シリーズ「ホタルの写真を撮る」その4
ブログでは、ホタルの一生を写真で紹介してきたが、今回はホタルの産卵~孵化について掲載したいと思う。
オスは光りながら飛び回り、葉先で目立つように光る未交尾のメスを見つけると近寄っていき、光によるコミュニケーションが行われて交尾に至る。15時間ほどの交尾が終わると、メスは22時頃から河川上を一直線に飛びながら産卵場所を探し、23時頃から産卵を開始する。主に日陰で、水際の水面に対して垂直に生えているコケにおよそ500~1,000個の卵を産みつける。産卵数は、西日本型の方が多く2,000個ほど産む個体もいる。産卵は夜明けまで続けられ、2~3日かけて産卵する。
卵はやや楕円形をしていて、長い方の直径がおよそ0.55mmで、短い方の直径がおよそ0.5mmである。卵は成虫の体内にある間にすでに発光しているといわれているが、その光は産み落とされたばかりの頃は、暗闇の中でやっと見える程度の明るさである。成虫のように点滅するのではなく、昼間も夜も光り続けている。そして、日がたつにつれて少しずつ強い光りになっていき、孵化の数日前になると、その光りはさらに強くなり、殻を通して中の幼虫の尾端の2つの発光器を確認することができる。この時期では、何かの刺激を受けると一気に強く発光する。
孵化は、産卵後平均25日くらいで始まるが、孵化まで期間は「有効積算温度」(卵の発育零点 9.3℃ 有効積算温度 357.4℃日)で決定され、高い気温の方が日数が短くなる。孵化は午前1時頃から始まり、幼虫は、そのまま水中へと入っていく。
小さな被写体を大きく撮影する時は、マクロレンズを使用するが、一般的なマクロレンズの拡大率は等倍までである。つまり、35mmのフィルム上に実物大の大きさが写るのであるが、直径0.5mmのホタルの卵を大きく写すには、それでは物足りない。カメラボディとレンズの間に中間リング(エクステンションチューブ)を取り付ける方法もあるが、
拡大率は2倍くらいが限度であるため、これ以上の拡大になると「ベローズ」が必要になる。「写真8」この組み合わせでは、およそ7倍もの倍率で撮影できる。(尚、メーカーによっては、レンズ単体で5倍まで撮影できるレンズも市販されている。)
以下に掲載したすべての写真は、フィルムで撮影し、スキャナーでデジタル化したものでるが、「写真9」のようにCanonのデジタルカメラ EOS 7D にオリンパスのオートベローズを付けて
撮影することもできる。ただし、フィルムで撮影した方が鮮明で奇麗であった。
残念ながら、撮影に使用したフィルムは、既に製造販売されていない。現在、販売されているリバーサル・フィルム(富士フィルム)は、35mmではプロビア100F、ベルビア50、ベルビア100の3種類しかない。卵の写真では、これらのフィルムで美しく撮ることができるが、発光は、成虫の飛翔風景も含めてネガ・フィルムの PRO400H しかない。
参照
お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの 画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。
ゲンジボタル
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional
ゲンジボタルの交尾
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional
ゲンジボタルの産卵
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional
ゲンジボタルの卵
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / AUTO-BELLOWS M-System / FUJICHROME Provia400F Professional
発光するゲンジボタルの卵
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional
ゲンジボタルの卵(幼虫が透けて見える)
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / AUTO-BELLOWS M-System / FUJICHROME Provia400F Professional
孵化するゲンジボタルの幼虫
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / AUTO-BELLOWS M-System / FUJICHROME Provia400F Professional
撮影システム(フィルム)
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / OLYMPUS AUTO-BELLOWS M-System
撮影システム(デジタル)
Canon EOS 7D / OLYMPUS ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / OLYMPUS AUTO-BELLOWS M-System / OLYMPUS EXTENSION TUBE 25 / Canon MACRO TWIN LIGHT MT-24EX
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