職場のビルから30kmほど県北にある事務所で「秋の収穫祭」なる催しがあり参加した。
地方圏だから事務員も自宅に畑を持っていたり、許可を得て野生動物を捕まえたり、釣った鮎を保存していたり、色々なことをする人がおり、年に2回春と秋にそれぞれの収穫を持ち寄って手作りの大宴会を開催するのだ。
県内で数か所ある事務所で各々催されており、「水神祭」と称することもあるようだが、この地の収穫祭が最も豪華多彩なものだと言う。
毎年、関係会社やOBなども招待して盛大に行われるそうだ。あいにくその日は12月中旬並みの寒さに加えて冷たい雨が降っていた。
しかしそこはさすが工事屋、2階建てビルの大型ベランダにブルーシートを張って即席巨大テントとし、工事用ライトを多用して雨風を防いだ上に暖かい屋外ステージを作りだした。
山歩きで採集してきた新鮮な山菜や、肉、魚介類を炭火焼にし、鍋ものが2種類、そばとうどんが仕上げに用意されていた。
これで会費3000円とは安すぎる!事務方はその日1かけて仕事ほっぽり出して準備していたと見える。。。
こういう時大抵最初に何かしゃべらされるのだが、挨拶もそこそこに乾杯で和やかに「収穫祭」は始まった。
しばらくして世話役の人が「恒例の」差し入れについて紹介し始めた。読み上げるたびに拍手が沸き起こるいつもの風景だ。
「○宮様から『久保田』をいただきましたぁ。●●ご一同様から『さつま白波』をいただきましたぁ。・・・■■社長から勝沼ワインのセットを差し入れいただきましたぁ。・・・▽△様はどうしても都合かつかず、ご寄附をいただくとともに『皆様によろしく』ということでありました。。。本日お忙しいところ来ていただきました磯辺様からは日本酒をいただきましたぁ・・・」
んっ?オレそんなの持って来てないけど・・・しかも別に忙しくないし。。。
最近、知らないところで色々自分名で何か「したことになっている」事柄がやけに多い。先日の冠婚葬祭でも「頼みもしないのに」花輪が捧げられており、電報も出してないのに名前を読み上げられた。
どこの誰か(総務あたりかな?)知らないが見事な気の使い方だ。後で請求書来ないだろな・・・(差し入れは全然OKだけど)
差し入れを読み上げる世話役も大変だ。酒類が多いがものすごい量に積み上がり、とてもその日じゅうには飲みきれまい・・・
「・・・様からは野菜一式、・・・様からは鮎を頂戴しました。また○野様からは『猪』をいただきました・・・・」
「へっ?!今、「いのしし」って言った?どうやって食うんだろ?鍋かな。。。」
「今、食ってる肉がそうですよ。内臓が新鮮でおいしいですよねえ」世話好きエイトマンはせっせと肉を焼きながら笑った。
そして最後に幹事が「T田課長からは『安全な!』きのこをいただきました」と締めたときに、どどーっとどよめき笑いが起きた。
なるほどこれのことか・・・
実は番頭のOちゃんから散々聞かされていたのである。「T田さん持ち込みの『きのこ』だけは食ってはいけない」と。。。
人物としては素晴らしい人なのだが、かなりそそっかしく山歩きで採ってきたきのこに、やばいヤツが入っていたらしい。
あまりよく見ないで採って来るらしい。
数年前、この「毒きのこ」により10数名がお腹をこわしてひどい目にあって以来、彼の持ち込むきのこだけは「密かに取り分けられ」別の皿に固められ、それとわかるマークが付けられるそうだ。
「アルコールでこれだけ『内部消毒』してるんだから、大丈夫じゃないの?オレ、勝負してみようかな。。。」
「とんでもない!甘く見てると死にますよ。。。」あの豪快なスティーブが青い顔をしてたしなめた。そんなにやばいのか・・・
実は各セクションの総括には総務部長名で「くれぐれも『きのこ』には気を付けるように・・・」という警告メールが来ていたそうだ。。。
どうやら今年は皿にすら盛られずに極秘裏に抹殺されたらしい・・・(食べられるのもあるはずなんだが安全第一)
素朴なものだったが、鍋物なんか実に美味しかった。すいとんきのこ汁にたっぷり魚の酒粕汁・・・うーむ。温まる。。。
やはり鮎の塩焼きが山ほど出てきた。この手のイベントで死ぬほど食わされ、食傷気味だった私は一つだけつまんだ。
トイレに立った帰りに会議室をつぶして準備室としていた部屋から声を掛けられ・・・「磯辺さん、手打ちそば食いませんか?」
おーっ!この老人が噂に聞いていた「そば打ち名人」か・・・スティーブから
「ぜひ食べて言ってください。でも思いっきり「持ち上げて」あげないと作ってくれませんよ。気難しい老人なんです・・・」
手際よく麺をゆで、さーっと水きりしてざるに盛ってくれた。さてどんな風に称えようか・・・なんて考えて口にしたら、びっくりするほど美味しかった。香りといい茹で加減といい、絶品と言って過言ではない。
正直に「こりゃあ、抜群にうまいですねえ。つゆとの相性もばっちりですよ!」
つるつるとあっという間に平らげる私を見て、老人は全然気難しい顔などせずににっこり笑い、そば湯を足してくれた。
そんな私の姿を見つけてスティーブと隊長が「おーっ、玄さん(仮称)今年もおいしいそば茹でてくださいよぉ。電車の時間が迫ってるから急いでねー」
結構、図々しく言うではないか。。。玄さんはせっせと麺をゆで続け、手際よく盛って出した。お礼を言って会場に戻ろうとしたら・・・
「磯辺さん、手打ちうどんも食ってもらわなきゃ!」
反対側のテーブルに山のようにざるに盛られた太い麺が見えた。。。これも誰かが打ったらしい。太さもまちまちだしざるを持ち上げたら、鉄アレイのようにずしりと重い。
この地方のうどんはもちもち感というよりは、ずっしり硬いのだ。特にざるうどんを1人前食うと顎が疲れるほどだ。
つるつるというよりも歯ごたえとボリューム重視で、どこへ行っても胸が苦しくなるほど量が多い。さすがにこの期に及んでうどんはつらいなー。
ひと箸ふた箸口にして、誰かに呼ばれたふりをして脱出してきた。
かなりの田舎なので電車は1時間に一本しかなく、しかも次の上りが最終だという。。。
社用車があるから、今晩はこのまま事務所に泊まって(朝まで騒ぎ)、翌朝そのまま出勤すればいいかなーなどと考えていたら、「きのこのTさん」が自家用車で乗せて帰ってくれるという・・・彼はいかにも酒飲みの顔をしているが、実は1滴も飲めないのだという。
スティーブとOちゃんと共にお言葉に甘えることにした。(これは助かった・・・)
帰りしな世話役の人が山のようなうどんを持たせてくれた。恐ろしく重いぞ。2kgくらいはあるかなー。
つゆはペットボトルで、薬味にカボスが20個ほど入っている。
みなさんにはよくよくお礼をしなきゃ。来春の収穫祭も楽しみだなー。
地方圏だから事務員も自宅に畑を持っていたり、許可を得て野生動物を捕まえたり、釣った鮎を保存していたり、色々なことをする人がおり、年に2回春と秋にそれぞれの収穫を持ち寄って手作りの大宴会を開催するのだ。
県内で数か所ある事務所で各々催されており、「水神祭」と称することもあるようだが、この地の収穫祭が最も豪華多彩なものだと言う。
毎年、関係会社やOBなども招待して盛大に行われるそうだ。あいにくその日は12月中旬並みの寒さに加えて冷たい雨が降っていた。
しかしそこはさすが工事屋、2階建てビルの大型ベランダにブルーシートを張って即席巨大テントとし、工事用ライトを多用して雨風を防いだ上に暖かい屋外ステージを作りだした。
山歩きで採集してきた新鮮な山菜や、肉、魚介類を炭火焼にし、鍋ものが2種類、そばとうどんが仕上げに用意されていた。
これで会費3000円とは安すぎる!事務方はその日1かけて仕事ほっぽり出して準備していたと見える。。。
こういう時大抵最初に何かしゃべらされるのだが、挨拶もそこそこに乾杯で和やかに「収穫祭」は始まった。
しばらくして世話役の人が「恒例の」差し入れについて紹介し始めた。読み上げるたびに拍手が沸き起こるいつもの風景だ。
「○宮様から『久保田』をいただきましたぁ。●●ご一同様から『さつま白波』をいただきましたぁ。・・・■■社長から勝沼ワインのセットを差し入れいただきましたぁ。・・・▽△様はどうしても都合かつかず、ご寄附をいただくとともに『皆様によろしく』ということでありました。。。本日お忙しいところ来ていただきました磯辺様からは日本酒をいただきましたぁ・・・」
んっ?オレそんなの持って来てないけど・・・しかも別に忙しくないし。。。
最近、知らないところで色々自分名で何か「したことになっている」事柄がやけに多い。先日の冠婚葬祭でも「頼みもしないのに」花輪が捧げられており、電報も出してないのに名前を読み上げられた。
どこの誰か(総務あたりかな?)知らないが見事な気の使い方だ。後で請求書来ないだろな・・・(差し入れは全然OKだけど)
差し入れを読み上げる世話役も大変だ。酒類が多いがものすごい量に積み上がり、とてもその日じゅうには飲みきれまい・・・
「・・・様からは野菜一式、・・・様からは鮎を頂戴しました。また○野様からは『猪』をいただきました・・・・」
「へっ?!今、「いのしし」って言った?どうやって食うんだろ?鍋かな。。。」
「今、食ってる肉がそうですよ。内臓が新鮮でおいしいですよねえ」世話好きエイトマンはせっせと肉を焼きながら笑った。
そして最後に幹事が「T田課長からは『安全な!』きのこをいただきました」と締めたときに、どどーっとどよめき笑いが起きた。
なるほどこれのことか・・・
実は番頭のOちゃんから散々聞かされていたのである。「T田さん持ち込みの『きのこ』だけは食ってはいけない」と。。。
人物としては素晴らしい人なのだが、かなりそそっかしく山歩きで採ってきたきのこに、やばいヤツが入っていたらしい。
あまりよく見ないで採って来るらしい。
数年前、この「毒きのこ」により10数名がお腹をこわしてひどい目にあって以来、彼の持ち込むきのこだけは「密かに取り分けられ」別の皿に固められ、それとわかるマークが付けられるそうだ。
「アルコールでこれだけ『内部消毒』してるんだから、大丈夫じゃないの?オレ、勝負してみようかな。。。」
「とんでもない!甘く見てると死にますよ。。。」あの豪快なスティーブが青い顔をしてたしなめた。そんなにやばいのか・・・
実は各セクションの総括には総務部長名で「くれぐれも『きのこ』には気を付けるように・・・」という警告メールが来ていたそうだ。。。
どうやら今年は皿にすら盛られずに極秘裏に抹殺されたらしい・・・(食べられるのもあるはずなんだが安全第一)
素朴なものだったが、鍋物なんか実に美味しかった。すいとんきのこ汁にたっぷり魚の酒粕汁・・・うーむ。温まる。。。
やはり鮎の塩焼きが山ほど出てきた。この手のイベントで死ぬほど食わされ、食傷気味だった私は一つだけつまんだ。
トイレに立った帰りに会議室をつぶして準備室としていた部屋から声を掛けられ・・・「磯辺さん、手打ちそば食いませんか?」
おーっ!この老人が噂に聞いていた「そば打ち名人」か・・・スティーブから
「ぜひ食べて言ってください。でも思いっきり「持ち上げて」あげないと作ってくれませんよ。気難しい老人なんです・・・」
手際よく麺をゆで、さーっと水きりしてざるに盛ってくれた。さてどんな風に称えようか・・・なんて考えて口にしたら、びっくりするほど美味しかった。香りといい茹で加減といい、絶品と言って過言ではない。
正直に「こりゃあ、抜群にうまいですねえ。つゆとの相性もばっちりですよ!」
つるつるとあっという間に平らげる私を見て、老人は全然気難しい顔などせずににっこり笑い、そば湯を足してくれた。
そんな私の姿を見つけてスティーブと隊長が「おーっ、玄さん(仮称)今年もおいしいそば茹でてくださいよぉ。電車の時間が迫ってるから急いでねー」
結構、図々しく言うではないか。。。玄さんはせっせと麺をゆで続け、手際よく盛って出した。お礼を言って会場に戻ろうとしたら・・・
「磯辺さん、手打ちうどんも食ってもらわなきゃ!」
反対側のテーブルに山のようにざるに盛られた太い麺が見えた。。。これも誰かが打ったらしい。太さもまちまちだしざるを持ち上げたら、鉄アレイのようにずしりと重い。
この地方のうどんはもちもち感というよりは、ずっしり硬いのだ。特にざるうどんを1人前食うと顎が疲れるほどだ。
つるつるというよりも歯ごたえとボリューム重視で、どこへ行っても胸が苦しくなるほど量が多い。さすがにこの期に及んでうどんはつらいなー。
ひと箸ふた箸口にして、誰かに呼ばれたふりをして脱出してきた。
かなりの田舎なので電車は1時間に一本しかなく、しかも次の上りが最終だという。。。
社用車があるから、今晩はこのまま事務所に泊まって(朝まで騒ぎ)、翌朝そのまま出勤すればいいかなーなどと考えていたら、「きのこのTさん」が自家用車で乗せて帰ってくれるという・・・彼はいかにも酒飲みの顔をしているが、実は1滴も飲めないのだという。
スティーブとOちゃんと共にお言葉に甘えることにした。(これは助かった・・・)
帰りしな世話役の人が山のようなうどんを持たせてくれた。恐ろしく重いぞ。2kgくらいはあるかなー。
つゆはペットボトルで、薬味にカボスが20個ほど入っている。
みなさんにはよくよくお礼をしなきゃ。来春の収穫祭も楽しみだなー。