⅰ類、茨城県、神奈川県、鳥取県、大分県で絶滅危惧Ⅱ類として記載している。

 オツネントンボとの最初の出会いは50年前で、今でも当時に写したネガフィルムが残っている。最近では、15年ほど前から各地で出会えばカメラを向けてきたが、産卵シーンは未撮影だった。そこで今回は、その産卵シーンを収めるべく、撮影のしやすい多産地を訪れた。以下には、産卵の様子の他、過去に撮影した写真を選別して掲載した。
 今年は、昨年と違って3月の気温が低く桜の開花も遅い。自宅近くの東京都国立市の桜並木は、3月31日現在でほとんど咲いていない。しかしながら、この週末は最高気温が25℃近くまで上昇。31日では25℃を終えて夏日となった。天気は快晴。まさにオツネントンボ日和である。
 現地には午前9時過ぎに到着。気温は17℃。早速、池の周囲を探索すると、オスが数頭飛び交っている。ちょっと飛んでは、すぐに枯草に止まる。個体の多くは敏感で、近寄ると飛び去ってしまうが、中には指を数センチまで近づけても逃げない個体もいた。観察した個体(オス)の8割ほどの複眼が青くなっていた。
 11時を過ぎるとメスが池に現れ、ペアになり交尾態も見られるようになったが、産卵はまだ見られなかった。12時を超えると、あちらこちらで産卵するペアが出現し始め、何とか撮影することができた。産卵ペアは、草の枝を近づけても全く動じることなく産卵に集中しているようであった。
 オツネントンボは、春真っ先に産卵を行う。訪問した池では、青くなったホソミオツネントンボもいたが、たったの2頭。池は、オツネントンボの独占状態で、確実に餌を摂り、産卵場所も確保できるメリットを感じる。本種の生存戦略の1つなのであろう。

 オツネントンボは、たいへん地味な色合いで、枯草などに止まると見つけにくく、一般の方々の中には、いても気が付かない方も多いかもしれないし、興味も湧かないかもしれない。しかしながら、絶滅危惧種である本種の存在は、良好な生息環境が整っている証拠であり、早春の一大イベントである産卵は、他の昆虫たちに先駆けての行動でもある。昆虫好きにとっては、ワクワクズキズキが止まらない季節が始まる。
 この撮影で、3月の目標の内、新潟と静岡の天の川撮影以外は達成できた。4月は、いよいよゲンジボタルの幼虫が上陸を開始する季節。その様子の観察と撮影をメインに、桜や星空、他のトンボやチョウの撮影を予定している。

参考文献/R. Manger & N.J. Dingemanse (2009): Adult survival of Sympecma paedisca (Brauer) during hibernation (Zygoptera: Lestidae) Odonatologica, 38(1): 55-59.

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画においては、Youtubeで表示いただき、設定の画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

オツネントンボの写真
オツネントンボ(夏に羽化した未成熟オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F3.5 1/125秒 ISO 250(撮影地:福島県会津若松市 2011.8.7 5:19)
オツネントンボの写真
オツネントンボ(夏に羽化した未成熟メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F3.5 1/125秒 ISO 400(撮影地:福島県会津若松市 2011.8.7 5:18)
オツネントンボの写真
オツネントンボ(越冬個体 ただし、越冬場所ではなく陽だまりで日光浴中)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 250(撮影地:山梨県北杜市 2019.3.24 10:31)
オツネントンボの写真
オツネントンボ(越冬個体 ただし、越冬場所ではなく陽だまりで日光浴中)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 2500(撮影地:山梨県北杜市 2019.3.24 10:27)
オツネントンボの写真
オツネントンボ(越冬中に腹部が折れてしまった個体)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 160 +2/3EV(撮影地:栃木県真岡市 2024.3.31 9:16)
オツネントンボの写真
オツネントンボ(成熟オス 複眼の上部が青くなっている)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2011.5.08 8:26)
オツネントンボの写真
オツネントンボ(成熟オス 複眼の上部が青くなっている)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1EV(撮影地:栃木県真岡市 2020.4.04 11:11)
オツネントンボの写真
オツネントンボ(成熟メス 複眼の上部が青くなっている)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.0 1/800秒 ISO 200(撮影地:長野県白馬村 2017.5.4 9:34)
オツネントンボの写真
オツネントンボ(交尾態)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 400 +1 2/3EV(撮影地:栃木県真岡市 2021.4.03 11:27)
オツネントンボの写真
オツネントンボ(連結飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 500 +2/3EV(撮影地:栃木県真岡市 2024.3.31 12:15)
オツネントンボの写真
オツネントンボ(連結産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 320 +2/3EV(撮影地:栃木県真岡市 2024.3.31 11:48)
オツネントンボの写真
オツネントンボ(連結産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 500 +2/3EV(撮影地:栃木県真岡市 2024.3.31 12:15)
成虫で越冬するトンボ~オツネントンボ~
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アオイトトンボ

2017-08-16 23:19:28 | トンボ/アオイトトンボ科

 アオイトトンボ Lestes sponsa (Hansemann, 1823)は、アオイトトンボ科(Family Lestidae)アオイトトンボ属(Genus Lestes)に分類されるトンボで、北海道、本州、四国、九州に広く分布する。南九州では産地が限定され、鹿児島県では最近分布の確認が記録されていない。
 平地から山地の挺水植物が繁茂する明るい池・沼・湿原の滞水や高山の池塘に生育し、光沢のある青緑色をした美しいイトトンボで、成熟すると複眼は青くなり、オスは胸部と腹部に白粉を帯びるのが特徴である。

 アオイトトンボの撮影を、これまで日本の数か所で行ってきたが、長野県の乗鞍高原の個体群は、成熟してもほとんど体に粉を吹かないようである。この地を訪れる毎に観察しているが、粉を吹いた個体を見たことがない。成熟しても光沢のある美しい青緑色を保って飛んでいるため、一見、カラカネイトトンボかと思うほどである。
 同じような標高にある八ヶ岳の池に生息する本種は粉を吹くことから、標高差ではく、地域的な特異であると思われる。比較対象として、別の場所で撮影した粉を吹いた本種の写真も掲載した。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、すべて1024*683 Pixelsで掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

アオイトトンボの写真

アオイトトンボ(乗鞍高原)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 250 +1/3EV

アオイトトンボの写真

アオイトトンボ(乗鞍高原)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 1250

アオイトトンボの写真

アオイトトンボ(乗鞍高原)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 2500

アオイトトンボの写真

アオイトトンボ(埼玉県)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F10 1/250秒 ISO 640

アオイトトンボの写真

アオイトトンボ(静岡県)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/400秒 ISO 500

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アオイトトンボ属

2016-10-10 21:06:07 | トンボ/アオイトトンボ科

 アオイトトンボ属は、国内に以下の4種が生息しているが、本記事では未撮影のエゾアオイトトンボを除いた3種を紹介したい。尚、DNA解析による分化系統では、アオイトトンボとエゾアオイトトンボ、オオアオイトトンボとコバネアオイトトンボの2つのグループに分けられる。

アオイトトンボ科(Family Lestidae

  1. アオイトトンボ属(Genus Lestes
    • アオイトトンボ Lestes sponsa (Hansemann, 1823)
    • エゾアオイトトンボ Lestes dryas Kirby, 1890
    • オオアオイトトンボ Lestes temporalis Selys, 1883
    • コバネアオイトトンボ Lestes japonicus Selys, 1883

以下の掲載写真は、1024*683 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で表示されます。

アオイトトンボ
アオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 320(2010.7.10)
オオアオイトトンボ
オオアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/3200秒 ISO 1250(2010.10.03)
コバネアオイトトンボ
コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/640秒 ISO 200(2011.8.27)

 アオイトトンボとオオアオイトトンボは、北海道、本州、四国、九州に広く分布し、コバネアオイトトンボは、本州、四国、九州に分布。 いずれも低山地や丘陵地において、周囲に林があり水辺に水生植物が繁茂する池沼・湿地や沼沢池などの止水域に生息し、3種ともに 光沢のある青緑色の体色をしているが、アオイトトンボは、成熟するとオスの個体は胸部と腹部に白粉を帯びる。
 アオイトトンボは、環境省RDBに記載はないが、宮崎県、鹿児島県で絶滅危惧Ⅰ類に、東京都と千葉県では絶滅危惧Ⅱ類に、高知県、長崎県で準絶滅危惧種に選定、オオアオイトトンボも環境省RDBに記載はないが、北海道においては準絶滅危惧種に選定されており、コバネアオイトトンボに至っては、環境省RDBで絶滅危惧ⅠB類に、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、鳥取県、長崎県では絶滅、その他、分布域のほとんどの自治体で絶滅危惧Ⅰ類、もしくは絶滅危惧Ⅱ類に選定している。アオイトトンボやオオアオイトトンボよりはるかに劣勢で、池の乾燥や林野の開発など生息環境の劣化、アメリカザリガニの侵入やブラックバスの移入も悪影響を及ぼしている。

アオイトトンボ
アオイトトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/250秒 ISO 200(2016.10.09)
アオイトトンボ
アオイトトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/160秒 ISO 200(2016.10.09)
アオイトトンボ
アオイトトンボ / 産卵
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/400秒 ISO 320(2016.10.09)
アオイトトンボ
アオイトトンボ / 産卵
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/400秒 ISO 500(2016.10.09)
オオアオイトトンボ
オオアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 320(2010.9.26)
オオアオイトトンボ
オオアオイトトンボ / 連結態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/200秒 ISO 1600 +2/3EV(2010.10.23)
コバネアオイトトンボ
コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.0 1/250秒 ISO 250(2011.10.01)
コバネアオイトトンボ
コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.0 1/250秒 ISO 250(2011.10.01)
コバネアオイトトンボ
コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.5 1/250秒 ISO 320(2011.10.01)
コバネアオイトトンボ
コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/2520秒 ISO 800(2011.10.01)

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