年頭のテーマ決め

ある師匠の受け売りであちこちでスピーチしてきたのだが、「人間、ルーチンが一番大事」なのだそうだ。平凡を嫌い、変化、冒険を追い求めるのは一見エキサイティングに見えるが、日常こんな意識でばかりいると肝心な変化に気が付けない。日常のお決まり仕事をきちんと続けることで、微妙な変化や異常に気付くことができると。
地下鉄サリン事件で「何となくいつもの電車を一本ずらした」、９．１１WTCビルから「何となく変な感じがしてその場を去った」ことにより助かった人が大勢いると言う。。。
神懸り的な話ばかりではないと思うが、人間（生物）は元々身に及ぶ危険を察知する能力はあるはずだ。それは毎日毎日の決まった日常が確立していて初めて感知される「微妙な変化、異常」である、という意見にはすごく共感を覚えていた。
ところが今年は師匠の教えのほぼ真逆を行くテーマを考えついてしまった。

「いつに無きことを起こす」。。。ひょんなことから無邪気に決めた今年のテーマである。
昨年は褒められたことも多かったが、怒られたことも多い「荒れた１年」だった。年末にかけてドクロネクタイが大活躍で、「来年は少し落ち着きたいねー」と年末挨拶して回ってから１週間・・・
初詣で被災地の方がインタビューで仰っていた「普通に戻るのが大事」、平穏無事、無病息災。。。普通ならそう言った心がけを持つべきところなんだろうが、どうもへそ曲がり根性が出てしまい、「こんなときだからこそ、あえて自ら普段とは違うことを意識的に起こす」気になったのだ。

「あんな大震災で皆大変な思いをしていたのだから今年は大人しく・・・」と平穏を祈ってばかりいると気分が萎える。。。たぶん１０人中９人は穏健派だろうから一人ぐらいは、荒波に対してはあえて自ら荒波を引き起こし反作用で平坦に沈めようとする果敢な「場を荒らす者」がいたほうがよい。
新年となり１月１日はこんなつもりではなかった。。。爆笑ヒットパレードでいつもは見られない「昔からのお笑い」を見ることを楽しみにしていたのに、今年は若手がちょびっとと後はしょうもないドタバタ騒ぎで、何とも残念な内容だった。もっとも「アレが出ない。コレも出ねえ・・・」とブツクサつぶやく私に「もうこの世にいないけど・・・」と妻に知らされることも多かったが。。。

それにしても「初笑い●●寄席」とかいう番組がいつになく少なかったと思う。おかげでこの３日間は「マルモのおきて全話」と「箱根駅伝」を交互に視聴する正月となった。他に見たいと思う番組が無かったからでもあるが、正月の「マルモ」は笑いあり涙ありの大アタリだったな。
CMが入ると箱根駅伝へ。。。「今、どのあたりを走ってる？」「ささえ屋のとこだよ。もうすぐ峰本・・・あの店やってるみたい」「じゃあ、もうすぐ浜須賀を過ぎて海岸だな」
考えてみると毎年色々な企画がひしめく正月番組で箱根駅伝というのは、むろんその内容は毎年エキサイティングなドラマだが、風景だけ見ると全く変わりがない「ルーチン」の最たるものだ。
毎年何となく、TVで見たり応援に行ったりしており、そもそも普段幾度となく往復している道のりで沿道をことごとく覚えているから、突然チャンネルを変えても一瞬でどこを走っているのか分かってしまうのだ。。。

息子甘辛も以前は自分の住んでいる近所、見覚えのある風景がテレビに映し出されると「あーっ、ここ知ってるぞー」とはしゃいでいたものだが、今は全くと言ってよいほど興味を示さない。
ごろごろ寝ていた私はどうも退屈になって、「駅伝が過ぎ去ったら、初詣に龍口寺行かねえか？」
妻は怪訝な顔をしたが、実は高校の同級生がサイトに投稿していて、「江ノ島の龍口寺で初詣をして鐘をついてきた。今年は辰年、昇り龍というお守りがあるそうだが売り切れだった」という記事を見たのである。
家族は誰でもその名は知っていた。江ノ島から国道４６７号へ入り藤沢に向かって江ノ電の路面踏切を通過すると真正面だ。

ただ・・・その昔、刑場だったところであり、「出る」という都市伝説？を固く信じていた我々は一度も足を運ぶことはなかった。よくよく調べてみると罪人を斬首する刑場だったのは確からしい。日蓮上人が「悪口の咎」であやうく斬首されそうなところを江ノ島から飛来した不思議な光が救った、という「龍ノ口法難」という由来があるそうだ。
その後、その刑場跡に立てられた龍口寺は亡くなった方の冥福を祈願しているという。
「なーんだ、由緒正しいお寺様じゃないか。今年は辰年だしなー。昇り龍にあやかって普段と違うところに初詣してみっか？！」
正月初詣からして普段行ったこともないお寺様にお参りしたのである。今年は座して大人しく平穏を願うのではなく、自ら進んで「いつになく」仕掛けてみることにしたのだ。

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
皆様にとって素敵な１年でありますように。