島では、とんでも無いことが起きました。
父が真夏の真夜中に起きだして、湧き水のある場所まで闇夜の中を行きました。
時間で自分の田の方へ水を引き込みました。
そういう取り決めなのですが、時々あらぬ方向へ流れていました。
小さな湧き水からの水は、一塊の泥で流れが変わりました。
父は、涼しい湧き水のそばでしばし休んでいました。
暗闇の中で、足音がしました。父の煙草の火を見たのか引き返して行ったそうです。
とんでもないことと言えばこんなこともありました。
秋祭りの日に起こりました。
山の衆が、海の衆を神殿に上げようとしませんでした。
乱闘となり、一人が死んだと聞いています。
新聞にも載ったらしい「だいば(天狗)事件」です。
私は、海の衆の子供達とも仲が良かった。
父は、時々遊びに行ってはいけないと言っていました。
訪ねてくる友人たちに、母は腹いっぱいご飯を食べさせていました。
同窓会でのこと。ある友人が私に言いました。
お前の家へ行くのが楽しかった。
腹いっぱいの銀シャリが食えたから。
私は知りませんでした。
夜明け前、その友人が運転する船がいかだに着きました。
まだ、中学生でした。
夜明けまでのほんの一時間の間に魚箱4杯の鯵が釣れました。
彼は、私に全部持って帰れと言いました。一箱いただきました。
家族6人でも食べきれない魚は、から揚げにして酢漬けにされました。
山の衆の娘が、海の衆の男と結婚しました。
娘は、勘当されました。子供が生まれしばらくして解かれました。
私達の島には、触れてはいけないタブーがありました。
西のほうでは、時々聞いた話です。
今でも、無くなったとは言えません。
しかし、教育のおかげで、子供達は自由に行き来しています。
子どもには知りようもなかった哀しい話です。
2015年1月7日
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