中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

ストレスチェックを実施しましょう

2018年04月20日 | 情報

50人以上の事業場には、ストレスチェックの実施義務を課せられていますが、
50人以上100人未満程度の小規模事業場では、ストレスチェックを未だに実施できていない場合が散見されています。

定性情報ですが、実施できていない理由は、主に
○実施する費用がない
○実施に必要な産業医を契約できていない
○社内の実施態勢ができていない
に集約されるようです。

ストレスチェック制度では、法令上3つの義務があります。
1.ストレスチェックの実施 (法第66条の10第1項、則52条の9)
事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、
検査(ストレスチェック)を行わなければなりません。
2.ストレスチェック結果の報告(則第52条の21) 様式第6号の2
報告する実績:在籍労働者数、検査を受けた労働者数、面接指導を受けた労働者数
3.個人情報の保護(法第104条 及び、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号、
改正法施行、平成17.5.30))

 ストレスチェックの実施は義務ですが、実施しなくても罰則はありません。
労基署の役割は、ストレスチェック制度の普及・定着が優先されますので、当面、労基署の指導はないでしょう。
しかし、コンプライアンスの観点から、早急に実施することを検討してください。
そこで、次善策として、簡便なストレスチェック方法を提案します。
少し、不安が残りますが、やらないより遥かに優れていると考えるからです。

ストレスチェックの実施マニュアルによれば、「ストレスチェック」とは、
「ストレスに関する質問票(選択回答)に労働者が記入し、それを集計・分析することで、自分のストレスが
どのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。」とされています。
従って、厚労省が推奨している調査票と採点方法を従業員に配布し、結果を自己採点してもらいます。
そして、高得点者には、自己責任で、委嘱している産業医に面談してもらうのです。
因みに、暦年、会計年度等は、関係ありませんので、いつでも実施して構いません。
この簡易策でストレスチェックを実施すれば、数年内にマニュアル通りの実施も容易に見えてくるでしょう。

なお、産業医を委嘱していない場合は、早急に産業医を委嘱するのが第一義ですが、
ストレスチェックは「一次予防」が主眼ですから、従業員が自ら、ストレスを軽減させる対応をとるよう啓発してください。
対策の一案として、厚労省のポータルサイト「こころの耳」に掲載されている「ストレス軽減ノウハウ」を熟読するよう、
あらかじめ従業員に周知しておくことです。

http://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/

どうでしょう、費用は殆どかかりませんし、たとえ産業医を委嘱していなくても、乗り越えることができるでしょう。
なお、企業規模から考えれば、従業員の名前と顔が一致できるでしょうから、
努力義務である職場分析は、無理をする必要もないと考えます。
以上で、一通り法令遵守にしていると見なすことができます。

ただし、ストレスチェックの結果は、労基署への報告義務があります。
法100条及び則52条の21の規程に基づき、様式第6号の2を所轄の労基署長に提出(Q&A19-6)します。
提出しない場合は、50万円以下の罰金(法120条第5項)になりますので、注意してください。
結論として、罰則がないから、ストレスチェックを実施しなくても大丈夫ということは、絶対にありません。
従業員に、何らかの問題が起きた場合、会社側に安全配慮義務の不履行を問われる可能性があります。

 


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