中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

ストレスチェック制度解釈⑭

2014年12月09日 | 情報
ストレスチェックは、高度な個人情報を取り扱いますので、情報の取り扱いについては、
慎重・緻密で、徹底した情報管理が求められます。
一方で、運営体制は、極めて「オープン」に実施することが求められています。
通常であれば、人事労務部門や健康管理部門が、組織として運営に当たるわけですが、
ストレスチェック制度は、社内の「衛生委員会」が中心となって運営することが求められているからです。

即ち、労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関する検討会報告書(案)には、以下のように明記されています。

「ストレスチェックの実施に当たっては、以下に掲げるような項目について衛生委員会で審議・確認し、
法令等に反しない限り(法令等に則った上で:筆者追記)各事業場での取扱いを内部規定として策定するとともに、
労働者にあらかじめ周知することが適当。
①ストレスチェックを実施する目的(労働者自身によるセルフケア及び職場環境改善を通じ
メンタルヘルス不調の未然防止を図る一次予防を目的としたものであって、不調者の発見が一義的な目的ではないという法の目的の明示)。
②ストレスチェックの実施体制(実施者、共同実施者(※)及びその他の実施事務従業者の明示)。
※共同実施により、外部の医師と事業場の産業医など実施者が複数いる場合は、
その中から実施責任者(産業医とすることが望ましい)を選定し、実施せ勤者も明示することが望ましい。
③ストレスチェックの実施方法(使用する調査票、評価基準・評価方法を含む)。
④個人のストレスチェック結果に基づく集団的な分析の方法(分析対象とする集団の規模の基準を含む)。
⑤ストレスチェックを個々人が受けたか同課の情報の取扱い(事業者による把握、受検勧奨を含む)。
⑥個人のストレスチェックの結果及び集団的な分析結果の共有範囲を含む)。
⑦実施者による個人のストレスチェック結果の保存方法(保存者、保存場所、保存期間、セキュリティの確保を含む)。
⑧個人のストレスチェック結果の事業者への提供に関する同意の取得方法。
⑨ストレスチェックの実施者又は事業者による個人のストレスチェックに係る情報の
開示、訂正、追加又は削除の方法(開示等の業務に従事する者の守秘義務を含む)。
⑩ストレスチェックに係る情報の取扱いに関する苦情の処理方法
⑪労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること。
⑫不利益取扱い(筆者追記)。」(資料4頁)

<具体的なストレスチェックの項目>
○各企業においては、国が示す標準的な項目を参考としつつ衛生委員会で審議の上で各々の判断で項目を選定する場合にも、
3領域に関する項目を全て含まなければならないこと、選定する項目に一定の科学的な根拠が求められることを示すことが適当。(資料7頁)

(オ)集団的な分析結果の活用 
○集団的な分析の手法として、国が標準的な項目として示す「職業性ストレス簡易調査票」に関して公開されている「仕事のストレス判定図」を
用いた場合、部・課・グループなどの分析対象集団が、標準集団に比べて、どの程度健康リスクがあるのかを判定することができる。
こうしたことを踏まえ、事業者による集団的な分析結果は、各職場における業務の改善、管理監督者向け研修の実施、
衛生委員会における具体的な活用方法の検討などに活用することが適当。(資料13頁)

イ面接指導の結果の事業者への提供
○面接指導結果の取扱い(利用目的、共有の方法・範囲等)について、衛生委員会等で審議した上で、
各事業場での取扱いを内部規定として策定することが適当。(資料14頁)

(参考)ストレスチェック制度解釈⑩
衛生委員会の役割が重要になります。
すなわち、各企業内、事業所内で実施されるストレスチェック制度の運用に関わる「諮問機関」的な役割を、
現行の(安全)衛生委員会が担うことになるでしょう。

(安全)衛生委員会は、分りやすく解説すると、安衛法において以下のように決められています。
『事業者は常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、衛生に関することを調査審議し、事業者に意見を述べるため、
衛生委員会を設置しなければなりません。
衛生委員会の調査審議事項は、
1.労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること
2.労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること
3.労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に関すること
4.前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項 になります。
衛生委員会のメンバーは事業者が指名することになりますが、
その要件は、
A.総括安全衛生管理者またはそれ以外の者で、
当該事業場において事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者 1名(議長)
B.衛生管理者 1名以上
C.産業医 1名以上
D.当該事業場の労働者で衛生に関し経験を有する者 1名以上 になります。  
また、事業場の労働者で作業環境測定を実施している作業環境測定士をメンバーとして指名することもできます。
ただし、A.以外のメンバーの半数については、当該事業場の過半数労働組合(無い場合には労働者の過半数代表)の
推薦に基づいて指名しなければなりません。
衛生委員会は毎月1回以上開催するようにしなければなりません。また、議事録は3年間保存する必要があります。 』

ところが、実際は、法令どおりに運用されていないどころか、(安全)衛生委員会を設置していないことにより、
書類送検された印刷会社があるように、(安全)衛生委員会を設置していない事業所がたくさんあるのが現状です。
しかし、改正安衛法では、各企業内、事業所内で実施されるストレスチェック制度の運用に関わる「諮問機関」的な役割を、
現行の(安全)衛生委員会が担うこと担うことになりますので、
今から、衛生委員会の正しく、健全な運営ができるように、態勢の立て直しを図ることが必要でしょう。
開催しているのか、いないのか分らない、審議する議題がなく休業状態になっている、というような事業所・企業においては、
今から取り組んでも、決して早すぎるということはありません。
大きく言えば、企業文化の改革ですから、時間はかかります。垢を取り除く作業だけでもたいへんな労力です。
繰り返します。ストレスチェック制度の運用を通じて、職場内の環境改善をPDCAサイクルで実行するための、
中心的な役割を、(安全)衛生委員会が果たすことになるようです。
その根拠条文は、改正安衛法66条の10
『6. 事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、
当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、
当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。』
ということになります。

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