行（ｷﾞｮｳ）と業（ｺﾞｳ）

行ということも面倒な言葉と

安田先生も言っておられましたが

分かったようで分からない

でも、仏教の基本的言葉です。

 

「行」というのも

修行とか諸行無常にも出てきます

「業」というと

三業という［身業・口業・意業］

があります

これはまた、三密といって

［身密・口密・意密］と

いうようにもいわれます。

 

「行」という字も

普通には（コウ）と発音します

「ゆく」とか「いく」というよな

意味が一般的です

その頭で見るものですから

どうしても仏教でいう

「行」ｷﾞｮｳということが

こんがらがってしまうのです。

 

行はインドの言葉では

サンスカーラといいます

それを「行」と訳した

ものですから混乱してしまいます

 

言葉も難しくて

一般に使う言葉と専門用語と

仏教で使う言葉とそこを

厳密にして考えなければ

一般語として考えてしまうと

どうしてもおかしなことになって

解決しないことがあります。

 

仏教で言う「行」ということは

本来は「造る」という意味です

そこから転じて移り変わるという

意味が出てきます。

それで、

「造る」という意味からすると

行と業は同じ意味になります。

 

ところが、

「行」と漢字では一つですが

インドの言葉になると他に

「チャリタ」という言葉もあって

これは行為、実践ということで

さとりに至るための行法、

修行ということです。

この場合の行は実践です。

 

それからもう一つ

「ガマナ」という言葉も

行と翻訳されたのです

これは「行住坐臥」の

「行」にあたります。

威儀即仏法といわれるように

この四威儀にあたるのが

「行住坐臥」です。

 

このように三つの言葉が

「行」という一字に翻訳された

ものですから、複雑になって

きたのです。

 

最初の「サンスカーラ」の行にも

もう一つあって難しいのは

「諸行無常」の行です。

「五蘊」ｺﾞｳﾝということがあって

色受想行識といわれるものです

般若心経の

「色即是空・空即是色」の色

ですが

般若心経では

「受即是空・空即是受」と

続くのですが

受想行識はまた是の如しと

いうことで

「想即是空」とか「行即是空」

「識即是空」は略されています。

 

それでここでいう「行」は

諸行は無常であるというのは

「行」の中に移り変わるという

意味がありますから

この場合の行は存在というような

意味なると思います

すべての存在は常に移り変わり

ひと時として同じものはない

という意味です。

 

それで

「行」には

第一に造るという「業」と

同じ意味があって

次に諸行無常の

すべての存在という意味

それから、第三に

原語がチャリタという言葉の

修行という意味があり

四番目に

ガマナという歩み行くという

行住坐臥の行があります。

 

こういう幅広い意味を持つ言葉

なので複雑になり

分からなくなってしまいます。

 

「業」ということは

インドの言葉ではカルマンといい

羯磨ｶﾂﾏと音写します。

行為とか所作、詳しくは

意志による心身の活動

ということで

また意志による心身の生活

ということになります。

ですからこれを

三つに分けて

「身業・口業・意業」となり

さらに具体的には

「十善戒」にあるように

不殺生・不偸盗・不邪淫が

身業にあたります

不妄語・不綺語・不悪口・不両舌

の四つが口業ｸｺﾞｳで

不慳貪・不瞋恚・不邪見が

意業ｲｺﾞｳになります。

 

私たちが毎日、心で思い

それを口に出して

身体で行っているという

行いです。

それでそれは

善悪の業を作れば

それによってそれ相応の

楽苦の報いを受けるという

ことが付いてくるのです。

 

しかし、

この「業」ということも

時代と共に色々な解釈が生まれて

さらに厳密に分析しています。

仏教の難しさは

人間の心の微妙な襞も見逃さない

ただ一面的に見るのではなく

多面的にさらに時に応じて

見ていくという

人間のええ頃加減さを徹底して

見ていく所に

複雑さが生まれてきます。

 

これは何も

複雑にしているのではなく

人間の心自体が

それほど複雑怪奇な

一面を持っている

ということです。

それをじっと見て分析すれば

こういうことになると

思います。