ゲンジボタルが飛び交う季節となった。九州や四国では先々週あたりから、発生しているという情報を得ているが、ようやく関東でも早い所では発生のピークを迎えている。
今回、観察と撮影に向かったのは、千葉県内のゲンジボタル自然発生地である。典型的な里山で、幼虫の放流を含めて全く保全活動等はされていない天然ボタルである。
当地では5月の中旬頃から発生しており、谷戸の場所を変えながら発生している。幼虫の上陸時期の雨不足と4月の寒の戻りで、今年の発生はとても少ないのではないかと心配していたが、当地の谷戸の最奥では、筆者でさえ歓声を上げるほどの乱舞であった。
「ホタルを見るなら明るい時間から現地へ!」筆者は、講演会でも各メディアでも、そういつも訴えかけているが、なぜ明るい時間帯から行くのか?ホタルは発光することでオスとメスがコミュニケーションを図っている昆虫だ。暗くないと、お互いの光が見えない。月明りでさえも影響がある。にも関わらず、ホタル観賞にくる人々の中には、懐中電灯を持参してくる方々が多い。暗い道を歩くために使うが、心理的にどうしてもホタルの方に向けてしまいがちだ。当然、ホタルの繁殖に影響が出る。
1つの生息場所においてホタルが飛び交う期間は3週間程度だが、毎晩が繁殖機会ではない。メスはオスよりも1週間ほど遅れて発生してくるから、繁殖の期間は2週間程度しかない。雨が降っても影響はないが、月が明るい夜や風が強い夜、気温が15℃を下回る寒い夜は活動が鈍るから、繁殖の期間は更に減って1週間くらいになる。その1週間しかない繁殖のチャンスを我々人間が懐中電灯で奪っているのである。
懐中電灯を持たない、使わない。そのために明るい時間帯に行くのである。目が慣れて、暗くなっても良く見えるから心配ない。暗くなるまでの間は周辺を見て、ホタルがどんな環境に生息しているのか、よく観察する。写真を撮るならば、この時間帯にポジションを決め、構図等を確認しておく。そして1番最初に光る「1番ボタル」を見つけようではないか。
今回、現地へは18時到着。日の入りは19時なので、ゲンジボタルが光るまでは1時間以上もある。周囲を散策すると、水田や隣接する水路の周辺は、奇麗に草刈りがされていた。ホタルのためには草刈りはしない方が良い。特に下草に止まるメスには必要だ。この草刈りは、鑑賞のためでもなく、農作業の一環であるから仕方がない。ただし、生息域の一部であり、谷戸の最奥の湿地周辺は草が伸び放題である。
気温21℃。曇りで風速2m。気温は良いが、空は一面の雲に都心の灯りが反射して、かなり明るく、乾いた風が時折強く吹くので、条件的にはあまり良くない。しかしながら、19時15分。刈り取られた短い草の中で、1匹が光り始めた。しばらくすると、少し離れた藪の中でも発光。19時26分に飛翔開始となった。
ここに生息するゲンジボタルは、東日本型のゲンジボタルであり、その生息環境も東日本型の典型と言える水田とその脇を流れる用水路、そして雑木林がセットになった谷戸である。この日は、渓流や河川ではない、こうした環境に舞うゲンジボタルの光景を写真として残すことに専念した。写真は、およそ12分相当の多重である。また、動画でも記録として撮影したのでご覧頂きたい。尚、下記掲載の成虫の写真は、過去に撮影したものである。
お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。また動画においては、Youtubeで表示いただき、フルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。
ゲンジボタルの光景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 12分相当の多重 ISO 200(撮影地:千葉県 2019.5.31)
ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 4秒 ISO 1000
ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 10秒 ISO 1600
ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 10秒 ISO 1600
ホタルの乱舞~里山で舞う東日本型ゲンジボタル~Japanese Firefly Light Show
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE(撮影地:千葉県 2019.5.31)
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岡山県では5月15日ぐらいから光りはじめていました。当方は5月24日頃か光初め、5月28日には飛んでいました。
5月末には昨年比最大30%と予測したものが6月3日は昨年並み、但し1.5kmの中の200mのみ、それが6月5日には昨年をお幅に越え上流、下流へ広がっています。
昨年は上陸時の雨不足、今年も同様に心配しておりましたが、広島は昨年以上に飛んでいるとの事、安心しました。
関東では、まだ千葉県の一部で、東京はこれからが発生の時期になります。飛んでくれると良いのですが・・・