ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態や生息環境を研究し保全活動をしていますが、様々な昆虫や美しい日本の四季
自然風景の写真も撮っています。

ゴマシジミ属

2018-08-19 19:03:06 | チョウ/シジミチョウ科

 ゴマシジミ属(Genus Phengaris)は、日本をはじめ、朝鮮半島、中国から中央アジアを経てヨーロッパ中央部まで分布するチョウである。日本国内においては、以下の2種が生息しており、ゴマシジミは、北海道と本州、九州(四国では確認されていない)に分布し、それぞれ亜種として分類されている。オオゴマシジミは、北海道渡島半島および本州東北~中部地方の高山に分布し、西限は飛騨山脈であるが、いずれも生息場所は極めて局所的である。

ゴマシジミ属 Genus Phengaris

  1. ゴマシジミ Phengaris teleius (Bergstrasser, 1779)
    • ゴマシジミ 北海道・東北亜種 Phengaris teleius ogumae (Matsumura, 1910)
    • ゴマシジミ 本州中部亜種 Phengaris teleius kazamoto (H. Druce, 1875)
    • ゴマシジミ 八方尾根・白山亜種 Phengaris teleius hosonoi A. Takahashi, 1973
    • ゴマシジミ 中国・九州亜種 Phengaris teleius daisensis (Matsumura, 1926)
  2. オオゴマシジミ Phengaris arionides (Staudinger, 1887)
    • オオゴマシジミ Phengaris arionides takamukui (Matsumura, 1919)

 ゴマシジミ属は、世界的にも絶滅が危惧されるチョウで、国内のゴマシジミは、絶滅危惧ⅠA類(環境省カテゴリ)、オオゴマシジミは、準絶滅危惧(環境省カテゴリ)に選定され、いずれも多くの自治体のREBにも絶滅危惧種として記載している。理由は、その特異な生態にある。
 ゴマシジミは「ワレモコウ」、オオゴマシジミは「カメバヒキオコシ」を宿主植物として、若齢幼虫はその花芽を食べるが、4齢になるとアリの巣の中に移り、幼虫はそこで、アリの幼虫を食べるか、またはアリの成虫から口移しで餌をもらうのである。両種はいずれもシワクシケアリ(Myrmica kotokui)に寄生することが明らかになっており、その存在が不可欠なのである。
 ただし、シワクシケアリは、形態では判別できない4つの遺伝的系統(L1~L4)に分化しており、遺伝子解析の結果、ゴマシジミおよびオオゴマシジミの生息地には,それぞれシワクシケアリの L2系統 および L3系統 が分布すること、更にゴマシジミおよびオオゴマシジミ幼虫が実際に寄生していた巣のアリ系統も、それぞれ L2系統 および L3系統 であることが明らかになっている。
 シワクシケアリの生息環境は、湿った土の存在が必要条件であり、乾燥化や植物群落の遷移が進むとシワクシケアリはいなくなり、結果としてゴマシジミとオオゴマシジミは絶滅してしまうので、草原の管理が保全には大切になっている。撮影者も、むやみに草地に入り込むのは慎まなければならない。

 ゴマシジミ属の減少は、「捕獲・採集」が「開発や環境悪化」に次ぐ大きな要因となっていることがわかっている。自身のコレクションやオークションで販売目的で、産地に採集者が集まり、乱獲してしまうのである。
 ゴマシジミ属は、その特異な生態から生息地が極めて限られ、ゴマシジミに至っては翅表の斑紋に地域性があり、掲載写真のように青い斑紋を持つ(青ゴマ)個体がいるため、採集者は「採れるだけ採る」のである。長野県と山梨県の一部に生息する「ゴマシジミ本州中部亜種」は、昨年「国内希少野生動植物種」に追加指定され、許可なく採集することはできなくなった。許可を受けずに捕獲したり、譲渡したりすると5年以下の懲役や500万円以下の罰金が科される。そのため、生息地においては、安定的な発生が見られるが、オオゴマシジミは採集の法的規制がない。掲載した写真は2014年に撮影したが、その後、採集圧により完全に絶滅している。撮影当日は、狭い生息場所に、カメラマン(筆者)一人に採集者4人。撮影後に、全てのオオゴマシジミが採られてしまった。長野県、栃木県、新潟県、群馬県、福島県などの生息地も採集圧により激減している状況である。

 ゴマシジミ属のみならず、絶滅危惧種については、捕獲・採集圧(商業目的や鑑賞目的の乱獲・盗掘)が以前から問題になっており、数少なくなってしまった種に対して壊滅的な打撃となることが指摘されている。こうした状況を踏まえ、環境省では、捕獲・採集が与える影響の大きさについて広く国民一般向けの普及啓発を目的としたチラシ及びポスターを作成し、都道府県や関係団体等の協力を得て全国的に配布し、また、個々の種の状況に応じて種の絶滅を回避するため、今後、保護増殖事業の実施や生息地等保護、区の設定を検討するとしているが、まずは採集できない法的規制を早急に取らなければ、現状は変わらない。

 掲載写真は、すべて過去に撮影したものだが、これまで個々のブログ記事にそれぞれ掲載していた。今回それらをまとめ、ゴマシジミにおいては、青ゴマの開翅、交尾、産卵も掲載した。

参照:絶滅危惧種の捕獲・採集圧に関する普及啓発チラシ及びポスター - 環境省野生生物が悲鳴をあげている - 環境省

  1. 参考文献
    • 上田昇平 日本産ゴマシジミ類のシワクシケアリ種内系統に対する寄主特異性 Scientific Reports volume6, Article number: 36364 (2016)
    • 巣瀬司ほか, 2003. 22. 愛知県. 日本産蝶類の衰亡と保護第5集. 日本産蝶類県別レッドデータ・リスト(2002 年): 82-87. 日本鱗翅学会, 東京.
    • 平賀 壯太 オオゴマシジミの宿主アリの再同定について やどりが2003年 2003巻 196号 p.31-34

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ゴマシジミ(青ゴマ)の写真

ゴマシジミ(青色タイプのメス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500(撮影地:長野県松本市 2017.8.11 9:32)

ゴマシジミ(青ゴマ)の写真

ゴマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500(撮影地:長野県松本市 2017.8.11 9:32)

ゴマシジミの写真

ゴマシジミ(暗褐色タイプ)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 400(撮影地:長野県松本市 2017.8.11 9:32)

ゴマシジミ(交尾)の写真

ゴマシジミ(交尾)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:長野県松本市 2015.8.01 9:30)

ゴマシジミ(産卵)の写真

ゴマシジミ(産卵)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 320(撮影地:長野県松本市 2014.8.23 11:21)

オオゴマシジミの写真

オオゴマシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 3200(撮影地:岐阜県高山市 2014.8.03 7:54)

オオゴマシジミの写真

オオゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 2500 -2/3EV(撮影地:岐阜県高山市 2014.8.03 8:11)

オオゴマシジミの写真

オオゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F3.5 1/500秒 ISO 200(撮影地:岐阜県高山市 2014.8.03 8:17)

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ルーミスシジミ(3月)

2018-04-02 21:53:02 | チョウ/シジミチョウ科

 ルーミスシジミ Arhopala ganesa loomisi (H. Pryer, 1886)は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)のムラサキシジミ属(Genus Arhopala)のチョウ。国内では千葉県の房総半島南部を北東限として紀伊半島・中国・四国・九州・隠岐・屋久島に、局地的に分布しているが、環境省のRDBに絶滅危惧Ⅱ類として記載され、都道府県指定状況では、徳島県を除く四国全域で絶滅、九州においても宮崎県、鹿児島県以外は絶滅、その他生息地域でも、ほとんどが絶滅危惧Ⅰ類に選定している。
 今回、2015年11月に観察と撮影(参照:ルーミスシジミ)をした千葉県内の生息地を訪れてみた。今年初の昆虫観察と撮影である。ちなみに、ルーミスシジミは、1877年アメリカの宣教師ヘンリー・ルーミスが千葉県君津市鹿野山で最初に発見している。

 ルーミスシジミの生息地に午前8時過ぎに到着。谷はまだ日陰で気温は10℃。日も当り、気温も上がってきた9時半頃から、イチイガシの樹冠近く(地上から6~7m)から飛び立つようになり、何頭かは地面に舞い降りてきた。撤収する午前10時までの間に10頭ほど確認し、地面に降りた5頭を撮影。越冬後であるため、ほとんどの個体は翅が痛んでいた。
 ルーミスシジミは、新成虫は7月に出現し、産卵や交尾をせずに越冬に入り、越冬明けの翌春に交尾し産卵するとみなされているが、詳しい生態は、未だ完全には解明されておらず、特に成虫の発生回数や時期については諸説あり、生息地域によっても異なっているようである。房総半島(鴨川市)では、7月下旬から10月には、卵・幼虫・蛹はまったく得られなかった(井上 2013.)ことや、越冬後の4月以外の時期には産卵可能と推定される程度にまでは卵巣が発育しておらず交尾嚢内に内容物が認められない(岩阪 2004.)ことから、本種は房総半島においては、年1化である可能性が高いという。しかしながら、筆者が2013年3月に撮影した大多喜町における個体(参照:ルーミスシジミ)は、前年の7月に羽化したものとは思えないほど、ほとんど翅が擦れていなかったことから、房総半島においても、地域によっては年2化の発生地があるように思う。

参考文献

井上 大成(2013)「ルーミスシジミ房総半島個体群の卵,幼虫,蛹の発生消長と発育経過」,蝶と蛾 64(2):61-74,日本鱗翅学会.
岩阪佳和(2004)「房総丘陵産ルーミスシジミの世代数の推定一卵巣の成熟、交尾嚢の形状、翅の鮮度より一」,房総の昆虫(32):8−12.

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ルーミスシジミの写真

ルーミスシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 640(撮影地:千葉県 2018.3.25)

ルーミスシジミの写真

ルーミスシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 400(撮影地:千葉県 2018.3.25)

ルーミスシジミの写真

ルーミスシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 640(撮影地:千葉県 2018.3.25)

ルーミスシジミの写真

ルーミスシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 320(撮影地:千葉県 2018.3.25)

ルーミスシジミの写真

ルーミスシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200 -2/3EV(撮影地:千葉県 2018.3.25)

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ムラサキシジミ

2017-08-28 21:09:40 | チョウ/シジミチョウ科

 ムラサキシジミは、過去に何度も撮影し、その都度記事にしてきたが、先日、メスの開翅を撮影したので、 今一度過去の撮影分と合わせてまとめたいと思う。

 ムラサキシジミ Arhopala japonica (Murray, 1875) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ムラサキシジミ属(Genus Arhopala)のチョウで、翅表は、和名のように黒色の広い帯で縁どられた紫藍色で、オスの方が紫藍色部分が広い。一方、翅裏は地味で灰褐色にやや濃い斑紋が並んでいるのが特徴である。暖地性のチョウで、本州(宮城県以南)、四国、九州、南西諸島に分布し、平地から山地の照葉樹林や落葉樹林に生息している。原因は不明だが、東京都や埼玉県では、1960~70年代頃に一時的に本種の姿が消えたが、最近では食樹がある都心の大きな公園でも見ることができるようになっている。
 ムラサキシジミは、多化性で6月~10月の間に2~3回発生するが、季節型はなく、羽化時期による翅の色彩や形状、大きさ等の違いは見られない。その年の最後に羽化した成虫は、そのまま単独ないし数匹の小集団で越冬し、越冬後は4月頃まで見られる。
 成虫は、花で吸蜜することは稀で、ほとんど何も食さないと考えられているが、幼虫はアラカシ、イチイガシ、スダジイなどのブナ科の常緑樹を食樹としている。また幼虫は、アリと密接な関わりを持った生活をしている。
 ムラサキシジミの幼虫は、糖とアミノ酸の豊富な蜜を分泌してアリに栄養報酬として与え、外敵から守ってもらうことで知られている。幼虫の分泌物を口にしたアリの脳内では、ドーパミンレベルが低下することを神戸大学の北條賢博士と琉球大学、ハーバード大学の共同研究グループが研究により明らかにしている。脳のドーパミンシグナルを改変することで、アリは幼虫に夢中になり、幼虫が触覚を引っ込める等の危険信号を発した時は、幼虫に危害を加えようとする外敵に対して攻撃を加えるようになるというのである。この研究は、これまで考えられてきた異なる生物種がお互いの利益を交換しあう「相利共生」ではなく、幼虫が化学的・視覚的な刺激で一方的にアリを操っていることを明らかにした。生態学的にも、反響の大きい発見である。

 甘い蜜に釣られて知らぬ間に操られているのは、アリだけではないだろう。銀座や歌舞伎町等の「夜の蝶」には気を付けたい。

追記

ムラサキシジミは、分類学上(Narathura属)という別の属に扱われることが多いが、明確な理由がないため、ここでは(Arhopala属)として表記した。

参考文献ほか

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ムラサキシジミの写真

ムラサキシジミ(オスの開翅)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 1250(2017.6.11)

ムラサキシジミの写真

ムラサキシジミ(メスの開翅)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 400 -2/3EV(2017.8.19)

ムラサキシジミの写真

ムラサキシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.0 1/800秒 ISO 200(2010.11.03)

ムラサキシジミの写真

ムラサキシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 3200(2010.8.07)

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ゴマシジミ(開翅)

2017-08-12 13:51:55 | チョウ/シジミチョウ科

 ゴマシジミの開翅をようやく撮影できたので紹介したい。

 ゴマシジミ Phengaris teleius (Bergstrasser, 1779) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ゴマダラシジミ属(Genus Phengaris)に分類されるチョウで、日本国内では4亜種が生息しており、本記事で取り上げているゴマシジミ本州中部亜種 Phengaris teleius kazamoto (H. Druce, 1875) は、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種として環境省カテゴリにおいては絶滅危惧ⅠA類に選定されており、福島県、新潟県、群馬県、長野県、愛知県のRDBにおいても絶滅危惧Ⅰ類としている。
 ゴマシジミの生活史は特異で、親はワレモコウの花穂に産卵する。 孵化した幼虫は花穂を食べて秋に3齢まで成長し、4齢(終齢幼虫)になると食草から地上へ降り、草原の土の中を好むシワクシケアリによって巣に運ばれてシワクシケアリの幼虫や蛹を餌にして越冬し、翌年の夏にアリの巣の出口付近で蛹化・羽化して地上に出るのである。ワレモコウもなくてはならないが、それ以上にシワクシケアリの存在が重要で、このアリが生息できる環境でなけれればゴマシジミも生息することができず、絶滅・減少の大きな原因になっているのである。
 採集者の乱獲も問題になっているが、ゴマシジミ本州中部亜種は、2016年に「国内希少野生動植物種」に追加指定されたことで、国内のどの地域でも捕ることができない。また、長野県松本市では、特別天然記念物に指定しており、許可を受けずに捕獲したり、譲渡したりすると5年以下の懲役や500万円以下の罰金が科されるので、今後は採集圧による絶滅は防げるであろう。

 ゴマシジミの開翅を撮るために、4年間で9回も生息地に通った。保全地区であるため個体数が多く、翅を閉じて止まっている姿を撮影するだけなら容易だ。しかしながら、ゴマシジミは、なかなか翅を開かないことで知られており、何度挑戦しても、開翅する気象条件が合わず、翅を開く様子をまともに撮影することはできなかった。唯一、2014年8月23日に2頭の開翅を撮影したが、1頭は翅表が暗褐色タイプで、もう1頭は翅が擦れた老個体でり、満足できるものではなかった。
 ゴマシジミの翅の斑紋や色は、地理的並びに個体的な変異が著しく、日本産シジミチョウ科の中でも最も変化に富むチョウの1種で、翅表は黒縁、黒斑を有する青藍色から全面暗褐色のものまで変異が大きいと言われている。この生息地のゴマシジミは、青い鱗粉がのったタイプ(通称:青ゴマ)と青い鱗粉がほとんどない暗褐色タイプ(通称:黒ゴマ)、またその中間タイプも見られる。撮影の目標は、翅表に青色鱗粉が多くのった個体である。
 今回の天気は、曇り時々晴れで、気温は21℃。7時過ぎから探索を始めたが、何と、どの個体も葉に止まると翅を開いた。開翅には、天候と気温が大きく関係しており、やっと条件が合致した。撮影開始から1時間くらい経過すると、オスは草叢の中を探雌飛翔し始め、なかなか止まらなくなるが、時折、花で吸蜜する時には翅を開いてくれた。ただ、どの個体も青色鱗粉が少ないものばかりである。
 探索を続けていると、葉上でじっとしている新鮮な個体が目に入った。飛び立ってもすぐ近くに降り立つ。飛んだ瞬間に見えた翅表は、まさに「青ゴマ」である。この個体に的を絞るが、頑なに翅を開かない。しばらくすると、探雌飛翔してきたオスに絡まれ翅を開いた。羽化後から時間があまり経っていないのであろう交尾も拒否しているようであった。

 参考までに2014年に撮影した、青い鱗粉がほとんどない暗褐色タイプ(通称:黒ゴマ)の写真も掲載した。

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ゴマシジミ開翅の写真

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500(2017.8.11 9:32)

ゴマシジミ開翅の写真

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 640(2017.8.11 9:32)

ゴマシジミ開翅の写真

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 400(2017.8.11 8:32)

ゴマシジミ開翅の写真

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 640(2017.8.11 9:12)

ゴマシジミ開翅の写真

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 640(2017.8.11 7:39)

ゴマシジミ開翅の写真

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 640(2017.8.11 7:54)

ゴマシジミの写真

ゴマシジミ(暗褐色タイプ)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 400(2014.8.23)

ゴマシジミの写真

ゴマシジミ、シワクシケアリとワレモコウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500(2017.8.11 8:27)

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ヒメシジミ属3種

2017-06-25 20:14:43 | チョウ/シジミチョウ科

 ヒメシジミ属には、以下の3種(5亜種)が国内に生息しているが、分類は研究者によって見解が異なっており、ミヤマシジミ、アサマシジミをミヤマシジミ属(Lycaeides属)として分類している場合もある。昆虫の分類は、形態学、生態学、比較発生学など様々な知見を総合して系統分類しており、昨今ではDNAによる系統解析も行われており、3種をヒメシジミ属(Plebejus属)としてまとめる方が多いことから、当ブログでは、3種をヒメシジミ属とし、雌雄それぞれの翅裏と翅表の写真をまとめてみた。
 この3種は、形態的に良く似ており、特に翅裏の模様だけでは、一見、同じように見えて区別が難しいが、オスは翅表の違いから判別は容易である。

ヒメシジミ属(Genus Plebejus

  1. ヒメシジミ Plebejus argus (Linnaeus, 1758)
    • ヒメシジミ 北海道亜種 Plebejus argus pseudaegon (Butler, [1882])
    • ヒメシジミ 本州・九州亜種 Plebejus argus micrargus (Butler, 1878)
  2. ミヤマシジミ Plebejus argyrognomon (Bergstrasser, 1779)
    • ミヤマシジミ Plebejus argyrognomon praeterinsularis Verity, 1921
  3. アサマシジミ Plebejus subsolanus (Eversmann, 1851)
    • アサマシジミ 北海道亜種(別名:イシダシジミ) Plebejus subsolanus iburiensis (Butler, [1882])
    • アサマシジミ 中部低地帯亜種 Plebejus subsolanus yaginus (Strand, 1922)
    • アサマシジミ 中部高地帯亜種(別名:ヤリガタケシジミ)Plebejus subsolanus yarigadakeanus (Matsumura, 1929)

注意:写真は、すべて500*333 Pixelsで掲載しています。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧頂きますと、2枚1組が左右に並んで表示されます。スマートフォン等画面が小さい場合は、左右ではなく、上下で表示されます。

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ヒメシジミの写真 ヒメシジミの写真
ヒメシジミの翅裏(写真左:オス/右:メス)

ヒメシジミの写真 ヒメシジミの写真
ヒメシジミの翅表(写真左:オス/右:メス)

ヒメシジミ

北海道、本州、九州に分布し、食草は、マアザミ、ヤマボクチなどのキク科植物およびタイツリオウギ、イワオウギなどのマメ科植物で、 そのほかバラ科、タデ科、ユキノシタ科、ヤナギ科植物も食草となることがあり、 40種にも及んでいる。
個体の大きさや翅の斑紋と色に地域特性や個体差が見られる。発生地の気象条件、環境条件、食草の種類や発生量、摂食期間、共生アリとの関係、遺伝形質などが要因となり、 また蛹時の鱗粉が形成される際に急激な気温の変化が起きると「斑紋異常」になりやすいと言われている。
長野県等の高原では、個体数がとても多い。
環境省カテゴリー:準絶滅危惧(NT)
都道府県RDB:東京都・神奈川県/絶滅、埼玉県・茨城県・群馬県・愛知県・島根県・山口県/絶滅危惧Ⅰ類、ほか
参照:ヒメシジミ

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ミヤマシジミの写真 ミヤマシジミの写真
ミヤマシジミの翅裏(写真左:オス/右:メス)

ミヤマシジミの写真 ミヤマシジミの写真
ミヤマシジミの翅表(写真左:オス/右:メス)

ミヤマシジミ

翅裏は灰色で、外周に沿ってオレンジの帯が入るが、オレンジ帯の中にある黒斑に水色の構造色がある点が特徴である。
ミヤマシジミの分布域は本州のみで、分布の中心は関東~中部地方で、食樹であるマメ科のコマツナギが生える乾燥した河原や草原などに生息している。
幼虫は特定のアリと共生関係を結んでいることが近年の研究で分かっており、生息域の重要な条件となっているが、昨今の開発等により全国的に激減しており、絶滅した地域も多。
環境省カテゴリー:絶滅危惧ⅠB類(EN) 都道府県RDB:東京都・神奈川県・宮城県・山形県・石川県/絶滅、埼玉県・群馬県/絶滅危惧Ⅰ類、ほか6県にて絶滅危惧Ⅱ類
参照:ミヤマシジミミヤマシジミ(メス)

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アサマシジミの写真 アサマシジミの写真
アサマシジミ(中部低地帯亜種)の翅裏(写真左:オス/右:メス)

アサマシジミの写真 アサマシジミの写真
アサマシジミ(中部低地帯亜種)の翅表(写真左:オス/右:メス)

アサマシジミ中部低地帯亜種

北海道と本州の関東、中部地方の中山帯の草原のみに分布し、ナンテンハギ、イワオオキなどのマメ科植物が食草である。
3種の中で一番大きい存在感があるが、生息地が極めて局所的である上に、開発による生息地の破壊と採集者による乱獲が絶えず、各地で絶滅に瀕している。
環境省カテゴリー:絶滅危惧ⅠB類(EN) 都道府県RDB:東京都・埼玉県・神奈川県/絶滅、群馬県/絶滅危惧Ⅰ類、ほか4県にて絶滅危惧Ⅱ類
長野県指定の希少野生動植物
参照:アサマシジミ(山梨県)、アサマシジミ(長野県)

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アサマシジミ

2017-06-24 22:12:11 | チョウ/シジミチョウ科

 アサマシジミ Plebejus subsolanus (Eversmann, 1851) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ヒメシジミ属(Genus Plebejus)の属するチョウで、北海道と本州の関東、中部地方の山地の草原のみに分布し、以下の3亜種に分類されている。

  • 中部低地帯亜種 Plebejus subsolanus yaginus (Strand, 1922)
  • 中部高地帯亜種(別名:ヤリガタケシジミ) Plebejus subsolanus yarigadakeanus (Matsumura, 1929)
  • 北海道亜種(別名:イシダシジミ)Plebejus subsolanus iburiensis (Butler, [1882])

 アサマシジミは、エビラフジ、ナンテンハギ、イワオオキなどのマメ科植物が食草であるが、生息地がたいへん局所的である上に、開発による生息地の破壊、そして生息地によって異なる班紋から採集者による乱獲が絶えず、各地で絶滅に瀕している。3亜種ともに環境省RDBでは絶滅危惧種に選定されており、長野県においては、中部高地帯亜種を県の天然記念物に指定し、更には、長野県希少動植物保護条例(2016.4.25)によって中部低地帯亜種を含めたアサマシジミの採集を禁止している。

 アサマシジミは、2014年に山梨県において中部低地帯亜種を撮影しているが、今回は長野県を訪れた。毎年、ハヤシミドリシジミとウラジロミドリシジミの撮影のために立ち寄るポイントに、実はアサマシジミ中部低地帯亜種も生息地していることが分かったのが昨年。ゼフィルスが撮影できず、近くにいたシジミチョウの翅裏だけを撮って帰った(当初、ヒメシジミと思い込んでいた)ところ、それがアサマシジミ中部低地帯亜種(以後、アサマシジミという)であったことから、今年は生息の確認と翅表を撮影することが目的である。
 朝5時。気温17℃。晴れ。ゼフィルスの撮影には良い天候だが、カシワを叩いてもゼロ。例年、7月に入ってからの発生であるから早すぎた。気持を切り替え、昨年、アサマシジミを撮影した辺りで出現を待つ。よく見れば、食草であるエビラフジが生えている。5時48分。朝露に濡れたススキの葉に止まっているアサマシジミを発見。翅を開くと、青い鱗粉が広がった個体である。アサマシジミの青い鱗粉の広がりや色には、地域変異があることが知られているが、同一地域内においても個体変異がある。50mほど離れた草地にも多くのアサマシジミが飛んでいたが、こちらの個体は、山梨県の個体同様に、全て青い鱗粉が少ない個体ばかりで、大きさも小ぶりであった。

 この生息地ではヒメシジミも混在しており、参考までに掲載した。また、山梨県で撮影したアサマシジミも比較のために掲載した。
 尚、アサマシジミの分類は、研究者によって見解が異なっており、ミヤマシジミ属(Lycaeides属)として分類している場合もあるが、ここでは、ヒメシジミ、ミヤマシジミ、アサマシジミ3種をヒメシジミ属としてまとめた。

参照:長野県希少野生動植物保護条例 / 指定希少野生動植物及び特別指定希少野生動植物一覧(昆虫)

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アサマシジミの写真

アサマシジミ(中部低地帯亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 640(撮影地:長野県 2017.6.24)

アサマシジミの写真

アサマシジミ(中部低地帯亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F9.0 1/250秒 ISO 500(撮影地:長野県 2017.6.24)

アサマシジミの写真

アサマシジミ(中部低地帯亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F9.0 1/320秒 ISO 800(撮影地:長野県 2017.6.24)

アサマシジミの写真

アサマシジミ(中部低地帯亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F9.0 1/250秒 ISO 640(撮影地:長野県 2017.6.24)

アサマシジミの写真

アサマシジミ(中部低地帯亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 320 -2/3EV(撮影地:長野県 2017.6.24)

アサマシジミの写真

アサマシジミ(中部低地帯亜種/山梨県産)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/200秒 ISO 200(撮影地:山梨県 2014.7.21)

ヒメシジミの写真

ヒメシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F9.0 1/320秒 ISO 800(撮影地:長野県 2017.6.24)

アサマシジミ、ハヤシミドリシジミ、ウラジロミドリシジミの生息地
私が単独で見つけた場所で、採集者は勿論、撮影者も来ないのが良い。

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ムラサキシジミ(6月の開翅)

2017-06-15 22:24:19 | チョウ/シジミチョウ科

 ムラサキシジミ Arhopala rama (Kollar, [1844]) は、チョウ目シジミチョウ科(Family Theclini)ムラサキシジミ属(Genus Arhopala)属するチョウで国内では、本州、四国、九州、南西諸島に分布する普通種である。翅表が、黒色の広い帯で縁どられた濃い青紫色が特徴である。
 成虫で越冬し、越年した母チョウから生まれた卵が成虫になるのは、5月下旬頃からで、以後は連続的に秋まで数回の世代を繰り返す。幼虫の食草はアラカシ、イチイガシ、スダジイなどのブナ科常緑樹で、これらが少ない場所ではクヌギ、コナラなどのブナ科落葉樹も食べるようである。幼虫は、蜜を分泌して数種のアリを誘引する。アミメアリでは脳内ドーパミン量が低下して攻撃的になり巣に帰らず、本種の幼虫を護衛すると言われている。

 ムラサキシジミの越冬個体は、秋から陽だまりでよく開翅し、その様子過去に掲載しているが(ムラサキシジミ(オス))、初夏に羽化した個体は、止まっても翅を開くことがほとんどないため、これまで見たことも撮影したことも無かった。しかしながら、今回、偶然にオスの開翅を目撃し写真に収めることができた。掲載写真は羽化したばかりの新鮮な個体のようだ。光の当たり具合による差もあると思うが、越冬個体に比べて翅表の色が濃いように思われる。

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ムラサキシジミの写真

ムラサキシジミ(オス開翅)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 1250(撮影日:2017.6.11)

ムラサキシジミの写真

ムラサキシジミ(越冬個体の開翅)
Canon EOS 7D / T TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/4000秒 ISO 400 -1/3EV(撮影日:2010.12.04)

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ツバメシジミ(春型メス)

2017-05-09 20:31:04 | チョウ/シジミチョウ科

 ツバメシジミ Everes argiades argiades (Pallas, 1771) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ツバメシジミ属(Genus Everes)に属するチョウで、和名の由来でもある後翅の尾状突起が特徴。北海道・本州・四国・九州に分布し、平地の草原や公園などで見られる普通種である。食草は、マメ科(ミヤコグサ,シロツメグサ,レンゲ,コマツナギなど)で、3月~10月にかけて本州暖地では年に4~5の発生する。翅表は、オスが青紫色、メスが黒色で、裏面は灰色がかった白色で後翅に橙色の紋を持っている。
 さて、チョウの中でも、一年のうちに何回も羽化する種は「季節型」と言って、羽化した時期によって「春型」「夏型」「秋型」に分けられ、それぞれ翅の色彩や形状が異なることが多い。 ツバメシジミも「季節型」があり、特に春先に出現するツバメシジミのメスには、翅表面に青い斑紋が出現することがある。メスの翅表面に青い鱗粉がのる種は、他にミヤマシジミが知られているが、これも春や秋の低温期に羽化した個体に限られる。
 今回、翅表面に青い斑紋が出現したツバメシジミの春型メスを撮影したので紹介したい。

参照:チョウの季節型

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ツバメシジミ(春型メス)の写真

ツバメシジミ(春型メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/1000秒 ISO 200(撮影地:栃木県 2017.5.03)

ツバメシジミ(春型メス)の写真

ツバメシジミ(春型メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 200(撮影地:栃木県 2017.5.03)

ツバメシジミ(夏型メス)の写真

ツバメシジミ(夏型メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 320 +1EV(撮影地:埼玉県所沢市 2010.10.10)

ツバメシジミ(夏型オス)の写真

ツバメシジミ(夏型オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE FF8.0 1/160秒 ISO 250(撮影地:山梨県山中湖村 2013.9.01)

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ヤクシマルリシジミ

2016-11-06 20:56:45 | チョウ/シジミチョウ科

 ヤクシマルリシジミ Acytolepis puspa ishigakiana (Matsumura, 1929)は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)/ヤクシマルリシジミ属(Genus Acytolepis)のチョウで、本州では紀伊半島中南部、四国では高知県南部海岸地域、そして九州南部と南西諸島に分布する普通種で、和名は、屋久島で最初に発見されたことによる。ルリシジミ Celastrina argiolus ladonides (de l'Orza, 1869) に似ているが、オスの翅表は鮮やかな青色に幾分広い黒縁があり、翅裏の黒点斑の違いで区別がつく。また、ヤクシマルリシジミは翅裏斑紋の変異が多く、別種のように見えるほど違う個体も存在する。
 幼虫の食草は、バラ科、トウダイグサ科、マンサク科、ツツジ科、ブナ科、ヤマモモ科など多岐にわたり、それらの新芽や花蕾などを食べ、海岸付近の照葉樹林の周りで多く見られる。成虫は年4回ほど発生し、3~11月頃まで見られるが、春の発生は少なく、夏から秋にかけて多く見られるチョウである。

 11月3日は兵庫県県内でオオキトンボを撮影した後、和歌山県に移動して車中泊。午前2時に東京の自宅を出発して兵庫、和歌山と走ったため、和歌山に到着後は、ワインを一本半空けたところで爆睡。快晴の夜空に流れる「秋の天の川」を撮り損ねてしまった。
 4日は、朝6時から行動開始。太平洋から昇る朝日を浴びながらポイントを探して海岸沿いを歩き、行けるところまで行って引き返す。8時頃になってようやくチョウが飛び出してきた。 たくさんのヤマトシジミ、ウラナミシジミがチラチラと飛び交うが、止まった時に確認すると、ヤクシマルリシジミもかなりの数がいる。オスよりもメスの方が圧倒的に多いようだ。ヤクシマルリシジミは、朝日が当たる地面近くの草に止まって翅を開いて体を温め、その後は木の上の方に飛んで行くという行動。メスは、十分な開翅写真を撮ることができたが、オスは1頭だけ証拠程度の撮影。飛んでいるとヤマトシジミとの区別ができないため、見逃した可能性もある。いずれチャンスがあれば、オスの全開翅写真を撮りたいと思う。
 撮影したい本命の種は別のチョウであったが、1頭も見られない状況。仕方なく10時半で現地を引き上げ東京に向かったが、ヤクシマルリシジミも今回の遠征では目標の1種であり、本州では和歌山県でなければ見ることのできないので、有意義な遠征であった。

 当ブログでは、チョウとトンボのみ撮影した種をカウントしているが(撮影済み昆虫リストと撮影機材)、久しぶりに初見初撮影の種が増えた。ヤクシマルリシジミは、当ブログ「鱗翅目」で、136種類目となる。

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ヤクシマルリシジミ

ヤクシマルリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 200(2016.11.4)

ヤクシマルリシジミ

ヤクシマルリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 400 +1EV(2016.11.4)

ヤクシマルリシジミ

ヤクシマルリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 400 +1EV(2016.11.4)

ヤクシマルリシジミ

ヤクシマルリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 320 +1EV(2016.11.4)

ヤクシマルリシジミ

ヤクシマルリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 320 +1EV(2016.11.4)

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ウラナミシジミ

2016-10-19 20:06:55 | チョウ/シジミチョウ科

 ウラナミシジミ Lampides boeticus (Linnaeus, 1767) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)/ウラナミシジミ属(Genus Lampides)に分類され、河川敷の草地や樹林地、都市の公園などでも普通に見られるチョウで、翅の裏に薄い褐色と白のしま模様があり、和名の由来となっている。幼虫はエンドウ、アズキ、クズなど、野菜・山野草を問わずマメ科植物を幅広く食べ、エンドウ、サヤエンドウ、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、タヌキマメ、ソラマメ等の害虫としても有名である。
 オスとメスの翅裏の模様に違いはないが、翅表は、オスは淡紫色で外縁のみ細い暗色、メスは広く暗褐色で翅の中央部が青紫色で、後翅外縁に沿って白く縁どられた黒点列が目立つ。
 ウラナミシジミは、秋になると東京や東北、稀に北海道でも見ることができるが、実際は九州南部、四国の南部、紀伊半島の南部、伊豆半島南部、そして房総半島の南部が分布域である。分布域では、4月から12月までに年6~7回発生をするが、羽化した個体の一部が、春から秋にかけて食草であるマメ科植物の成長に合わせて世代を繰り返しながら個体数を増やし北上することによって他の地域でも見ることができるのである。房総半島に発生した個体が北上し、東京に現れる成虫が三代目くらいと言われている。
 越冬態は、最近の研究では成虫、幼虫、卵といった様々な姿で越冬していることが分かっているが、本種が越冬できるのは上記分布域のみで、寒冷地では越冬できずに死滅してしまう。晩秋までどんどん北上して冬が来るとそこで死に絶えるが、翌年も北上を繰り返すのである。

 ウラナミシジミの北上は、アサギマダラが春に北へ向かい秋に南へ帰る「移動」とは違う。食草と生育に適した気温の土地へと、一部が北だけではなく四方八方へと、その強い飛翔力で拡大しているのである。
 温暖化の影響により、南方系のチョウが分布域を北方に広げていく現象が知られており、日本国内では、ナガサキアゲハ、ツマグロヒョウモン、クロコノマチョウ、ムラサキツバメなどが 代表的な例で、ナガサキアゲハにおいては、各都市の年平均気温が約15℃を超えると侵入し生息することが判明している。
 ウラナミシジミの北上と温暖化の関係は明らかではないが、将来的には、温暖化によって東京や東北の気候が生育に適するようになれば、越冬しその地域で繁殖する可能性はあるだろう。

参考文献
北原正彦, 入來正躬, 清水剛(2001) 日本におけるナガサキアゲハ(Papilio memnon Linnaeus)の分布の拡大と気候温暖化の関係. 蝶と蛾(日本鱗翅学会誌)52(4):253-264.

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ウラナミシジミ

ウラナミシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 250 +1EV(2010.10.10)

ウラナミシジミ

ウラナミシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/640秒 ISO 200(2016.10.02)

ウラナミシジミ

ウラナミシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 320 +1EV(2010.10.10)

ウラナミシジミ

ウラナミシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F9.0 1/320秒 ISO 320(2010.11.03)

ウラナミシジミ

ウラナミシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 200(2013.9.22)

ウラナミシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 1000(2016.10.22)

ウラナミシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 500(2016.10.22)

ウラナミシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 400(2016.10.22)

ウラナミシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 320(2016.10.22)

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