超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

エキサイティングな「輪」の1年

2013-12-31 10:05:04 | 出来事
年の瀬に早朝(というより未明)から約100キロ先の南房総まで疾走、明け方前に満天の星空、東北東の方位に待望のラブジョイ彗星の姿を補足した後に、カワハギ会に合流し正月用の魚を釣りに岩井港を出港した私だったが前回よりもはるかに厳しい条件に苦戦を強いられていた。背中合わせに釣っていたセッシーに1号が、その後も前方で次々に釣れる中で、かじかむ指で中々うまく付けられないエサを片っ端からむしり取られ、エサ取り名人の逆襲を受けていた。大きな揺れにより海底にトントン着いてしまうオモリにただでさえ分かりにくいアタリがさらに初心者には気付かぬものになっていた。「やっぱさー、このコンディションだとダイバーいないと無理だよ・・・」半分泣き顔で冗談を言っていた私だが、違うことを考えていた。。。

やはり勝負事(と言うほどか?!)というものは二股をかけてはいけないのかもしれないと・・・彗星の撮影、エサ取り名人、どちらも一点に集中して挑まなければならない強敵だ。ついでに両方ともモノにしようなどとすると勝利の女神に見放されてしまうのか?!(「神様ごめんなさい。もう浮気しませんから、家族が食べる分だけでも釣れてください」)心の中で手を合わせると、いきなりコンコンコンっと例のアタリがやってきて、慎重にふわーっと合わせ夢中でリールを巻き上げた。(やりぃーっ、オレにもちゃんと釣れんじゃんか。今日はダブルハッピーだな)とほくそ笑んだ瞬間に「あ、あれっ?」うっそー!すっぽ抜けちゃった。。。(「神様、今のは、なし!ちゃんと真面目に努力しますから!」)

「ちょっと今日はよく抜けますねえ。合わせずに同じスピードで巻き上げるんですが・・・」坊主街道を走る私を見て、心配そうにセッシーが覗きこんだ。皆から遅れること30分。。。ようやく待望の1匹目が上がってきたが、その後も中型のウマヅラハギがどかーっと食い付いて上がったのを最後にピタリと釣れなくなった。港からそう遠くない沖合いを船頭はちょこちょこ移動したが、キタマクラやでかいフグ、トラギスなど外道もかなり混ざり退屈はしなかったが、本命にはそっぽを向かれる前半戦だった。休憩もせずにエサの付け方や誘い方を教わり、忠実にそれを繰り返した結果、後半になってようやく前回とはだいぶ勝手の違うアタリを感知、デリケートに合わせることができるようになり出港して6時間・・・前回を超す勢いでカワハギをGETできた。(やはり謙虚な姿勢が大事なのね)

帰宅後、疲れと眠気で動けなくなってしまった私は妻に下ろすのを何とか頼み、仮眠に入らせてもらった。「自分で下ろせよ。。。」とぶーぶー言われながらも、今回は小型の魚も多いからと、全部5枚に下ろして待望の肝を取り出してもらった。今回はさらに頭の部分を全部鍋にぶち込んでアラ鍋を自作、正月用の魚をチルドにして釣りたての肝と刺身を堪能したのである。浦霞と共につまんだが、刺身で肝を挟んで醤油で食う美味しさと言ったら言葉では言い尽くせない。来年は「この上を行く」というフグ尽くしを「試しにやってみる」シリーズに加えようと思う。ひょんなきっかけで時間と機会さえあれば何にでも手を出す、まるで今年を象徴するような忙しい1日だった。

        

さて、fbに「自分新聞」というのがある。今年1年、投稿した出来事を「いいね」やコメントの回数により反応に大きかったことを中心にまとめてくれるようだ。友人の自分新聞を見たのをきっかけに今年の「超兵器磯辺2号」を1月からつらつらと眺めると、彗星観察&釣行が象徴するようにどうも例年よりも色々なことに手を出す「詰め合わせお得セット」な1年だったようだ。今年も大晦日だし、ここでこの1年の「超兵器」を振り返ってみよう。

1月。。。
年明けから受験生だった息子甘辛の勉強に付き合い、彼と初の緊張した時間を一緒に過ごした。何せエンジンかかるのが遅すぎた彼は彼なりに高い目標をもって「滑り止め」を含め4校も受験する予定でがんばっていたが、何と本格シーズンを迎える1ヶ月以上前にあっさりちゃっかり進路決定!狐につままれたような両親を尻目に大喜びでサッカーを再開した。

  

2月。。。
月1度ペースで行っていた若手とのフットサル、協力会社のバリバリ現役を交えて対抗戦を開催した。遠く北関東まで湘南から息子甘辛も参戦、熱いプレーを繰り広げた。

  

3月。。。
スティーブにほとんど拉致状態で中古用品屋に連行され、まるで野菜でも選ぶようにセットを購入、シミュレーターゴルフなど余念なく進めた準備を経て、「試しにやってみる」第一弾、20年ぶりにゴルフ再デビューを果たす。
このサイトにたぶん最多登場を誇る巨星スティーブが惜しまれつつ勇退・・・

  

4月。。。
極寒の2月、3月に何度かトライしたが、共に悪天候のため果たせなかった「試しにやってみる」シリーズ第2弾、スノーボードデビューを果たす。サーフィンと似たようなスタイルなので少しはイケると思ったが、横乗りバランスはさすがに褒められたものの、「足が固定されて動けぬ」という恐怖に縛られ中々遠い道のりを感じた。

  

5月。。。
今年、喜寿を迎える母親のために、親族に声をかけて横浜港クルージングを開催。遠く富山から駆け付けてくれた叔父叔母、従兄弟達も滅多にできない経験に喜んでいたようだ。このような会を年に1回開催することにし、次回幹事をヒロシくんに譲った。

  

6月。。。
会社員にはつきものだが、この月をもって3年間勤務した北関東の地を去ることになった。それまで食ったゲテモノ、訪れた景勝地、出会った人々の写真を編集してAKB48の「Give Me Five」に乗せ集大成DVDを製作した。今からわずか半年前の話なのだが、環境変化の順応性が高過ぎるのか(単に薄情?!)、不思議に遠い昔のような気がする。

  

7月。。。
新天地は台場。超早朝通勤から開放され、拠点めぐりのため出張が多いものの、帰宅時間に余裕ができたため、数十年ぶりに妻と自転車で鎌倉水上花火大会を見に行った。夏場は鎌倉、秋は江ノ島、冬は熱海と四季の花火大会を恒例化しようと思った。

  

8月。。。
部活が忙しくて夏の旅行に行けぬという息子甘辛を初めて実家に預け、妻と南の島へ。GROTTOというダイビングポイントは生まれて初めて見る神秘の世界だった。

  

9月。。。
ひょんなことからグループ会社のエグゼクティブに同行して世界第4位の人口を持つイスラムの国へ。久々の海外出張でビジネスクラス使用できたのに、到着後急遽会議が入ってしまいせっかくの料理もオレンジジュースで食することになる。平均年齢29歳のかの国の文化に触れたが、まさしく成長期の国だった。

  

10月。。。
新しい職場で事業計画について後半戦のポイントについて各地を説明に巡る。なにせ大所帯なのでどこへ行ってもKICK-OFFは盛大だ。千歳に向かうフライトで上空から撮影した画像で翌月実行しようと思っている旅行先を検討。50人乗りのはとバスよりも小さいジェット機に初めて搭乗した。

  

11月。。。
母と初の二人プチ旅行。行き先は東北、田沢湖と角館方面だった。紅葉の美しい時期を狙って、80歳近くにもなる母を歩きに歩かせたが、天気にも恵まれ中々に素晴らしい旅行だった。親と旅行しても何の抵抗もない年齢になったんだな。

      

考えてみるとまるで「親の仇」のように色んなことに手を出しているな。生来の回遊魚体質がさらに濃くでてしまっているようだ。ひょんなことから知人からMLC(ミッドライフクライシス)=中年の危機というものの存在を教えてもらった。いわゆる中年にさしかかる年齢期にこれまでの価値観や人間観などががらっと変わってしまい精神的にも身体的にも不安定となり色々な面に影響が出る。これを乗り越え一歩成熟に近づく大転換期という見方もあるという。ここ10年くらいの長い期間を振り返っても、そんな凄まじい期間は訪れたろうか?もしかしてアレのこと?いや、あんときのピンチか?!今から思い返しても(たぶん当時も)大したイベントではない。もしかして来年あたり、巨大ウェーブがやってくる?!だとしたら、どんなものかが楽しみだ。(なんてのんきなこと言っているのはもう過ぎてしまった証拠かなー)
最後に今年「超兵器」を使用して撮影にはまった「鳥」と「星」を豪華絢爛に掲載して今年を終えよう。

           

             

皆様、今年も「超兵器磯辺2号」を訪れていただいてありがとうございます。来年我が身に来たるかもしれぬMLCに若干の不安と期待を持ちつつ・・・皆様にエキサイティングな1年が訪れますように。

彗星を拝んで釣行す

2013-12-30 14:08:07 | 旅行お出かけ
これまで年末(それも大晦日とかその前日)に「正月用の魚を釣りに行く」と行って、南熱海のポイントにメジナ釣行することが多かった。鯛にも匹敵する白身の風格のある魚だし、「店に高い魚を買いに行くよりも自分で釣る」というスタイルが気に入っていた。何度も練習してメジナはどうにか下ろせるようになったし、息子もこの魚が好きなようだ。(そりゃーいつも釣りたて新鮮の刺身だから)
しかし釣果にどうもムラがあり、年末の忙しい時に早朝から半日つぶしてしまうに加え、新しく「赤いライオン号」が我が家にやってきてから妻が釣り道具やコマセを搭載することにいい顔をしなくなった。今年はどうしようかな、と思っていた時に、仕事納めの時に同僚達が今年最後の釣行に行くという話を聞き付けたのである。

元々は茨城沖にフグを釣りに行く予定だったという。フグ?そんなの江ノ島やこの周辺でイヤというほど釣れるし、食べられないからどうにもならぬ魚だがな。。。以前、社宅にいる時水槽で飼っていたことがあるが・・・
実は全く知らなかったのだが、フグ釣り船というのは結構人気があるらしいのだ。船長や船宿の従業員などがフグ調理免許を持っていて、釣った魚を安全に捌いてくれるというのである。その場で捌いたフグの白子など「この世のものとは思えない美味しさ」らしい。高級魚過ぎて我が家にはあまり縁がなく、妻とも西日本方面に行った折に何度かコースを食べたくらいであまり興味を感じていなかった。しかし刺身に白子、ふぐちりなど釣りたての新鮮なフグならそれこそ超高級魚、たぶん釣るのも簡単だから素晴らしいことになるかもしれない。

しかし残念ながら今年はコンディションが悪く中止になってしまい、カワハギ船になってしまったらしいのだ。先日、今年最後の「試しにやってみる」イベントで挑戦した「エサ取り名人」である。季節的には終盤に差し掛かっており、来月に釣り納めを予定していたが、急遽の決定と聞いて「オレも行こうかな」と言いだした。セッシーはその場ですぐに携帯を取り出し「一人分確保できまよ」と釣り宿と連絡を取ってくれた。場所は前回よりも少し遠い、南房総の岩井というところだ。以前、息子甘辛がセルティックのサッカー合宿に行った保田の少し先だ。結構距離があるが、アクアラインを使えば早朝なら1時間半くらい、千葉のゴルフ場と同じくらいの行程だ。

私の周辺には中々に趣味に興じる人が多い。ゴルフはもちろんのこと、ソフトボール、船釣り、模型やカメラに凝っている人もいる。不思議なのはきちんとハマッていて、他のことをあれこれやらないことだ。ゴルフ好きのオッキーは釣りはやらないし、釣り船派はゴルフはやらない。カメラ好きのたっくんは先日のカワハギ船が釣りデビューだと言っていた。専用のパーツを買ってきて精密な軍艦模型を数週間かけて造るというウッチーも他に趣味はなく、ソフトボール大会では「少年時代何してたの?」というくらい運動音痴のようだった。中途半端だが「全部やる」のは私くらいである。私は深い部分を教わる方だが趣味の世界というのは何かにつけて一を聞くと十帰って来るから面白い。何にでも顔を出すサンダーバード2号のような私には退屈しない職場である。

さて今回の釣行はいわゆる釣り船ではなく、地元の漁師が船をあつらえて仲間内だけでポイントを案内してくれるそうだ。普通の釣り船と違って狭いので慣れないと相当釣りにくいベテラン向きの釣りのようだ。いつの間にか釣りマニア達が集まって盛り上がってきた。「その岩井とか言うところは、この前みたいに釣れるの?」すっかりその気になった私は竿頭と言われるカミュー(仮称)に聞くと、笑いながら「まあ、大丈夫だと思いますけど。ダイバーが年末休みで連絡取れないんですよ」「オレもおかしいと思ったんだよなー。この前、一投目でいきなり釣れるなんてさ。やっぱ、下に潜ってたのか・・・?!」「あれれっ?気が付きました?泡、出さないように言っておいたんですけど」「よーし、今度はダイバー抜きで釣ってやろうじゃんか」(こいつら、調子に乗りやがって・・・)

集合時間は朝の6時、準備や確認やらあって日出と同時に出港するそうだ。家を出発するのは余裕を見て4時過ぎくらいかな。早起き王の私には造作もないことだが、また余計な作戦も練り出した。天体の撮影である。
どうせ早起きするなら4時も3時も同じである。地図で見ると恐ろしい山道がありすごい田舎のようだ。いつか関東地方で星空の観測に適した場所を探した時に館山海岸の素晴らしい天の川を見たことがある。消滅したアイソン彗星に続き、どうしてもその姿を捉えられない早朝のラブジョイ彗星を撮影するチャンスなんじゃないか?
彗星は太陽に接近して明るく尾を伸ばすので、見えるのは「明けの明星」金星と同様に早朝である。しかも今、高度がないから時間が早過ぎると地平線に近過ぎて見えない、また高度を上げると陽も上って明るくなってしまうので見えない。チャンスは午前5時前後のわずか1時間くらいだ。

私はクーラーBOXや長靴、釣り道具、防寒具の他に超兵器203号、ポラリエ1号、倍返しレンズなど天体撮影用の装備も赤いライオン号に積み込んだ。家を出たのは午前3時半、国道1号から横浜新道に入ってからはほぼ全行程が自動車専用道路なので、あっと言う間に岩井に到着した。時間は午前4時45分、細い月が東側に顔を出していたが予想通り素晴らしい星空である。しかし意外にも住宅地が多く、東北東方角が低い高度まで開けている空き地を探すのに苦労した。ICの近くまで戻ってようやくいけそうな空き地を見つけ、車を停めて撮影装備を背中に背負って真ん中まで歩く。精密コンパスを持っていったのだが、満天の星空では簡単に北極星を見つけ、あっと言う間に極軸を合わせることができた。

    

彗星の方位、角度を調べていったのだが、カメラの装着位置からして角度・方位計が使えない・・・狂いがちになる203号望遠レンズのピントに苦しみながら、焦点距離を短くして丹念に彗星のある方角に向けてシャッターを切り続けた。追尾撮影なので露光時間は約2分。。。気温は摂氏マイナス3度という想像を絶する寒さだ。素晴らしい満天の星空なのだが肝心の彗星は中々捕捉できない。スマホで方位・角度、そして目印の恒星などを調べて繰り返し撮影を続ける。時々ぼわーっと星雲のようなものも写るが・・・かじかんで指が上手く動かず、震えながらレンズを東北東に向けていたが、5時15分頃小さな光点が尾を引いている画像が現れたのである。消滅したアイソン彗星に続くヘウレーカ!老師、ついにボクはやりましたぁ!

    

一旦補足してしまえば、ポラリエ1号が追尾してくれるので何枚でも撮影できるのだが、焦点距離を200mmに伸ばした時、ピントが来るって一旦外し、木星でピントを合わせてから再装着した時には微妙に視野から外れてしまったのか、付近を何度撮影してもその姿は捉えられなくなった。そろそろ時間になるので、震えながら装備を片付け集合場所に向かったのだった。まだ真っ暗だったが港に行くとたくさんの釣り客が集まっていた。私はこれ以上暖かくはできないくらい着込んだスノボスタイルだったが、仲間はさらにごつい防寒釣り具を服の上から着込んでいた。どうやら風はないが、洋上で細かい指先の作業を行うのである意味スキー場よりも厳しいらしい。

何隻か停泊していたうち、先頭まで行って小さな船に乗り込んだ。通常の釣り船の3分の1くらいの大きさで全部で6名しか釣り座に座れない。船長はフォークリフトのように立ちっ放しで後ろ脚で器用に操舵しながら船を進める。予報では洋上は静穏だったが、結構うねりがあり船が小さいので時々自分の背丈くらい上下に揺れることもあり、同行者は皆船酔い止めを飲んでいた。立ち上がって釣ろうとすると大揺れした時に海に落ちてしまいそうだ。座りながら腰を捻ってかじかむ指でエサを付け、第一投を海に落とした。こりゃー、苦戦しそうだな。坊主だったら仲間に一人一匹ずつもらうとして5枚・・・釣り始めて直後、背中合わせに釣っていたセッシーが「おおーっいきなりキターっ」と中くらいのカワハギを釣り上げた。前回よりもはるかに過酷な条件で果たして正月用のエサ取り名人はGETできるのか?暇にまかせてたくさん書いてしまったので後半へつづく・・・

試しに走ってみる?!

2013-12-26 21:50:28 | スポーツ・健康
先日、約1ヶ月後に迫った「湘南藤沢市民マラソン」のコースR134号をなぞってみたが、書き物自体は何か「思い出ノート」のようになってしまった。「普段、あまり運動しない人がコンクリの上をいきなり長距離走ると膝を痛めますよ」と言いながら先日、所沢マラソンでハーフ2時間で走った同セクションの「船長」(仮称)が親切にも「室内で行えるトレーニング本」を貸してくれた。どちらかと言うと「運動し過ぎ」に注意だし、筋力系はどちらかというと「過剰」な方なのだが、色々参考になることは教わったのだ。練習は週に1,2回、10キロくらい走ればよい。スポーツジムのはつかねずみマシンが腰や膝の保護にはよいが、やはり「床が動いてくれる」のは実際の負荷とは違うので、外で走った方がよいということだ。

この3連休、妻は仕事、息子はサッカーで忙しくいつもながら私だけが暇だったので、一度は「リハーサルに実際に走る」ことをしようと決めていた。ジョギングもだいぶ流行が盛り上がっており、それは深い世界で「走ることの楽しさを覚えて、他のスポーツ。はやめた」という同級生をここでも紹介したが彼は地方病院の医者なのである。しかしマシンジムでは何度も1時間くらい走っているのだが、いざコースを走るとなると我ながら巨大な障壁が立ち塞がるのを自覚していた。「退屈」という名の強敵である。条件は悪くないはずなのだ。江ノ島から海岸線、富士山を正面に見ながら爽やかな風に吹かれてジョギング。。。ランナー人口も増えているという。しかし(贅沢と言われるかもしれぬが)子供の頃から見慣れている私は「これは世間でも羨まれるような素晴らしいコースなのだ」と自分に言い続けても、あっと言う間に飽きてしまうのである。

性格的なものだが私はお出かけ先で「想定外」のトラブルに遭遇し、絶望してしまうリスクを「想定」してしまうので、その地に向かう目的なしに移動することができない。渋滞が嫌いでただ「流す」だけのドライブができない、パンクがイヤで走るだけの「自転車」などもっての他、ましてお腹や足が痛くなるリスクもある「ただ走る」だけなど自分の所業としては愚の骨頂にしか見えないのだ。「前の日に深酒していないこと」「陽気がよく富士山が見えること」「南北方向に風が吹いていないこと」「家族の予定がバラバラでやることがないこと」・・・奇跡的としか言えないような条件が重ならなければ実行しない「走らない理由を常に探している」ようなものだった。したがってコースは家を出て少し心拍数を上げ、一旦江の島に向かってスタート地点まで走り、その後折り返して本コースをなぞって我が家付近を通過、正規折返し点まで行く「往復攻撃」とした。

  

ジョギングに必須アイテムである時計と指先が冷たくなるのを防ぐため軍手をして家を歩き出した。スポーツジムのマシンでも経験的に分かっているのだが、走り始めて20分くらいがホントに辛い。「今日はこれくらいにしといてやろう」と何度思ったことか。。。しかし相当たらたら走ったのに意外と距離がないのか、我が家から20分かからずに江の島弁天橋まで到達してしまった。天気はよく風もなく絶好の行楽日和なのか遊歩道や橋は観光客で溢れている。また本格的なランナー姿の人もちらほら見える中で、半分サッカー選手のようなスタイルでいかにも「バテてこれ以上走れません」という顔で歩き出してはあまりにもカッコ悪い。その心理が働いてどうにか30分くらいは走り続け、スタート地点であるヨットハーバーで折り返してサイクリングロードへ入ると少しペースをつかめてきた。これから先は「退屈」との戦いである。

「目的がなければ走れない」というハンデを克服するために、走りながら実践するいくつかの「テーマ」を決めていた。まずはサーフポイントの細かいチェックである。海岸線をずーっと走るから、普段は入らない波乗りポイントの様子も細かく観察することができる。どこにどんなレベルの人が集まっているか、沖合の距離、波の向き・割れ具合などである。むろん波の様子はその日ごとにコンディションが異なるのだが、なんとなく具合の良し悪しは分かるものだ。ほぼ同時に「投げ釣り」に入れそうな場所もチェックする。湘南海岸は大体まんべんなくサーファーが浮いているものだが、ホントに波の無いポイントは数か所あり、竿を出している人もいるのである。そして最後は夜になると周囲に明かりがなくなるところ。。。つまり天体観測に適したポイント探しである。障害物はないが意外に海岸にも余計な光がたくさんある。北極星を補足でき、平らで空が広く近くに街灯のないポイントを探した。

走り始めて約1時間、距離的には10キロ走った計算だ。県民マラソンでも他でもこれ以上の距離は走ったことがない未知の世界だ。しかし身体は「まだイケル」と言っているようだ。折り返し点の「浜須賀」に到着したが、かまわずさらに西へ向かって走り続けた。この辺は投げ釣りOKだなと思われるTバー手前まで走って折り返したが、突如として向かい風の洗礼を受けた。なーるほど、前半調子が良かったのは追い風だったからか・・・しかし心拍数は結構安定しており、身体に痛いところもどこにもない。そのまま90分ちょっとほぼ同じペースで走り続け、そのままコースを外れて帰宅した。推定15km走ったことになるが、意外と大したことないじゃんか・・・(翌日はどうなるか予想もできないが)

2年ぶりくらいに走ったコースだから景色も新鮮で、行き交うランナーの様子も興味を持てたが、やはり何回かジョギングしていくにつれ「退屈」という敵が現れることは必定だろう。一つ気が付いたのだが、コースを走るランナーにはイヤホンをして音楽を聴ききながら走っている人が多い。友人の「しんさん」もジョギング用のアルバムを持っていると聞いた。「ジョギング用タイトル?どんな音楽が入ってるんだ?」例えば「Eye Of The Tiger」だそうである。なるほどねー、あの人はカタチから入るからなー。。。私にとってはどんな音楽がジョギングにはあうだろうか?まさかこればかりはモーツァルトというわけにはいかないだろう。

PCに入っているうち、昔から好きだった曲を何となくジョギング用に編集してみた。どういうわけか私は好みの曲がバラード調なものに偏っているのようで意外に選定に苦戦した。ウルトラ特撮ヒーロー編、80年代アイドル編などいくらでも頭に浮かぶのだが、ばったり誰かに会って「どんな曲聴いて走ってるの?」と言われた時にそれなりにカッコのつく曲が好ましい。浜田省吾、アリス、クリスタルキング、山下達郎、ハウンドドッグ・・・何せJALの機内エンターティメントのJPOP系がさっぱり分からなくなってきた年齢である。(もしかして落語ってあり?)
今度妻にウォークマンを借りて聴きながら走ってみよう。何か「これなら退屈しない」というお勧め曲があったら教えてもらいたいものだ。

最近はfbなどで自分のジョギングしたコースや距離などを自動的に記録、公表している人がいる。
磯辺太郎さんがハ―ロックの時計と鳩サブレ本社で買った軍手、Mr.MAXで買った無名のシューズを使用して、15kilometersをジョギングしました。

キロメートル         minutes     分/km      キロカロリー
だから15kmだって!   90分くらい   割算しろよ!  「ラーメンジロー」の半分くらい?

あれって一体何が楽しくてやってるんだろうな・・・・

  

R134のランロード

2013-12-16 22:36:10 | スポーツ・健康
先日、無謀にも10マイルレースにエントリーしてしまった湘南藤沢市民マラソンまであと1か月あまり・・・10キロを過ぎると「身体に何が起きるか分からない」という不安にかられ、ここふた月くらい少しずつだが練習らしきものを意識してきた。スポーツクラブのスタジオプログラムの代わりに、はつかねずみマシンで走るのである。コンクリートの上をいきなり長時間走ると膝を痛めるとアドバイスされた。週に一度、1時間くらい走る。私の習性を丸出しにしていきなり集中的にトレーニングすると「ひどい目」にあるのは北関東の県民マラソンで経験済みだ。直前になって運動し過ぎで突然激しい腰痛に見舞われ、ほとんど棄権寸前まで追い込まれ、痛み止めを飲んでの出走となってしまった。その経験を活かし、少しずつ「ハム」を使って先日90分まで走ることができた。

一方でずいぶん前になるが、「実際のコースを偵察しておこう」と久々に妻と散歩したコースはスタート地点までだった。毎度変わり映えしない江の島に海岸、ハーバーで人の釣りばかり見物していた私に「マラソンの下見なんぞにつきあわせやがって・・・」と妻はぶーぶー言っていた。そのまま江の島水族館のデニーズでビールジョッキ片手にまったり午後を過ごし、気が付いたら夜になっていた・・・
これではいかぬ。距離があり過ぎて歩いてみても余計な寄り道ばかりしてしまってコースを実感できないので、この週末天気も良かったのでチャリで車道を走ることにしたのである。

    

まずスタート地点は江の島ヨットハーバー前だ。当日は奥の駐車場を閉鎖してメイン会場とし受付や着替え、荷物置き場などになるはずだ。走るのは7000人、スタートするまでの結構時間がかかる。まず左側に見えてくるのが「かながわ女性センター」だ。ネームからして我々には縁のなさそうな施設だが、学生時代にここで学会発表したことがあるがその時、「磯辺、おまえ地元なんだから、女の子を集めて合コン設定しろ」研究室の先輩に厳命されてしまった。地元に学生時の知り合い女性なんかいないのに無理して色々声をかけ(と言うより平身低頭頼み込み)、何とか「綺麗ドコロ」を集めたのだが、一員がその一人を見初めてしまい、数か月付き合った後に結婚!披露宴で私は「愛のキューピッド」呼ばわりされ苦笑する羽目となった。

      

少し進むと「しらす問屋とびっちょ」が現れる。生シラス料理の大丼料理で有名で、テラスモールのフードコートでもいつも長い行列ができている。本家であるこの店も開店とほぼ同時にたくさんの人だかりができていつも大賑わいだ。地元民にありがちなのだが、実はまだ1回も食べたことがない。。。さらに進むと右にカーブし、コースは弁天橋へ。走りながら相模湾と富士山が一望できるのは素晴らしい。昔はここをカップルで渡ると弁天様がやきもちをやいて別れてしまう、という(都市)伝説があったが、そんなことを言っていると観光客がこなくなってしまうからか、今じゃ「恋人の丘」という南京錠だらけの新名所もできた。ちょっと商魂たくましすぎるか?!突き当り洲鼻通り入口でコースは左折、R134号を西に向かって走ることになる。

          

境川河口から見える江の島の姿が一番「らしい」姿かもしれない。向こう側に息子甘辛が中学生の時に「職場体験」させてもらったという船宿が見える。デパートなど厳しい接客業やマニュアル全開のマ●ドナルド、力技の引っ越し業など友達は様々な職場で勉強していたが、朝早く起きて釣り客の荷物運びさえすれば後は船で釣り放題、アジ、サバを筆頭に山ほど魚を持って帰った甘辛の選択は見事なものだと思った。その向こう側に「江の島トレジャー」のゴールとして答え合わせする「観光協会」、映画「陽だまりの彼女」では主演者の出身地とされ、撮影舞台となったらしい。ここでも富士山が姿を現し「イル・キャンティ」を過ぎると新江の島水族館である。クリスマスらしく大きなツリーが飾ってあるが、実は飾りは全て魚、クラゲなのだが面白い。 

            

ここからしばらく走るとお馴染み「サーフビレッジ」である。無料のネット付コートがあり、甘辛とサッカーの練習や北関東のジローくん達がやってきてビーチバレーを楽しんだ。最近「ビーチテニス」というテニスとバトミントンのあいの子みたいなスポーツも流行ってきており、一度チャレンジしたいと思っている。私が波乗りするマイポイントはこのエリアか「うな吉」を釣り上げた引地川を渡ったスケボーパークの前である。河口付近が上級者の好ポイントになっているようで、ツワモノはサーフビレッジとパーク前を行ったり来たりしているようだ。昔、スケートパークは鵠沼ガーデンプールと言い、数回遊びにきたことがある。今はスケートボードの施設となっており、私もたしなむ以上は一度練習に来てみたいと思うのだが、中々実行には至らない。むろん厳寒の時でもなければスケボーの練習するくらいなら、目の前で本物を使ってしまうからである。

        

さてさらに走って「浜見山交番前交差点」を過ぎる。ここは湘南でも超マイナーな辻堂海水浴場の入口だ。ここを過ぎると茅ヶ崎のサザンビーチまで遊泳できる海水浴場はない。茅ヶ崎も小さいがここはさらに小さく以前行ったときは地引網のロープの幅くらいしかなかったような気がする。周辺はサーフスポットとして結構有名で、さらに極秘情報だが夜中に投げ釣りにくるとイシモチがやたら釣れるらしい。海浜公園の展望台を過ぎると防砂林に遮られて海岸の風景は全く見えないがその代わり、正面に見事な富士山の姿が現れる。そしてしばらくするとやっと第一折り返し地点「浜須賀」である。ちょうとこの交差点は正月の箱根駅伝でランナー達が海岸線に走り出るところでテレビのスーパーにも登場する。

      

さて折り返すとしばらく何もないが、左側に海浜公園が登場する。甘辛が小学生の時に毎朝のようにサッカーの親子練習に来たグランドがある。今の季節、まだ暗いうちに朝6時の寺の鐘を聞きながら選手権に向けて飽くことなく練習に励んでいた。パッくん(石亀)の住む池や鵠沼プールガーデンに代わるジャンボプールもこの公園内にある。そしてはるか昔だが学生の時分、通学に小田急線を使っていた私は乗り過ごして終点片瀬江ノ島竜宮城まで来てしまい、持ち金2,000円という緊急時代に陥ったことがあった。仕方がないから134号沿いを歩いていたら、浜見山交番の警官に職務質問されたのである。深夜この辺りをふらふら歩いていたからだとう。身分証明と住所確認に免許証を見せた私に「何でこんなところ歩いてるの?」「お金がないので辻堂からタクシーに乗ろうと思って・・・」「ふーん、何か怪しいなあ。この住所には何年くらい住んでますか?」カチンときた私は「当家はかの地に300年くらい住んでますが、それが何か?」(この後、無事釈放された)

      

折り返しコースはこの先、「焼肉さかい」までほぼ何もない。。。この店やその先のレッドロブスターは我が家が家族で外食する時によく使うのだが、マイカーを使えないから自転車のない私は一人スケートボードで移動することになる。(むろん歩道上ね)芸能人がよく出没するという大震災後もここだけは納豆があった元町ユニオンの先あたりで再び江の島が見えてくる。灼熱の真夏だろうが厳寒の冬だろうがいつもすごい行列ができている「エッグスシングス」という謎の店(どうもパンケーキ屋らしい)を過ぎて、少し走るとさっきの江の島入口交差点、第二折り返し点である。ここで再び134号同じルートを西に向かい竜宮橋入口交差点で最後の折り返し、ゴールを目指す。途中立ち止まりながらだがチャリで走っても1時間もかかって太ももが張りまくる信じられない距離だ。何やらご当地紹介みたいになってしまったが、あと1か月もう少し気を入れてトレーニングを重ねないと正月早々挫折を味わいかねない手強いコースだった。

            

超兵器ポラリエ1号

2013-12-08 16:06:58 | ホビー
(この記事は約3週間にわたって記載したため、時系列が少しめちゃくちゃです)
最近テンションが上がってきた天体観測分野では天体望遠鏡以外に超兵器203号自身のレンズを直接使用した「星座写真」や星団の写真などがある。これはたくさんの星を写し撮るために長時間露出するので星が動いて線になってしまわないように、望遠鏡をガイドスコープにして手動で星を追尾するスタイルをとる。我が家の庭は比較的平らで障害物はなく空は広い方なのだが、周囲の家の邪魔な光が実に多い。(天文写真家ではこれを光害と言うらしい)横から入る光が多いと、長時間露出した際に肝心の星は写らずに画像は真っ白になってしまう。しかし追尾には赤道儀が必要だから天体望遠鏡ごと移動するのはかなりの手間になる。真っ暗闇の場所に移動したとしても駐車場から担いで持って行きこれを組み立てられる場所は結構限られてしまう。この秋の早朝はなんと3つもの彗星を眺めることができるという。ラブ・ジョイ、アイソン、エンケである。中でもアイソン彗星は今世紀最大の彗星(まだ始まったばかりなのに?!)の呼び声も高く、つい最近太陽に最接近した。ハレー彗星は76年、アイソン彗星は軌道の関係から見られるのは今回限りという。ぜひちょっとでよいからその雄姿を写し撮りたいものだと思っていたが、我が家の庭からはどうにも拝めなさそうだった。

ここで登場するのがもう一つの超兵器「ポラリエ」である。天体自動追尾装置なのだが、素晴らしくコンパクトで子供の弁当箱くらいの大きさしかなく、市販の三脚に固定してカメラをセットするとすぐに追尾撮影ができてしまう。仰々しい極軸合わせも簡便にでき、全てセットにしてもリュックに入る大きさである。これを私は結婚以来たぶん初めて妻に「誕生日のプレゼント」としてねだった。毎年の誕生日で私は特に何も欲しがらないから、妻が気を利かして色々プレゼントしてくれていたが、珍しく自分で所望したので二つ返事で購入を承認してくれた。11月になって急に寒くなったが深夜になると星も綺麗になったので、早速試運転を兼ねて庭で望遠撮影してみる。セットは簡単だったがやはり光害がひどく隣家の明かりが全て消え、それでも点灯している夜間灯などは覆いで隠したりして苦心の末、深夜にM45通称「すばる星」とオリオン座のM42の姿を何とか写し撮ることができた。三ツ星の左上にはなんとあのM78があるのだが、小さくて写らなかった。。。(光の国は実在するのである) そして、銀河鉄道999を知る者なら必ず憧れる「アンドロメダ銀河」、秋の星座でちょっと季節は遅めなのだが、やっとのことで姿をとらえた。早い時間に沈んでしまうから、空がまだ明るい影響を受け、やっと小さな姿を拝む程度だ。(雑誌などで見る雄大な星雲とはだいぶ違うな・・・)

      

そしていよいよ本命の「彗星」である。期待されるアイソン彗星はちょうど今日の出1時間くらい前、東の空の低い位置に見えるという。ただまだ十分明るくなっておらず、満月の明かりも邪魔してよほど水平線の近くまで暗い場所でないと見ることは難しいようだ。彗星観測の好機でなおかつ天気がよい時は外したら2度とない。私は彗星の軌道や天気予報からターゲットを11月18日と19日早朝に決め、以前から夜な夜なポインター号などでその辺を偵察し、高台で東の水平線近くまで見え、すぐ近くに光害の少ないポジションを探し求めた。近頃は防犯の意味もあるのか、人もいない海浜公園やめぼしい丘の上も街灯で光が満ち溢れている。ロケ的にはいつも波の様子を偵察するR134号歩道橋がいのだが、街路灯のオンパレードで昼並みに明るくどうにもならぬ・・・結局「ここならどうにか。。。」というのはいつも私が波乗りに来て桜ポインター号を駐輪する場所、つまり海岸である。東の水平線方向は弁天橋の明かりが邪魔だが低くまで見え、国道の明かりは松並木が遮ってくれるので比較的光害は少ない。海だから空半分は100%開けている。

最初の日の午前4時半、この地に立つと眩いばかりの満月が邪魔したが、雲一つない澄んだ空だった。目印はおとめ座の一等星「スピカ」である。真っ暗だが水平線近くには多くの光があり、周辺を丹念に双眼鏡で眺めたがどうもそれらしいモノは全く見られなかった。それでもポラリエに超兵器203号250mm望遠レンズモードを向け、少し広範囲に露出を繰り返した。そのうち何枚かは「これかなー?」というのが写っていたが、星自体がピンボケになっている時もあり、定かではなかった。旧来の一眼レフならピントを無限遠にすればよかったのだが、203号はなぜか微妙に1回1回合わせる必要があるようだ。苦戦しているうちに南南東の方角仰角45度くらいの位置にぼやーっと見られないガスと線が見えた。変だなー。周辺は雲ひとつないのにあのあたりだけ何やら星雲のようにも見える。私は一応何枚か追尾モードで撮影しておいた。 単なる雲ではないし、残念ながら肉眼でもはっきり見えるモノだから彗星のような有名な天体でもあるまい。しばらくすると漆黒の闇に消えてしまった。

  

翌朝、再び私は4時に同じ場所に立った。満月が邪魔しているが周囲は真っ暗、前日に比べて風も少ないし(見えないが)快晴なので全天の星がくっきり見える。日の出時刻の約1時間前(午前5時45分頃)東の「おとめ座スピカ」と斜め下にある水星の中間あたり・・・・ネットで観察できるであろう方角を詳しく下調べし、双眼鏡で探したがやはり確認することはできない。ネットで見る雄大な彗星の姿ではなさそうだ。仕方がないので、それらしい方角に135mmくらいに落とした望遠で数秒撮影を繰り返し、それらしいものが写っていたら望遠を伸ばすという作戦をとった。倍率を返ると不思議に微妙にピントがずれてしまい、その都度明るい星で合わさなくてはならない。すると今度はさっきそれらしきモノが写っていた方角がわからなくなってしまい、悪戦苦闘を繰り返した。水星が地平線から離れ少し夜が白み始めた頃、「明日は天気悪いから今回はダメかなー」とあきらめかけていた時にようやく星とは違う鮮やかなブルーの光点が少しだけ尾を引いているように見えた。私は最後のチャンスと思い、何度かシャッターを切ったのだった。日の出近くなると猛烈に海風が強くなり、光点がぶれてしまい始めたのでやむなく帰路についた。

帰宅して急いでPCに落とし、ネットで見られる下手な素人の撮影したアイソン彗星の姿を探すと、まさしく私の撮ったものと同じ色、同じ尾の引き方だ!(老師、ついにボクはやりました!)この彗星はこの後、11月29日に太陽に最も接近(近日点という)し、その後彼方へ去っていく。近日点が一番明るく輝くが太陽の間近なために宇宙望遠鏡でもなければ観測することはできない。数日後再び明け方の空に姿を表すようだが、真珠湾の日くらいが月もなく観測にはお勧めだったそうだ。太陽から遠ざかると2度とお目にかかることはない、やはり彗星というのはロマンだなー。今度は「赤いライオン号」も出動させ、反射望遠鏡でも向けてみるとするか。なーんてこの記事を書いていた時は思っていたのだが、何と太陽に最接近した際に肝心の彗星核が燃え尽きたのかなくなってしまった。。。これはショックだー。宇宙の出来事というのは分からないことだらけで予測不可能なんだな。これが私のGETできた唯一の貴重な「今は亡きアイソン彗星」の雄姿である。

  

アイソン彗星まさかの崩壊・消滅から約10日、一時は夜空に3つ見えたこともあるという「ラブジョイ」という16号バイパス沿いにあるホテルみたいなネームの彗星が、思わぬことにかなり明るく見頃と聞いて、また同じ海岸に張り込んだ。超兵器ポラリエ1号の操作もだいぶ慣れ、星座や星をとらえることもできるようになってきたのだが、肝心の彗星だけがどうしてもその姿をとらえられない。。。今日も朝から粘ったのだが、あっと言う間に雲に覆われてしまい、無念の納竿(もとい、納ポラ)となった。
次のイベントとしては12月14日にふたご座流星群が極大となる。天文現象というのは「この機会を逃すと死ぬまで見られない」ものばかりだが、毎年何十、何百年に一度というショーが盛り沢山にあるのも確かだ。35年前の天体望遠鏡と星空追尾装置ポラリエ、そして超兵器203号により元星空少年のロマンは広がりを見せることになろう。
ちなみに初日に撮影した正体不明の天体だが、どうもネットで調べると「静止衛星が軌道を修正するためにガス噴射した痕」というものらしい。これまた実に珍しいものを見たものだ。(ご利益はなさそうだけど・・・)

  

エサ取り名人と向き合う

2013-12-06 20:36:56 | ホビー
今年もあと1ヶ月になってしまったが、年頭に自らに課した「試しにやってみる」事柄は第3弾まであった。一つはゴルフでこれは練習、ラウンドそれぞれほぼ定着した。次は「スノーボード」だが、何度かトライしたのだが天候不順に悩まされ続け、シーズン終わり間際でようやく実現した。これから再びシーズンが到来するが、新しい職場の人とスノーボードツアーに行く約束をしたから、これも回数は望めないものの定着するだろう。最後の一つが「船釣り」だったのだが、海辺に住んでいる私にとって最も実現しやすそうだったのに、なんと今に至るまで実行できなかった。「いつでも行ける」と思っているとかえってそのチャンスを逃しまくってしまうものだ。10月末に一つ下のフロアにいる「セッシー」(仮称)が一枚の写真を私に見せ、「今、これにハマッてましてね・・・」と笑いながら話しかけた。山ほど並んでいる「カワハギ」である。主に冬が旬の魚で薄造りと肝が超美味な高級魚だ。片瀬漁港の朝市で何度か活魚を購入し、刺身にしてもらったがうっとりするほど美味かった。

しかし釣り人の中ではかなり難物で有名で「エサ取り名人」と言われているそうだ。身体の構造上、水中でホバリングできるので竿先にアタリを感じられることなくエサだけついばんで食ってしまうというのだ。そう言えば15年ほど前に近所の元悪友たちと茅ケ崎港からカワハギ船に乗り込んだことがあった。朝の6時、まだ真っ暗な時間からバケツ一杯のアサリを渡され、手がかじかみながらその中身をきれいに剥いてエサ箱に入れる作業を小一時間やらされた。7時に出船して午後3時まで休みなく釣り続けて、GETできたのは小さなカワハギたったの4枚・・・2匹は何となくリールを巻いたら針に小さな魚がついていた、別の1匹だけ何か竿先が重くなったのが分り、最後の1匹はお隣とのオマツリの先に付いていただけなので、正確には釣ろうと意図して釣れたわけではない。この釣りの特殊さを知らず、いつも波止場などで使っているチョイ投げ用の柔らかい竿を持参してしまったので、微妙な反応が全く分からなかったゆえの大惨敗である。何しろ竿頭(一番数が釣れた人)が37枚!翌日スポーツ報知の釣り紙面に「茅ケ崎丸7時〜(カワハギ)釣果4〜37少しムラあり」とバッチリ書かれてしまった。船を降りる時にそれぞれ釣果を聞かれ正直に応えてしまったため、この屈辱をうける羽目となった。「やーい、この『4枚』ってぇのは太郎じゃんか」同行仲間に冷やかされたものだ。

あの苦い経験を活かし、今回は何事も経験豊富な先達に教わることにした。専用竿を用意してもらい、仕掛けの作り方、針の変え方、エサの付け方、そしてアタリの見抜き方と合わせ方などすべて指南してもらった。まずカワハギ専用の竿は微妙なアタリを見逃さないために先端が超硬調子になっている。また仕掛け作りにおいては特に針が大事で必ず針先が外を向くように付けること、また何度か釣っているうちに(釣れたらの話だが)針先が鈍くなってくるとすっぽ抜けるので、面倒でも小まめにハリス部分を取り換えること。エサはアサリの身だが全部ではなくカワハギは黒い点の部分だけを食べるので、堅いヘラ?の部分を串刺しにし、黒い部分が針先に引っ掛かるように付ける。カワハギはホバリングしながらエサをついばむのでアタリは分りにくいが、いよいよエサ吸い込むと「トントントン」とコンクリを叩くようなアタリを竿先に感じる。この時、磯のメジナのように一気にぐあーっ合わせるのは厳禁で100%針を吐き出して抜けてしまうので、「トントントン」が大きく感じていく程度にふわーっと竿を持ち上げて何となく合わせ、間髪いれず同じ速度でリールを巻き上げる。なるへそ、これだけの注意事項を全く知らずに「カワハギ船」などに乗り込むのがいかに無謀なことが分かった。

今回出船するのは横須賀の長井港、我が家からは1時間ほどの距離がある。新車で我が家にやってきてまだ半年足らずの「赤いライオン号」が魚臭くなるのを妻が嫌がるので、仕方なくポインター号にクーラーBOXを積み込み、長靴を履いたまま家を出た。カワハギ船には珍しく午前、午後に分れた「ショート船釣り」があり、私は数は少ないが大きいのが釣れるという午後船の方に乗り込んだ。釣り好きの同僚は午前船から出動し、午前11時頃に一旦帰港して我々と合流することになる。防寒着にくるまって1時間バイクに乗るのは結構しんどいのだが、この時間だと海岸線は七里ガ浜から鎌倉にかけて大渋滞となるから車を利用しないのは割と正解なのだ。この頃はお出かけに際してとにかく天候に恵まれているが、この日も朝から晴れ渡り、洋上は風もうねりも少なく船釣りのコンディションとしては最高に近いものだった。(あまり凪いでいる時はあまり釣果がよくないものだが)

先発隊のセッシー達が午前船から帰港してきたので、戦果を聞くと「まあまあ、ぼちぼち」ということだった。「つ抜け」ぎりぎりくらいだという。釣り用語らしいのだが、「つ抜け」とは10枚以上の釣果を言う。ひとつ、ふたつ、みっつ、・・・・ここのつ、つまり10枚以上になると数えるときに「つ」が抜けるからである。(なるほどねー)私は少し小ぶりだがカワハギのサイズには丁度いいくらいのクーラーBOXを持って張り切って午後船に乗り込んだ。ベテランのセッシーとジュンちゃんに挟まれ、釣り場に移動する間に細かい手ほどきを受けた。初心者は私とイケちゃん、タックンの3人である。「そんなに数は釣れないんでねー。針先だけは注意して鈍くなっているようだったら横着しないでマメに取り換えてくださいね。ここにたくさん代えの針はありますからね。」

次にセッシーは釣った魚の保存やさばき方まで教えてくれた。その日は妻が遅くまで外出予定だったので、釣れた魚は私がさばくか新鮮なままで保存しておかなければならない。(まあ、とにかく釣れてからの話なんだけどな) 最初の釣り場に到着し船長の「どうぞー、水深は40mでーす」の掛け声を合図に一斉に仕掛けを落とす。カワハギは海底の方にいるので、一旦おもりを底につけてから「スイスイ」と誘う動きをする。さすがに手強い相手のようで早速釣り上げる人はいなかった。しばらくすると竿先に「ゴンゴン・・・」と何か金属的な引きを感じ・・・しばらくしてぐあーっと竿ごと持って行かれるアタリを感じた。「すげえっ、来たみたいだぞ!」カワハギってこんなメジナみたいなすごい引き方したっけ?夢中でリールを巻き取ると道糸は次第に船底の方に引っ張られていき・・・・
なぁんだ、反対側の船べりにいる人とオマツっちゃってるだけのようだ。船頭さんはてきぱきと絡まった糸を解きほぐしてくれ、私はがっかりしてリールを巻き上げたが「んっ」何か妙な重みを感じたまま引き上げると、何と先端の針に小さなカワハギが1匹ついているではないか!「やりぃ!オレ、カワハギ作戦第1号だぜー」  

  

セッシーに言わせると、初めて(正しくは2回目)で第一投目で釣り上げた人はそれこそ初めて見たそうだ。「釣り人の心理」編でも書いたが、船でも磯でもとにかく「最初の一匹」までが全プレッシャーの8割くらいを占めるのだ。まずはボウズではなくなったので一安心。。。「詳しい釣り方が載ったURL教えますから、イメージトレーニングしてきてくださいね」と何気なく脅かされて実はかなり緊張していた。そのサイトの釣り人談では(そんなの書かなくてもいいのに)「初めの頃は船内で唯一人のボウズってのもざらにあったほど奥の深い釣りなんです・・・」なんてことが書いてあったのだ。初めて内定通知をもらった就活学生のような気分で、海に写った私は間違いなく「どや顔」だったろう。

気分がノッている時は結果も付いてくるもので、次に仕掛けを落としてしばらく誘っていると、ジュンちゃんに教わった「トントントン・・・」というアタリがはっきり分った。隣のセッシーが「えーっ、また来たぁ!ホントかよ・・・」急激な合わせは厳禁というので、慎重に巻きながらも完全ににやけていた顔が次の瞬間蒼白となった。「あ、あれっ?すっぽ抜けちゃった・・・」急に竿先が「スカンっ」と軽くなったのである。なるほどこれが「エサ取り名人」の異名をとるカワハギの洗礼か。。。 3つ付けたアサリの黒いところだけが見事にかすめ取られていた。。。その後も「入れ食い」ほどではないが、移動するポイントごとに1枚、2枚はコンスタントに釣り上がり、中には良型も交じって全部で8枚。。。見事前回屈辱の「倍返し」である。「つ抜け」には及ばなかったが午後船だけの竿頭は14枚だから十分満足のいく釣果だった。金属的なアタリに対し、ゆーっくり合わせるやり方も何となく覚えたし、実に楽しい釣行だった。午前船から釣ってきたジュンちゃん達に少し分けてもらって持ち帰るのは全部で16枚、近いうちにまた来よう。

      

さてその晩、外出する予定だったカワハギ大好物の妻からは「もし釣れたら、血抜きをしておけ」と言われていた。釣りあげたままクーラーに入れて放っておくと白身に赤い血が混ざってしまい生臭くなるというのである。エラの隙間からナイフを入れて海水入りのバケツにしばらく浸し、クーラーBOXにしまい込んだ。さばき方もセッシーが船上で丁寧に教えてくれたのだ。まず背中の角のような突起の後ろからザクーっと包丁を入れ、真ん中くらいまで歯を進めたところ「えいっ」と手で左右に綺麗に引き裂く。こうすると頭側に大事な肝が付いてきて傷をつけずに取りだせるらしいのだ。身の方はヒレの部分を切り落とすと「ぷぁーっ」という感じでまさしく「カワハギ」の名のごとく綺麗に皮を剥ぐことができる。理科室の人体模型を思い出させる若干グロい姿だが、後は普通に下ろして刺身にすればよい。釣った日には刺身の弾力感ととろける肝を味わい、翌日はグルタミンの効いた旨味成分を味わうのが通の楽しみ方らしい。

  

小さいヤツから練習していったが、さすがに初めて下ろす魚なので要領がよくわからない。旬なので小さめのサイズでも肝はパンパンだ。慎重にヒモを切りながら取り出すが、やはりちょっと傷を付けたり潰れてしまう時がある。その時は仕方なくつまんで口に入れてしまうのだが、信じられないくらい美味い!これが釣ったばかりの新鮮な「カワハギの肝」か。。。神様からの贈り物としか思えないほどまろやかで、一度味わったら二度と忘れることはないだろう。一番大きいのから4枚は翌日に妻に薄造りにしてもらうためにとっておき、残り12枚はことごとく肝を取り出し、短冊切りの刺身にしてしまった。残念ながら薄切りにする技術がなかったのと3枚下ろしもそれほど精緻ではないのでロスが多くてもったいなかった。私はいそいそと西友に好物の「浦霞」を買いに行き(この肝には日本酒しかあ・り・え・な・い)息子甘辛と卓を囲んだ。「オレ、肝ってそんないに好きじゃぁないんだよな」とつぶやく甘辛にいつもなら「まあ、一口食ってみろ、美味いぞ」と勧めるのだが、今回限りは(大人げなく)黙っていた・・・独り占めするためである。妻の分はとっておいて、刺身を十分に堪能した。「エサ取り名人」相手の奮闘だが、釣る楽しみと食う楽しみ、ダブルハッピーに今年最後の「試しに」シリーズはハマってしまうかもしれない。。。

      

天体にロマンを求めて

2013-12-03 22:23:44 | ホビー
テレ東の釣り番組みたいなタイトルだが・・・星空は数十年くらいで大きく変わることはない。しかし人間はそうもいかず、まだ邪念の少ない中学生くらいだった頃に使った天体望遠鏡を使って、今も変わりない天体を観測することに不思議なロマンを覚え、あえて最新式のモノを使わずに古い望遠鏡を引っ張りだしてきたのはここ数年である。「どうせ使うなら最初からいいのを使え」最初から父が買ってくれたのは小学生が使いこなすには難しい10cm反射赤道儀だった。小さな身体で持ち運ぶのもかなり大変で、しかも複雑な構造だったから十分機能を発揮できなかったが、それでも月面クレーター、木星の模様や土星の環、金星の満ち欠けなどを初めて見た時は感動に震えた。赤道儀という「北極星に回転軸を合わせ、時間とともに星空の回転に合わせて望遠鏡で星を追尾する」という方式を理解し、本格的に星を撮影してみたいと思ったのは中学生の時眺めた「皆既月食」で、こずかいを貯めて様々な天体機器を少しずつ整備して行った。

その頃は初代望遠鏡は錆ついて使えなかったので、(北極星に向ける)極軸望遠鏡搭載の当時最新式反射望遠鏡を購入した。それに加え、一眼レフカメラを装着するためのアダプター、暗い天体に向けて長時間露出しても星が流れないような追尾装置なども手に入れた。部活や試験勉強で忙しい時ではあったが、暇を見つけては望遠鏡を夜空へ向けていた。ただ我が家には自家用車がなかったので、天体観測に向いた場所へ移動することはできず、見えるのは専ら庭から見える星空に限られていた。それでも月面クレーターの拡大写真から惑星、明るい星団などにはまっていき、最後は自分の部屋を暗室化し現像道具一式も取り揃えていた。当時何かにつけて入り浸っていた茅ケ崎駅北口の「ダイクマ」のカメラコーナーには現像液や定着液、印画紙だけでなく白黒版だが引き伸ばし機も販売していたのだ。つまり自分で天体を撮影し、ネガを現像、写真に焼き付けるまで全て自分で行っていたのである。ものすごい手間だったが、この技術は学生時代、論文に掲載するための電子顕微鏡写真を何百枚も自作する際に役に立った。

当時、最新式だった天体望遠鏡は保存も良かったので今でも十分能力を発揮できる。写真技術はディジタルカメラが主流となり、PCを使って自動的に天体を捕捉・追尾する機能は向上したが、望遠鏡そのものの構造というのはそれほど変わっていない。反射望遠鏡なら鏡を使って光を集め、接眼レンズ(アイピース)で結像して見るだけである。ただ残念ながら高性能を誇る超兵器203号だったが、40年前の望遠鏡に装着するアダプターが存在せず、自作したものではうまくピントが合わせられなかった。元々203号はカメラに興味が無かった私がひょんなきっかけで「バルブ機能を使って天体を撮影したい」と思ったから望遠レンズとセットで購入したものだ。まずは月だけでもいいから映像にできないものかと考えていたところに見つけたのが、「デジアイピース」という兵器である。これは接眼レンズがそのままCOMSセンサーになっているカメラでUSBで直接PCに映像を映し出し、動画としてキャプチャーすることができる。

今年の9月、暦の関係で中々満月にならないそうだが、18日の中秋の名月はまさしくフルムーンだった。それまで我が望遠鏡に装着できるアイピースを探していたのだが、接眼レンズ口径サイズから一種類のしかも旧式の製品しかなかった。高倍率撮影は満月の月面では面白くないのだが、試しにやってみたらPC画面に「ドバーっ」と迫力ある月面が現れた。昔は公立の天文台のような施設でしかできそうもなかったことが今は簡単にできるのだな。さて動画ファイルとしてキャプチャできるのだが、これをどのようにして静止画にするのかよくわからない・・・色々調べあの手この手を使って何とか(変な形のようだが)一応、ネットにもアップできるような形式にできた。しばらくして半月となった際にもう一度クレーターを狙ってみたら中々迫力ある画像にすることができた。昔はこれ1枚写真にするのにものすごく手間がかかったのだが、今は一瞬にしてできあがる。ただ「画像処理」というのは見たまま焼き付くのとは少し異なり、画面上の明るさによって勝手にピントの具合を補正してしまう上に、拡大倍率を変更することもできない。(つまり常に同じ大きさの画像しか得られない)

        

デジアイピースの処理では通常の天体観測でいう倍率150倍くらいであろうか。10cm口径の望遠鏡ではかなり高倍率である。「動画で撮影する」というのはこれまでのスタイルを全く変えてしまうものだった。星は静止していないから、画像を得ようとすると星の動きがわからない程度の速さでシャッターを切らなければならない。しかしシャッター速度が大きくなると露光時間が減る分ただでさえ少ない星の光をとらえることができない。高倍率ほど視野にある星の動きが速くなり、星は暗くなるから上に露光を長くできないから、「惑星」などは最も撮影が難しく大口径で光量と分解能を稼ぐか精密な自動追尾で露光を長くできなければ「光点でなく面積がある」という画像を得るだけで精一杯だった。その点、動画を撮っておいて後でコマ切れにキャプチャーし何枚も重ねて作るというのは実に合理的に見え(実際にそういう専門的な手法があるそうなのだが)、私は惑星撮影に応用してみることにした。最初のターゲットは明け宵いしか見えぬ金星を除いては一番明るい「木星」である。

この時期、深夜になってしまうのだが簡単に見つけられる木星にデジアイピースを装着した反射望遠鏡を向けた。この倍率だとガリレオ衛星と木星の縞模様、大赤点などがかろうじて見えるくらいだと思い、楽しみにソフトを起動したが、どっこい残念ながらそう簡単なものではなかった。星が明るすぎて点にしか見えないのである。月面の場合は画面全体に及び、明るすぎる場合はソフトウェアが自動的に修正を行っていたが、木星は小さくて明るいので視野の中で光り輝いたまま細部のコントラストを調整するには至らないようなのだ。秒間フレームが決まってしまっているのか、画像をもっと薄くしないとただの光点になってしまう。さらに拡大するとか賀状処理に違うテクニックを入れるのか、はたまたデジアイピースではこれが限界なのか、もう少し調査研究が必要そうである。天体望遠鏡を向けて「像を結ぶだけ」でそこそこに天体画像が写せてしまうのだから、動画撮影した後画像処理するという「星の動きを追尾しなくてすむ」方式は実に画期的な方法だ。

  

自分の都合や夜空の様子、季節によって月面一つ撮影するにしてもタイミングは難しいものだが、「今回で終わり」ということがないので、夜空に星が見える限り光害だらけの庭からも見える天体を追ってみたいと思う。使い方を工夫すれば最も難しいとされる星雲、星団など超高級望遠鏡のカタログなどでしか見られない美しい天体写真も夢ではないと思う。そのために動画で保存した天体の画像を加工するソフトウェアを教えてもらおう。そして次は別の分野、星野(せいや)、星座など天の川など広い範囲での星空撮影に挑戦だ。今年は彗星の当たり年、なんと今自分は夜空に3個もの彗星を見ることができるという。ぜひその姿を写真に保存したいものだが、その奮闘記はまた今度にしよう。

おまけ
10日ほど前になるが、以前紹介した大雄山最乗寺の紅葉は最盛期とも言える見頃となっていた。杉の林に囲まれているイメージしかなかったのだが、素晴らしい紅葉の名所だったんだな。田沢湖に旅行して以来、これまであまり興味を持たなかった紅葉が俄然面白く感じるようになった。