新しい職場は東日本エリアで4か所ある拠点をくまなく歩き回るのが仕事のようだが週に一度、どの会社にもありがちな「集合会議」というのが本社で開催される。我が家からはイマイチ方角的に便利でない場所で、午前と午後に違う定例会議があるのだが、中途半端な時間に終了することが多い。自分のデスクまで戻るには移動時間がもったいないし、幸いデスクと同じことのできるオフィス環境があるので、まるでジプシーのように大体終業時間までそこで仕事をして帰る。ただ終業時刻にありがちな「ちょっといいですかぁ?」と引き留められることがないので助かることもある。先日は終業のチャイムと同時にダッシュで駅に向かい、最寄駅からこれ以上早いのには乗れない、という列車に飛び乗った。息子甘辛が合宿でいないので、何年ぶりだろうか「鎌倉花火大会」を見に行くためである。
この花火大会、昔は「水上(中?)花火大会」と言ったように思う。江の島や茅ケ崎のように普通の花火大会は海岸付近から打ち上げて上空で炸裂するのだが、鎌倉の花火は水中で炸裂し見事な半球を描くのである。これとは別に普通にスターマインや打ち上げ花火などがあるのだが、水中花火のつなぎ的な意味合いが強いような気がする。時間は1時間足らず、確か全部で2500発くらいだからそんなにすごい大会ではないのだが、どういうわけかここでしか見られない(少なくとも私は他を知らない)「水中花火」を海岸から間近で見るために毎年10万人以上の見物客が訪れるのである。浜辺でベストポジションを取るには早朝から出動しなければならないそうだ。まあ、平日なんだが早朝から場所取りして、そのまま海水浴してればよいから十分観光にはなるだろうが。。。
もう今年で65回を数える鎌倉花火大会だが、私が初めて見物したのは学生の時だったと思う。バブルに近い時だったので年々派手になる花火大会に怒涛の人混みにもめげずにひと夏で何か所も足を運んだ。横浜港、神奈川新聞、厚木鮎まつり、二子玉川園、東京湾など県内や都心まで範囲を広げた。むしろ江の島や茅ケ崎、平塚、大磯、逗子など地元の花火大会はしょぼく感じてあまり行かなくなった。いつだったか同じ日に相模湾の主要な花火大会が同時に開催されてしまい、東は江の島の向こうに小さな花火(たぶん逗子)、西は茅ケ崎の向こうに小さな小田原、更にその向こうに豆粒のような花火(たぶん真鶴)が見えたことがあった。歩いて見に行く地元はともかく私は夏も冬も開催される熱海海上花火大会が好きだった。これまた大きな規模ではないが、小さな湾内で炸裂する花火の音が海岸近く迫った山々に反響し、フィナーレは空が真っ白になるほどの迫力なのである。特に冬場の空気が澄んでいる時が素晴らしい。
また「つくば学園都市」の研究所に勤務していた学生時代の先輩に教わって訪れた「全国土浦花火競技大会」には度肝を抜かれた。国内にはこのような「競技大会」という催しがいくつかあるそうだが、この辺りでは土浦が一番すごいのではないかと思う。初めて聞いた時に(そんな田舎っぽい場所の花火なんて)と思った私はどんなモノなのか先輩に訪ねると「大きな花火大会のフィナーレは大きなスターマインだろ?あれが最初から最後まで続くようなものさ」
季節もちょっと変わっっていて、少し肌寒くなった10月の第一土曜日に開催され、プログラムで見ると時間はなんと2時間半!スターマインと10号玉、創作花火の部に分かれ、まさしく競技大会として花火師がしのぎを削るのである。確かに初めチョロチョロで回数を経ることにだんだんと規模が大きくなる普通のスターマインと違って、いきなり初っ端から鳥肌もののフルパワーマインである。何せ花火の燃えカスが風に乗って頭に降って来て火薬臭くなるほどだ。
さて鎌倉花火大会の話に戻るが、初めて訪れた時は仲良しグループで夕方待ち合わせ、横須賀選で鎌倉駅から会場に向かったが、開会の1時間前に着いたのにとんでもない人混みだった。実は全然甘かったのだ。駅から海岸までは長い行列、警官が車道に溢れないように制限しなければ道路を埋め尽くす数だろう。「いくらなんでもあの広い由比ヶ浜が埋め尽くされることはないだろう」と思っていたら、それどころか足の踏み場もない・・・何せ同じ場所に立っているだけでやっとなのである。初めて見る水中花火はそれは見事なものだと思ったが、慣れない私たちは想像を絶する振動に悩まされた。「ずどぅうぉーーーーんんん!!!」何せ水中の音速は空気の5倍近くある。上空で炸裂する10号玉の「どばんっ!」という乾いた振動とは異なり、地面から腹の中心まで全身に響き渡る、まるで身体を内部から破壊する北斗神拳のような攻撃に、たまたまお腹の調子がおもわしくなかった悪友の一人は水中に花が開くたびに腹を押さえてうずくまっていた。。。
1時間足らずで花火は終わってしまい、帰りは再び横須賀線に乗るまでは2時間近くかかった。来る時はどんどん降りるだけだが、帰りは電車が来なければ人が減らないから混み合うのはあたりまえだ。そんなこともあって、職場にいた地元の人が朝から場所を確保してくれる時まで我々はここを訪れることはなかった。そして10年後、初めての試みだったが我々は家からチャリで見に行くことにしたのである。意外なことに我が家には私用のサイクリング自転車がない。サーフボードを海まで運ぶためのクルーザー号はあるが、海岸での放置のため錆びに錆びて漕ぐだけでもえらく重く、とても何十分も走るのは無理な「大リーグボール養成自転車」になってしまっている。家族で近所のレストランに食事に行く時は私だけスケートボードである。(ただし酒を飲んだ後は危険なので、大概帰りは甘辛に代わってもらう)今回は甘辛がいないので2台調達できたのである。
何せ約30分のこのコースはこれまで昼間何度もサイクリングしている海岸通り一直線である。私が帰宅したのが開始45分前くらいのギリギリだったが、夕食のおにぎりとつまみ、ビールを搭載し我々は一路東へ向かった。江の島、腰越港を通過し、七里ガ浜のbills、稲村ケ崎を横目に由比ヶ浜と材木座海岸が見られる小さな湾のヘリまで自転車を走らせた。海岸が大きくカーブしていて消波ブロックが並んでいる公園。そう、親愛なる小夏師匠が以前いらしたという名門ホテルの少し手前である。ここからだとどの方角に打ち上げられどんな風に見えるのか分らなかったが、集まった人たちの眺める角度とその人数から中々の穴場であることは感じられた。駐車場はないし車は大渋滞、江ノ電の最寄駅からもとても歩いて来れるところではないので、チャリで来れる人に限定されるようなのだ。もともと1時間足らずだし、立ち見のつもりで海岸を前にちょっと飲み物の置ける手すりに寄りかかって「どこに上がるんだろうねえ」と材木座の方を眺めていたら、いきなりほぼ正面の逗子の方から「ドカーン!」と打ち上げ花火が鳴り響いた。「おーっ、知らなかったけど、ここって結構いい場所じゃんか!」
最初は打ち上げ花火と水中花火が交互に炸裂するような構成だったが、そのうちにリズムに乗るかのようにコラボレーションするようになった。水中花火も以前のようにもったいぶらずに気前よく連発してるようで見応えがあった。前は水中花火用の小舟が花火をポイポイ放り投げて行ったと思ったが、今回は同じところから炸裂しているように見えた。「仕掛け花火みたいになったのかな」と見ていたら大きな水中花火が連続して輝くと小さなシルエットが浮かび上がった。「やっぱ、小舟からまいてるようだよ」
浜辺から見ていると直線的に花火を放り落しているように見えたが、どうも円運動でまいているらしい。 ふと見ると車道では我々のすぐそばにいた車を先頭にはるか後ろまで渋滞(というか停滞)が連なっていた。「馬鹿野郎っ!」というクラクションが無かったところを見ると皆、花火を眺めているようだ・・・
周囲の人にはまことに申し訳ないのだが、私は花火や花見の場所取りが恐ろしく下手だ。絶好の場所だと思って縄張りをして待っていると障害物が邪魔で全然見えないところだったり、よーく見えるのにトイレの真横だったり・・・・肉屋のウィンドーショッピングが苦手なのも通じるモノがあるが、「ここ場所取ってあるんです」という一言が中々言えずに、弱体化した中国古代国家のようにいいように領土を削り取られてしまうのである。しかし今回はあまり気合を入れて場所取りしているグループもなく、手軽な穴場だと思われた。この角度と眺めから行くと、小夏師匠ゆかりのホテルからの眺めは素晴らしいものだろう。時間にして約1時間、水中花火とスターマインとのコラボを十分堪能して我々は再びチャリで帰路についた。花火などどうでもよい「恋人」などでなければ電車では行く気になれないイベントだが、ここは地の利が十分に生きることが分かった。あの凄まじい人の洪水の飲まれるのがいやであれば、江の島あたりで自転車をレンタルしサイクリング気分で見物に行くのがお勧めだ。帰りにちょっと足を延ばせば我が家で宴会もできるし・・・来年からちょっと企画してみるかなー。
この花火大会、昔は「水上(中?)花火大会」と言ったように思う。江の島や茅ケ崎のように普通の花火大会は海岸付近から打ち上げて上空で炸裂するのだが、鎌倉の花火は水中で炸裂し見事な半球を描くのである。これとは別に普通にスターマインや打ち上げ花火などがあるのだが、水中花火のつなぎ的な意味合いが強いような気がする。時間は1時間足らず、確か全部で2500発くらいだからそんなにすごい大会ではないのだが、どういうわけかここでしか見られない(少なくとも私は他を知らない)「水中花火」を海岸から間近で見るために毎年10万人以上の見物客が訪れるのである。浜辺でベストポジションを取るには早朝から出動しなければならないそうだ。まあ、平日なんだが早朝から場所取りして、そのまま海水浴してればよいから十分観光にはなるだろうが。。。
もう今年で65回を数える鎌倉花火大会だが、私が初めて見物したのは学生の時だったと思う。バブルに近い時だったので年々派手になる花火大会に怒涛の人混みにもめげずにひと夏で何か所も足を運んだ。横浜港、神奈川新聞、厚木鮎まつり、二子玉川園、東京湾など県内や都心まで範囲を広げた。むしろ江の島や茅ケ崎、平塚、大磯、逗子など地元の花火大会はしょぼく感じてあまり行かなくなった。いつだったか同じ日に相模湾の主要な花火大会が同時に開催されてしまい、東は江の島の向こうに小さな花火(たぶん逗子)、西は茅ケ崎の向こうに小さな小田原、更にその向こうに豆粒のような花火(たぶん真鶴)が見えたことがあった。歩いて見に行く地元はともかく私は夏も冬も開催される熱海海上花火大会が好きだった。これまた大きな規模ではないが、小さな湾内で炸裂する花火の音が海岸近く迫った山々に反響し、フィナーレは空が真っ白になるほどの迫力なのである。特に冬場の空気が澄んでいる時が素晴らしい。
また「つくば学園都市」の研究所に勤務していた学生時代の先輩に教わって訪れた「全国土浦花火競技大会」には度肝を抜かれた。国内にはこのような「競技大会」という催しがいくつかあるそうだが、この辺りでは土浦が一番すごいのではないかと思う。初めて聞いた時に(そんな田舎っぽい場所の花火なんて)と思った私はどんなモノなのか先輩に訪ねると「大きな花火大会のフィナーレは大きなスターマインだろ?あれが最初から最後まで続くようなものさ」
季節もちょっと変わっっていて、少し肌寒くなった10月の第一土曜日に開催され、プログラムで見ると時間はなんと2時間半!スターマインと10号玉、創作花火の部に分かれ、まさしく競技大会として花火師がしのぎを削るのである。確かに初めチョロチョロで回数を経ることにだんだんと規模が大きくなる普通のスターマインと違って、いきなり初っ端から鳥肌もののフルパワーマインである。何せ花火の燃えカスが風に乗って頭に降って来て火薬臭くなるほどだ。
さて鎌倉花火大会の話に戻るが、初めて訪れた時は仲良しグループで夕方待ち合わせ、横須賀選で鎌倉駅から会場に向かったが、開会の1時間前に着いたのにとんでもない人混みだった。実は全然甘かったのだ。駅から海岸までは長い行列、警官が車道に溢れないように制限しなければ道路を埋め尽くす数だろう。「いくらなんでもあの広い由比ヶ浜が埋め尽くされることはないだろう」と思っていたら、それどころか足の踏み場もない・・・何せ同じ場所に立っているだけでやっとなのである。初めて見る水中花火はそれは見事なものだと思ったが、慣れない私たちは想像を絶する振動に悩まされた。「ずどぅうぉーーーーんんん!!!」何せ水中の音速は空気の5倍近くある。上空で炸裂する10号玉の「どばんっ!」という乾いた振動とは異なり、地面から腹の中心まで全身に響き渡る、まるで身体を内部から破壊する北斗神拳のような攻撃に、たまたまお腹の調子がおもわしくなかった悪友の一人は水中に花が開くたびに腹を押さえてうずくまっていた。。。
1時間足らずで花火は終わってしまい、帰りは再び横須賀線に乗るまでは2時間近くかかった。来る時はどんどん降りるだけだが、帰りは電車が来なければ人が減らないから混み合うのはあたりまえだ。そんなこともあって、職場にいた地元の人が朝から場所を確保してくれる時まで我々はここを訪れることはなかった。そして10年後、初めての試みだったが我々は家からチャリで見に行くことにしたのである。意外なことに我が家には私用のサイクリング自転車がない。サーフボードを海まで運ぶためのクルーザー号はあるが、海岸での放置のため錆びに錆びて漕ぐだけでもえらく重く、とても何十分も走るのは無理な「大リーグボール養成自転車」になってしまっている。家族で近所のレストランに食事に行く時は私だけスケートボードである。(ただし酒を飲んだ後は危険なので、大概帰りは甘辛に代わってもらう)今回は甘辛がいないので2台調達できたのである。
何せ約30分のこのコースはこれまで昼間何度もサイクリングしている海岸通り一直線である。私が帰宅したのが開始45分前くらいのギリギリだったが、夕食のおにぎりとつまみ、ビールを搭載し我々は一路東へ向かった。江の島、腰越港を通過し、七里ガ浜のbills、稲村ケ崎を横目に由比ヶ浜と材木座海岸が見られる小さな湾のヘリまで自転車を走らせた。海岸が大きくカーブしていて消波ブロックが並んでいる公園。そう、親愛なる小夏師匠が以前いらしたという名門ホテルの少し手前である。ここからだとどの方角に打ち上げられどんな風に見えるのか分らなかったが、集まった人たちの眺める角度とその人数から中々の穴場であることは感じられた。駐車場はないし車は大渋滞、江ノ電の最寄駅からもとても歩いて来れるところではないので、チャリで来れる人に限定されるようなのだ。もともと1時間足らずだし、立ち見のつもりで海岸を前にちょっと飲み物の置ける手すりに寄りかかって「どこに上がるんだろうねえ」と材木座の方を眺めていたら、いきなりほぼ正面の逗子の方から「ドカーン!」と打ち上げ花火が鳴り響いた。「おーっ、知らなかったけど、ここって結構いい場所じゃんか!」
最初は打ち上げ花火と水中花火が交互に炸裂するような構成だったが、そのうちにリズムに乗るかのようにコラボレーションするようになった。水中花火も以前のようにもったいぶらずに気前よく連発してるようで見応えがあった。前は水中花火用の小舟が花火をポイポイ放り投げて行ったと思ったが、今回は同じところから炸裂しているように見えた。「仕掛け花火みたいになったのかな」と見ていたら大きな水中花火が連続して輝くと小さなシルエットが浮かび上がった。「やっぱ、小舟からまいてるようだよ」
浜辺から見ていると直線的に花火を放り落しているように見えたが、どうも円運動でまいているらしい。 ふと見ると車道では我々のすぐそばにいた車を先頭にはるか後ろまで渋滞(というか停滞)が連なっていた。「馬鹿野郎っ!」というクラクションが無かったところを見ると皆、花火を眺めているようだ・・・
周囲の人にはまことに申し訳ないのだが、私は花火や花見の場所取りが恐ろしく下手だ。絶好の場所だと思って縄張りをして待っていると障害物が邪魔で全然見えないところだったり、よーく見えるのにトイレの真横だったり・・・・肉屋のウィンドーショッピングが苦手なのも通じるモノがあるが、「ここ場所取ってあるんです」という一言が中々言えずに、弱体化した中国古代国家のようにいいように領土を削り取られてしまうのである。しかし今回はあまり気合を入れて場所取りしているグループもなく、手軽な穴場だと思われた。この角度と眺めから行くと、小夏師匠ゆかりのホテルからの眺めは素晴らしいものだろう。時間にして約1時間、水中花火とスターマインとのコラボを十分堪能して我々は再びチャリで帰路についた。花火などどうでもよい「恋人」などでなければ電車では行く気になれないイベントだが、ここは地の利が十分に生きることが分かった。あの凄まじい人の洪水の飲まれるのがいやであれば、江の島あたりで自転車をレンタルしサイクリング気分で見物に行くのがお勧めだ。帰りにちょっと足を延ばせば我が家で宴会もできるし・・・来年からちょっと企画してみるかなー。