超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

ゴリ橋先生を囲む作戦

2017-04-27 06:28:01 | 昭和
小学校卒業から○十年、記念作品の木彫りを担任の「ゴリ橋先生」から預かり、知る限りのクラスメイトに直接また知人の人脈を頼んでその旨メッセージを送ってもらってから約1ヶ月、大体想像していた通りだが数名の元クラスメイトは連絡用のアドレスにメールをよこしてくれた。ぼーっとしていても仕方がないから、「一月後に作戦会議をやらないか?」と第2弾をかました。この手のことには割とシビアに考えている私は「できることなら何でも協力するよ」というメッセージは「必要以上には踏み込まないよ」という意味にも解釈し、「一月先に来ない者は、いくら先に設定しても来ないだろう」と割り切ったのである。参加を表明してくれたのは今後、この話を進めるに最も頼りになりそうなクラス最強の女子エンちゃん(仮称)と私と幼馴染のカリコ、ゴリ橋先生から木彫り受け取りの時に付き合ってくれた(会えなかったが)テーラ、ここ数年顔を合わせている業界人?のパゲ、そして40年ぶりの再会となった初登場タランくん(仮称・デスラー総統の副官ではない)である。

当日、私は木彫りの拡大写真を撮ってプリントアウトし、卒業アルバムや遠足などの写真を持って行った。その直前になってテーラから「千葉に仕事に行くので参加はキャンセル」というメッセージがきた。サーフィン協会の仕事もしている彼は「ホントに仕事?千葉に波乗りしに行ったんじゃないの?」と冷やかしの陰口を叩かれていた。私はふと思いついて、別クラスの幹事を立派に努め奇跡的ともいえる人数を集めたプチエさんにダメ元で「オフィシャルアドバイザーとして来てくれないか」と声をかけた。他クラスとは言え、小中似たような顔ぶれだから知らないわけではないと思ったのだが、我ながらこの閃きは羽生選手の4回転ジャンプ並みのプレーだったのである。急なお誘いをしてメンバには言っていなかったから、「何で彼女がいるねん?」ということにならないように、事前に待ち合わせてお店に向かったのである。

約40年ぶりの再会となった「タランくん」以外は年に数回は集う面々だが、やはり小学校時代の話となると思い出話ばかりが先行して盛り上がってしまう。私は酒が進む前にとっとと事務的な話を始めた。まず卒業作品の木彫りを預かるようになった経緯、ゴリ橋先生とのコンタクトと再会及び先生の近況を手短に説明し、卒業アルバムと名簿、何枚か家で見つけてもらった写真を取り出した。まず名簿と集合写真などを見比べて「どの写真が誰?」から始まり「そもそも我がクラスにはどんなヤツがいたのか?」そして何となくクラスメイトのイメージが蘇ってくると、次は数々のエピソードである。修学旅行で泊まった宿の名前、買ったお土産、他校とのケンカに走ったヤツ、社会見学で東京を歩き回った話、その時の失敗談・・・タイミングを見て私は木彫りの拡大写真と持参した「たぶん持ち主が分かるサンプル」を取り出して見せた。昔話で盛り上がるだけではここに集まってもらった意味がないのである。



「ここにイニシャルがあるだろ。だからこれとこれは○川さんと●村さん、また今日来れなかったんだが、□山さん情報だとこのパンダが笹に登ってるヤツは△田さんの木彫りだそうだ。そして同じ□山さん談では『丸い大きな口だった』のがエンちゃんの木彫りということなんだ。持ってきたんだが見覚えねえか?手渡し第一号になるんだが」我がクラスで最も活発で勉強も運動も何でもクラス一できたエンちゃんは木彫りを手に取って眺めていたが「うーん、鼻がでかかったような気がするんだけど・・・思い出せないなー」重たい木彫りを6体も持ってきて一つでも配って帰りたい私は「これ、心なしかエンちゃんに似てねえか?結構上手にできてんじゃんか。持ってけよ」「うーん・・・」迷っている彼女の横からカリコが「ねー、これ△野くんに似てない?髪の毛斜めに流してるしさ」さらにプチエさんも「あー、たぶんそうだよ。」「(ったく、コイツら、余計なこと言いやがって・・・)」私はダメ元で写真を撮り返事もよこさない△野くんにメールで「これ違う?」と聞いたが、その場の手渡しは諦めた。



イニシヤル入りの持ち主が分かっているのは全部女子のモノだったが、残念ながら最近コンタクトがあるという人は誰もおらず、手を真っ黒にして段ボールから取り出して並ばせ、拡大写真を何枚もとって、現物も持ってきたのに1個も売れなかった。プチエさんは小学時代に△野くんのことがお気に入りだったと聞いたので「そんなに好きならお前が持って行け」と半ば自棄になったものである。(むろん却下された)それからしばらくゴリ橋先生の思い出話となった。昼休み時間など一緒にグランドでドッジボールもやってくれた先生である。そんな時も一番活躍していたのはエンちゃんで「オレ、エンちゃんの球、速くて見えなかった」「まともに取ろうとして怪我したヤツがいた」「地面スレスレのボールは、土煙が上がっていた・・・」無茶苦茶に言われていた。結構怪力自慢だった私もエンちゃんに腕相撲で勝てたことはただの一度もなかった。繰り返すがエンちゃんは「女性」である。

今会うと結構イケメンだったように思えるタランくんはかなり大人しい子供だった。「オレ、1学期の通信簿に『ちょっと暗い』と書かれちゃったんだけど、2学期には『少し明るくなりましたね』と書いてあった」体育館もプールもなかった我が校は青空卒業式のつもりでリハーサルしていたのに当日は何と土砂降りの雨で各組自分の教室で担任の先生から卒業証書を受け取った。最後にゴリ橋先生が「惜別の歌」を歌い、感極まって涙を流したのを女性軍はよーく覚えていて、懐かしそうに話していたが、当時の我々おバカな男子たちは、そもそも「セキベツ」の意味からして分からなかったのである。少し酒が進みいい気分になってきた私はスパークモードに入る前にもう一つ大事な用件を持ち出した。「この先、どうするか?」である。プチエさんらの活躍により、私が以前「木彫りを預かっている」と発したメッセージは10数名のクラスメイトに届いていると推定される。そのうち伝えたアドレスに連絡をくれたのは、このテーブルにいる人も含め6人だけだ。また彼女は他のクラスがどうしているかもその場で紹介してくれた。

この6人全てに木彫りの拡大写真を見てもらったが、誰も自分又は他人のものを判別できなかった。たぶん大半が持ち主不明となるのは間違いない。先生は奇遇にも我が家の近くの学校にいる時があるが、先生に会うのはともかく、自分のモノか分からない木彫りを受け取るためにわざわざ来るか?名簿はあると言っても数十年前だから実家があったとしても個人の連絡先を知り、案内をだすのは困難を極め中には嫌な思いをすることもあるという。私は木彫りについては任せてもらえば家で預かることに当分問題はない。頃合を見計らってウッドデッキのインテリアにしてしまう、海辺でバーベキューするときの木材に使用するなど案を出した。(キャンプファイヤーなどは禁止らしい)「先生に会いに学校まで行って、焼却炉で焼いてしまうというのはどう?」カリコが「皆で拝んで成仏させる」案を主張した。私はこれをヒントに「神社に人形を納めるように、御炊上げをしてもらう」ことを思いついたが黙っていた。

エンちゃんは私の持っていった住所録を眺めていたが、突然スマホを取り出して電話をかけ始めた。私が持ってきたパンダ彫りの持ち主、△田さんの番号にかけているらしいのである。(誰が使っているか分からないのに恐るべき行動力だ)「お父さんが出たよ。今、仕事でいないけど、帰ってきたら連絡くれるってさ」すごい!あっという間に一歩前進した「木彫りはともかく、いい先生だったから、集まって会いたいよねー」私は(その場のノリもあっただろうが)彼女の勇気に敬意を表し、その場でスマホを取り出してゴリ橋先生の番号にかけてみたのである。「あ、ゴリ橋先生ですか?●小6−Xの磯辺太郎です。今、クラスメイトが何人か集まってるんですけど、お話してもよろしいですか?」「うん、何か周りが賑やかだねえ。女傑の○×さん?もちろん、よく覚えてるよ」エンちゃんから始まって、皆少しの時間だったが先生とお話しできた。突然の思いつきだったが皆懐かしそうにしていた。そして最後にエンちゃんにもう一度代わり、約半年後にともかくも先生を囲んで集まろうということになったのである。



翌日、来れなかったメンバにはそのことを伝え、前夜の写真などを送った。また夜遅くエンちゃんにはパンダ彫り女子から連絡があったようだった。以前、プライベートで色々あって音信不通になっていたようだが、エンちゃんはまずはLINEつながりを持ち、本人の了解で私にも連絡先を教えてくれた。実は彼女は妻とともに私の母校キャンパスで何度かテニスをしたことがある間柄だったので、ちょっと遠慮がちに挨拶メールとゴリ橋先生との2ショット写真、パンダ彫り、前夜の様子などを送っておいた。ものすごく久しぶりであまり人と会いたくないならスルーされるかとも思ったが「写真ありがとう。ところで先生の左側の男性はどなたですか?」と返してくれたのは嬉しかった。ただ少し変だな。先生の左側?私は写真に向かって左側に写っているので、先生から見ると右側に立っているのである。「先生の隣?段ボール持ってる男?あんまり変わらんと言われるんだけどね。ボクですよ。

ガンさんらと一緒に結構仲良く遊んだのに顔を忘れちゃったのか?!ちょっとがっかりしたが、ホントに色々あったようだ。すると再び驚愕の返信がやってきて、「段ボールを持ってる男性がゴリ橋先生かと思ったの。失礼、左が太郎ね」アイツ・・・今年、72歳になる先生とオレを間違えてたのか?ボケるにもほどがあるぞ!約40年前の先生は背の小さな私たちから見たらスラッと背が高いイメージがあるのは分かるが。。。自他共に認める根に持つタイプの私は、いつか会う機会があったら絶対イジメてやることにしたのだった。その後エンちゃんは名簿で連絡先不明となっている全てのクラスメイトに電話をかけまくって10名以上の音信を獲得するという八面六臂の活躍、△野くんからは相変わらずそっけない内容で「いいえ、違います。私のは・・・です」彼は自分の木彫りを覚えていたのだ。そんなんこんなんでこの先、少しずつ進展していくような気がしているのである。

それぞれの進路

2017-04-24 21:44:07 | 出来事
もう4月も後半に差し掛かり、旬な話題ではないのだが・・・
開花は早かったものの、思わぬ寒気の再来に満開まで時間を要し比較的長かった桜の季節も終わった。この時期は元社宅の家族仲間が集う季節でもあり、ここ数年は「しんさん・ハニーさん」の住まう天王洲アイル近くの「運河まつり」が会場となっている。以前も書いたが、親も子供も同年代に近いので共通話題も多い中、この時期に話が集中するのはやはり「子供の受験」である。今年成人式を迎えた一番年長のSYUくんから、2番手の息子甘辛、3番目がKナちゃん、りょんりょんとMEIちゃんがこれに続くという風に5年ほどの間に思春期真っ只中の若者が集まっている。高校受験とその後大学受験があるから、毎年誰かしらが試練を受けるわけである。正直皆気になってはいるのだが、近所のおばさんみたいに、やたらに人様のご子息の進路などを聞きまわるのはいかにも「はしたない」ので、皆全部終わって本人からの発表があるまで待っているのである。昨年は甘辛の順番だったのだが、相変わらず意表を突いて一瞬で決めてしまったので「晴れの発表会」とはならなかった。

今年はKナちゃん、MEIちゃんが大学・高校のダブル受験、イケメンのりょんりょんも高校受験とラッシュだった。数年前、この家族仲間の子供たちで受験トップバッターだったSYUくんが我が家の花見会で初めて本人の口から発表した時、満場の拍手喝采とともにママたちの間では密かに「(SYUちゃん、いきなりハードル上げてくれたよね)」と囁かれた。甘辛の高校受験は「どこ吹く風」でふわーっと終わってしまったが、Kナちゃんが運河まつり会で発表した時は再び大喝采、特にSYUちゃんママの後輩になったということでお互いに大喜びだった。その3年後、後を行く二人と共に大学受験である。別にハードルがあるわけではないのだが、皆ずいぶんプレッシャーがかかったことだろう。そして4月のとある土曜日、運河まつりの日がやってきた。

ここ数年の運河まつりでは公園の花は半分以上散ってしまっていたが、今年は桜の満開時期が例年よりも遅いようで満開の花見になるのではと期待が高まっていた。昨年は散った花びらが川面を多い尽くしていた目黒川クルーズも最高のコンディションのようだ。前日の大崎駅付近の目黒川にかかる橋をたまたま渡った時は最高潮だった。ところが残念ながら前日夜間から朝にかけて雨模様で何やら不安定な雲行きだった。午後遅くなって晴れ間のでる予報だったが、地面のコンディションがやたらに悪いのでどうやら中止になってしまったようだった。がっかりしながらも、早朝いつものように母を竜泉寺に連れて行った後、雨模様の空を恨めしく眺めながら大人しく先日から製作にかかっていた超大型「ウルトラホーク2号」の塗装にとりかかった。息子甘辛のお下がりになったトレーニングウェアを着て室内でプラモ製作に勤しむ姿はまさしく「休日のおっさん」そのものである。「午後からうちで宴会やることになったよ」妻は奥方連中と連絡を取り合っていたらしく、しばらくしてそれぞれの家族が集まってきた。

      

家族仲間で集まるときに、甘辛は相変わらず部活で忙しく始めからいることは滅多にないのだが、子供たちはもう親達と一緒にテーブルを囲む年齢でもない割には嫌がらずにちゃんとやってくるところがいいと思う。今回は主役の3人も含めてフルメンバ登場だという。いつものスポーツジムで水素水をもらい、いくつか買い物をすませて帰宅するとほぼ全員メンバが揃っていた。乾杯してしばらく色々話をして、何となく本人による進学発表みたいな雰囲気になった。まずKナちゃんは誰もが知る有名大学に新しく新設された学部に進学すると発表して室内割れんばかりの拍手となった。父の「おとお」さんは「数打って当たっただけ」と苦笑するが、進学塾でも難関とされるところだった。「すごいねー、がんばったねー」皆が祝う中で、SYUちゃんパパは「おじさんの後輩だね」と笑った。何とKナちゃんは兄のようなSYUちゃんの「ママの後輩で、パパの後輩」にもなったのである。(すごい奇遇な縁だなー)

お兄さんに比べて楽天家なのか実はSYUちゃんママが密かに心配していたらしいりょんりょんは何と、同じ高校へ合格。「(ハードル上げたよねえ)」と言われた例の県下で有名な進学校である。ママたちは臆面もなく本人の前で「これだけイケメンであの高校でバスケなんかやるのは反則よねえ」と囃し立てていた。どうも本人はこの辺の部活としては珍しい「アメフト」に興味があるらしく、親はヒヤヒヤしているそうなのだが。そして最後のMEIちゃんは隣接大都市のこれまた誰もが知る進学校だ。女子生徒にものすごい人気があるらしい。「この子たちはホント、やるときは決めてくれるよねえ」皆拍手を惜しまなかった。キャンパスの話、部活の話、そして彼氏彼女の話・・・子供達の間でもすごく盛り上がったようで、実に微笑ましいところだった。(一番身近にある私の母校を誰も志望してくれなかったのは若干寂しいものがあったが)

そんな中で一番年長のSYUちゃんは企業訪問に行く大学生のように前髪を七三分けにきっちりし、パパと一緒にハイボールを飲んでいた。私もそうだったが、家ではあまり父子で飲むことはないようだが、こうして皆で集まったりするときは一緒にやるようで、パパは嬉しそうだった。「やっぱ、息子と酒を飲み交わすってのは親父の願いだよねえ」あと数ヶ月で法的に飲酒を許される息子甘辛は、私と妻の血を引きながら、首を傾げられるが全くアルコールを飲もうとしない。息子が全然酒を飲まなくてもあまり残念だとは思わないのが我ながら不思議である。私は一人で飲む時も妻と飲む時も誰と飲む時も、何も変わらない性質のようなのである。甘辛は部活から帰ってきて、私が彼用に一本だけ買ってきた「カシスオレンジ」という婦女子用弱酒を少し飲んで昼寝に入ってしまった。

家族友達が集まると大抵、子供が小さいときの話で盛り上がる。甘辛は一つ上のSYUちゃんと大の仲良しで1階だったSYUちゃんちには中庭に面したベランダを乗り越えて遊びに行っていた。一時恐竜が彼らのブームになっており、よく四足恐竜のマネをして地面を這い回っていた。甘辛が幼稚園のとき将来成りたかったものは「恐竜戦車(ウルトラしぇぶうぅうーんに登場)」理由は「歩かなくてすむから」という意味不明さだった。お隣だった一つ下のKナちゃん、MEIちゃん姉妹とも仲良しで、ベランダ伝いに区切り板との隙間を潜り抜けて遊びに行っていた。家族仲間皆でしゃぶしゃぶ・すき焼食べ放題の店に行った時、むずかってイライラした父の「おとおさん」に抱えられ、「寝ろ〜、寝ろ〜」とおむつのお尻を叩かれていたKナちゃんが女子大生である。常に一緒にいるわけではないが、ものすごく久しぶりに会うわけでもない子供達の成長が最も「早く感じる」スタイルなのかしれない。

昼寝から起きて、SYUちゃんの横で私の水素水を飲みだした甘辛に「社宅に住んでいた時の何を覚えているか?」と尋ねると、「柱にマジックテープでテレビのリモコンが貼り付けてあった・・・」まったくなんとつまらんことしか覚えていないのか?!(私は使うたびに場所が変わって探し出すのが許せなかったのである)「オレは折れた足首にキミがフライングアタックしたときの痛さを忘れないよ」とかましたが、実は以前も書いたように「会社帰りにドアの鍵を開ける音を聞きつけて幼い甘辛がドアの向こうから『とととっ』と走り寄ってくる足音を聞く」時がこれまでで一番ほっこりした瞬間だった。少し前は子供達の年齢上微妙に話や遊びが合わないようだったが、再び距離が縮まって何やら集まって盛り上がっている。妻はしきりに「この子たちはホントにいいよねえ」と年寄りのように繰り返していたが、私はだいぶいい気分になった頭の中で「親がちゃんとしてるからさ」とスマしていたのである。

北の国でのクリスタル・K

2017-04-17 22:37:05 | 昭和
新年度明け初日、いきなりマッドサイエンティストを演じて、事業年度キックオフ懇親会を飾って1週間後、都内の別のオフィスビルで同様のプレゼンを行った。その日は我が社で定めた「安全の日」ということで、朝の朝礼では10分ほどの「安全講話」を依頼され、4月に新しく配属された20名近くの若手フレッシュ社員への講話、そして入社3年目くらいの若手核要員の発表会の終わりに総合講評と啓蒙のためのレクチャーを頼まれており(全く人使いの荒いスタッフだ!)、最後に例の数十ページの「重点取組説明」である。人前で喋ることをそれほど好きではないし本業でもないのに、さながらノーギャラ有名人の営業講演スケジュールのように数だけは重なり、全部内容の異なるプレゼンを終わってみると喉がからから、ヘトヘトになる。同じことを「北の国」と「杜の都」で繰り返すと思うと、少し気が重くなるが自分では4回分でも聞く人は初めてだから、中々手抜きはできないものである。

キックオフ懇親会は前回、合成画像なども使って中々趣向を凝らした決意表明をした部門があったり、マッドサイエンティストによるアルカリイオン水素水の効果に関する実証実験があったことはすでに次の拠点には伝わっており、若手を中心にさらにパワーアップしたコスプレ決意表明が噂されていた。その拠点フロアにもアルカリイオン水素水を導入するつもりだったから、一応前回同様の実証実験の準備はしていったが、「やるかやらないか?」はその場のノリによって「浮かないように」判断するつもりだった。しかしやはり後半になって酒が進んでアトラクションが盛り上がると「その気になって」しまい、実験用白衣を取り出したのだった。発足以来もっとも出席率が高いと思われる大群衆は期待をこめて(半ば呆れて)いたようだったが、「同じことは繰り返さない」主義の私は、100円ショップで買ってきたもう一つのアイテムを引っさげて現れたのだった。「皆さん、こんばんは。マッドサイエンティストのロビン磯辺改め、『カンムリワシ』磯辺です」(知ってる者だけが腹を抱えた)

さて順番でいくと次の回は「北の国」だった。東京は20度にも届く勢いで暖かい陽気なのに、何と北の国は「雪が舞うかもしれない」予報だった。仕方がないので、もうそろそろ寿命となる初夏用の薄手ジャケットの上に真冬用ダウンを羽織って飛行機に乗り込んだのだた。私は久々にこれまただいぶくたびれてきた、鎌倉小町通りのおもちゃ屋で購入したウルトラマンネクタイをしていたのだが、飲み物をサーブしにきたCAが「素敵なネクタイですね」とにっこり笑ったのだった。これまでも何度かあったのだが「(へーえ、CAって時々そういうコメントもするんだな)」と不思議な気分になっていた。たぶんそういうことに慣れたベテランCAだったのだろう。「新千歳空港周辺の天気は曇り、気温は4℃でございます・・・」そして空港から駅に向かう列車の車窓から見ると横殴りの吹雪になっていた。(もう4月半ばだぜー)
「オレ、結構色々行ってるから昼食は決めていいよ」と言っておいたら、駅から少し距離のある札幌みそラーメン専門店に向かうことになった。確か前回も大雪の中、フードを被って雪中行軍したあげく席待ち行列に阻まれて断念したお店だったが、幸い若干時間がずれていたこともあり、スムーズに店に入ることができたのだった。

  

業務改善発表の対象となる若手核要員は1名しかしなかったが、上司や多くの管理者に囲まれて手厚くレクチャーし、その後はいつもの講話会である。前半は新年度重点的に行う取り組みの説明、後半はそれを行うための具体的プランが主になるが、大体後半に聴衆参加の閑話休題コーナーみたいなものを設ける。今年度は「職場の風土改革」というのが会社的なテーマにもなっているから、関連するエピソードをいくつか紹介して「こんなことが参考になるんじゃないか?」と考えてもらうわけである。
①一人の時は全力を尽くしても集団で何かやると「誰かがやるだろう」という心理が働いてしまい、個々人は手抜きするようになる。
②あるテーマに対してアイディア出しを行うと、その人の考えるスタイルによらず、「個人」の方が量も質もよいアイディアが出るようだ。(ただしグループ討議の後、個人で持ち帰ってアイディアを考えるのが最も効果的だ)
③グループでアイディア出しをする時には、とにかく発言に対し頷いてあげるとたくさん出る。
業務改善や職場の風土に関して、基本は職場メンバ数人で形成するグループで色々考え取組みや発表資料をまとめたりするが、会社から「やって」と義務付けられたようなものは得てして愚にもつかないようなアイディアばかりになる。上記3つの事項はちょっと皮肉っぽいが誰もが経験的に頷けるところも多いだろう。

        

次に私は3本の棒が描かれたスライドを出した。
「右側の棒と同じ長さだと思うのを左の3つから選んでください。まず①だと思う人・・・んっ?②だと思う人・・・・はて?③だと思う人・・・うっそー?!」
「ちょ、ちょっと待ってください。別に変な罠じゃないですよ。もう1回やるよ。①だと思う人・・・うーむ。。。」私は思わず説明者の位置から降りてスクリーンの後ろまで歩いて眺めてみた。①に手を挙げた人はちらほらしかおらず、②ばかりだったのだ!
「ちょっとさー、ここヒネるところじゃないんだよね。どう見たって①じゃんか。ここで間違うと次の話に繋がらないんだよなー」
思わぬところで場内が笑いで盛り上がったが、続けて演出したかったのはこういうことだったのだ。
「自分の判断では答えは明らかだと思える事項で、実際そうであっても、大勢の他人が違うことをすると自己の判断に自信がなくなって同調していまう。しかし集団に一人でも見方がいるとその同調率は急激に下がる。だから大勢の中で間違いやルール違反を指摘しようとした者に対しては誰か一人でもいいから味方になること。」

      

そして順序がよくなかったかもしれないが、次のスライドはたまにヒューマンエラー研修などで見かける絵で、こちらは私の思惑とおりだった。一般的には「錯視現象」と言われ周囲の模様や配列などに惑わされ大小や方向などを錯覚してしまうものだ。「右側の●が大きいと思う人・・・ふむ。左側の●が大きいと思う人・・・ゼロ。いや、両方同じ大きさだと思う人・・・多数。いやー、今度は期待通りですねー」実は私がこっそり仕掛けたいたずらで、左側の●がほんの少しだけ大きいのである。
「まず予備知識なく見た目だけで答える人は普通なら右側が大きく見えますね。そして『これが錯覚の話』だと過去の学習で知っている人は見た目ではなく、同じ大きさと答えるでしょう。しかし錯覚もあるけど、時として予備知識や先入観というのも間違った答えを導き出すということです。ちょっといじわるですが、「磯辺ほどのヒネクレ者がこんな多くの人が知っているような錯覚の絵を持ってくるはずがない。何か罠があるはずだ」と洞察する人はすごいと思いますが、残念ながら一人もいませんでしたね」
「やられた・・・」「なるほど・・・」「ええーっ?」苦笑、感心、呆れなどの入り混じった表情の観衆を前に「誰もが思い描く風土改革を見える形にしてほしい」として、約2時間にわたる講話を閉じた。

    

さて、夜の部キックオフ懇親会は下馬評ではかなり「やってくれそうな」感じだった。「磯辺さんにも参加してもらいますので・・・目隠しとかもあります。またお得意分野の解説もお願いしますよ」会場はいつも通り食堂かと思ったら、プレゼンを行った会議室をそのまま使用していた。正面の壁いっぱいが大きなスクリーンとなっていて、ミニIMAXシアターのようだった。まずいくつかのイントロダクションが映し出され、床には2者選択クイズ用の○と×のゾーンが設けられた。それぞれ仕事絡みの真面目なクイズがあったが、私好みの(て言うか、明らかに意図されていたが)ウルトラシリーズのレアクイズも織り込まれていた。
「写真のようにモロボシ・ダンと卓袱台を挟んで座っているのはゴドラ星人である」(○か×か?)・・・「それでは○×出揃いました。磯辺さん、正解と解説をお願いできますか?」
「このシーン知らない人はモグリだと思いますぜ。右側は有名なメトロン星人です。タイトルは『狙われた街』、この場所は北川町と言います。実はこのアパート全体がメトロンの円盤になっているんです。メトロン星人の狙いは・・・」

「写真にあるウルトラセブンの光線技はエメリウム光線である」((○か×か?)・・・「はい、○×出揃いました。磯辺さん、再び正解と解説をお願いできますか?」
「ま、これも基本ですが、この光線は『ワイドショット』です。初代マンのスペシウム光線よりも威力がありますが、エネルギーを消耗している時は使えません。写真は・・・うーむ、たぶんライトンR30爆弾で倒されたキングジョーの内部から逃亡しようとしたぺダン星人の円盤に向けて打ったものだと思います」
「おおーっ」「へーえ」「ふーむ」(この写真だけでそこまで分かるのか?!)場内はに驚愕とも感心とも呆れとも言えるどよめきが沸き上がった。以前にもこのシーンが何かの問題に出たことがあるのだが、「何に向けて放ったものか?」ずばり言い当てたのは息子甘辛であったのだ。真面目問題は出し尽くして、このコーナーは終わりのようだったが「楽しいなー面白いなー(たぶんオレだけだけど)。まだあるなら全部出してよ」とうとう司会は用意してくれたウルトラ関連クイズを全て披露することとなる。

いつの間にか初代マンとセブンが両サイドを飾っており、私はすっかり興奮モードになっていた。今回はマッドサイエンティストの用意はしていない。アルカリイオン水素水や試薬など液体群を機内に持ち込めないからである。しかしここまで用意してくれたアトラクションに何か応えなければならない。私は一つだけ閃いて、マンのネクタイとYシャツを脱ぎ捨て、再び麻ジャケットを羽織り、カンムリワシヘアーとサングラスを身に着けた。「皆さん、こんばんは。クリスタル・K・磯辺です。キックオフ会有志の皆さん、楽しいアトラクションをありがとう。ボクがこよなく愛するウルトラ戦士を呼んでくれたお礼に歌います。知っている人はご一緒に・・・」左側はパンチパーマにサングラス、右側の高い声の人は裸ジャケットというスタイルだったが、さすがに女性もいる中で上半身裸になるわけにもいかず、「加圧シャツウルトラシックス」で出ない声を張り上げたのだった。

  

ダークウルトラ会の作戦会議

2017-04-14 22:26:45 | ホビー
先月の半ばくらいだったろうか、久々に「ダーク・ウルトラ会」のキリヤマ隊長から招集の連絡があった。新年度の活動計画について、作戦会議を開きたいという。この会は以前の職場の業界エクゼクティブで構成するとある連絡会で、私が何気なくバルタン星人のネクタイにMATのピンをしていたのを見咎められ(もとい!見出され)、見習い隊員の身分でいたものである。デビュー戦は約1年弱前で、ここから「アニソン・特撮縛り」のカラオケが始まった。地元の悪友たちとこの趣向でカラオケを行き始めたのは、全て「ダーク・ウルトラ会」に向けた練習だったのだ。その後、「ダーク・ウルトラ会西へ」作戦(スタートレックコラボ店潜入)、「シン・ゴジラ」鑑賞会、「永井豪オーケストラ」、「スターウォーズ(ローグ1)」鑑賞忘年会など、奇抜とも思える活動を続けていた。ただ残念ながら平日の勤務後の集まりはやたらに「仕掛け時間」が遅く、デビュー後は見習いと言いながら参加できたのは「永井豪」だけだったのだ。

その昔のアニメ、特撮、映画など確かに話が小気味よく通じるが、自ら「ウルトラの会」と名乗る割にはウルトラ戦士そのものの話題よりも、海外もののSFなどそれこそ「ディープでダーク」な世界に誰もが造詣深い。メンバは誰もがその名を知っているグループ企業の一会社を担うエクゼクティブばかりで私はずーっと「見習い」を名乗っていたが、永井豪オーケストラの反省会で「もういい加減に正規隊員になれ」という隊長の一言で「ホシノ隊員」となった。これは初代ウルトラマンの「科学特捜隊」に出入りして「見習い隊員」としてお手伝いをしていた「ホシノ少年」に因んだものだ。むろん本当はウルトラ警備隊の「モロボシ・ダン隊員」をネームにしたかったのだが、キリヤマ隊長の以前のネームが「ダン」だったのでちょっと憚ったのだった。メンバはキリヤマ隊長始め、イデ隊員、ハヤタ隊員、フジ隊員(女性)、アンヌ隊員(女性)、エキゾスカウト隊員・・・皆それなりの会社の幹部なのに円谷特撮防衛隊員で呼び合うのが不思議というか不気味だ。

その隊長命令の招集場所は何と「怪獣酒場」であった。これまで「打てないほどではないが」ストライクゾーンから外角高めにボール1個分ずれていた感があって大人しくしていたのだが、「久々にオレの出番か?!」今回は万難を排しても参加するつもりだった。さすがに年度末始は皆も忙しいらしく、1ヶ月くらい先まで見えるネット上のスケジューラで調整し、4月5日、6日どちらかということになった。「ホシノです。人間標本5・6どちらもOKです」有名な三面怪人ダダの登場したタイトルを使用した、ざっとこんなやりとりをする会なのである。しばらくして開催日の連絡がやってきた。大阪支部勤務の隊員以外は全員参加の模様である。キリヤマ隊長自らは同僚の隊員を従え、会社のノー残業デー制度を利用して開店前から列に並ぶという意気込みである。

開催は18時半目途、2時間制限だからギリギリ間に合うと踏んでいたのだがよりにもよって、そんな大事な日に限って珍しく仕事の予定がどどどーっとスケジューリングされてしまい、夜の部までセッティングされてしまいそうな勢いだった。年度当初で色々あってスタッフにもちろん悪気はないし、私はがっかりして隊長に「業務繁忙のため不参加」とお詫びのメールを打った。「仕事で行けない」などということは最も私のポリシーに反することだ・・・(「そうじゃねーだろ」と言われそうだが)前日に隊長からリマインダーが来てメンバを見ると途中からもあるが、大阪支部隊員と私以外は参加になっていた。特にフジ隊員(女性)など大阪への日帰り出張帰りでお開き時間ぎりぎりに駆け付けるという。うーむ。。。新幹線での遠距離出張にも関わらず参加しようという隊員がいるのに、電車で30分程度の位置にいる私が欠席とは何と不義なことか。

私は外せない会議以外のスケジュールは手を尽くして(謝りまくって)調整し、時間を圧縮したり別の日程にずらしてもらったりして、ダーク・ウルトラ会後半には行けるように目処をつけた。その旨隊長に報告すると「F.A.B!我々はノー残業デーを利用して5時から席取りしています。」そしてリマインダーを帰してきたエキゾスカウト隊員には「S.I.G!エンジェル編隊で行きましょう!」何のことだかさっぱり分からぬだろうが、「F.A.B」とは2015年に50年ぶりに放映された「サンダーバード ARE GO!」で隊員が「了解」のような意味でよく使う略語、そして「S.I.G」はこれも50年前のサンダーバードに続く「キャプテン・スカーレット」に登場する地球防衛機構(スペクトラム)の隊員が使用する「Spectrum Is Green」という了解を意味する略語であり、彼らの乗る迎撃戦闘機がエンジェルインターセプターという。これまた知ってはいるが50年前の英国の特撮シリーズで、私にとっては低めにボール半個分くらいずれている。

ちなみに英国の影響を受けているのか円谷の特撮シリーズの中でも「了解!」というニュアンスでアルファベットを3つ並べて使用するパターンがある。古くはやはり50年くらい前の「戦え!マイティジャック」で「S.M.J」(yes Sir Mighty Jack)、最近ではウルトラマンメビウスのクルーGUYSで「G.I.G」(Guys Is Green)と使われる。隊員は全てアルファベット読みで発音し、DAIGOさんのやたらに日本語の頭文字だけ取った意味不明の表現とは異なる。因みに以前聞いたことがあるのだが、よく知られている了解の意味で「ラジャー」は元々軍隊で無線の命令を受けたときに「received」という意味で“R”というワードを使っていたが聞き間違うといけないので「Roger(人名)のR」と言っていたのが、そのまま「了解」を表すようになったようだ。実は我が社にもアルファベットを聞き間違えないように特定の名詞を使う文化がある。「ジャイアンツのG、タイガースのT、ドラゴンズのD、スワローズのS・・・」なぜかプロ野球が多い。

さてダーク・ウルトラ会当日、思ったよりも少しだけ早く予定をこなし、走りに走って怪獣酒場に向かった。隊長からメンバーには「欠席予定だったホシノ隊員は部下をダマして抜け出す予定(笑)・・・」とか連絡が行っていた。(んなわけねえだろ)19時半くらい、つまり前半終わり間際くらいに飛び込んだ。通されたのは大部屋だったが、グンマを去るときにプレゼントされた初代マン模様のネクタイと科特隊ピンバッジを身に着けて現れた私に隊員は拍手喝采で迎えてくれた。普段は微妙にコースをつかれて中々ジャストミーできなかったが、この地ではほとんどホームグランドに近いもので何をするにも自信がある。テーブル上に並んだ大皿料理を見て、定番のスペシャルモノが多かったので、何を注文したのかほぼ一瞬にして把握できたのだ。



「早かったじゃない。何にする?ビールでいい?」アンヌ隊員がにこにこメニューを渡そうとするのを手で制し、一緒に注文を取りに来たお馴染みダダ模様Tシャツの店員に「ベロンベロンボンバーをお願いします」「へっ?ベロンベロン?何それ・・・」「来れば分かりますよ」キリヤマ隊長が「そのネクタイ最高ですね。特注品なんですか?」隣のハヤタ隊員は「ピンバッチもかっこいいですよ。会社でしてるんですか?」矢継ぎ早の質問にへーこら答えながら、持って来られたジョッキを片手に隊員皆と再会を祝した。ハヤタ隊員はイエローゴールドの小物を取り出して「ボク、これもらったんですよ」「あ、ナースですね。あれは食べでありますよねー」アンヌ隊員は「皆、お腹結構一杯だからこの辺の出てるヤツ食べてよ。これちょっと辛いのよ」「ははは。これはバードンかな。口から火が出ますからね」「すごーい、食べかけ見ただけでメニュー分かるの?」

今年は私のこよなく愛する「ウルトラしぇぶうーぅぅん」50周年なので、持って帰れる箸置きを全てセブンのオープニングタイトルだった。「姿なる挑戦者」「狙われた街」「湖のひもつ」・・・私も甘辛も迷いなく登場宇宙人、内容などを語れるタイトルである。隣にいた中々話の合うエキゾスカウト隊員と熱くエピソードを語り合っていた。あっという間にラストオーダーとなり、それぞれ飲み物とキリヤマ隊長が代表して「ペガッサ星人のダークゾーン」を注文した。「あー、海鮮焼きソバですよね。見た目はやたら面白いですよ。」想定通り、年間の作戦計画と言いながらも次の活動は会社員の聖地にいよいよ出店するという新しい「怪獣酒場」に開店直後に乗り込もうという「メールの一文」で済んじゃうような事項だけだった。このメンバーの今後の活動に期待したい。実はこの来店で私は記念すべき10回目、シルバー会員の称号とともに非売品プレゼントがあったのだが、それがただの「ダダ」の名刺・・・もうちょっと何か色つけてくださいよ~。

              

マッドサイエンティストの考察

2017-04-05 22:42:34 | 出来事
「水素水で健康セミナー」編で紹介した電解水素水製造装置、その場のノリで購入契約してしまった人もいた(私も半ばその気にはなっていた)が、「まずはオフィスに入れろ」という指令の元に総務のヒコさんが早速ビルオーナーと折衝し、給湯室への工事許可を得た。絶大な人気を誇る製造機(ホントか?)らしく、取付け工事までに1ヶ月も待たされると聞いたが、先日堂々と稼動を開始した。と言っても、パッと見何の装置か分からないほど地味で(つまりコンパクトでよいのだが)、しかも使い方が素晴らしくシンプルなので逆にありがたみが沸かないほどである。何せ元は水道の水だから(会社の施設だし)じゃぶじゃぶに使用しても気兼ねはいらないのである。(ちょっと良心が痛んだが)濃度が何段階か設定でき、「始めから最高レベルにするとお腹をこわすこともある」と警告されたらしく、一応真ん中レベルにされていた。むろんそんなことを気にも留めない私は自分の時はいつも最高レベルに変えて採集していた。

週末のプレミアムフライデー、早引けしてオフィス近くの公園で花見を企んでいたのだが、低温日が続いて開花が進まない上にまさかの雨模様・・・仕方がないので近所の場末っぽい中華屋の2階を貸し切り辛うじて正面に見える花を眺めながら過ごしたのだった。以前はよく職場で使わせてもらったという店の主人は気さくなもので、電話をしたら「17時までは休憩時間だが、これから店を開けるので2階を好きなように使ってよい」ということだったのだ。私は持参した大型ポットを取り出して水素水をたっぷり貯め込み「今日はこれで焼酎割って飲もうぜ」とプレミアムタイムになったらさっさとお店に向かった。勝手に窓際にテーブルを移動し、わずかしか咲いていないが正面に見えるように椅子を並べてしばらくビールで喉を潤した後、「部屋の飲み物は自由に飲んでよい」(むろん有料)というから焼酎を引っ張り出してきて、電解水素水割りにしてぐびぐび飲みだした。

「何か、いつもより酔いが回らないような気がするぞ」とグラスを口にしたドクさんが一番いい気分になっていたようだった・・・「しかし、これホントに効くんかな。昨日持って帰った水素水で早速米を炊いたんだけど、何か炊き立ての米が輝いていた気がするんだ」野菜もこの水で洗ってから食べると新鮮さが損なわれずに美味しいままと言う。せっかく導入したこの水素水の効能をどうやって証明するか。水素水割り焼酎では絶対無理だとは思ったが、めいめい思いついたところを語りだした。「この水で料理したくらいじゃ、分からんだろうな」「皮を剥いたりんごを浸けておくと黒くならないと聞きました」「いっそのこと植物の栽培に使ったらどうかな。オレんちの庭のニラに使ってみようかな」私が思いつくと「ウチもカイワレ大根に使ってみよう」さらにワル乗りが進み「動物にはどうかな。鳥かごに水に使ったら?」残念ながら鳥を飼っている人はいなかった。「では魚ではどうだ?」ウナ吉の水槽を思い出しながら口にすると「ウチ、金魚飼ってますけど、死んじゃったら戻らないし・・・」「いや、死んじゃうどころか倍の大きさに成長するかもしえねえぞ」好き勝手なことを言うものである。

私はそんな話を聞きながら、セミナー時に自分が持参したスポーツクラブの高濃度水素水が試薬で着色したオキシドール溶液の還元に全く反応しなかったことを思い出していた。そして本体装置のおまけにPH検査試薬も入っていたことを。。。「どうもオレの水素水が反応なかったことが引っ掛かってるんだよな。ちょっと休みに調べて、結果を実際にやって見せるよ」我が社は新年度のスタートに事業計画の説明会と懇親会を予定していた。キックオフ好きの我が社だが、発足して1年足らずの我がセクションはイマイチ周囲に遠慮があるのか、営業ラインのように「お祭り」のように弾ける盛り上がりが少ないので、「何か面白いことやろうぜ」とかましておいたのである。

私は週末に家に引きこもって、ひたすらネットをリサーチした。水素水の製法の種類、濃度の違い、効能に関する実験結果、考察など割とアカデミックな記事から、口コミ、やブログ、商品PRまで数え切れないほど情報が溢れかえっていた。さらに今回導入した電解水素水製造機のメーカー情報やその製品に関する投稿記事、評判などもできるだけたくさん読み込んだ。私にはほとんどない休日の過ごし方だが、つくづくインターネットとはすごいと感じた。それらしい連鎖する情報が限りなくあり、一般は文責を気にせず好き勝手なことを書いているので、よほど注意して取捨選択しないとどれがホントでどれがウソなのか見失ってしまう。あっという間に時間だけが過ぎていく。まだまだ証拠が足りないがきりが無いので半日費やして調べて出した結論は「どうも水素水の水素そのものの効果ではなさそうだ」ということである。

まず巷にある水素水サーバや市販のボトルだが、どれも違わずにうたっているのは「活性酸素を中和する」というものだ。しかしこれにはネット上でも「十分に効果がある」という説と「効果は見られない」という説があって具体的にどういうメカニズムなのか分かっていないようだ。運動やストレス、また喫煙や食物にあるよくない物質によって体内に活性酸素が発生するのは間違いない。ただ経口水で水素を取り入れたからと言って「これと反応し水が生成される」という単純な話でもないらしい。最初に目をつけたのがこの時発生する反応熱だが、高校物理で習った結合エネルギーと化学反応式、そしてパンフレットにある200mlの水素水に含まれる水素分子の数から計算すると(合ってればの話だけど)1日2リットル飲んで全ての水素が反応したとしても3カロリーくらいにしかならない。「体内で猛烈な発熱があって、内臓が損傷・・・」という仮説は否定的となった。

ちなみに前回、人が1日吸い込む酸素から体内で発生する活性酸素をどれくらい中和(水を生成)できるか、と計算すると2リットル飲んでも1%未満だった。さらに今回導入した電解水素水製造機の仕様や開発の歴史、そしてオフィシャルな広告をよーく読むと「水素水を使うと」と書いてはあるが、「水素の効果で」とは一言も書いていない。「ご飯がふっくら炊ける」「野菜の汚れがすぐに取れしゃきっとする」「お茶も濃く、風味が増す」そして何よりも焼酎の水素水割りでの実感に基づくとこれらは「アルカリイオン水」であることの効果ではないか?という仮説が立てられた。色々な状況証拠として
・製品にPH試験薬が添付されていること。(水素が溶け込んでいるのではなく、水素イオン濃度に関係している)
・デモでは水素水をペットボトルで平気で保管していたこと(金属でないと水素は抜けてしまうはず)
・水素水を料理用に使用していること(そもそも常温でさえ水素がどんどん抜けてしまうのに、炊飯などに使って意味があるはずがない)

つまり水に溶け込んでいる水素そのものの効果ではなく、水を生成する時に電極から溶け込むミネラル分やアルカリ化による効果と結論づけられるのである。この仮説を添付の試薬を使って様々な方法で実演して見せようと思うに至った。しかし巷に理科の実験で使用するような薬品やお馴染みのリトマス試験紙などどこにも売っておらず、真面目に考察するには材料が貧弱過ぎた。「ま、キックオフなんてお祭りでこんなの余興だからな。ウケ狙いで行くか〜」向かったのは理化学用品をわずかに扱っている東急ハンズではなく、100円ショップ「○イソー」だった。(このあたりでもはや、結末がプアーなものになるのは見えていた)実験用白衣は元々家にあるから、あとはコスプレ系だけか・・・だんだん本来の目的から逸れてきたような気がする。

用意したのは活性酸素水と言われるオキシドール、プチトマト、保存用ミネラルウォーター、水道水、ジムの高濃度水素水、オフィスのアルカリ水素水、そして検査試薬とコップである。前回のデモンストレーションでは色素試薬により真っ黒になったオキシドールを水素水が見事に透明に戻すという演出だったが、どうしても手に入らなかった。PH試薬はリトマス試験紙の代わりで、PH7の中性では緑色、酸性になると黄色、アルカリ性になると青色に変化する。午前中、私は自分のディスプレイの影に隠れ、デスクの上を水でびちゃびちゃにしながら予備試験に勤しんでいた。オキシドールを水で薄め試薬をたらすと黄色に変色、これにアルカリ水素水を加えると青色に変色した。高濃度水素水や水道水、ミネラルウォーターで試しても当然緑色のままである。コップや薬品に限りがあるので、順番や段取りを考えているうちに昼になってしまった。(むろんそういうことをやりながら仕事はちゃんとやっていた)

        

スタッフが用意したびっしり文字の詰まった長〜いプレゼン資料で予定よりも30分近くオーバーし、やっとの思いで説明を終えてキックオフ懇親会に臨んだ。事業年度開始にあたり、それぞれのセクションから趣向を凝らした「決意表明」がなされて中々のこれまでにしては中々の盛り上がりであった。若手や女性スタッフの多い営業系のセクションはこの手の催しに文化的に一日の長があり、いつも煌びやかで楽しそうで羨ましく思っていたのだ。「(まだちょっと吹っ切れてねえな)」と思いつつも皆のアトラクションに惜しみない拍手を送り、器具資材をもって理化学実験用白衣をまとって現れたのだった。
「皆さんこんばんは。マッドサイエンティストのババルウ磯辺です。今日はここ数日間の調査と午前中の(仕事中だけど)予備実験の成果として、『電解水素水の効能について』考察します。」たまたまそばにいた若手の女性社員をアシスタントに指名し、試薬を片手に自説を繰り広げていった。

          

実際この説はかなり信憑性の高いものだと思う。プチトマトを私の水素水とアルカリイオン水素水をつけておくと、アルカリの方が黄色く発色しいかにも農薬や汚れが解け落ちているようにも見える。これを3人に「どちらか分からないように」食べてもらうと美味いかどうは分かれたが3人とも「アルカリの方が固い」という感想で一致した。ちなみに私も試したが、なるほど「固い」というのはよく分かった。新鮮とも言えるかもしれないが、味も「若い」というのが適切な表現のような気がした。これがアルカリイオン水に浸けた方である。私の高濃度水素水とオフィスのアルカリイオン水素水、私の考察は前者は未知数だが、後者は別の要因で効能が目に見えているということだ。ぶっちゃけ、どちらも大金を叩いて買おうとは思わないのが共通点かな。そして引き続き長期にわたるるが「我が家のニラの生育に効果があるかどうか」検証してみようと思う。