発表のポイント:「自殺未遂等で救命救急センターに入院した過量服薬の患者に対する精神科介入」が、
「再入院率の低さ」と関連していることを示しました。
自殺未遂で入院中、精神科受診44% 「再入院予防に効果」 東大グループ3万人調査
2015年11月12日 朝日
薬を大量に飲んで自殺を図ったなどとして全国の救命救急センターに入院した約3万人の患者を調べたところ、
入院中に精神科医の診察を受けた患者は約4割にとどまることがわかった。
診察を受けた患者が過量服薬などで再び入院する確率は、受けない場合に比べ低く、早めの受診の効果が示唆された。
東京大の研究グループが発表した。研究グループによると、全国368の大学病院など救命救急センターに入院し、
2010年7月~13年3月の時点で退院した患者2万9564人を対象に調査。
入院中に精神科医の診察を受けていた患者は44%に当たる1万3035人だった。
病名が分かる患者の中では、統合失調症やうつ病などの患者が診察を受ける傾向があった。
また、研究グループは救命救急センターで精神科医の診察を受けた患者とそうでない患者の各グループから、
年齢や薬の種類など属性が似ている7938人ずつを選び、再入院率について比較。
診察を受けた患者の再入院率は7・3%(582人)、受けていない患者の再入院率は9・1%(722人)だった。
研究グループの金原明子・東京大特任助教(ユースメンタルヘルス)は
「自殺未遂を経験した方の自殺を予防するためにも、精神科医の介入が重要ということが研究結果から示唆される」と
話している。
自殺未遂者への救急医療における精神科医療の充実を
~自殺未遂等の過量服薬による入院患者への精神科介入が、再入院の減少と関連~http://www.h.utokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20151109.pdf#search='%E9%87%91%E5%8E%9F%E6%98%8E%E5%AD%90%E3%83%BB%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%A4%A7%E7%89%B9%E4%BB%BB%E5%8A%A9%E6%95%99'
1.発表者:
金原明子(東京大学大学院医学系研究科ユースメンタルヘルス講座 特任助教)
康永秀生(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻 臨床疫学・経済学 教授)
笠井清登(東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻精神医学分野 教授)
2.発表のポイント:
◆「自殺未遂等で救命救急センターに入院した過量服薬の患者に対する精神科介入」が、
「再入院率の低さ」と関連していることを示しました。
◆国内で初めて、「救命救急センターにおける精神科医療が、再入院率の低さと関連しているか」について、
大規模入院患者データベースを用いて検証しました。
◆本研究結果は、「自殺未遂者への救急医療における精神科医療の重要性」を示唆し、
今後の精神保健医療政策や自殺予防政策に、大きな寄与が期待されます。
3.発表概要:
自殺未遂者が自殺を完遂する可能性は、自殺未遂者以外の者と比較して、著しく高いといわれています。
したがって、自殺者を減らす対策の1つとして、自殺未遂者に対する精神科医療が重要と考えられます。
2008 年度の診療報酬改定においても、自殺未遂者の再度の自殺企図を防ぐ目的で、
「救命救急入院料 精神疾患診断治療初回加算」が新設されています。
ところが、自殺未遂で受診した患者に対する精神科医療の有効性について、これまで確固たる根拠は示されていませんでした。
そこで本研究は、自殺未遂者に対する救急医療における精神科医療の有効性を検証することにしました。
入院を要する自殺未遂の手段の多くは過量服薬です。そのため本研究は、
救命救急センターに入院した過量服薬患者に対する精神科医の診察が、再入院の減少と関連しているかを調べました。
大規模入院患者データベースを用いて、患者情報・治療内容・病院情報等を分析した結果、
救命救急センターに入院した過量服薬の患者への精神科医の診察が、再入院率の低さと関連していることが示されました。
本研究の結果は、「自殺未遂者に対する救急医療における精神科医療の充実の必要性」という示唆を、
今後の精神保健医療政策や自殺予防政策に与えるものと考えます。
本研究は、東京大学大学院医学系研究科ユースメンタルヘルス講座 金原明子特任助教、
公共健康医学専攻 臨床疫学・経済学 康永秀生教授、脳神経医学専攻精神医学分野 笠井清登教授らの
研究グループによるもので、これらの成果は日本時間11 月9 日午後5 時30 分にBritish Journal ofPsychiatry Open に
掲載されました。
なお、本研究は、厚生労働科学研究費補助金(政策科学推進研究事業 指定研究班)の支援を受けて行われました。
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