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ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ゲンジボタル 千葉県2022

2022-05-31 21:25:09 | ゲンジボタル

 今年初のホタルは、石垣島でのヤエヤマヒメボタルの観察と撮影であったが、ゲンジボタルの観察と撮影は、千葉県からスタートである。
 前記事のムカシヤンマの産卵を撮影後に向かったのは、2004年から観察を続てけいるゲンジボタルの生息地。2006年には、テレビ東京の番組「トコトンハテナ」の収録で当時のお笑いタレント「クワバタオハラ」さんらを案内した場所でもある。自然発生の東日本型ゲンジボタルが乱舞する素晴らしい生息地であるが、2019年の台風15号、台風19号、そして低気圧による1時間100mmの雨という甚大な被害によってゲンジボタルも影響を受け、翌年から発生数が激減してしまっていた。谷戸の細流に生息している場合は影響をそれほど受けないが、河川の場合は台風や大雨の影響を受けやすいのだ。
 この生息地では、幼虫の上陸や産卵も観察し写真も撮影しており、成虫の飛翔風景はリバーサルフィルムとデジタルでも撮影済である。ただし映像は残していなかったので、今回は映像を主に撮影することを目的とした。この日は、月明りはなく気温も23℃であったが、少々風が強かった。それでも19時41分に一番ボタルが発光を開始し、少しずつ数が増え始めた。決して乱舞ではなく10頭ほどの飛翔だが、台風の被害から3年。ようやくここまで復活してきたかと思う光景に感動である。元のように乱舞するには、あと2年はかかるだろう。
 ここに生息している東日本型ゲンジボタルは、西日本型に比べて発光の間隔が4秒で、飛翔もかなりゆっくりである。そのため、写真に撮ると光跡が弧を描かないので写真芸術的には「絵」にならない。掲載写真を見て「物足りない」と思う方もいらっしゃるかもしれないが、これが台風の被害から復活してきた姿であり、光跡は東日本型の確かな証でもある。ただし映像では、ゆったりと発光飛翔する様子に優雅を感じて頂けると思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

水田の風景の写真

水田の風景
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 320 +2/3EV(撮影地: 千葉県 2022.5.29 17:14)

東日本型ゲンジボタルの飛翔風景の写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 5秒 ISO 400 2分相当の多重(撮影地: 千葉県 2022.5.29 20:00~)

東日本型ゲンジボタルのの映像

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ゲンジボタルとヘイケボタルの光り方の違い

2021-07-06 19:43:31 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルとヘイケボタルの光り方の違いについて動画で分かりやすくしたものを作成してみた。 

 ゲンジボタルが渓流や河川(小川)など流れに棲み、ヘイケボタルは水田や湿地などに生息し、形態や生息環境に違いはあるものの、生活スタイル(生態)については、それほど大きな違いはなく、東日本の里山等の小川と水田が環境が揃っている場所では、両種が生息している場所も少なくない。どちらも、世界中で10種類ほどしかいない幼虫が水中で生活するホタルの仲間で、かつては両種ともホタル属(Genus  Luciola)であったが、昨今では以下のように別の属に分類されており、発光の違いは明瞭である。

  • ゲンジボタル Nipponoluciola cruciata (Motschulsky, 1854)
  • ヘイケボタル Aquatica lateralis (Motschulsky, 1860)

 ある谷戸では、水田の脇を流れる小川で5月末にゲンジボタルが発生し、6月末になると水田でヘイケボタルが発生する。ゲンジボタルは、水田脇の小川上を飛翔する。林が隣接しており、時には梢高くまで飛ぶ様子が見受けられる。一方、ヘイケボタルは小川とは反対側の水田の畔付近のみで飛び回り、あまり高は飛ぶことはない。
 掲載した写真は、それぞれが発光飛翔する場所や光跡の違いは分かると思うが、実際の光り方の違いについては、集団同期明滅も含め分からない。その点、動画ではヘイケボタルはゲンジボタルのような集団同期明滅はなく、それぞれがタイミングを合わせることなくバラバラに発光しているなどの発光の違いが分かると思う。
  ゲンジボタルとヘイケボタルの2種類が同じ場所に生息している場所は全国に多くあるが、そのような生息地でも、ゲンジボタルの方が早く発生することが多く、ゲンジボタルとヘイケボタルが同時に舞う場所は多くはない。2つ目の動画では、ゲンジボタルとヘイケボタルが一緒に舞う東京の里山の映像を掲載した。奥の山側でゲンジボタルが悠然と舞い、手前の湿地の上をヘイケボタルが飛び交う様子が分かると思う。

ゲンジボタルの写真ゲンジボタル(オスの発光) ヘイケボタルの写真ヘイケボタル(オスの発光)

関連動画

以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画は 1920×1080ピクセルのフルハイビジョンで投稿しています。設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタルの飛翔風景の写真
ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 9秒 ISO 200 12分相当の多重(撮影地:千葉県 2020.5.30)
ヘイケボタルの飛翔風景の写真
ヘイケボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 2分相当の多重 ISO 400(撮影地:千葉県 2021.6.25)
ゲンジボタルとヘイケボタルが同時に舞う写真
ゲンジボタルとヘイケボタルが同時に舞う風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 320 18分相当多重露光(撮影地:東京都 2019.7.05)
ゲンジボタルとヘイケボタルの光り方の違い
(動画の再生ボタンをクリックした後、設定設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンに しますと高画質でご覧いただけます)
ゲンジボタルとヘイケボタルが一緒に舞う里山
(動画の再生ボタンをクリックした後、設定設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンに しますと高画質でご覧いただけます)

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ゲンジボタル(新潟)

2021-06-20 11:44:52 | ゲンジボタル

新潟県のゲンジボタル生息地へ

 ゲンジボタルの観察と撮影で新潟へ。ホタル前線は徐々に北上しており、新潟県でもホタルの発生が始まった。新潟県には、星峠や美人林の風景、ギフチョウやオオトラフトンボ、オオルリボシヤンマのオス型メス等の撮影で何度も訪れているが、新潟のゲンジボタル生息地は、初めてである。遠征は、当初、18日(金)夕方に計画していたが、仕事が17日(木)は昼で終了し、翌日は年次有給休暇。また天候も17日は新潟方面は晴れと言う予報であったため、予定を繰り上げて午後から新潟県へ向かった。
 14日頃に梅雨入りした東京。17日午前中は、曇り時々土砂降りであったが、関越道の前橋あたりは夏空が広がり、水上から湯沢までは曇天で、時々雨がぱらつくという状況。山々は黒い雲で覆われ、稲光が見えた。ただし、長岡の手前からは再び夏空が広がっており、順調に現地へと向かった。
 新潟県内には多くのゲンジボタル発生地があり、Web上で「名所」と呼ばれる所の情報が載っているが、私が目指したのは普通の農村である。現地到着は17時半。まずは、周辺の環境調査を行う。山間に集落が点在する農村地帯で、標高は110mほど。谷に沿って水田が広がっている。ゲンジボタルが生息する川は、中流域の河川環境で、流れはかなり早く水量も多い。2面がコンクリート護岸で中州は植物が繁茂している。川底は礫であるが、川に降りることが出来ないためにカワニナ等の生息状況は確認できなかった。50mほど離れた県道に街灯と民家が数軒あるが、光の影響は無さそうである。幼虫の上陸場所や産卵場所がどこなのか分からなかった。全体的に「日本の原風景」に相応しい景観である。

ゲンジボタルの生息地環境と同期明滅の発光間隔について

 18時。川に架かる橋のたもとから上流へ向けてカメラをセットした。あいにくカメラは1台しか持参しなかったので、最初に上流方向で比較明合成の写真と映像を撮影したのち、下流方向はフィルム撮影同様の一発長時間露光で写真を撮ることにした。
 当地の日の入りは19時09分だが、開けた場所で河川の幅もあり、木々で覆われている箇所もないため、なかなか暗くならない。気温21℃。無風で湿度も高い。先ほどまで輝いていた月齢7.0の半月も雲で隠れ、条件としては良いが、肝心のゲンジボタルの発生状況が分からない。公にはあまり知られていない生息地で、インターネットにも情報は出ていない。たぶん発生はしているだろうと言う予想での訪問であったが、地元のカメラマン5人のグループがやってきて、カメラをセットし始めたので、一安心。ちなみに、他には観賞者が二組だけであった。実際にあまり知られていない場所のか、訪れた日が木曜日という平日であったからかは分からないが、人間が少数なのは嬉しい。
 川を凝視すること40分。ようやく1頭光りだしたのが19時44分であった。その後、あちこちで光り始め、周囲が真っ暗になった20時15分頃から本格的な飛翔が始まった。ただし、橋を挟んで250mの範囲内だけである。この場所へ来る途中でも、ホタルが沢山飛んでいても良いように思う環境が随所にあったが、実際はいないようだ。今が発生初期なのか、最盛期なのかも不明。勿論、最盛期にどれほどの発生数なのかも分からない。この日は、橋から見て上流も下流も50頭ほどのゲンジボタルが河川の流れ上を飛翔しており、中には隣接する水田の方へ飛んでいく個体もいた。また、水田はごく少数であったがヘイケボタルも発生しており、河川で舞うゲンジボタルに混じって飛翔していた。

 新潟のゲンジボタルは、地域的に東日本型の遺伝子(東北グループ)であり、オスの集団同期明滅の間隔は気温20℃で4秒であるはずだが、当地のゲンジボタルを観察したところ、明滅の間隔がかなり速く、これは掲載している映像からも分かる。明滅間隔は気温によっても変化するが、この夜の気温は21℃であった。採集して遺伝子解析しなければ明確なことは言えないが、明滅間隔、発光飛翔のスピードは西日本型ゲンジボタルの特性に類似している。もし、西日本型の遺伝子であるならば、過去に人為的移入によって西日本のゲンジボタルが持ち込まれて定着したと思われるが、当地はホタル保存会などもないようで、詳細は不明である。
 また、新潟県内の他地域のゲンジボタルを観察していないので、比較することができないが、当地特有(地域特性)、あるいは生息地の物理的環境特性も関係しているのならば、新しい発見である。映像をご覧頂き、ご意見を頂戴したいと思う。

ホタルの写真について

 先週訪れた富山県のゲンジボタル生息地は、河川のすぐ近くで撮影したのでホタルに取り囲まれる状態でったが、今回の新潟県の生息地は、中規模な河川で橋の上からの観察と撮影のため、写真には周辺環境も写すようにした。前述のように河川下流方向は、比較明合成をしない1分ほどの長時間露光で撮影している。「農村風景とホタル」という貴重な光景を写真として残せたように思う。

 長時間露光写真は、時間に切れ間のない連続した写真であり、露光時間内におけるホタル1頭1頭の発光飛翔の方向や発光間隔の光跡が明瞭にかつ正確に記録されている。時間の連続性からホタルの生態学的観点や写真芸術の観点からも価値がある1枚になるのだが、背景を写すには高感度で長時間の露光が必要になる。私のカメラではISO感度400で露光時間40秒を越えたあたりから熱ノイズが発生してしまうというデメリットがあり、美しい写真とは言い難い結果である。しかしながら、フィルムで撮影していた頃を思い出し、写真はこうあるべきだと思い出した結果でもある。最新のデジタルカメラは技術も進んでおり、長時間露光でもノイズのない画像が得られるので、そろそろ機種を変更したいところではあるが、高価であり手が届かないのが現実で、今の機材を最大限活用するしかない。

 一方、上流方向に向けて撮影した写真は、比較明合成したものである。まず明るい時間に背景を撮影し、そのままカメラを動かさずに暗くなってホタルが飛んだらホタルの光跡だけを撮影する。これら数枚をパソコンソフトで合成するのである。比較明合成は、基本的にはノイズのない美しい背景を表現するための手法だが、重ねる光跡写真の枚数をいくらでも増やすことができ、アマチュア・カメラマンが撮るヒメボタル写真に見るような現実離れした単なる創作写真にしてしまいがちである。美しい1枚にはなるが、時間の連続性がないため価値ある1枚とは言い難い。見栄え重視の創作写真なのである。極端な事を言えば、ホタルが実際に飛んでいない所でも、写真上で乱舞させることもできる。

 比較明合成により、今では誰でもいとも簡単にホタルの写真が撮れて1枚の写真にすることが出来るようになったが、創作して単にインスタ映えを狙うのも良いが、ホタルの生態について学んだ上で撮影し作品にして頂きたい。特にカメラマンに人気のあるヒメボタルの写真では、今も尚、ヒメボタルが乱舞する中に立ち入り、人物と共に写している写真を目にする。勿論、人物と発光飛翔するヒメボタルは比較明合成だが、立ち入ることが問題だ。翅がないメスは、立ち入ったモデルの足元にいるのである。その光景を撮るカメラマンは、排除しなければならない!

あとがき

 今月3週連続での遠征。今回は往復640kmであったが、前回の富山、前々回の大阪を合わせると、この3週間の週末だけで2,560km走行したことになる。ちなみに、高速道路で青森から鹿児島まで走ると約2,059kmだ。緊急事態宣言中のことであるから、褒められたことではないが、被写体の発生時期、天候、私の休日という条件が見事に合致し、また経験値を積んだこともあり、7年越しでようやく撮影できたゼフィルス2種は、今年決行していなければ、今後いつ出会えるか分からない存在である。奇跡の連続に心から感謝したいと思う。
 ホタルの季節はまだまだ続く。7月末までに、ゲンジボタルは最低でも2カ所以上、ヒメボタルは3カ所の未訪問生息地での観察と撮影を予定している。また、今年はゼフィルス撮影を多く計画しており、ウラジロミドリシジミの全開翅を主目的に、撮り直しも含めて数種の撮影を予定している。他では、未撮影であるクモマベニヒカゲやホソミモリトンボ、開翅が撮れていないサツマシジミなどを予定。自然風景写真は、秋山郷の紅葉からになるだろう。

 今月20日で緊急事態宣言は解除されるが、宣言中であろうとなかろうと、新型コロナウイルスに感染しないことが重要だ。ワクチン接種券がまだ届いていないので、私の接種はまだまだ先になりそうだが、打ったから安心ではない。そもそもワクチンは感染ではなく発症を防ぐものである。接種を終えた人が他人にウイルスを感染させないようにできるとは限らないと言われている。諸説あるが、誤解せずに科学的根拠に基づいた内容を正しく理解することが必要だと思う。私は、今後も感染予防の対策を徹底して行いながら活動を続けていく所存である。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

夕暮れの水田の写真

夕暮れの水田
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F11 1/40秒 ISO 100 -1EV(撮影地:新潟県 2021.6.17 18:24)

新潟県のゲンジボタルの写真

ゲンジボタル(新潟)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 68秒 ISO 400(撮影地:新潟県 2021.6.17 20:37)

新潟県のゲンジボタルの写真

ゲンジボタル(新潟)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 46秒 ISO 400(撮影地:新潟県 2021.6.17 20:45)

新潟県のゲンジボタルの写真

ゲンジボタル(新潟)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 11分相当の比較明合成 ISO 400(撮影地:新潟県 2021.6.17 20:00)

新潟県のゲンジボタル Genji firefly in Niigata (フルハイビジョン映像)

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ゲンジボタル(富山)

2021-06-13 21:40:21 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルの観察と撮影で富山を訪問してきた。先週は、岐阜県関ケ原のゲンジボタル生息地を訪ねたが、護岸工事で激減したという悲しい現実を目の当たりにした。今回の富山も、当初予定していた生息地が護岸工事で激減という知らせを頂き、富山県在住のプロの写真家「安念 余志子」さんにご教示いただき、違う場所を訪ねてみた。安念さんは、ホタルの写真もお撮りになっており、日本ホタルの会の会員でもある。
 6月11日17時半に現地到着。駐車場に車を止めたが、帰る時に車のベッドライトが川を照らさない向きに止めた。勿論、引き上げる時刻は、ホタルの発光飛翔活動が終了してからである。
 まずは、周辺の環境を観察。この地域は、78%が森林、13%が田園地帯で占められており、1.800m級の山岳から平野に広がる田園地帯に至るまで、豊かな自然環境が随所に残されている。見れば、その山地や麓、平野の至る所にホタルが生息していそうな印象を持つ。この日、訪れたのは複合扇状台地の田園地帯の中を流れる細い河川である。雑木林は隣接していない。水田の所々に民家が点在し、舗装道路も走っているが、交通量は極めて少ない。
 河川は、流れの幅2.0mほどで両岸はコンクリート護岸である。川底は砂礫で、一部に中州があり草が繁茂しており、川底や壁面には多くのカワニナが生息しているのが分かる。1.5mほどの護岸の上は草地で、農道を挟んで水田が広がっている。幼虫は、護岸を登り草地で蛹になることが安念さんの観察から判明しているが、最近、雨が降っていないからだろう、草地はカラカラに乾燥していた。それでも、多数の成虫が羽化して出てきている。また、河川のごく一部およそ200mの岸辺に桜や杉の並木があり、ゲンジボタルはその範囲内を飛翔する。
 かつて、埼玉県内のある大学の敷地内にこれと似た河川があり、ゲンジボタルの生息環境再生に関わったことがあるが、こうした環境でゲンジボタルが乱舞するということは、今後、様々な地域においてのホタルの保全活動に大いに参考になるだろう。

 18時半頃に安念さんが現地に来られ、色々とお話を伺い、すぐにお帰りになるまで情報交換を行った。その後、ゲンジボタルが多く飛翔するという場所にカメラをセットし、日没を待った。
 気温21℃。薄曇り。無風。月は無し。絶好のホタル日和である。日の入り時刻は19時11分。一番ボタルは早くて19時45分頃、おそらく河川の上に覆いかぶさる桜の葉裏だろうと思っていると、19時半に自分の足元近くの低い草むらで光り始めた。予想外の出来事である。その後も、次々に護岸上の高さ10cmほどの草むらで発光を始め、中州の茂みでも光り始めた。この時、光っているのはオスだが、これら個体は、昼間はそこで休んでいるということである。つまり、土手の草刈りは行ってはならないということである。
 飛翔開始は19時46分。20時を過ぎた頃から数が多くなり、見える50mほどの範囲で100頭を越えるゲンジボタルが発光飛翔をしていた。全体では、単純計算で400頭ということになる。すべてがゲンジボタルと思っていると、1頭だけヘイケボタルがゲンジの中をかき分けるように飛んでいたのが印象的であった。おそらく隣接する水田で羽化したものであると思われる。写真では分かりにくいが、ヘイケボタルであった。
 安念さんからは、地元の観賞者はあまり来ないと伺った。なぜなら、「ホタルは、普通にたくさんいて、見飽きている」との事。この日は、私以外に、カメラマンが3人。観賞者は、家族ずれが10組くらいであった。「初めて見た~」などという声が聞こえたので、地元の方ではないのだろう。ただし、懐中電灯を照らす行為は2例あった。そもそも、暗くなってから来ても懐中電灯なしで歩ける田んぼの脇道。今後もホタルのために照らさないで頂きたい。

 懐中電灯を照らす行為であるが、「写真を撮っている人から文句を言われる」と勘違いしている方々が多い。いや大多数の一般の方々はそう思っている。フィルムで撮っていた頃は、一回の懐中電灯の灯りでその日の撮影は台無しになるが、今はデジタルだから、そのような灯りが入れば、そのカットだけ削除すれば問題ない。人が写っても消せる時代だ。ホタルは、お互いの光でのみコミュニケーションを図り、繁殖する昆虫であり、月明りでさえ繁殖を阻害してしまうのである。ホタルのために灯りは禁物である。
 「ほんの数人が数回照らして問題があるのか」といった言い訳をする方もいるが、ホタルの発生期間を仮に3週間としよう。メスはオスより1週間ほど遅れて発生するから、繁殖日数は2週間に減る。ホタルは、満月の夜や風が強かったり、気温が15℃を下回るとあまり活動しない。それらを差し引くと繁殖日数は更に減る。そして一日の中での繁殖できる時間は、20時頃から21時頃の1時間だけである。そのわずかな繁殖の機会を人為的な光で邪魔をすればどうなるのか、お分かりになるだろう。

 さて、この日に撮影したホタルの写真であるが、まず背景を別撮り(明るい時間帯に予め撮っておくこと)しない5秒露光のカット8枚(40秒相当)及び4秒露光のカット35枚(140秒相当)を比較明合成したが、ここは街灯がなくても開けた場所なので、ISO200 F2.8で一発露光20~30秒露光の方が写真芸術的に美しいものになるような気がする。
 参考までに、明るい時間帯に予め撮影した背景に光跡を比較明合成する手法の写真も掲載した。5秒露光のカット35枚(170秒相当)であるが、ゲンジボタルが一番盛んに飛翔する時間帯のものである。飛翔するゲンジボタルに取り囲まれる撮影位置であるため、比較明合成で重ねすぎると、ホタルの光跡だらけで何だか分からなくなってしまう。
 また、ヘイケボタルが混じって飛翔していた写真も掲載した。こちらは別撮りした背景に5秒露光のカット4枚を比較明合成したものを掲載した。ホタルと花の写真は、写真家 安念さんの作品を真似させていただき、岸辺に咲く野菊の背後に乱舞するホタルを玉ボケにしたものである。これは、プロの写真家の作品とは比較にならない駄作である。
 また、昨今力を入れている映像も編集して掲載した。一発露光ならともかく、比較明合成は創作写真に他ならない。実際のホタルの飛翔は、やはり映像が良いと思っているからである。この映像から集団同期明滅はおよそ2秒なので、ここのゲンジボタルは西日本型であることが分かる。

 撮影は、活動が終了した21時過ぎに止め、この地を後にし帰路に就いた。帰りは、富山市内から国道41号線で岐阜県飛騨市を通り、471号線で平湯、158号線で長野県松本、その後松本ICから高速に乗って東京国立まで帰った。
 ブログ記事を見ればお分かりのように、毎週末遠方に出掛けている。人によっては「けしからん」と思うだろう。20日までは、新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言中であり、人流を抑制し都県をまたぐ移動は自粛するよう要請されているからである。エビデンスが示されない限りは、基本的対処方針を厳守し、移動は車。食事はコンビニ等で買ったものを車内で食べる。他人とはソーシャルディスタンスをとる。会食は一切しない。路上飲みは以ての外。今後も、緊急事態宣言が解除された後においても、これらを厳守して感染予防に心がけていきたい。
 次の週末は、これまた初めての「新潟のゲンジボタル生息地」を訪ねる予定である。

 最後になったが、色々とご教示いただいた安念 余志子さんに、心より御礼申し上げるとともに、簡単ではあるが以下に紹介させて頂きたいと思う。

安念 余志子
写真家・フォトプラニングan 代表
http://www.pp-an.com/
https://www.facebook.com/annen.yoshiko

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタルの生息地の写真

ゲンジボタルの生息地風景
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/25秒 ISO 200 -1EV(撮影地:富山県 2021.6.11 17:36)

ゲンジボタルの生息地の写真

ゲンジボタルの生息地風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F13 1.3秒 ISO 100(撮影地:富山県 2021.6.11 18:54)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 5秒×8カット比較明合成 ISO 320(撮影地:富山県 2021.6.11 19:53)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 4秒×35カット比較明合成 ISO 200(撮影地:富山県 2021.6.11 20:00)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 5秒×34カット比較明合成 ISO 320(撮影地:富山県 2021.6.11 20:20)

ゲンジボタルとヘイケボタルの写真

ゲンジボタルとヘイケボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 5秒×4カット比較明合成 ISO 320(撮影地:富山県 2021.6.11 20:17)

野菊とホタルの写真

野菊とホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 1秒×15カット比較明合成 ISO 6400(撮影地:富山県 2021.6.11 20:40)

ゲンジボタル(富山)

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ゲンジボタル 西日本と東日本の光り方の違い

2021-06-09 22:30:39 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルは、中部山岳地帯(フォッサマグナ)を境に遺伝子が異なっており、発光パターンも明瞭に異なっている。オスの気温20℃におけるオスの集団同期明滅の間隔は西日本は2秒、東日本では4秒である。以下の映像は、岐阜県と千葉県で撮影したゲンジボタルの発光の様子を比較したものである。発光の違いが明確である。ちなみに、長野、静岡、山梨の3県周辺では3秒の「中間型」も存在し、長崎県五島列島に生息するゲンジボタルの明滅リズムは1秒に1回という日本一速いリズムで光ることが報告されている。(注意:気温によって集団同期明滅の発光間隔は異なり、西日本型ゲンジボタルでも気温が低ければ2秒より長くなる)

 どんな生物でも「分布域」というのを持っており、これは自然の摂理によって定められている。そして、生物の分布に大きな関わりを持ってくるのが土地の歴史である「地史」であり、地史における地形の変化が生物の分布に影響を与え、その結果、現在の分布域が成立したと考えられている。ホタルも同様である。
 ゲンジボタルを復活させたい、増やしたいという思いから、分布域を無視して、東日本に西日本のホタルを安易に移動することが多く行われているが、これは生物地理学上の系統や分布を攪乱することになるのである。ゲンジボタルはそれぞれの生息環境に適応した生態的特徴もあり形態的相違も見られる。それぞれの分布域には、生物地理学上生じた「地域固有性」があるのである。
 もし、もともとホタルが生息している場所に遺伝子の違う他地域のメスを種ボタルとして持ってきた場合、DNAは母性遺伝するために、他地域の遺伝子が急速に広がる可能性が極めて高い。つまり、その地域に固有の遺伝学的特徴が失われる「遺伝学的汚染・遺伝子攪乱」が生じ、その地域固有の生態的・形態的な特性も失われてしまうのである。
 他地域のホタルを移動し定着させても、生態系にはほとんど影響はないし、見た目には何も変わることのないホタルだ。繁殖して増えれば嬉しいものである。しかしながら、それぞれ特徴を持った地域固有種は守らなければならない。守るためには、人為的移動は避けなければならない。安易な移動と放流は、ホタル保護でも自然保護でもないということを知っていただきたい。

以下の動画は、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタル 西日本と東日本の光り方の違い

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岐阜県関ケ原のゲンジボタル

2021-06-07 21:52:36 | ゲンジボタル

 岐阜県関ケ原のゲンジボタルを観察し撮影してきたので紹介したい。尚、本ブログでは、撮影地については基本的に都道府県名までの表記にしているが、今回は、既に広く世間に知られていること、町指定の天然記念物であり条例によって保護されていること、あえて明記することによって知って頂きたい事実があることから、撮影地を公表した。

 今回、前記事のヒロオビミドリシジミの撮影で大阪まで遠征し、時間的にも余裕があったため、大阪からの帰りに、今まで訪れたことがないホタルの生息地に寄ってみたいと思っていたところ、岐阜県関ケ原がちょうどゲンジボタルの発生時期にあたると知り、急遽行って見ることにした。
 岐阜県関ケ原町を流れる藤古川は、古くからホタルの生息地として親しまれてきた。一時、絶滅が心配されたが、自然環境保護対策の推進で乱舞する風景が復活し、昭和43年には、河川全域が町の天然記念物に指定されている。
 関ケ原は初めて訪れる場所であり、何の情報もなかったので、まずは不破関資料館に行き、受付の方に名刺を渡して話を聞いてみた。ご丁寧に対応頂き、藤古川の名神高速道路高架下や東海道新幹線ガード付近がよくホタルが飛んでいる所と教えて頂いた。車の駐車を了承後、徒歩で散策してみることにした。
 すぐに「ホタル生息地」という地図が書いてある看板も発見。やはり、ポイントは同じところの様だ。水田や麦畑の脇の細い道を歩いて行くと数件の民家があり、お宅から出てきた奥様にも名刺を渡して声を掛けてみた。すると、2018年の台風21号で護岸が崩れるなどの被害があり、すぐに河川改修したところ、それ以来、ホタルがいなくなってしまったと言う。それまでは、家の中まで飛んでくるほど沢山いたが、昨年は1頭も見なかったらしい。それでも、色々と教えていただき、一番のポイントを案内してくれた。不破関資料館の受付の方、そして民家の奥様、お忙しいところご教示いただき、この場を借りで御礼申し上げたい。

 ポイントが分かったので、あとは暗くなるまで待つだけである。と言っても、まだ15時。日の入りまで4時間もある。ゲンジボタルの幼虫が上陸するであろう場所や産卵しそうな場所など周囲の環境を丹念に調査し、その後、橋の上にカメラをセットしたのが16時。他には誰もいない。こんな早くから準備するのは私だけ。風の香りを感じながら、川の音、鳥の声に耳を澄ませる。時折響く新幹線の轟音・・・こうした一見無駄に思える時間も、自然の中に身を置くことに深い意味がある。
 ようやく19時。伊吹山の向こうに太陽が沈んだ後が凄かった。今までに見たことがない夕焼け空である。しかしカメラはホタルが舞うであろう川に向けてセット済みで動かせない。もう一台は、フィッシュアイレンズが付いているが、遠くに止めた車の中。カメラを置き去りのまま取りにもいけず、仕方なくスマホで撮った。まさに一期一会の光景。いつ何が起きるかもしれない。常に備えていることの必要性を身に染みて感じた。
 19時半。そろそろホタルが光っても良い時間にも関わらず光らない。観賞者も数人やってきた。と言うことは、いるのだろう。あちこちに目を凝らすが、どこにもホタルの光はない。20時になって光らなかったら、諦めて撤収しようと決めた19時50分。やっと1頭が発光を始めた。

 生息地の周囲の農道は、車が1台やっと通れるくらいの狭い道であるから、観賞者は、みな遠くに車を止めてやってくる。街灯も民家もないのでホタルには安心かと思いきや、ここでも懐中電灯。しかも川面や護岸に向けて、LEDの強烈な灯りを照らすのである。一体、何故? 肝心のゲンジボタルは、1頭だけが悲しげに川上に流れて行った。
 観賞者のお一人が、私に声を掛けてくれた。「ここは、前は何百といたんだが、この数年すっかりいなくなってしまった。今日は、向こうの水路の方が多いから行って見ると良い」と。すぐに教わった方へ移動してみる。麦畑の脇を流れる細い水路の周囲を50頭ほどのゲンジボタルが飛び交っていた。発光時間が短く、同期明滅の間隔も2秒ほど。生息環境的には東日本型ゲンジボタルのようだが、発光は明らかに西日本型である。映像も残したので、東日本型の発光と見比べていただきたいと思う。悲しいことに、ここでは捕虫網で採集している方がいた。

 藤古川本流のホタルは激減しても、こうして近くの細い水路で懸命に生き延び命を繋いでいた。本流の環境が落ち着けば、徐々に復活するだろう。ただし、5年はかかるかもしれない。それまでに、再び台風などで被害がでないこと、そして観賞者が知識とマナーを持つことを願うばかりである。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

里の夕焼け空の写真

里の夕焼け(スマートフォンで撮影 2021.06.05 19:10)

里の夕焼け空の写真

里の夕焼け(スマートフォンで撮影 2021.06.05 19:15)

ゲンジボタル(関ケ原)の写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 65秒 ISO 320(撮影地:岐阜県関ケ原町 2021.06.05 20:00)

ゲンジボタル(関ケ原)の写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 24秒 ISO 320(撮影地:岐阜県関ケ原町 2021.06.05 20:20)

ゲンジボタル(岐阜県関ケ原)

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ゲンジボタル(東日本型)

2021-05-29 20:17:03 | ゲンジボタル

 ゲンジボタル(東日本型)の観察と撮影を行ってきた。場所は、毎年訪れている千葉県内の生息地で、自然発生地では関東で一番発生が早い地域である。
 ゲンジボタルは承知のように遺伝子型の違いによって西日本型と東日本型に分けられる。遺伝子型の相違だけではなく、生息環境、発光時間の長さや集団同期明滅の間隔、オスの発光飛翔のスピードも異なっているが、昨今、幼虫の人為的放流などによって、西日本型のゲンジボタルが関東でも広く定着している状況にある。幸い、千葉県内の生息地の幾つかは東日本型のみであり、長い発光時間やふわふわとゆっくり飛ぶ独特な特徴がはっきりと分かる貴重な生息地となっている。今年も、28日(金)に訪れてきたので、記録として記しておきたい。

 28日(金)は、会社を昼で退社できる日であったため、13時に港区の会社を出発。国道357号線(湾岸道路)と京葉道路という一般道で千葉の市原まで走り、そこから館山自動車道に乗る。遅い昼食と休憩を市原SAでとろうと予め予定していた。
 何を食べるかも計画済み。かつては、ラーメンとDHA海鮮丼ぶりも頂いており、今回は「豚屋」のトンカツ定食1,250円にプラス100円でご飯大盛りを注文。ブザーが鳴って取りに行くと、ご飯が丼にてんこ盛り・・・美味しく頂いたが、一日経っても食べすぎで腹の調子がおかしい・・・。
 休憩後に移動して、現地は17時半より待機。昨年撮影をした同じ場所にカメラをセットした。天候曇り。気温21℃。時折強い風が吹く。19時15分。1頭が発光を始めた。しかしながら、後が続かない。19時半を過ぎても、5頭が発光しただけで、昨年のような飛翔は見られなかった。
 地元の方の話によれば、谷戸の最奥は一昨日から乱舞しているが、谷戸の入り口付近は、まったく飛んでいないと言う。2014年から観察を行っているが、一昨年までは、谷戸の入り口付近及びその下流部でも多くが飛翔していたが、昨年は、それら区域でも見られなかった。2015年頃までは、下流域から発生が始まり、800mほどある谷戸の奥まで徐々に発生する傾向であったが、段々と時期が一緒になり、一昨年では同時期発生であった。地元の方も見ていないとのことから、本年は谷戸の入り口付近及びその下流部、更には谷戸中部でも発生していないと言える。年々、生息場所が谷戸の深部へと狭まっているのである。(図1)周囲の環境は変化しておらず、光害もほとんどない。水田への農薬や除草剤の 散布等が影響しているのか、或いは、聞いたところでは残土問題が持ち上がってもいるとの事であるから、それも影響しているのかも知れないが、今のところ、原因は不明である。(後の6月25日に再訪し、農家の方から伺ったところ、農薬を空中散布したとのこと。おそらく、これが原因であろう。)
 ここ数年、谷戸の深部では乱舞が見られている。本年も同様な状況であったが、今年は、これまでそれほど飛翔していなかった場所でも乱舞が見られた。林縁と林道である。(写真1)林道を挟んで湿地があるが、草が生い茂り陸地化が進んでいる。小川や水路はない。メスのゲンジボタルもまったくいない場所で、オスばかりが、まるで「森のホタル」と化し、乱舞していた。林道に立っているだけで、ホタルに取り囲まれる状況であった。
 これは、今年だけの光景かも知れないが、来年も谷戸の入り口付近等で発生がなければ、この生息地全体が危機的状況にあると言える。来年も、継続して観察を行いたい。

 ゲンジボタル(東日本型)の発光飛翔写真は、西日本型のそれに比べて「絵」にならない。長い発光時間やふわふわとゆっくり飛ぶからであり、西日本型との違いは、写真からでも明確に区別ができる。写真芸術的には絵にならなくても、生態学的には重要な1枚である。今回撮影した写真は、ホタルのデジタル写真における撮影と現像方法の主流である多重合成ではなく、フィルム写真同様の一発露光で撮影したが、東日本型ゲンジボタルの特徴表現が不十分であったため、2010年6月5日に千葉県内で撮影した写真も掲載した。
 ただし映像においては、東日本型ゲンジボタルの特徴がよく分かるので、5分半と少し長めであるが、是非、ご覧頂きたいと思う。

 2021年のホタル観察と撮影は、4月17日の「ゲンジボタルの幼虫上陸(山梨)」からスタートし、成虫はこれからが本番である。今年は、ゲンジボタルでは新潟県、ヒメボタルでは東京都内および山梨県で観察と撮影を予定している。いずれも初めて訪れる場所である。その他にも、経年通っている生息地も予定しているので、順次、掲載していきたいと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタル生息地の図

図1:千葉県の東日本型ゲンジボタル生息地における異変

ゲンジボタルの写真

写真1:ゲンジボタル(東日本型)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 52秒 ISO 200(撮影地:千葉県 2021.5.28 20:08)

ゲンジボタルの写真

写真2:ゲンジボタル(東日本型)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F2.8 180秒 ISO 400(撮影地:千葉県 2010.06.05 20:14)

ゲンジボタル(東日本型)/ Genji firefly that lives in eastern Japan.

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ゲンジボタルの幼虫上陸(山梨)

2021-04-18 17:23:56 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルの幼虫上陸を観察するため山梨県の自生地を訪れた。この場所は、2011年から幼虫の上陸を観察しており、その内3回は写真に撮影しているが、私の休日と当地の上陸時期と降雨が一致したので、定点観察として訪れた。

 ゲンジボタルの幼虫は、9か月~3年9か月もの水中生活に別れを告げ、上陸して蛹になるが、日長時間等の条件がクリアされて上陸時期になっても、初日は雨が降らなければ上陸をしない。一度、上陸が開始されれば、その後は岸が湿っている状態ならば上陸をするが、水中から陸地に上がる幼虫には、雨が一番必要なのである。
 当地は、富士外輪山と南アルプスに挟まれているためだろう、雨が少ない。天気予報で雨マークが出ていても、河口湖が雨でも当地へ移動すると一滴も降っていないことが多い。何度も足を運び、何度も天気に裏切られ、上陸観察を諦めて帰ったことがしばしばである。13日(火)にも訪れているが、まさに前述の状況であった。気象庁の過去データをみると、当地において、4月になってからの降雨はほとんどなく、降っても短時間にわずかな量である。今回は、13時から降り続き、18時頃からは本降りである。このまとまった降雨は、当地におけるゲンジボタルの幼虫上陸の初日になると思われる。

 ゲンジボタルの幼虫上陸が開始される時刻は、地域によって違いがあり、千葉県では18時半頃から水際で発光を始めて開始されるが、当地では19時を過ぎてからである。千葉県に比べて日の入り時刻が10分ほど遅いことが関係しているかも知れない。今回は、気温13℃。18時より川岸に降りて待機していると、19時14分に1頭の幼虫が発光を始め、しばらくすると上陸を開始した。
 当地は、東西に流れる川のおよそ1.5kmにわたってゲンジボタルが発生するが、上流部と下流部では、周囲の物理的環境が異なっている。上流部は、農村地帯に見られる「農業用水路」であり、一方は県道、一方は水田となっている。下流部は、渓流的な様相を呈し、水田の代わりに木々が生い茂った林が川まで迫っている。上流部では、決まった上陸場所はなく、両岸に上陸しているが、下流部においては、かなり限定的な場所に上陸をしている。なだらかな岸を上陸するのではなく、水中からいきなり巨岩を登る個体がとても多いのである。これは、過去に2度撮影した時も同様であった。この部分は、水深が浅い急流部を示す瀬ではなく、流水が緩やかで深みのある淵であり、淵が幼虫の生活場所であると言える。
 ちなみに、上陸する方向は、両岸の場所もあれば、片方の場所もある。どちらかと言えば、一方の岸に上陸する場所の方が多い。東西南北は決まっておらず、生息地域によってバラバラである。幼虫が、どのように上陸方向を決定しているのかは、未だに謎である。上陸方向が潜土に適した環境もあれば、そうでない場所もある。写真の上陸場所と方向は、決して蛹になるのに適しているとは思えないが、静岡県内の生息地では、潜土せずに岩の隙間で蛹化する地区もあるので、この場所もその可能性はあるだろう。
 写真には12頭の上陸幼虫が写っているが、この日の上陸数は、50mの範囲でおよそ20頭。流域全体を観察してはいないが、単純計算では約600頭の幼虫が上陸したと思われる。明け方近くまで観察する予定でいたが、途中から豪雨となり、川の水位が上がってきたため危険と判断し、こちらも上陸して引き上げることにした。

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ゲンジボタルの幼虫上陸の写真

ゲンジボタルの幼虫上陸
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 60秒 ISO 800 ×90カット多重(撮影地:山梨県 2021.4.17)

ゲンジボタルの生息環境の写真

ゲンジボタルの生息環境
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F4.5 30秒 ISO 200 +2/3EV(撮影地:山梨県 2021.4.17)

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ゲンジボタル(8月)

2020-08-09 18:17:47 | ゲンジボタル

~志賀高原のゲンジボタル~

 志賀高原のゲンジボタルを観察し撮影を行ってきた。

 「ホタル」といえば、昔は個人的に8月と言う印象である。48年前に行っていたヘイケボタルの飼育観察では、ヘイケボタルは8月の今頃が旬であったからだ。今では7月上旬~中旬頃がピークであるように思う。ゲンジボタルにおいては7月になってから観察したものだが、今では九州や四国などでは5月中旬から見られ、青森の最北でも7月上旬が発生のピークである。いずれも発生している期間は2~3週間程度だ。それなのに8月に「ゲンジボタル?」と思うだろうが、標高およそ1,600mに生息する志賀高原のゲンジボタルは、今でも見ることが出来るのである。
  志賀高原のゲンジボタルは、7月下旬から8月上旬を発生のピークとしながらも、気温が5℃しかない5月から発生が始まり、氷点下の気温で雪が舞い始める10月になっても出現する。2008年年3月にはその特性が認められ、志賀高原<石の湯のゲンジボタル>は国の史跡名勝天然記念物に指定されている。
  石の湯周辺は約25万年前に活動した志賀火山の溶岩が川(角間川)をせき止めてできた湖の中心に当たる。このせき止め湖には厚さ50mほどの土砂が堆積。その後、角間川の浸食がすすみ湖は干上がり湖底が顔を出す。角間川に流れ込む岩倉沢川の水は、志賀山の西部山地にしみこんだ雨水や雪解け水が岩倉沢川に湧きだしたものであるが、岩倉沢川沿いの3箇所では温泉水が流入し、河川水の水温を高めている。その岩倉沢川に生息する<石の湯のゲンジボタル>は湧出する温泉水に依存し、生息地の標高が1,580m~1,620mと日本で一番高いこと、ホタルの発生期間が長いこと、成虫の寿命が長いこと、明滅周期が長いなど他の生息地にない多くの特徴があるのである。ちなみに、2番目に標高が高い生息地は、文献上840m(山梨県)である。

 志賀高原のゲンジボタルは、2010年7月31日に訪れ撮影しているが、今回10年ぶりに訪れてみた。国の天然記念物に指定されている<石の湯のゲンジボタル>は、観賞だけなら自由にできるが、写真撮影にはかなり厳しいルールがある。志賀高原自然保護センターのサイトによれば、写真撮影可能期間は、2020年8月1日(土) ~ 8月30日(日)で、写真撮影可能時間は、20時半以降に限られる。知人のカメラマン・西川祐介氏が1999年に通称「ホタル橋」からフィルムで15分の長時間露光によって撮影した写真があるが、20時半からデジタルで背景の生息環境も同時に美しく写しこむのは難しいだろう。

 今回も10年前同様に「石の湯」ではない場所にて観察し撮影を行った。標高は1,617m。渓流には温泉が流れ込んでおり、環境とゲンジボタルの生態特性は石の湯と変わりない。10年前も数は少ないもののゲンジボタルの飛翔が観察できたこと、石の湯周辺では、8月5日時点で176頭の飛翔が石の湯ロッジのスタッフによって観測されていることから、当地でも少なからず見られるだろうとの予測で出かけた。
 自宅を11時半に出発。圏央道青梅ICから乗り、途中上信越道の東部湯の丸SAで食事をし、信州中野ICで降りて一路志賀高原へ。三連休初日であるが、出発が遅かったためか渋滞はなし。志賀高原もほとんど人影すらない状況。現地には16時半到着。10年前に撮影した場所は草木が茂り、また街灯ができたために別のポイントを探すが、なかなか絵になる場所がない。小一時間ほど散策してポイントを決め待機した。その場所にゲンジボタルが飛ぶかどうかは分からないが、ホタルの生態と生息環境を48年見てきた勘である。標高1,617mを流れる川にも関わらず、中流域と同じような腐食的な匂いがし、石には珪藻類が繁殖していた。水生昆虫も多く生息しているが、カワニナの存在は確認できなかった。
 19時。気温21℃。曇りで微風。目の前を大きなヤンマが通り過ぎた。川面を飛ぶ小さな虫を捉えての摂食行動の様だ。ただ、暗くてヤンマの種類が分からない。高標高の場所からオオルリボシヤンマかと思われるが、30分近く、かなり暗くなるまで飛び回っていた。
 19時半。誰も来ない川岸。ゲンジボタルは光らない。場所が悪いのか?天候の影響か?熊の出現を心配しながら、後10分待って光らなかったら撤収しようと諦めかけた時、遠くで発光を確認。しばらくすると飛翔し始めた。やはり数は少なく300mの範囲で発光数は10頭。その内4頭がカメラのフレーム内を飛んでくれた。飛翔スピードはゆっくりで直線的であった。明滅周期は、個体数が少なく同期明滅が見られなかったので分からないが、DNAの判定では、長野県に生息するゲンジボタルのDNAパターン3種のうちの1つで、西日本型でも東日本型でもないフォッサマグナ型(3.3秒)という地域固有種とされている。
  数は問題ではない。標高1,600mを超える高地にて8月に舞うゲンジボタルを再びこの目で確認し、観察できたことが重要である。証拠となる写真も、良い結果が残せたと思う。

 今年は、いつもと違う夏である。新型コロナウイルスの感染が再び拡大しているに他ならないが、コロナ渦と長梅雨によって、今年は4月以降、8割近くの予定をキャンセルせざるを得なかった。ゲンジボタルに関しては120%の達成率であるが、ヒメボタルは50%、他の昆虫類、特にチョウ類の 撮影目標達成率は0%である。この三連休初日も、知人とここ4年毎年挑戦している高山蝶の撮影で、今年は木曽駒ケ岳へ行くことにしていたが、仕方なく断念。単独で志賀高原のゲンジボタルだけ行ってきたのである。今後も新型コロナウイルスの感染拡大防止に留意しつつ、個人的目標を達成できるよう進めていきたいと思う。
  以下には、今回撮影した写真と10年前に撮影した合成無しの一発露光の写真、および成虫のマクロ写真も掲載した。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ゲンジボタル(志賀高原)の写真

ゲンジボタル(志賀高原)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 230秒相当の多重 ISO 400(撮影地:長野県下高井郡山ノ内町 / 標高1,617m 2020.8.08)

ゲンジボタル(志賀高原)の写真

ゲンジボタル(志賀高原)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 162秒 ISO 400 合成なし(撮影地:長野県下高井郡山ノ内町 / 標高1,634m 2010.7.31)

ゲンジボタルの写真

志賀高原のゲンジボタル(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 (撮影地:長野県下高井郡山ノ内町 2010.7.31)

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東京の山間渓流部のゲンジボタルが激減

2020-07-05 15:21:00 | ゲンジボタル

~2019年の台風19号による影響でホタルも壊滅的な打撃~

 東京山間部の渓流に棲むゲンジボタルが激減している。

 5月22日の高知県から開始したゲンジボタルの観察と撮影。6月には、千葉県と山梨県、そして東京都内2カ所で行い、最後は、東京都内でも一番発生の遅い渓流の源流部近くで行った。 この場所は、風景撮影では何度も訪れているが、ゲンジボタルの観察と撮影では初である。一度、6月26日にロケハンを兼ねて行ってみたが、発生はゼロ。今回の7月4日が二度目である。
 駐車場から林道を歩くこと15分。前回のロケハン時に決めておいた位置にカメラをセットし、17時から待機。この時間でも外国人の家族ずれや大学生のグループなど数組の観光客がいる。大学生のグループは、私がカメラを向けている方向の川に素足で入り込み、果敢に沢登り。迷惑ではないが、滑って頭でも打ったら大変だと、私の子供のような年頃の学生たちに頭を抱えた。30分もすると、深い森の沢に私一人。かなり心細いが、観賞者も光害もない条件のもと、日が暮れて暗くなるのをひたすら待った。
 19時20分に一番ボタルが発光を始める。1頭光れば、ホッと一安心である。しかしながら、ゲンジボタルはなかなか数が増えない。結局、わずか2頭のオスのみ。しばらくすると飛翔を始めたが、すぐにスギの梢に止まって、静かに発光するだけの状況。気温が20℃と低く、時折上流から冷たい風が吹き下ろしていた事が要因だと思う。その後、1頭が飛び出したが、強い雨が降ってきたため、またすぐに葉に止まってしまった。
 発生時期の最盛期であるにも関わらず発生数が極端に少ない。これは、予想していた。原因は1つ。昨年(2019年)10月12日から13日未明に東海から関東地方を通過した台風19号の影響である。ゲンジボタルが生息する地域における、この二日間の期間総雨量は610mmにも達し、渓流は濁流となって直径1mもある岩をも流した。これにより、ゲンジボタルの幼虫やカワニナの多くも流されてしまったのである。
 ブログ6月21日の記事「東京のゲンジボタル」では、冒頭「東京のゲンジボタルは、今年も美しい光を放っていた。」と書きだしたが、この小川は、丘陵部の小さな河川で、台風通過時の雨量も多くはなかったので、今年も無事に発生したが、多摩西部の山地渓流では、今回訪れた場所以外でも、ほとんどのゲンジボタル生息地で発生数が少なくなっているのである。
 今年、私は行かなかったが、ここ数年毎年訪れている河川(東京のゲンジボタル その2)では、ゲンジボタルの数よりもカメラマンの方が多かったと聞いた。4月にムカシトンボの様子を観察しに同河川を訪れた時に、様子の激変に驚愕し、今年のゲンジボタルの発生は少ないと予想していたが、その通りの状況だったらしい。

 ゲンジボタルは、一年ですべての幼虫が成虫になるわけではなく、最長4年かかる個体も存在する。つまり、常に川の中には成長年数に応じた様々なサイズの幼虫が生息している。おそらく、環境変化の大きい河川において、種を存続させるための戦略だと思われる。こうして甚大な台風被害の翌年でも、数頭が発生するということは、流されていない幼虫もいるわけだが、元の発生状況に戻るには、今後何の影響がない状況でも3~5年はかかると思われる。しかしながら、この夏も台風の被害がないとは言えない。場合によっては、10年以内に絶滅してしまう可能性もある。これは、私自身が個体群動態の数理モデルを用いたコンピューター・シミュレーションに基づく個体群存続可能性分析で推定を行っている。(ゲンジボタルの個体群動態解析及び存続可能性分析
 昨日7月4日は、停滞する梅雨前線の影響で九州地方で記録的な大雨となり、土砂崩れや大規模な河川の氾濫に見舞われている。被害に遭われた方々には、心よりお悔やみ申し上げたい。こうして、台風以外でも大雨は年々、激しさを増しており、河川に棲むゲンジボタルも各地で減少している。5月に高知県でお会いした写真家の小原玲氏との会話では、写真集「蛍」の中に掲載した生息地の多くは、現在、大雨で壊滅状態だと仰っていた。
 ホタル観賞者による光害、八王子市川町にみる開発と放置、そして大雨による河川氾濫・・・ゲンジボタルが生き抜くためには、いくつもの試練を乗り越えなければならないが、いずれも根本原因は我々にあるということを忘れてはならない。
 今回、写真的には「絵」になるものが撮影でき残すことができたが、この美しくも儚い命の灯が、「最後の光景」にならないことを祈るばかりである。

 この一枚で、今年のゲンジボタル(成虫)の観察と撮影は終了である。次の週末からは、いよいよヒメボタルである。本年は、昨年に引き続き東京のヒメボタルから始め、7月末まで関東近辺の生息地数か所を巡る予定である。初訪問の場所もあるので、新たな生息環境や生態の新知見を得られるだろう。今から楽しみである。
 また今回、当ブログにご訪問頂いている方と現地でお会いした。何とも嬉しい出会いである。様々な情報もご提供いただき、この場を借りて御礼申し上げたいと思う。

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ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 60秒 ISO 200(撮影地:東京都 2020.7.04)

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東京のゲンジボタル

2020-06-21 13:25:13 | ゲンジボタル

 東京のゲンジボタルは、今年も美しい光を放っていた。東京と言っても、都市部のホテルの庭園や公園のビニールハウスではない。広大な雑木林に囲まれた大自然の中。 流れる小川に天然のゲンジボタルが舞うのである。
 このゲンジボタル生息地には、2003年から通っており、2008年にTBSテレビ「ニュース23」に出演した時にキャスターを案内した。当時は、たいへん多くのゲンジボタルが乱舞していたが、その後、水枯れ等の影響で減少。 一時は絶滅も危ぶまれたが、徐々に発生数は回復傾向にあり、昨年は「日本ホタルの会」の観察会が当地で行われた。その日は、残念ながら雨で気温が低く、あまり飛翔せずに葉上で発光する個体が多かったが、東京都内における素晴らしい自然環境を実感して頂けたと思う。
 さて、今年はどうであろうか?前日は雨で、この日の日中は晴で28℃まで気温が上がり、日の入り時の気温は23℃。曇りで無風。まさにホタル日和である。自宅からは小一時間の距離で16時に到着。今回は、ホタルが飛翔している写真より「映像」を残すことを目的としているため、まずは周辺の環境の映像を撮影。その後、位置を決めてカメラをセットし待機した。
 19時32分。茂みの中で1番ボタルが発光。19時50分から飛翔が始まった。当地は、先週の山梨県のホタルの里のような「光害」は一切ない。地元の方もほとんど来ないが、後から来られた数名の話し声の中に、聞き覚えのある声。日本ホタルの会 理事の 井上 務 氏であった。私も理事であるが、新型コロナウイルスの影響で理事会はずっと行っておらず、今年の観察会も中止にしたため、久しぶりにお会いした。井上氏は、定期的に当地で観察を行っておられ、今年の幼虫の上陸は5月16日がピークであったと言う。
 ゲンジボタルの羽化までの積算温度は、私の理論では発育零点8.02℃、有効積算温度408.4日度であるから、今年の上陸(5/16)後の気温を計算すると、6月17日に有効積算温度419.54日度になり当てはまる。この日は、メスが発生していなかったため、次の週末あたりが発生のピークだと思われる。
 また井上氏によれば、サンプルとして3頭を採集して、日本ホタルの会 副会長の鈴木浩文 氏に遺伝子解析を依頼したところ、2頭が東日本型で当地固有の遺伝子型であったが、1頭は西日本型であったと言う。かつて、人為的に一部移植がなされたと思われるが、今後は交雑が進まず、貴重な固有種が存続することを臨みたい。

 以下には、2005年にフィルムで撮影した写真と今回デジタルで撮影した写真、そして編集した映像を掲載した。デジタルの写真は、光跡を幾らでも写真上に増やせるが、フィルムと同程度の露光時間の多重に留めた。ここは、15年経過しても、一時期の渇水以外は自然環境の変化は少ない。そして「光害」は全くない。これは、ホタル観賞に訪れる方がほとんどいないことを意味している。俗にいう「穴場」であるが、多くの人々が訪れれば「光害」によって一気に状況は悪化してしまうだろう。この光景を守るためにも、そして豊かな生態系を保全する上でも、場所をご存知の方は、公表を控えていただきたいと思う。

 今は、ホタルシーズンの真っ只中である。5月の高知遠征に始まり、千葉県、山梨県と巡り、この週末からは4週連続で東京のホタル(ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタル)の観察と撮影を行う予定である。その後は、山梨県のヒメボタルで成虫の飛翔シーズンを締めたいと思う。そして、所々にチョウとトンボを挟んでいきたい。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

東京のゲンジボタルの写真

東京のゲンジボタル
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / Ektachrome 320T Professional (東京都 2005.6.23)

東京のゲンジボタル生息地の写真

東京のゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F16 6秒 ISO 100 -1/3EV(東京都 2020.6.20)

東京のゲンジボタルの写真

東京のゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 1/125秒 ISO 400 2分相当の多重(東京都 2020.6.20)

東京のゲンジボタル その3

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源氏蛍(千葉県にて)

2020-05-31 20:31:15 | ゲンジボタル

 源氏蛍の様子を千葉県にて観察してきた。

 昨年、千葉市付近に上陸した台風15号と台風19号による被害が大きく、ホタルが生息する河川もダメージがあり、今年の発生の状況を心配していた。生息地はいくつもあるが、その内の1つである谷戸には、20014年から定期的に観察に訪れている。その生息地は、千葉県内でも発生時期が早く、5月の中旬頃から発生が始まり、下旬にはピークを迎える。昨年の様子は「ホタルの乱舞~里山で舞う東日本型ゲンジボタル~」として、今年の4月は幼虫の上陸の様子を「ゲンジボタルの幼虫上陸」として本ブログに掲載している。幼虫の上陸観察では、時期が遅かったこともあり数が少なく、やはり成虫の発生数がどうなるのか危惧していたところ、親友から今年も多くのゲンジボタルが出ているとの連絡を受け、早速、30日(土)行ってきた。

 午前中は、東京都内の湿地にてサラサヤンマの産卵を撮影し、午後から千葉県へ向かった。現地には17時に到着し、谷戸の最奥から環境を細かく調べ、昨年とは違った場所がベストポイントであると推察し、カメラを据えた。
 19時半になると、茂みの中でゲンジボタルが発光を始め、徐々に発光数が増えて行った。水田と雑木林の間に幅60cm程の細い流れがあり、幼虫はそこを住処にしている。場所によっては細流を木々が覆いつくしており、それが暗い空間を提供しており、その空間では、まさにクリスマスイルミネーションのごとく、たいへん多くのゲンジボタルが発光を始めた。
 ここに生息するゲンジボタルは、東日本型の遺伝子であるため、先週に見てきた高知県の西日本型ゲンジボタルとは全く違う谷戸という生息環境。そして発光間隔も西の2秒に対して、こちらは4秒である。また、飛び方もたいへんゆっくりで優雅である。
 気温は20℃で無風。カメラを向けた方向でも多くが飛び始めたが、この日は月齢7.4で半月。地面に自分の影が映るほそ明るい。案の定、ゲンジボタルたちも雑木林脇の細流上を飛び回ることが多く、隣接する明るい水田まではほとんど飛んでは行かなかった。これで、車のライトや観賞者の懐中電灯が当たれば大きな打撃だが、この生息は車が通ることもなく、観賞者は地元の方々がほんの数名。人為的光害からは守られているのは安心である。

 20時半を過ぎると飛翔数が減り、雑木林の木々の葉や下草に止まって光るようになった。今回は飛翔風景だけではなく、成虫が発光している様子をマクロレンズで動画撮影することも目標であった。丁度、下草で発光しているオスがいたので、ファインダーを覗きながら発光する発光器にマニュアルでピントを合わせて写真と動画映像を撮影し、下記に掲載した。(成虫のマクロ写真は、月明りだけで撮影。飛翔風景は、生息環境をご覧頂くために明るめにRAW現像している。)
 6月には1~2カ所、出来ればこれまでに行ったことはないゲンジボタル生息地で観察と撮影をしたいと思っており、7月にはヒメボタルを2~3カ所において観察と撮影を計画している。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。また動画においては、Youtubeで表示いただき、 HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

夕暮れの水田の写真

夕暮れの水田
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F3.5 1/125秒 ISO 2500 -1/3EV(撮影地:千葉県 2020.5.30 18:52)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / バルブ撮影 F2.8 6秒 ISO 6400(撮影地:千葉県 2020.5.30 20:42)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / バルブ撮影 F2.8 6秒 ISO 6400(撮影地:千葉県 2020.5.30 20:50)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 9秒 ISO 200 12分相当の多重(撮影地:千葉県 2020.5.30 19:31~20:22)

ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / F1.4 ISO 6400(撮影地:千葉県 2020.5.30)

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宿毛のゲンジボタル

2020-05-27 15:48:20 | ゲンジボタル

 宿毛のゲンジボタルは高知県内でも有数な名所である。

 四万十川の沈下橋とホタルを観察した翌日は、宿毛市にある「蛍の郷」へ。この場所は、40年以上にわたってカワニナの餌を団子状にしてパチンコで川へと飛ばしたり、 大雨で土砂が流入した際は、幼虫を陸に上げないように丁寧に作業したりする等、堀内慶治氏一個人によって保護されている「蛍の郷」である。川に設けられた幾つかの堰周辺でゲンジボタルが多く飛ぶが、中でも「蛍の郷」の400mにわたる岸辺は、無数のゲンジボタルが乱舞し、光が水面にも映り込む幻想的な光景が見られる。堀内慶治氏によれば、川岸が光のウエーブのようになり、両岸が光の輪に包まれる日が年に1~2度あると言う素晴らしい場所である。
  23日(土)は、まず四万十市トンボ自然公園で昼近くまでトンボを観察。その後、高知県ホタルネットワークの石川憲一氏と合流して昼食を済ませ、石川氏の案内で、アマチュアながら自費でホタルの写真集を出版している地元の会社員 田村昌之氏と会った。その後宿毛に移動し「蛍の郷」へ15時に到着。周辺を探索しロケハンを済ませると、ホタルの写真集も出されているプロの動物写真家「小原玲」氏が来られた。石川氏と田村氏の手引きでの初対面。川のほとりにて2時間余りホタル談義に花が咲いた。

 18時半頃からポイントで待機。ここでも一番ボタルの発光は19時半で、カメラを向けていない右側の岸辺であった。気温20℃で無風。20時を過ぎると無数のゲンジボタルが飛び交い、将に大乱舞という状況になった。オスの同期明滅は、西日本型特有の2秒間隔。ここでの飛翔スピードは、沈下橋に比べると穏やかで、多くのゲンジボタルは岸辺の草むら上を飛んでいた。カメラを向けた方向は堰と堰の間で、無風という条件も相まって、岸辺を乱舞するゲンジボタルの光が水面に反射する光景も素晴らしく美しく、この場所においても、大変多くことを学んだ。
 以下に掲載した写真は、いずれもデジタル一眼レフカメラによって撮影したものであるが、写真2~4はフィルムと同じ一発露光(30秒の長時間露光)である。フィルムの適正露出を得るための長時間露光と違って、デジタルでの多重合成・多重露光は、単に見栄えを良くするものである。写真5~6は30秒露光の写真をパソコンにて数カット多重合成した結果である。実際のゲンジボタルの様子は、最後に掲載した映像をご覧頂きたいが、多くのカットを重ねたホタル写真は「こんなに飛んでいるの!?」と見た方に誤解を与えかねない。写真家の小原玲氏は、昨今の素人が作るホタル写真は重ね過ぎだと嘆いていており、私も同感だが、悲しいことに写真を見た方々の評価は、本ブログ掲載写真2~4よりも、写真5~6なのである。
  映像は、ほぼ見た目に近いが、写真は長時間の露光になれば実写でありながら創作でもある。更にタイムラグがあるカットを重ねることは時間の連続性という写真芸術の観点や、ホタルの飛翔という生態学的観点から外れることにはなるが、1つの創作写真としてご覧頂きたい。掲載写真は、ゲンジボタルがどうような環境で飛翔発光するのかが分かるように、背景を明るめに処理している。

 宿毛市にある「蛍の郷」は大変すばらしい自然環境であり、高知県ならではのゲンジボタルの生息環境や生態的特性も学ぶことができ、目的達成、大満足の遠征であったが、残念だったのは、川のすぐ横が観賞者用の駐車場であること。ゲンジボタルが光り始めてから来る車のライトが、ゲンジボタルが乱舞する場所を容赦なく照らしてしまう。そのたびに発光をやめ、雌雄のコミュニケーションは阻害されていた。ここでも、悲しいことに光害という人的汚染にホタルたちは嘆いていた。
  ホタル観賞をする方々の中には、ホタルが発光する理由をご存じない方が多い。知っていれば、暗くなってホタルが乱舞している所へ車のヘッドライトを向けるはずがない。車で来なければならないのならば、明るい時間帯に来るしかない。私もその場所に駐車したが、前述のように15時には到着し、ヘッドライトが川とは反対側になるように止めていた。そして、ホタルの発光飛翔が終了した21時過ぎに引き上げた。車はハイブリッドで電気モーターだけで走行するようにした。今後も、この環境を維持するには、時間を決めて車の侵入を禁止するなどの対策が必要であろう。

 日本各地の有名なホタルの生息地は、どうしても観賞者やカメラマンが大勢訪れる。見るのも自由、撮るのも自由である。しかしながら、ホタルの生息地は、観賞者優先でもカメラマン優先でもない。ホタルが最優先である。ホタルは発光によって雌雄がコミュニケーションを図っていて、暗闇でしかお互いの光を確認できない。従って、ホタルが十分に繁殖を行えるように人工的な灯りは一切照らしてはならないのである。これはマナーではない。自然保全の鉄則である。「観賞者とカメラマン、お互いが気持ち良く・・・」そうではなく、ホタルが光によって会話できるように、そして配偶行動ができるようにそっと見守ることが、訪れた者の責務であると思う。そうしなければ、この光景は、直ぐにでも失われてしまうだろう。

 こう書くと「一日数回、懐中電灯の灯りや車のヘッドライトが当たっただけで、ホタルは全滅しないだろう」と言う方がいる。「それは、お前のエゴだ。極論だ!」と反発する方もいる。「そう言うお前はどうなんだ!」と問題をすり替え逆切れする方もいる。
 では、ゲンジボタルの生態を考えてみたい。この場所の発生期間を仮に3週間とする。メスは10日ほど遅れて羽化してくるから、雌雄が出会える日数はおよそ11日である。変温動物であるから、夜の気温が15℃を下回れば活動は鈍くなる。月明りがあれば、飛び回るオスの数は減少する。雨は問題ないが風が強ければ、やはり飛び回るオスは少ない。これら悪条件を除くと、雌雄が出会える日数は更に減って5日くらいになるかもしれない。そして、一日の内で雌雄が出会える時間は、1時間半ほどしかない。そのわずかな時間の中で、オスは下草で発光するメスを見つけ、メスは寄ってきたオスの中から、発光が一番強いオスを選んで交尾するのである。人為的な灯りは、この少ない貴重なチャンスを更に少なくしてしまうのである。
   光害の影響は、科学的にも昆虫学的にも証明されている。反論があれば、無記名で誹謗中傷するくだらないコメントを安易に書き込むのではなく、科学的根拠を示しながら、自然保全や精神論についても論じて頂きたい。
  新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が解除されても3密を防ぐために、今年は日本各地で「ホタル祭り」等のイベント中止が決まっている。個人的には嬉しい思いが強い。私を含め人々が 来なければ、人為的光害はなくなり、ホタルは幸せだろう。今後も、ホタルの自然発生地においては、私を含めた観賞者もカメラマンも人間様様の態度や考え方を改め、自然に接しなければならない。

以下の掲載写真は、写真をクリックしますと別窓にオリジナルサイズで表示されます。 また動画は 1920×1080ピクセルのフルハイビジョンで投稿しています。設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

蛍の郷の環境の写真
宿毛の蛍の郷の環境
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F9.0 1/60秒 ISO 100(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23 15:15)
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 30秒 ISO 800(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23 19:53)
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 30秒 ISO 800(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23 19:54)
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 23秒 ISO 1000(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23 19:58)
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 11分相当の多重露光 ISO 1000(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23)
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 6分相当の多重露光 ISO 800(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23)

宿毛のゲンジボタル(映像)設定をHDにしてフルスクリーンでご覧ください。
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE (撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23)

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沈下橋とホタル

2020-05-25 18:39:05 | ゲンジボタル

 沈下橋とホタルは、高知県が誇る日本の原風景である。

 高知県には、2017年10月にホタル講演会の講師として香南市を訪れたが、是非一度、ホタルが舞う季節に行って見たいと思っていた。
 四国のゲンジボタルは西日本の遺伝子を持ったグループである。現在、東京都内においても移植によって定着した西日本型のゲンジボタルを見ることができるが、西日本型本来の生息環境や発光、飛翔の様子などは、本場でなければ確認できない。そこで、発生時期と新月が重なる日を選定し、5月22日~24日の二泊三日で遠征する計画を本年頭に立てていた。
  しかしながら、大きな問題が発生。新型コロナウイルスの感染拡大である。高知遠征は県をまたがる移動ではあるが、ホタルの研究はライフワークであり不要不急ではない。これだけは、何としても実行したい。私は、4月7日以降は自粛を守り、不要不急の外出は一切せず、風景や昆虫の写真撮影は自宅の庭だけに留めた。そして多くの方々の我慢によってウイルス拡大は収束に近づき、4月7日に発令された緊急事態宣言は、5月14日に39県が解除され、21日には関西3府県の解除が決まった。そして本日、首都圏の1都3県と北海道でも解除となったが、危惧されたことは航空機の減便であった。実際の所1日6往復あった便は1日1往復に減便。予約した便は欠航となってしまったが、振替によって搭乗することが可能になり、計画通りに遠征できることとなった。

 5月22日の羽田空港第一ターミナル。出発ロビーに人影はほとんどない。搭乗手続きを済ませ 14:15発 JAL495便 に搭乗。通常はボーイング737だが、今回は95人乗りのエンブラエル190。機内を見れば、全部で30人ほどしか乗っていない。ソーシャルディスタンスは十分。私は、クラスJの席04A、一列シートでゆったりである。ちなみに帰路は24日 16:20発 JAL496便 クラスJの席02Aに搭乗であった。
 高知空港からは、レンタカーで移動。カローラを予約していたが、まだ16,000kmしか走っていないプリウスが用意されていた。全行程約300km走行したが、燃費は26km/lで、返却時の燃料満タンでは11リットルの給油で済んだ。
 高知遠征の計画時に、二晩の内一晩はヒメボタルとも考えたが、森中の乱舞では関東での状況と何ら違いがないことから、二晩ともゲンジボタルを観察することに決めていた。次の記事で紹介する「宿毛のゲンジボタル」をメインとして、初日は高知ならではの光景として「沈下橋とホタル」を選んだ。

 高知県では、1993年に四万十川流域の沈下橋を生活文化遺産ととらえ保存し後世に残すという方針を決定しており、2009年には、沈下橋を含む四万十川流域の流通・往来を通じて生じた景観が国の重要文化的景観として選定されている。その景観に、更にゲンジボタルが舞うのである。
 空港から走ること2時間半。訪れたのは、四万十市にある勝間沈下橋。橋の長さはおよそ150m。四万十川は、川岸も含めると川幅が約300m、流れの幅だけでも約120mもある。こんな大きな川で、果たしてゲンジボタルが飛ぶのであろうか?
 日の入りは19時過ぎ。川辺で待機していると19時半に対岸の川岸でゲンジボタルが発光を始めた。驚くことに、向こうからこちらへ幅100m以上もある川の上をかなり早いスピードで飛んでくるオスがいるのである。全体的には対岸の茂みがある川岸近くを多く飛翔しているが、数頭は沈下橋の真ん中あたりで橋の上下を飛んでいた。関東では有り得ない光景である。四国最長の流れを誇る雄大な清流にゲンジボタルが飛び交う様子は圧巻で、これほどのスケールは全国的にもあまり例がないだろう。ちなみに、ホタルを鑑賞する風情あるホタル船は、コロナの影響で休業であった。
  一週間ほど気温の低い日が続いたことにより、まだ発生初期の段階で大乱舞ではなかったが、たいへん貴重な光景を観察し撮影することができた。

 次の記事では「宿毛のゲンジボタル」を記載するが、今回の遠征では四万十のトンボ公園にも立ち寄っており、そこで出会ったトンボとチョウも後日掲載したいと思う。また、本記事では、トンボ公園にて撮影したホタル科ミナミボタル属のカタモンミナミボタル Drilaster axillaris Kiesenwetter, 1879 とホタル科オバボタル属のオバボタル Lucidina accensa Gorham, 1883 も掲載しておきたい。目的に中にはマドボタル属のオオマドボタルPyrocoelia discicollis (Kiesenwetter, 1874)もあったが、まだ発生時期には早かったようで、残念ながら出会うことができなかった。

以下の掲載写真は、写真をクリックしますと別窓にオリジナルサイズで表示されます。

勝間沈下橋の写真
勝間沈下橋
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F5.0 1/5秒 ISO 800 -1 1/3EV(撮影地:高知県四万十市 2020.5.22 19:24)
沈下橋とホタルの写真
沈下橋とホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / バルブ撮影 F2.8 20分相当の多重露光 ISO 640(撮影地:高知県四万十市 2020.5.22)
四万十川とホタルの写真
四万十川とホタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 7分相当の多重露光 ISO 800(撮影地:高知県四万十市 2020.5.22)
カタモンミナミボタルの写真
カタモンミナミボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/100秒 ISO 1000(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 7:33)
オバボタルの写真
オバボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/100秒 ISO 3200(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 7:36)

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東京で舞う西日本型ゲンジボタル

2020-05-17 21:40:40 | ゲンジボタル

 今年もホタルが舞う季節がやってきた。すでに九州や四国ではゲンジボタルやヒメボタルが飛び始めており、関東でも神奈川県の一部で発生しているが、関東での最盛期を前に本記事を掲載しておきたい。

 ゲンジボタル Luciola cruciata Motschulsky, 1854 は、遺伝子の違いから6つのグループに分けられるが、フォッサマグナを境に西と東に分布する本種には、オスの集団同期明滅時の発光間隔に大きな相違が認められる。それは気温でも変化するが、おおむね20℃では西日本が2秒、東日本が4秒と言われている。また飛翔にも大きな違いがあり、東日本のゲンジボタルは、かなりゆったりと飛ぶという特徴がある。また、長崎大学の研究により五島列島のゲンジボタルは、発光間隔が「1秒に1回」で、全国で最も速く点滅することが最近明らかにされている。これらの相違は遺伝子型の相違による。
 東京の多摩地域では、公園ではない自然の河川や里山でゲンジボタルを見ることができるが、実は、その多くが西日本型の遺伝子を持つゲンジボタルである。それは、ゲンジボタルを増やそうと人為的に 持ち込まれたことによる。ただし、ゲンジボタルの遺伝子型の相違が明らかになったのは20年ほど前のことである。それ以前に、見た目にはまったく同じゲンジボタルに遺伝子型に違いがあり、発光にも違いがあることなど分かるはずもなく、人為的放流は無理もない。
 本来、分布域には生物地理学上生じた「地域固有性」がある。もし、もともとホタルが生息している場所に遺伝子の違う他地域のメスを種ボタルとして持ってきた場合、DNAは母性遺伝するために、他地域の遺伝子が急速に広がる可能性が極めて高い。つまり、その地域に固有の遺伝学的特徴が失われたりする「遺伝学的汚染・遺伝子攪乱」が生じ、その地域固有の生態的・形態的な特性も失われてしまうのである。
 ホタルの遺伝学的汚染や遺伝子攪乱は、東京都内だけでなく既に全国的に広がっている。他地域のホタルを移動し定着させても、生態系にはほとんど影響がない場合もあるが、元来、ゲンジボタルの生息北限は青森県だが、現在ではブラキストン線(本州と北海道の間に引かれた生物分布境界線)を越えて北海道にも人為的に持ち込まれている。長野県の上高地に人為的に持ち込まれ定着したゲンジボタルは、環境省によって外来種として駆除されたこともある。見た目には何も変わることのないホタルであり、繁殖して増えれば嬉しいものだが、それぞれ特徴を持った地域固有種は守らなければならない。五島列島に他地域の個体を放せば、発光間隔が「1秒に1回」という特徴は失われてしまう。安易な人為的移動と放流は、ホタル保護でも自然保護でもないということを知らなければならない。
 すでに他地域のゲンジボタルが定着した所では、ホタルに罪はなく、上高地のような理由がなければ駆除する必要はないが、今後は、遺伝子型を踏まえた保護・保全、再生活動をお願いしたい。

 ゲンジボタルの発光の違いや飛び方の違いは、肉眼で見ると明確に区別することは難しいが、長時間露光(多重露光)による写真では、その違いが顕著に表れる。
 以下に掲載した写真3~5は、東京都内におけるゲンジボタルの自然発生地で撮影したもので、写真6及び7は、千葉県の自然発生地で撮影したものである。写真2及び3の生息地は、かつて西日本のゲンジボタルを放流したことが明白であり、遺伝子解析からも西日本型であることが分かっており、写真4及び5は、東日本型であることが分かっている。2つの地域を比較すると、光跡の違いがよく分かる。ちなみに、五島列島の写真はこちら「メクル第453号 全国で最も速く点滅する!?「五島列島型」ホタル

 ゲンジボタルの発生は、千葉県は今週末から6月中旬まで、東京では6月中旬から7月上旬頃が発生時期であるが、昨年の台風15号と台風19号による豪雨で河川が氾濫しており、そのため多くの幼虫が流された可能性がある。従って今年のゲンジボタルの発生は、かなり少ないかもしれない。
 また、新型コロナウイルスの影響で「ホタル祭り」等のイベントは中止になっている地区が多い。ホタル観賞やインスタ映えするからという撮影目的だけで生息地に来る方々の中には、ホタルの生態を知らず、自身の目的達成のためにホタルを滅ぼす行為をする方々がとても多いので、保全の観点からも良いだろう。また、遺伝子型など考慮せずに、ホタルを単なる見世物、客寄せパンダ同様の商品として養殖する業者、自然発生地から乱獲してホテル等に販売している業者にとっては、ホタル関連のイベントが中止なれば商売が成り立たなくなるが、私としては、こんなに嬉しいことはない。これを機に永遠に止めて頂きたい。
 個人的にホタルの観察や撮影、観賞に行かれる場合は、ホタルの生態を十分に学んだ上で、新型コロナウイルス感染拡大防止のための対策を十分に行って頂きたいと思う。

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ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 9秒 ISO 1600(撮影地:東京都 2012.6.19 19:45)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 2秒 ISO 400(撮影地:東京都 2011.6.11 21:50)

ゲンジボタルの飛翔写真

西日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F1.4 16秒 ISO 200(撮影地:東京都 2011.6.21 20:58)

ゲンジボタルの飛翔写真

西日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F2.8 180秒分の多重 ISO 200(撮影地:東京都 2011.6.25 20:50)

ゲンジボタルの飛翔写真

西日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F1.8 180秒分の多重 ISO 200(撮影地:東京都 2011.6.25 21:13)

東日本型ゲンジボタルの飛翔風景の写真

東日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 12分相当の多重 ISO 200(撮影地:千葉県 2019.5.31)

東日本型ゲンジボタルの飛翔風景の写真

東日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 640 5分相当の多重(撮影地:千葉県  2019.6.08)

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