本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

桜の木を切った人、桜の木を植えた人

2020-04-23 20:59:31 | 住職の活動日記

モミジで有名な東福寺

このお寺には

桜の木は一本もありません。

ここには「大涅槃像」という

縦15m、横7.3mの大作です

普通の涅槃図には「猫」は

描かれていないのですが

この涅槃図には珍しく猫がいます

これを描いたのは「明兆」です

子供のころから絵がうまく

出家しても絵ばっかり

描いていたのでついに破門され

それで自分の雅号を「破草鞋」と

(はそうかい)破れて捨てられた

ぞうりと、呼んだそうです。

 

ついにこの涅槃像が出来上がって

あまりの出来栄えの良さに

足利義持が褒美を取らそうと、

いったところ

もうこれ以上桜を植えないで、

桜は修行の妨げになると

と返事したらそのことに

感動した義持は境内にあった

すべての桜を切ってしまった

ということです。

 

今は、モミジで有名になり

時期になると人、人、人で

ごったがえします

明兆はこの様子をどのように

見ていらっしゃるのでしょう。

 

秀吉は花見の縁を開くため

醍醐寺の三法院に

これまた見事な桜を植えました。

醍醐桜というしだれ桜です

太閤行列の花見の宴は

さぞかし豪華絢爛だったでしょう

 

青森県の弘前には

「弘前城」があります

ここの桜も見事で

一度は行ってみたいところです

それまでは松しかなかった

のですが

ある一人の方が立ち上がって

自費を投じて桜を植えた

ところが、

時の武士を止めた人たちは

こんなものといって

ほとんどの桜を折ってしまった

それにもめげず

考えた末

亡くなった人たちの供養のため

ということでまた桜を植えた

その事が功を奏し

今ではお城を包み込むように

見事な桜になったということです

かろうじて生き残った一本の桜

樹齢は138年ということで

老木ながらいまだに美しい花を

見せているということです。

 

そういえば

熊本の南阿蘇には

「一心行の桜」というものが

あります。

この桜も樹齢400年とか

これまた大木で見事な花を

咲かせています

戦で亡くなった主人と武士達の

菩提を弔うために植え

一心に行を修めるように

ということから

この「一心行の桜」と

名前が付いたということです。

 

桜もいろいろなご縁です

修行の妨げになるといって

切られた桜

桜を愛でて宴を開くために

植えられた桜

菩提と弔うために植えられた桜

桜はよく田圃にも植えられました

季節を見るため

春の訪れを告げる桜

そこには「たぬかんさ~」

と呼ばれている所もあるようで

田の神様が訛って

こう呼ばれたようですが

昔の人は春になると

田の神様がここにやってくる

そういうことで田圃に桜を

植えたのでしょう。

 

今年は

花見の宴は見ることが

出来ませんでしたが

静かにそっと田の神様を迎え

亡くなられた方々の

菩提を弔っていたことでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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