超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

ウルトラ駅からのメッセージ

2015-02-28 11:40:17 | ホビー
数々の反響をもたらしたJR東日本の「ウルトラマンスタンプラリー」が昨日で終了した。最終日も新宿駅ではアナウンスが流れていた。「ウルトラマンスタンプラリー参加のお客様にお願いです。1人でも多くのお客様に参加頂くため、パンフレットは一人一部にさせていただいております。皆様が・・・」終了まであとわずか、余ったら困るだろうにと思いながら、コンプリートしたスタンプアルバムの他にまっさらな1冊を記念に持っておこうかと考えていた。このサイトでも2度ほど記事にしたこのイベント、64駅制覇した者のみに与えられる応募はがきも投函し、自分としては終了していた。記念プレゼントはM78星雲にちなんで78人なんだが、制覇証を受け取る東京駅ステーションコンシェルジュにできた列を見ていると、倍率は数百倍にもなりそうだ。ただ一人だけに当たる「ウルトラセブンが自宅にやってくる」賞に申し込まない私を見て息子甘辛は「つまんねえ、オトナだなー」と冷やかすが、実物が近所に住んでいるし、何も自宅にまで来なくてもよろしい。(来たら来たで知る限りの友人を呼んで大宴会となるだろうが)

全駅コンプリート作戦中は嵐のように走り回って、ゆっくりスタンプ台や駅そのものを楽しむ余裕すらなかった。スタンプ台にはシリーズ初期4作品の怪獣・宇宙人などが駅のキャラクターとして登場するが、後からじっくり落ち着いてじっくり眺めてみると、もしかして意図的なものなのか正直「何でやねん?」と首を傾げるほど「どマイナー」なものが多い。まだ生まれていなかった頃の白黒ウルトラQに至っては私と甘辛の知識をもってしても、タイトルと登場キャラクターを結合するのがやっとで、内容までははっきりしないものまであった。キャラクターは各駅の希望をもとに抽選で決めたそうで、スタンプ台にはキャラクターの情報や駅周辺の情報も掲載されている。ネット上にもコンプリートした人のラリー奮闘記録などが多数投稿されていて、駅のスタンプ台の様子が写し出され、「どんなコースをとって何時にどこで」なんていうルート制覇記録ものが多い。私もイベントの終了日を前にして少し感慨深くそういう人の記事などを読んでいると、中にはスタンプ台に掲載されている「駅からのメッセージ」を取り上げているものがあった。自分も一応全駅目を通し、印象の残っているものもあるが、残念ながらほとんど画像としては残っていない。が、ラリーパンフレットにキャラクター情報は載っていても、「駅からのメッセージ」はスタンプ台にしかないのだ。

自分の写真とネット上に挙げられているメッセージをかき集めると、中々違う味わいが出てくるものだ。JRも社員の高齢化が進んでいるのか、この4シリーズに登場したキャラクターをズバリ何だか知っている人は我々と同世代の人たちであろう。駅からのメッセージはそれぞれのキャラクターへの思い入れについてはかなり温度差があり、正直「あまり興味もってないよね」というものもあるようだ。「絶対最初からは希望してないよね?」という怪獣の駅が意外に多く「せっかく有名怪獣が当たったのに・・・」というメッセージ、駅名やロケ地が近くにある、似た顔をした駅員がいるなどと選定理由は様々だ。このスタンプラリーの締めくくりとして、いくつか印象強かった「駅からのメッセージ」を書き残しておこう。

尾久駅からのメッセージ
「当駅は、JR東日本の看板列車「カシオペア」「北斗星」の車庫のある駅です。始発駅の上野駅へ整備して送り出す脇役的な存在です。ウルトラマンシリーズで名脇役と言えば「バルタン星人」。駅社員全会一致で決定いたしました。車庫のある駅、尾久駅で「バルタン星人」がお待ちしています。どうぞお立ち寄りください。」
北浦和勤務の時に高崎線を使って上野に出ようとすると、途中に国電(ってもう死語?!)が何も止まらない「オグ」という謎の駅があった。周囲には何もなく列車の車庫だけがあったが、脇役=バルタン星人とはうまく結びつけたものだ。実際にどっちがどっちか知らないが、たまたま撮った写真が残っているぞ。これが看板列車じゃないかな。。。。

        

秋葉原駅からのメッセージ
「秋葉原駅スタンプがザラブ星人に決まった時、ウルトラマンシリーズ通の社員が、「初代ウルトラマン」に出ていた怪獣で、アキコ隊員に化けた宇宙人だと、すぐに教えてくれました。ザラブ星人はにせウルトラマンにも変身する等、通の中の通に慕われる怪獣で、ぜひ多くのお客様に見ていただきたいと、駅社員一同心よりお待ちしております。」
マニアの街、秋葉原・・・甘辛が幼い時にライブステージショーでその奇怪な姿に泣き叫んだ「にせウルトラマン」に化けたザラブ星人は「通の中の通」に慕われるというよりは有名だと思うのだが。。。手で持っている電子頭脳(翻訳機)が何やらマニアックな秋葉原をイメージさせる。番組のタイトルは「遊星から来た兄弟」、ザラブ星人は当初偽の友好を示すため地球人のことを「兄弟」と呼んだ。実は兄弟=ブラザーとは反対の敵という意味で「ザラブ」星人なのだが、通なら知っているはずだ。

  

東中野駅からのメッセージ
「東中野駅にご来駅いただきありがとうございます。当駅のスタンプキャラクター「マグラー」は、駅長の「真柄(まがら)」という名字にかけて選びました!ウルトラマンシリーズと言えばウルトラヒーローに注目が集まりがちですが、マグラーのようにあまり知られていない怪獣もたくさんいます。このスタンプラリーを通して様々なキャラクターに出会い、お気に入りのキャラクターを見つけてください。ウルトラマンスタンプラリー全駅制覇を目指して頑張ってください。」
中々凝った由縁だ。たぶん社員達の年齢層が若く、これといった逸話が思いつかなかったのではなかろうか?駅長の名に因むのであれば「アキラ」さんという人がいる駅なら「カプセル怪獣アギラ」を選んでほしいところだが、残念ながら東十条駅に取られてしまったようだ。

    

御徒町駅からのメッセージ
「・・・この怪獣は他の駅でも大変人気が高く、様々な難関を突破し、御徒町のキャラクターになりました。・・・」
メッセージそれ自体はまじめな記述なのだが、駅の所々に貼ってあるゼットンのポスターに色んな書き込みが・・・
「おれさまに倒されたウルトラマンはその後どうなったんだろ〜!?」「おれは3分でラリー回れるぞ!」「全スタンプは3分ではゲットできないぞ」
宇宙恐竜ゼットンが当たったのだから駅じゅうが盛り上がったんだろう。「今回のスタンプに使用されているキャラクターは、駅の希望を元に抽選で決定しました。」とあるが、様々な難関とは一体なんだったんだろうか・・・?ウルトラマンではないが(ある意味もっとすごい?!)御徒町のキャラクターと言ったら故林家三平師匠である。「ニキニキニキニキ二木の菓子!ところはアメ横、菓子現金問屋仁木の菓子、ばんざーい!」

  

東京駅からのメッセージ
「開業101年目を迎えた東京駅に『宇宙大怪獣ベムスター』襲撃!?原作ではウルトラマンやウルトラマンタロウを何度も苦しめた憎き怪獣ですが、よく見てみると皆さんに愛されるようなかわいらしい顔をしたキャラクターだと思いませんか?東京駅もベムスターに負けないくらい皆さんに愛される駅を目指し、最高のおもてなしでお迎えします。」
「帰ってきたウルトラマン」に初めてウルトラセブンが登場した回である。恐るべき宇宙怪獣だが、可愛らしいのは顔だけではなく、ハムスターのような鳴き声で吠える。東京駅と言えばキング・オブ・ステーション、マットステーションを飲み込んでしまったベムスターとステーションつながりかとも思うが、甘辛の説では新しい駅舎の丸の内口ドーム天井がベムスターの腹に似ている、ということだ。ちなみに「日本で一番高い所にある駅はどこか?」答えは東京駅である。なぜなら向かう列車が全て「上り」だから。。。

  

最終日にお友達と食事をするためたまたま東京駅を訪れたら、こんなことになっていた。惜しまれつつもいよいよ終わってしまうのだな。割と印象深かった「駅からのメッセージ」だが意外にネット上にここまで載せている記事は少なく、5つくらいしか集められなかった。息子甘辛情報では有楽町駅も面白いことになっているらしいし、他の駅にも興味が湧いてきたところだ。これからもう1回64駅回るのは無理だから、ちょっとズルしてネット上でのメッセージを探してみよう。ってまたまた興奮してきた・・・(つづく)

    



A-VX号威力を発揮す

2015-02-22 07:07:39 | ホビー
「オフシーズン」編で書いたようにしばらく釣りからは遠ざかっている。妻が店のマスターに言った「星をやっている」という表現もあまりフィットしないが、昨年末に登場した新たな超兵器「A-VX号」の稼働も含め、天体ショーが多くあってそちらを追いかけていたのは確かである。(実はこちらも恐ろしく寒いことには海釣りに勝るとも劣らない・・・)何度か試運転を重ね、いよいよ超兵器203号を装着して初めてアンドロメダ銀河M31、プレアデス星団(すばる)M45をとらえたのはふたご座流星群の日だった。追尾精度が高い「A-VX号」の扱いに慣れるのは中々時間がかかったものだ。昨年末に今年の主な天体ショー」を調べておいたのだが、4月4日のプチ皆既月食までこれと言ったイベントはないようだった。年明け仕事始めくらいに「しぶんぎ座流星群」が極大となるのだが、満月に近い月明かりが邪魔となりほとんど期待できないのでスルーした。その数日後、朝のニュースを何気なく見ていると「今夜はラブジョイ彗星が最接近し肉眼でも見られる8000年に一度のチャンスです。」と聞こえてきた。

「???変だな。聞き違えたかな。」今年そんな彗星が現れるとは全然聞いていなかったが・・・でもラブジョイ彗星と言ったぞ。ちょうど1年ちょっと前、今世紀最大と言われたアイソン彗星が崩壊した後、苦労の末にその美しい姿をとらえたのがラブ・ジョイ彗星だった。予め出現が話題になっていたわけでもなく、まさしく「彗星のように」現れたのだが、まさか地球じゃあるまいし、1年たったらまた1周してきたということはないだろう・・・調べると日本では多少いかがわしい響きのする氏名だが、なんとラブジョイ氏は5個も彗星を発見しているのだった。今回出現したのは昨年の8月27日に発見されたものが明るさを増してきたものだそうだ。ホントに突然現れるものなんだな。「彗星のように現れる」というのはこういうことを言うのか・・・最接近という日はダメだったが、その日は懇親会でアルコールを入れる日だったのだが、早々に切り上げて帰宅し主砲10cm反射鏡を搭載したA-VX号を東の空に向けた。以前、書いたとおり我が家の庭は余計な街の光が多く、彗星のように淡い天体は前回の千葉・岩井港のように星の綺麗なところでないと辛いのだが、今回は集光力のある天体望遠鏡なので、さぞかし大きな画像が得られると期待できた。

ところが、ここで難問に遭遇した。天体望遠鏡のように焦点距離が長く(倍率が高く)なると、彗星自体が捕捉できないのである。アンドロメダ銀河M31なども淡い広がりをもった天体で、我が家のように空の明るいところでは肉眼でほぼ見られないが、A-VX号にあるデータベースに星空のどこにいるかその座標が格納されているので、極軸を「天の北極」に正しく合わせる(以前書いたようにアライメントという)と、肉眼では見えない天体も自動的に主砲を向けて視野に自動的に導入してくれる。しかし彗星は突如現れたため、その位置座標のデータがなく結果、ネットにある彗星の位置情報を睨みながら「このあたり!」と勘で向けるしか方法がないのだった。その日はそれほど星が綺麗な空ではなかったので、それらしいところに主砲を向けても全然彗星の姿は見られなかった。やむを得ず超兵器ポラリエ1号をセットし、いつもの203号と100mmくらいの望遠で視野を広くし、何度か試行錯誤を繰り返してようやく青白い独特の光を放つ美しい姿を少しだけとらえられた。



200mm以上の望遠にすると、重量バランスの関係もあって急激にポラリエ1号の精度が悪くなり、変な画像しか撮れなくなってしまう。私は翌日、再び夜を待ってA-VX号を持ち出してきた。何度か練習して少し慣れてきたが、場所を変えるとその都度やり直しになるので、ちゃんと合わせた時の三脚の位置に印をつけ、オリオン座のリゲルとベテルギウスでツースターアライメントを行い、自動追尾を開始した後に超兵器203号を10cm反射鏡に装着し同じ星でピント調整を行った。試しにすぐ横にあるオリオン大星雲M42(三ツ星の下にあるぼーっとした星雲)をインプットするとど真ん中に自動導入できた。試しに3分程度の露出で撮影を行ってみると中々の迫力だ。何度かポラリエ1号と望遠レンズで撮影したことがあるが、やはり600mm直焦点で撮ると細部の広がりまで写し出せる。風が若干あったのと40年前の主砲の反射鏡の辺境部に歪みが生じているのか妙な形に星が流れる画像が多くあまり長時間露出はできなかった中々の迫力だ。

    

いよいよラブジョイ彗星の捜索だがやはり難航を極めた。超兵器203号はライブビュー映像にしてもとても暗いため普通に眺めているだけでは視野内に補足できたかどうか分からない。おうし座アルデバランの近くのはずだったが、双眼鏡でも見当たらず、ひたすら付近を右に左に動かしているうちにA-VX号のコントローラーが赤緯方向にうんともすんとも言わなくなってしまった。まさかの故障?!翌日慌てて販売店に連絡して症状を伝えたが、どうやら駆動モーターの接続不良で送り返さなければ直せないと言われた。。。外国メーカー製品だから、部品を取り寄せになったりするとずいぶん時間がかかるかもな・・・私はがっかりしてA-VX号を梱包し、「できれば彗星の現れているうちにお願い!」と宅配を頼んだ。しかし次にお目にかかるのは西暦10015年である。一昨年同様、星空の綺麗な場所でポラリエ1号による望遠撮影作戦でいくか。

何日か後の空の綺麗な夜、私は赤いライオン号を西に向けた。目指すは湯河原星ヶ山公園である。我が家から西湘バイパスを疾走し4、50分のところにあるのだが、街中から近い割には素晴らしく星空の美しいところだ。西湘バイパスを通過しR135号を真鶴方面に走るのだが、途中から右折し「こんな山道、海岸の近くにあるの?」というような険しい道を右に左に上り続ける。ゴミ処理場を過ぎるととたんに辺りは真っ暗となり、恐ろしい雰囲気になってゆく。妻や息子甘辛がよく見ている心霊恐怖レポート番組などを思い出すと、バックミラーも恐ろしくて見られないほどである。うっかり目を止めて何かが写っていたら・・・・身の毛もよだつ。昼間行ったことがないので、どんな風景なのか知らないが、背の高くない草木がやたらにたくさん生えている丘陵に出てくる。「さつきの郷」という名もあり、シーズンになると相模湾を一望しながら咲き誇る花を楽しめる公園のようだ。

駐車場のような広場に出ると、街中からそうは離れていないのに素晴らしい夜空が現れる。つい数分前まで民家の明かりがあったところとは想像できないくらい満天の星空だ。しかしその分、恐さも最高潮となる。。。ネットの書き込みでは、星空は美しいが、得体の知れない動物?の唸り声が聞こえたとかあったのを思い出した。ラジオのボリュームでも上げて紛らわすしかないか。「(そうは言ったって、何も出るはずはないさ)」と勢いよく車を止めて、真っ暗の広場に降り立った途端、私は凍りついてしまった。。。何やら怪しげに光る赤い点が目に入ったのである。「うそ、まさか・・・」心霊やら奇怪な現象にめっぽう弱い私は思わず再びエンジンをかけて逃走しようかとも思ったが、勇気を振り絞って暗闇に目を慣らしじーっと赤い点を見ていると、どうやら人が動いているようで、話し声も少し聞こえてくる。考えて見ればすぐ分かることだったが、私と同じようにこの広場で星空を観察している「先客」がいたのである。

「こんにちは。星空がきれいとネットにあったので初めてきたんですが、彗星ってどのあたりに見えるんですかねえ」「ええとね、『すばる』のちょっと右下くらいです。これでちょっと見てみたらすぐに分かりますよ」小さな双眼鏡を渡されて言われたように視野をずらしていくと青白くぼーっとした光のかたまりが見えた。あれがそうか・・・我が家の庭からでは肉眼で見ることができなかった彗星もここまで空が暗いと双眼鏡でも見えるのだな。こういう「趣味」って仲間意識がすぐに芽生えるのか、隣にいた観測グループ?が「こちらで見えますよ。よろしければ・・・」と親切に暗い広場を案内してくれた。我が家の主砲よりも一回りくらい大きな望遠鏡だろうか、すすめられた椅子に座って接眼レンズを覗き込むと視野半分くらいにさらにくっきりと青白い大きな点が輝いていた。思わず「おーっ、こんな風に見えるのか。綺麗なもんですねえ」今度の彗星は残念ながら尾っぽがそれほど鮮やかには見えないそうだが、生の姿は初めて見るのでしばしその美しい光に見とれていた。

  

さてむやみに明かりをつけると周囲の人の邪魔になるので、そーっとトランクからポラリエ1号を取り出し、いつものように超兵器203号をセットした。これまでと異なり、北極星を直接に捉える極軸望遠鏡を装着しているので、少しは精度が高いはずだが、望遠レンズの重さで地面が平でない分グラグラと揺れ動き撮影は苦戦した。それにしても寒い。。。完全防備できたつもりなのだが、顔を覆うものをしていなかったので、少し風が吹くと涙があふれる状態だった。長期戦のつもりで準備していなかったので、撮影は1時間くらいで切り上げ、たぶん夜通し空を眺め続けるであろうグループに教えてくれたお礼をして、そーっと赤いライオン号を走らせた。気を利かせてスモールライトで走行していたら、道を間違えてしまい、さつきの迷路を15分くらい彷徨うはめになる。。。

帰宅して数日たつと、「彗星が見えるうちに」とお手紙を入れて置いたから気を使ってくれたのか、予想外に早く超兵器A-VX号が部品交換されて我が家に戻ってきた。明るさのピークは過ぎてしまったようだが、ちょうど彗星の位置が夜半になって天頂近くになるので、空の明るい我が家の庭からは観測しやすい条件だ。何よりも月がないことも大事だ。私はマルチプレートを使用して10cm反射主砲と7cm屈折副砲を同時に空に向ける2連望遠鏡作戦を考案した。203号を装着した600mm直焦点の主砲は視野が暗くてすごくピントが合わせにくいので、明るい木星で調整しシャッターを切れる状態にしておいてから、低倍率の副砲で彗星の位置を探すのである。幸い国立天文台の暦計算室ページではオリオン座ベテルギウスとおうし座アルデバランを結ぶ延長線の方角なので、それらしい方角に向け、ゆっくりA-VX号を手動で動かして探索した。すると意外にもあっさりと青白くぼぉーっと光る「ラブジョイ彗星」を補足できたのである。

203号のライブビューを見てもかなり暗いが確かに「ただの星」ではない面積をもった青白い光が見えている。A-VX号は自動追尾モードになっているから、視野から外れてしまうことはない。8000年に一度の邂逅である。私は興奮してシャッターを切り続けた。この追尾精度をもってしても600�の長い焦点では5分以上露出すると星が変な風に流れて写る。また40年前の反射鏡にも歪みがあるのか、時々星の形そのものがゆがんで写るときもある。私は露出時間を変えながら10数枚撮り続けた。惜しむらくは木星でドンピシャ合わせたつもりのピントが203号の重さからか、いつの間にか少しずれてしまっているのに気が付かなかったことだ。一旦カメラを外してPC画面を拡大し画像をチェックすればよかった・・・

    

その後は曇りの日が続き、数日たつと西の空に細長い月が現れ、日増しに太く明るくなって観測には適さない期間に入ってしまった。「星をやっている」とよく経験するが、恒久の姿と見られる天空も自分の都合と天気の具合、月の位置などの条件を絞って行くと「一期一会」とさえ言えるほどチャンスは少ないのである。夜空さえ綺麗ならばA-VX号は肉眼で見えなかったり、補足しづらい天体でも自動的に導入することができる。「釣りが命」という●アジのマスターは(夫は)「今、星をやっている」という妻に「じゃあ、昼間釣りやって、そこで夜は星やるってのはどうですか?又は夜釣りしながら星を見るってのは?」と真顔で持ちかけたそうだ。「あの人、何やっても釣りの話に行き着いちゃうんだよねえ」と呆れる妻に私は苦笑しながら「(なるほど!それはありかもな)」と密かに回遊魚の血を騒がせたのである。

怒涛のコンプリート作戦

2015-02-17 22:51:03 | ホビー
「来たぞ我らの!・・・」編で書いたが、JR東日本が行っているウルトラマンスタンプラリーである。開始してから約1ヶ月が経過するが、駅改札周辺のスタンプ版にはまだまだ何人かの人々が並び、駅構内でも「ウルトラマンスタンプラリー開催中・・・」のアナウンスが流れている。「10個集めてオリジナルめんこ」GETという低ハードルのミッションはわずか3日でクリアし息子甘辛と妻の分ということで3冊持ち歩いて(ホントは一人1冊なんだが)めんこ4種類はGETしたものの、GOAL店舗で買い物するともらえると言う山手線デザインのオリジナルアクリルスタンドは瞬く間に売り切れ・・・この事態を予測できなかった私は完全に出遅れ、全10種のうち2個しかGETできずに悲嘆にくれたのは先般書いた。

一応、スタンプ用パンフレットは持ち歩き、時々思い出したように下車した駅でスタンプを押していたが、結局定期券区間で無料で改札を出られる駅の他2,3駅分を同僚にお願いし、甘辛の学校最寄駅でも頼んだくらいで、合計21駅分で、全64駅の3分の1にも満たず、正直だいぶ熱が下がっていた。仮にJRおすすめの都区内パスを使用すると55駅までカバーできるのだが、残り9駅は例の常磐線取手方面である。一駅ごとに清算が必要なので(どう見てもJRにやられている?)このエリアだけで2000円近くかかってしまう・・・一番遠くまで行って、途中駅は歩くか?!グーグルマップで調べるとどの区間も一駅平均2km以上あり、よく見ると一駅飛ばしというところもあるではないか。サバイバルウォークじゃあるまいし・・・いっそドライブがてら自家用車で行って周辺を回るかとも考えたが、鉄道のスタンプラリーにマイカーというのはいかにも邪道に思え、一旦諦めモードになったところでもある。

職場の周囲に作戦を練る会話が成立しそうな人はいなかった(そもそも知らない?!)が、こんな時タイミングよくかなり前に仕事を共にした元同僚から「スタンプラリー、コンプリートされました?」というメッセージがきて、彼からの情報で「休日おでかけパス」なる切符があることを知った。休日しか使えず2670円するが、関東一円自由に乗り降りすることができ、都区内パスと普通切符の組み合わせとほとんど値段が変わらないという。彼は退社後のウォーキングと都区内フリーパス2回、パスモ清算を使用したそうだが、かなり費用がかかっている。私は日曜日に狙いを定め「休日おでかけパス」を使用する作戦を立てた。家を朝の6時半に出ると、最初に到着する最遠地点取手駅は9時前になる。ネットの路線情報で出発/到着時間を確認し、各駅でスタンプを押し次の列車に乗る作戦だと昼過ぎには山手線内に戻ってこれる計算だ。何せ残りは43駅、一駅10分、自宅までの往復2時間を見ると10時間以上かかることになる。(ホントにそんなことできるのか?!)

  

前夜、母も誘ってバレンタインに無収穫だった息子と家族で焼肉屋に行き遅くまで飲んでいたから、娯楽のために「おにぎり」を頼むのは忍びなく、私は妻が寝ている間に起床してセブンイレブンでおにぎり6個買い込み、予定通り7時の列車に乗り込んだ。風は冷たいが天気は上々、お出かけ日和なのだが1日中電車に乗りっ放しなのは何となく皮肉だ。スタートで弾みをつけるため一気に東京駅まで行きベムスターのスタンプでコンプリート作戦が始まった。路線図を睨みながらどうにも一筆書きができない駅をどのタイミングで立寄るか考え込んでいた。まずは上野駅まで一駅ずつスタンプしながら進み、常磐線快速で取手まで行くことにした。手前から一駅ずつ進めるスタイルもあったが、行ったこともない土地なのでとりあえず「戻ってくる方」が気が楽なのである。快速なので通過する駅もあるが、いつの間にか松戸、柏などという千葉の土地名になり、果てに利根川を渡った時にはやはり一抹の心細さがあった。

      

初めて降り立つ取手駅だったが、黄金怪獣ゴルドンのスタンプを押すと上り電車が入線してきたので、慌てて駆け込んだ。我孫子駅で再び下車した時に車内アナウンスを聞いて首を傾げた。「次の停車駅は柏です」おかしいな、北柏駅にもスタンプがあるのに停車しないのか・・・調べると、我孫子駅で各駅停車の「代々木上原行」に乗り換えないとスタンプルートを辿れないのに気が付いたのである。危ねえ、危ねえ・・・パンフレットのラリーマップは駅のつながりしか書いてないので、未知のエリアで「どこで何線に乗り換えるか?」は自分で調べなければならないのである。新松戸まで来るとヒゲのようにポツンと隣に飛び出ているのが南流山駅、ここだけ武蔵野線である(勘弁してよ!)。このいかにも田舎じみたネームの駅のスタンプが何と初代ウルトラマン!どういう経緯なのかは不明だが、駅起こしのように垂れ幕が貼られていた。

          

再び千代田線直通電車で馬橋、金町、三河島など聞いたこともない下町っぽいエリアをちまちまと押して回り、ようやく山手線日暮里駅まで戻ってきた。私にとって未知のエリアはこれで制覇したが学習したことは結構あった。一駅ごとの一筆書きラリーだと大体、スタンプを押して次の列車を待つことになるが、メイン改札にすぐに行けるように階段付近の車両に乗っておかなければならない。また特急列車通過待ちの時はそのままダッシュで改札に向かい、スタンプを押してぎりぎり発車までに帰ってこれる。また一駅だけ移動してスタンプを押し、また帰ってくるのはいかにも無駄が多いように思えるが、反対側の列車がやってくるタイミングは意外にドンピシャなことが多く効率はよさそうだ。赤羽駅から高崎線尾久というマイナーな駅にはこの方法をとった。時刻はとうに昼を過ぎていたが、昼食などには構わずにセブンイレブンで買ったおにぎりを列車内でかぶりつき、今度は西方面を目指すのだった。山手線内回りで新宿を目指し、中央線で西荻窪へ。このあたりの国電(って死語?)は運転間隔が短いので、降りちゃ走りの連続でさすがに疲れてきた。

            

私は夕方はスポーツジムに行くつもりだったので、時間優先で迷わず寄り道なくひたすらラリーマップの駅をマークしていったが、後日外出などで訪れる予定のある駅はスルーしてもいいかなと思っていた。しかし残り10駅くらいまでたどり着いたとき、想定以上に足腰に疲労がきている(そりゃー30駅以上も階段を上り下りすればねー)のに気づき、ここまで来たら一気に全部行ってやれとアドレナリン全開で総武線各駅停車に乗り込んだのだった。神田から新日本橋だけ唯一徒歩ルートをとった。残りは有楽町、新橋、浜松町の3駅だ!地下ホームの改札正面のスタンプ台に並び「テレスドン」のスタンプに朱肉をつけていたら、突然後ろから二人の女性から声を掛けられた。「わーっ、すごーい。全部あるんですねー。私達、始めたばかりなんですよ」「へっ?あ、ははは。今朝からずーっと集めて回ってるんですよ。」ヘラヘラしながら内心「(暇なおっさんと思われたろうなー)」と苦笑いしながらぼーっとしてスタンプを押したら「ぎゃーわわーっ、逆さに押しちゃったぁ・・・!」彼女らはくすくす笑っていたが、結果的に64駅中唯一となってしまった逆さのスタンプを見て呆然と立ち竦んでいた。。。

噂には聞いていたが、新橋駅のスタンプ台はすごかった。カラス森口正面に大々的に床にもプリントされ、ウルトラセブンの人間大フィギュアがファイティングポーズをとっていて、行列は他の駅とは段違い、地下鉄階段付近まで伸びていた。浜松町で帰マン、有楽町のギガスで執念のコンプリート!東京駅で制覇証を受け取るのはベムスターのスタンプ台ではない。地下街グランスタにあるステーションコンシェルジュ東京である。VIPルームに案内されて「どうも、このたびがおめでとうございます!」みたいなオモテナシをイメージしていたのだが、意外にもカウンター前にはさらに行列が・・・この人たち全員コンプリートしたのか?!恐るべしウルトラファン。。。1日パスを使用するだけに、各駅での滞在時間は長くてものの10分程度、銀河鉄道999のようにその星の1日で何かの物語という訳にはいかぬ。ゆっくり「ぶらり途中下車の旅」ですらないの、とにかくひたすら「押して回る」という繰り返しだった。ヘトヘトになって帰宅したが、気分は高揚して妻と近所のレストランで乾杯だ。こうして怒涛のスタンプラリー制覇計画は終了したのだった。

        

オフシーズン

2015-02-13 23:51:23 | ホビー
「ご主人、最近釣りに行ってますか?」お気に入りのイタリアンに久々お友達とランチに行った時、妻が訪ねられたそうだ。腰越から江ノ島の方に移転したあの店のマスターは「三度の飯よりも釣りが好き」で、仕事以外は釣りさえできれば何もいらないとさえ豪語していた。以前も我々が入店するといきなりテーブルにやってきてスマホを取り出して画面を開いてみせた。「今、調子いいんですよ」パラパラめくる(という表現がよいのか)画面には、私が出会ったこともない大型のメジナや黒鯛など磯の人気者を抱えて笑う彼がいた。「今ね、熱海港の岸壁、すごいんですよ。排水溝の暖かい水に集まるらしくて、良型が入れ食い状態!」「ホント、ホント?どのあたり?船着き場?」私が乗り出して聞くとさらに興奮し、紙と鉛筆を出してきてポイントを詳しく解説してくれた。別の日には「片瀬港の赤い方の灯台、今周辺に山ほど黒鯛がいますよ。30cmくらいはあるかなー。上から見えますもん」この手の話で盛り上がると厨房をすっぽかしてノッてくるので妻は「(また始まりやがった、仕事戻れよ・・・)」という顔をしている。

お店が休みの時には伊豆半島の先端まで行って来るというから、情報も確かなんだと思うが、いかにも「バカスカ釣れる」ように聞こえて、喜び勇んで釣行しても今までほとんど釣れたことがない。熱海港には妻も付き合わせたのにわずか2匹程度、江ノ島周辺などそれ以外のところはほぼ坊主である。「アイツの言ってるところ、全然釣れねえじゃんか」とぶーぶー文句たれて帰ってきても、妻は「ふーん、そういう時もあるんじゃない」と言うが明らかに「(腕の違いだろ)」という顔をしている。冷静に分析すると朝暗いうちから夜まで釣りをしているマスターと半分観光気分で数時間しかいない飽きっぽい私との差ではないかと思う。しかし30cmの黒鯛がうようよ泳いでるなんて絶対かましている。散歩がてら何十回も偵察に訪れている片瀬漁港で魚影を見たことなど一度もない・・・

さておすすめポイントは全く当てにならないマスターだが、自分で釣った獲物もメニューに出すときがあるだけあって、魚料理に関しては抜群のセンスを持つというのは我々の一致した意見である。刺身やカルパッチョなどは魚介そのものの質に依存することが多いが、彼の技はグリルの塩加減などが絶妙で、洋食ではほとんど肉ばかり食べる私が「魚」をメインに注文する唯一の店であることは以前書いた。日によって食材が異なるが、これまで「カジキマグロ」「アンコウ」「イサキ」「金目鯛」・・・どれも素晴らしかった。実は常備メニューとして「ミヤジ豚」、甘辛の好物な「阿波尾鶏」なども絶品なのだが、私は何となく魚介系を注文してしまう。ちなみに黒板に書かれた「その日のメニュー」は聞いたこともない調理法?が多く、「一体、その魚をどうするのか?」マスターに尋ねないとどんなものかさっぱり分からないものが多い。

マスターに聞かれて妻は「釣りはやってないけど、星をやってるみたいですよ」と答えたそうだ。向かいの川で日向ぼっこをしながら釣り糸を垂れることはあっても、あまり釣果も期待できないこの近辺の岩場で、極寒に震えながらウキを睨み続ける気合が中々入らないのである。「ここならまず釣れる」というポイントは赤いライオン号を2時間ほど走らせなければならず、「車が臭くなるから釣行禁止(ただし船釣りは可)」とされている中、自然とメジナ狙いからは遠のいている。「あの車がきて、オレは趣味の一つを失ったんだよ」とささやかな抵抗を試みるが、軽くスルーされて終わっている。そう言えば本格的に釣行したのは昨年クリスマス前までさかのぼると思う。(実は途中まで書いて忘れていた・・・)

エサ取り名人のカワハギは1年を通して釣れるようだが、最も美味しいのは秋から冬にかけてである。一昨年の秋に同僚のセッシーに誘われてデビューし、ビギナーズラックも手伝ってまずまずの成績を収めた。茅ヶ崎港からもカワハギ船は出ているようだが、最初は横須賀長井港からの出船だった。その後極寒の昨年末、千葉岩井港からプライベート船での釣行を最後に約1年ぶりとなった。実は前月に一度セッシー達に誘われたのだが、例の母との東北旅行が入っており、断らざるを得なかった(実際は中止になったらしい)のだ。12月に入ってたまたま松山でセッシー達と久々に会って飲んだ時、かなり後半にヘロヘロになりながら「ねぇん、せっしー、カワハギ行こうよぅ・・・」とくねくね誘い、ちょうど年内にもう一度は行くつもりだった彼は「じゃー、20日に決めときましょか!」と軽くノッてきた。

その後、全く音沙汰なしで月も半ばとなった。「さすがに飲んだ席でお互い盛り上がっていたから覚えてないのかな」前の週にいつもの片瀬漁港直売朝市を偵察してみると、小ぶりだがたくさんのカワハギが上がっていた。「小さいけど血抜きしてあるから美味しいよー」係のおっさんに言われて取り上げると確かに少し小さめだが、100g100円だった。一人2枚ずつの勘定で6枚買って帰り、小さいので妻に下してもらった。ほぼ1年ぶりでやはり肝は美味この上なかったが、刺し身自体はどうもささくれていて、正直大した食感ではなかった。「(ま、こんなもんだったっけ?)」と多少首を傾げていた。折から日本列島に猛烈な寒波が到来し、北海道のすぐ右上に目の詰まった低気圧が2個もあるという見たこともない天気図で関東地方も強風が吹き荒れた。早朝ゴルフもしんどかったが(色んなことやってるな)早朝洋上で強風に震えるなど耐えられなさそうだったので、連絡が来ないことをいいことにこのまま自然消滅?と思っていた。

  

恐らく私が酔っ払って覚えていないと考えていたのか、ホントに計画が決まらなかったのか分からないが、せっかくそういう話になったのだからそーっと(寝た子を起こさないように)「あのーぅ、記憶が定かじゃないんですけど、松山で今週末カワハギ釣りに行く話ってしませんでしたっけ?あ、別の機会でも全然OKなんですが・・・」」と控えめに尋ねたら、すぐに「連絡が遅くてすいません!予定通り20日に行きます。」と蕎麦屋の出前みたいなメールの後に、「やっぱ天気が悪そうなので、21日に変更しましたぁ。都合大丈夫ですよね!」と威勢のいい連絡が・・・前回同様、午後船から合流すると伝え今回は赤いライオン号で駆け付けることにした。ネットで釣り船店を調べると、前日のカワハギ船は午前船のみで釣果は「0〜12」・・・・ぜっゼロだと?!私は下船後釣った魚の数を聞いて回っていたおばちゃんに「オレ、初心者なんで、坊主です・・・」とSTAP細胞ができなかったことを報告するようにうな垂れる自分の姿を思い浮かべた。

幸い、日曜日は最近では久々に寒さも和らぐ予報だった。午後船は11時半出船だから1日で一番暖かい時間帯だし、ヒートテック&マイクロフリースのユニクロコンビに貼るホッカイロ、スノーボードウェアという重装備を固めた。その日は朝から天気は良く確かに寒さは和らいだようだったが、我が家を出ようとした矢先、午前船先発のセッシーからいきなり「寒いし、釣れてません。1匹だけです」という悲報が・・・・こりゃー、マジで釣りは期待できないなー。私は赤いライオン号を発進させながら、「そう言えば、以前『どこまで湘南か?』というのを話題にしたことがあったっけ・・・」いずれ実際に自家用車でも走らせて体感的にレポートすることにしよう。その日は前日まであった低気圧の余韻なのか結構波がたっていてこの寒いのにたくさんのサーファが浮かんでいる。はるか向こうの海の上に神のご降臨のように光輝いているところがあるぞ。午前船はあの辺で釣ってるのかな。

        

長井港に到着し受付を済ませて午前船の帰還を待っていると、11時過ぎになって遠く江ノ島をバックに一隻の釣り船が入港してきた。セッシーは後半に調子を上げたらしく、「つねけ」(つまり10枚以上)の竿がしらとなったらしい。3回目となるが、いつものメンバのジュンちゃんから竿とリールを借り、かじかむ手でエサのアサリを針につけて錘を垂らした。教わった通り忠実に誘いをかけているといきなり「たんたんたんっ!」と特有のアタリが・・・!「おおーっ!磯辺さん、きましたかぁ!」第一投でいきなりあの感触を思い出した私は「ひゃっほーぅ!」とリールを巻き上げたが、「あ、あれ?」真ん中あたりですっぽ抜けてしまった。。。しかしその後、意外にも粘り強さを見せて午後船だけの出場なのに8枚というまずまずの戦績だった。自分が不調だとマジで焦りまくるくせに「さすが、だいぶコツをつかみましたねえ」と余裕の上から目線は午後も絶好調で30枚近くあげたセッシーだった。誘い方のスタイルに相性があると言われたが、その日は「セッシーの日」だったらしい。

        

船宿で地元でとれた新鮮そうな大根やみかんをお土産にいただき、獲物をクーラーBOXに入れて意気揚々と帰路にたった。最大20cmくらいとちょっと小ぶりだが、肝はどれもパンパンでぎりぎりシーズンなのが伺える。私は教わった方法で全ての魚を3枚に下ろし、最後の薄造りだけは妻に頼んだ。下ろした残りは全て鍋にぶち込んで出し汁にしてみたのである。漁港で買ってきた魚とは比べ物にならないくらいの美味だった。刺身に勝るのは難しいかもしれないが、仮にこれら魚をかのマスターに委ねたらどんな料理になって出てくるだろう。今度あの店に行った時に聞いてみよう。あまり盛り上がると肝心の料理がそっちのけになってしまうが・・・今年は暖かくなったらゆるゆる釣行を再開しようと思う。 

            

新・共通の趣味

2015-02-08 20:51:00 | スポーツ・健康
はるか以前だが、我が家も周囲のお友達にも「共通の趣味」を持っている家族・夫婦は少ないということを書いた。「共通の趣味」編だったろうか、何か一緒に打ち込むことがあるのは羨ましいが、一方でパートナーごとの不可侵領域(理解不能領域と言ってもよい)は何かあった方が、「逃げ道」があってよいというようなことで結んだ。前職場でそんな話を昼飯時にしていたら、真っ先に「そうそう!」と膝を打ったのが育児休暇明けの「しーちゃん(仮称)」である。私が数ヶ月後に異動してしまったので、短い期間だったが明るくバイタリティもあり「もう少し早くから同じ職場にいたかった」と思える「デキ女子」だった。上司にも平然と食ってかかり、たまに衝突して「泣かされた」らしい。

しーちゃんによると、「夫婦共通の趣味などありえない」というのである。「できかた」の不均衡がちょっとでもあるとうまくいかないらしい。スポーツで言えば、何にしても体力的に男性の方が先を越すケースが結構多い。旦那にすすめられて始めたゴルフとか、サーフィンなどもそういう知り合いばかりだ。ちなみに私がサーフィンを始めるきっかけとなった向かいの奥さんも、ご主人はかなりのベテランでそのために引越してきたくらいのサーファーである。(私はかの奥方の姿を見て「この人にできて、オレにできないはずがない!」と衝動的に始めたのである)女性が大学のサークルの後輩なんてケースもあるが、どちらにしても男性側がリードしていくことが多いようだ。

「初めから師弟関係だったり、『ごろにゃん保護されてますー』状態だったらいいんですけどぉ・・・」夫婦の間は他人よりも近いので「教えたり」「叱咤したり」する時の言葉に容赦がない。能力が拮抗して相手が少し上にいる時の「上から目線」や「夫婦ならではのキツい言い草」がしーちゃんには許せないらしいのである。結婚して後に運転免許を取った時、初心者マークを付けてご主人が助手席で色々「指導」されたが、あまりの五月蠅さに「そんなら、お前が運転しろー!」とステアリングを両手放しにしてふんぞり返ったという。慌ててご主人がハンドルを切って止めたと言うが、恐ろしいことをするもんだと思った。そう言えば私も妻が結婚してから免許を取ったが、仮免の練習中はおんなじように五月蠅く吠えていた。しかし彼女が自分で作った「仮免許練習中」のプレートの端っこに小さい字で「無事故無違反」と書いてあったのを見て、何となく怒れなくなってしまった。。。

運転は教えても教えられても「ムカつき」が出てしまう例だろうが、スポーツや他の趣味でも確かにしーちゃんの言うことには一理ある。その場で落ち着いた結論は「夫婦で同じ趣味を持つなら妻側が少しだけ上をいくのがよい」ということだった。「ところでしーちゃんはどんな趣味を持ってんのさ?」と聞かれて、何か聞いたこともないディープなコミックを読むことと言っていた。なるほど絶対領域を作ってるんだなと思った。さて、遠からず息子甘辛が家を出て行った後にさしあたって共通の趣味と言えるようなものは「散歩」くらいしかないと以前書いた。実はただ歩くだけのことでも、趣味として侮れないことは分かっている。特に我が家周辺は川があり公園があり、海が近いので歩きネタには恵まれている。カメラ片手に面白ネタを探すのもよし、ちょっと負荷をかけてトレーニングするのもよし、途中で釣り糸を垂らすこともできるし、江ノ島まで歩くといっぱしの観光は全部揃っている。

  

二日酔でも海に入ると治ると以前書いたが、海には医学的な効用以外にも不思議な解毒作用があり、精神がささくれている時でも、地雷を踏んでしまった時でも海辺をふらふら歩くと、何となく治癒していくような気がする。海岸線を離れ最近よく歩くのが江ノ島「スバナ通り」である。江ノ電の江ノ島駅から弁天橋まで向かう小路で、大昔からあるお土産屋、老舗旅館や廃業した旅館の店先で使用していた食器を展示販売している軒先、「日本で一つしかない」と自称している「灯台の店」、種々の「しらす料理」店街に紛れて、ちょっとしたトラットリアやベーカリーなどが姿を現すが競争が激しいらしく入れ替わりも速い。そして江ノ電江ノ島駅を過ぎて龍口寺方面を歩くと、何となく「有閑マダム向け」レストランみたいな店がいくつか現れる。最近は散歩の終点にそう言った「行ったことない店」で試しにランチを取ることが多いのだが、「これで1500円?」・・・決して味覚の閾値が高いわけではないが、「やっぱロアジにすればよかったな」ということが多い。

    

龍口寺の前から腰越にかけては江ノ電が唯一「路面電車」と化すところで、電車接近の相図が鳴ると私でも何か緊張する。鎌倉方面行きはホントに住宅に挟まれた路地から突如現れるのである。信号があるわけでもないので、観光できた他県ナンバーの自家用車などはどうしていいか分からず、立ち往生してしまうこともある。安全のためだから仕方ないが、こういう時、江ノ電運転手は「ぷぅうわあああーん」という情け容赦のない警笛の浴びせる。この交差点に古くから「江ノ電もなか」という小さな店があり、本物の「単コロ」車両の顔部分とパンタグラフが目印になっている。ファンには結構な名所のような気がするが、あまり人で賑わっているのを見たことがない・・・すぐ隣にあるアイスクリーム屋の方がお客さんがたくさんいるようだ。この江ノ電が路面に登場する少し手前には真横が線路というカフェがあり、店内には線路に向けたカウンターがある。電車を眺めながら一休みというノリだが、窓から手を出せば頭が撫でられるくらい近距離だから、あまり眺めにならないと思う。。。

        

先週末は天気も良かったので、こんな風にして散歩を楽しんだが、ここにきて共通の趣味の世界が二つ増えた。一つは「爽やかな楽走編」で少し書いたが、マラソン大会出場である。以前、湘南藤沢市民マラソンは5kmのレースがあったので一緒に出たことがあるのだが、その後10マイルオンリーになったので離れ離れになっていた。その後もいくつか10km(テンケー)レースを誘ってみたが、5kmマラソンもかなりキツかったらしくノッてはこなかった。しかし最近少しずつジョギングを再開しているようで、私が先日16km走り切った後に来年は一緒に出場することになったのだ。ただし共通なのは「マラソン大会出場」であり、ジョギングや練習は各自バラバラだ。しーちゃん曰く典型的な「合わない」ケースで速い私(と言ってもそもそもただ走るだけは好きでない)と遅い妻ではペースが合わず無理にお互いに合わせても楽しくないどころか共倒れになるからだ。直近の大会出場は県内の某国際親善大会で妻は5km、私は10kmである。当分そんなスタイルを続けて、ターゲットである来年の湘南藤沢市民マラソンを一緒に走れればよいと思う。

      

さて共通の趣味候補が意外なところから現れた。「スカッシュ」である。ラケットボールと区別がつかぬが、密室で防護メガネをして壁に向かって打ちあう競技だった。5,6年くらい前に息子甘辛のサッカー合宿が千葉の保田というところで開催され、冷やかし半分に泊まりに行ったホテルに両方とも施設があったので1回だけ試しに遊んだことがある程度だ。我が家と遠からぬ縁のある一家の奥方が近所のセンター施設でスカッシュに打ち込み、妻を誘って割と本格的に始めたのである。(誰と分かってもスル―してね)彼女らが何度か練習をした後に私も誘われて、見よう見まねで久し振り(と言っても2回目だけど)に小さなラケットを振ってみたが、正直妻と大したレベルの違いは感じなかった。先日夫であるしんさんも一緒にラケットを握ると、意外なほど上手になっていた。女性軍はこそ練したり、上手な人に習ったりしているらしい。

スカッシュというのは卓球ボールよりも小さく堅いゴムボールで行う。(ラケットボールはもう少し大きいようである)ボールの空気が抜け気味?で最初はほとんど弾まない。しかしバコバコ打ち合っているとボール自体が暖まり、内部が膨張してだんだん弾むようになってくるのである。「弾み方」がテニスボールや卓球よりも弱いので、初速が速い割には打ち返すタイミングが難しい。床に対しノーバンやワンバンで打ち返し、正面の壁の有効エリアにノーバンで当てなければならないのは記憶していた。前後左右の壁を自在に使ってよいので、単なる壁打ちよりははるかに複雑で面白い。しかし少年時代(インベーダーゲームが流行るはるか以前・・・)誰よりも「ブロック崩し」の得意だった(ちなみに最初の1球で一度もミスすることなく全面(7面)をクリアできた)私は「反射」には滅法強いのだ。

一番上手なのはキャリアの長い奥さん、私としんさんは2回目くらいなので似たようなものだが、相手の取れないところにボールを落として(多少こすっからく)得点する嗅覚は素晴らしく、奥さんもガチンコゲームすると負けることがあるという。私はレベルがどうなのかはよく分からぬが、テニスでも卓球でも「続ける」ほうが楽しいと感じ、難しい球をギリギリですくうのに快感を感じ、相手が歯ぎしりするようなところにボールを落とすのは(武士として)好きではないので、たぶん試合には強くない。ただしばらくやっていて身体は動かなくても要領は飲み込めてきた。このスポーツのキー技術は「予測力」である。相手が打つボールの球筋とフォームから跳ね返ったボールの軌道を予測して予め移動するのである。来てから動いたのでは間に合わない。次回はブロック崩しで培われた「大リーグボール1号」並の私の予測力が光ることだろう。

さて話を共通の嗜み論に戻すと、スカッシュにおいては明らかに妻の技量が私を上回っており、しーちゃん言うところの理想スタイルである。「勘や反応だったらあなたの方が鋭い」と言われるが、やはり上級者から色々教わっている者は上達速度が速い。たっぷり1時間汗をかいて、サイゼリヤで遅めの食事を摂っている時、「きなこもちさん、急激に上手くなってない?」という奥さんの言葉にしんさんは「そうそう、すごい上手になったよねえ。初めて見たけど・・・」とマリアナ海溝よりも深く、オレイン酸の単分子膜のように薄っぺらなコメントを吐露した。「???初めて見たのに、どうして上手くなったのが分かるの?心眼?」妻は腹を抱えて笑い転げていた。。。彼には注意して聞くと失笑するか苦笑するか迷うような謎の言葉が多い。現時点で明らかな母親似のお嬢さんについて「パパはどこに入ってるんだろうねえ」と首を傾げると、自信を持って「内臓ですよ」と答える。「ぎゃーっはっは、胃内視鏡検査で初めて『うわー、お父さんそっくりですねーっ』って言われるん?」(どうも意味が分からぬ・・・)
しかし家族夫婦で嗜めるものができたというのは素晴らしいことである。今回は写真を撮るのを忘れてしまったが、次回はちゃんとレポートすることにしよう。

N(なりきり)U警備隊がゆく

2015-02-02 22:30:59 | ホビー
「警備隊の制服着て3D画像作成できるらしいよ。知ってる?」PC画面を見ていた妻が声をかけてきた。円谷プロダクションのHPらしいが、とある3D写真館で「歴代防衛チーム隊員なりきり3Dスキャン」というイベントが期間限定で開催されるらしいのだ。ウルトラマンスタンプラリーもそうだったが、どういうわけかこの手の美味しいイベントを見つけてくるのはいつも妻である。私は後ろから覗き込み、ウルトラ警備隊の制服を着てアプリ合成のポインターの前で変身しているサンプル画像を見て、飛びついた。ちょうどその日からわずか2週間限定のイベントのようだ。私は詳しくイベント情報を調べ、気が付いたら申し込んでいた・・・・このイベントはウルトラマン、ウルトラセブンのBlue-rayBOX化を祈念にそれぞれの防衛チーム、科学特捜隊、ウルトラ警備隊、そして最新の「ウルトラマンギンガS」より店頭でコスチュームを選んで身に着け3Dスキャン画像を作成するものらしい。場所は前職場のすぐそばのアミューズメントエリアである。

ほぼ瞬間的なスケジュール調整で申込日は1月31日とし、他にも遊ぶところ見るところはあるからと、妻に付き合ってもらうことにした。以前妻から「1月31日は『あいさい』=愛妻の日だって。知ってる?」とどこかを歩いている時に看板を指差して言われたことがあり、まるっきり反対っぽい私の趣味に付き合わせるのは悪いと思ったが、一応先日は自家製で1月22日を「いいふうふの日」としたので(本当は11月22日)まあ今回は許してもらうことにしよう。いくら憧れとは言え、一人で撮影スタジオに乗り込みあの制服を着こんで撮影するほどの勇気はなく、その辺を取り仕切るマネージャー兼カメラマンが必要だったのである。どういう場所なのか行ったことがないので想像もつかなかったが、あの付近週末はいつも家族連れやカップルで賑わっているので、あまり一目につかぬよう時間は開店直後の一番乗りとした。

  

11時の開店まで店頭で待ち、矢印の書かれた会場までエスカレーターで上って行くとフロアの一角にかなり派手なボードと「あなたを3D化 スマホに配信!」というのぼりが見えてきた。設置されたモニターにはウルトラシリーズの名場面が流れていた。最も恐れていたのはコスチュームを身に着けて、オープンなスタジオで衆目に晒されることだったが、どうやら撮影は特設(即席)スタジオで行うようだ。「あのーぅ、11時から予約しているんですが・・・」受付ではあらためてサービス内容を説明され、商品コースを選択することとなった。制服を身に着けて3Dスキャンを行い、3Dデータを作成するところは同じだが、
・これを背景付きのアプリでスマホに配信する
・3Dプリントを使用し、クリスタル3Dを作成する(大小あり)
・フルカラーでフィギュアを作成
店頭に(ウルトラではないが)フィギュアのサンプルが展示されていた。10cmほどの大きさだが本物のように精巧なつくりで衣類の模様は顔の表情などもよく分かる。こういう最新技術の香りが大好きな私は「こりゃー面白え」と思わずフィギュアを指差しそうになったが、価格は何と26000円!自分そっくりのミニチュア3Dフィギュアというのも多少不気味だ。こんなものどこに飾ったらよいのか?!危ういところで思い止まった私は、後からでもフィギュア化を注文できるのを確かめて、この場はスマホ配信だけとしたのである。

  

ユニフォームは迷わずウルトラ警備隊、サイズはMとLがあったがストレッチ生地のようだったし、短時間なら我慢できそうだったので多少キツくてもスリムに見えるMサイズとした。今まで多数のウルトラアイテムに触れてきた私だが、制服を実際に着るのは初めてだ。ちょっと複雑な形状をしているウルトラガン付きのベルトを装着は店員に手伝ってもらいフィッティングルームを出てくると、「おーっ、すげえ!」と、なるべく目立たず撮影するよう頼んでおいた妻は持っていたIXYを構えた。(超兵器203号にすればよかった。。。)鏡に映った自分の姿を見ると我ながら・・・悪くないではないか!近くで見るとちょっとギリギリなのがバレてしまうが、キリヤマ隊長は活躍当時、今の私よりも一回り年齢が下だったのに、多少腹が出ていたような気がする。私は正面の雄姿、ウルトラアイでの変身ポーズ、ウルトラガンを握った体勢など様々な角度から様々なショットを妻にリクエストしていた。「うーん。楽しそうね」(「ご主人、ホントに好きなんですね」)と店員が後ろから囁いている。

       

あんまりプライベートショットばかり撮っていると、肝心の3D撮影が進まない。私は壁に囲まれた特撮スタジオに案内された。中には撮影の照明さんが使う反射板のようなものが2枚と小さな平べったいカメラが2メートルくらいの垂直に伸びたアームに設置されている。「ちょっと小さいんですが、この丸の上にお立ち下さい」何とカメラが周囲を回のかと思っていたら、自分が47秒かけて360度回転するのである。「ウルトラマンの変身ポーズをとって頂きます。ウルトラ・アイはできるだけぴったりと目にあてるようにし、身体全体を静止させてください。」この変身はウルトラマンではなく、私の愛してやまないウルトラセブンである。「この店員、若いから肝心なことを分かってないな・・・」と苦笑しつつ、「Uアイを装着したら肝心の顔がよく見えんじゃないか・・・?!」とぶつぶつ言いながら円盤の中心に腰幅で直立した。「はい、それではいきまーす!」CT撮影技師みたいなことをいって係員は部屋を出て行った。心の中で「デョワッ」と叫んで気合を入れ、ウルトラアイを装着すると円盤状の台座が回転し始めた。ヨーガのマウンテンポーズを意識したのだが、心なし身体が強張ってしまうものだ・・・・

「お疲れ様でしたぁ。スキャン画像がちゃんと撮れているか確認できるまで、そのままの格好でいていただけますか?」ポーズはもうとらなくてよいのだが、万が一撮り直しになった時のために制服はそのまま着ておいてくれ、ということだ。最初私は恥ずかしくて、スタジオ隅のフィッティングルーム前でばかり写真を撮ってもらっていたのだが、慣れてきたのと意外にも自分が似合うのに自信を持ち、そのままの姿でオープンスペースまで出てきて、画像処理の様子やその後のアプリダウンロード方法などを聞いていた。「普通にしているところも撮って」と妻に言っておいたので、横からパシパシとシャッター音が聞こえた。時間もお昼近くとなり、撮影スタジオの周囲にも人の行き来が多くなってきたが、いつの間にか全く気にならなくなっていた。と言うより、周囲の人が特に目を引かなくなるまでに溶け込んでおり、まさしく「なりきって」いたのである。自分としても全然違和感がなく、「隊員服ばっちりじゃん!」とそのまま帰ってもよい気分になっていた。

        

「できました!3Dスキャン画像OKです」とグラフィックに警備隊服を身に着けてウルトラアイで変身している私の全身像が写し出された。とりあえずの暫定ファイルだが、マウスで前後左右自由自在に動かすことができる。「すげえ・・・」妻は感心していたが、実物そのものの自身を見ていると「もっと髪が長い時のほうがカッコいいかな」とか「もっと背筋を伸ばせばよかった・・・」「直立の変身ポーズより、ハイキックの方が映える」などと色々と注文をつけたくなり、「デフォルメしないとこのままフィギュアというのはちょっとなー」という結論に達した。私のあまりにイキイキとした姿に店員は「ホントに似合ってますよ。よろしかったら、当社のFBに掲載してもよろしいでしょうか?」私は苦笑いしながら承諾するしかなかった・・・生まれて初めてウルトラ警備隊に「なりきれた」というのが嬉しくて、その後の画像などどうでもよくなってしまったのである。私達父子の日常も見抜いたのか、「今度は息子さんもご一緒にぜひ!」と店員総出で見送られ、3D写真撮影スタジオを後にした。

      

大阪文化丸出しの「たこやきミュージアム」で3種類の名物たこ焼きを頬張りながら、妻の撮ってくれたIXY画像を見ると、正面像や変身、射撃姿勢などポーズを撮っている像は「やっぱ『隊員』というのは無理があるかなー」と苦笑せざるを得ない。地球防衛軍でいえば「ヤマオカ長官」に近い年齢だもんなー、参謀服の方が似合うかもしれない。「これ『仕事してる』っぽくていいじゃん。」と妻が指差したのが、オープンスペースでそのまんまの格好で画像処理の様子を見ているところだ。ホントだ。全然違和感ないじゃないか・・・その後、いくつかある商業施設をぶらぶら歩き多少の買い物をした後、以前ウルトラアロハ思い切りアウェイ感を醸し出した等身大の機動戦士を横目に駅に向かった。妻はここから最近始めたスポーツの施設に向かい、夜に再び居酒屋で試合帰りの息子甘辛と合流することになる。一番後から現れた甘辛にその日1番のショットを見せると「父ちゃんはとうとうやってしまったか・・・」そうだよ、老師、ついにボクはやってしまいました。