中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

休職・復職に関するQ&A⑦

2018年12月18日 | 情報

Q:うつ病を理由とする休職中の従業員が、「復職を可とする」との主治医の診断書を持って突然出社してきました。
どのように対処したらよいでしょうか?

A:ご質問の背景は、今回のQ&Aシリーズの②で紹介した作業を一切してこなかった結果と言ってよいでしょう。

参考までに②の主要部分を引用しましょう。
『まず、最低限必要な対応策を紹介します。
①休職者が安心して、病状の回復に専念できる環境をつくることが、まず大切です。
②精神疾患にり患直後は、何の情報・説明・会話を受け入れないことがありますので、静養・治療に専念してもらいます。
③症状が安定期に入ったら、会社の気持ち「早期に復職してほしい」(この一言が大切です)、
会社の諸規程、特に給与などの待遇、復職時の条件、休職中の連絡方法・手段等を文書で説明し、了承を取り付けます。
④そのために、会社側は1人の連絡担当者、連絡方法、連絡の頻度を取り決めます。
⑤民法上第三者である配偶者、ご両親等には、本人の了解の上で、説明します。
⑥連絡担当者の人選ですが、直属の上司等は除きます。当該上司が精神疾患を罹患した原因かもしれませんので。
また、連絡担当者は1人に特定します。複数で対処すると発言に微妙な差異が生じるからです。
⑦診断書は、定期的、例えば3か月に1回程度の間隔で提出させます。
⑧社内に支援体制をつくります。メンバーは、人事労務担当、産業保健スタッフ、産業医、衛生管理者等です。
⑨月1回程度に会合を開き、情報を共有します。
⑩当該従業員の了解・関与のもとに、主治医との接触・情報交換をします。
⑪主治医には、当該労働者の業務内容、就労状況、会社が考える復職条件等を案内します。』

特に、⑪が大切なのですが、これだけの作業を全く行ってこなかったことに加え、
当該休職者が復職を考えていることを全く察知できなかった結果ですから、
御社には大きな負荷がかかってきていることを認識することを前提にした回答になります。

まず、診断書は「本物」かどうか念のために確認してください。
そして、本物であれば、原則として診断書の内容は尊重しなければなりません。
なぜなら、医療の専門家が認めた公式の文書であるからです。
まず、産業医を含めて、人事労務担当や産業保健スッタフ、契約しているのなら弁護士、社労士の助言をもらいながら、
対応策の方向付けをします。
多分、当該従業員が持参した診断書の内容では、復職の可否を検討できないと推測します。
ですから、関係者間で疑問点を集約して、主治医へ質問し、回答をもらいます。
想定できる疑問として、主治医が復職の条件を提示している場合です。
この点に関しては、主治医の真意を確かめることが、むしろ重要な点です。

主治医の回答に納得できた場合には、産業医面談を設営します。
そして、産業医が当該休職者の復職に納得しているのであれば、原則として復職を許可すべきでしょう。
通常の対応をしていれば、通勤練習などをさせ、復職ができることを確認することが大切なのですが、
今回のような場合には、復職を認めたうえで、所謂「リハビリ出勤」のような対応が必要になるでしょう。
なぜなら、通勤練習などをさせている期間に、就業規則に規程している休職期間が満了することもあるからです。
なお、確認ですが、休職させるか、復職させるかの権限は、当該企業側にあります。

一方で、主治医の診断書や補足の医療情報に納得できない場合や、産業医が復職に難色を示すような場合には、
復職を認めないことも可能です。
ただし、復職を認めない場合には、当該従業員が納得できるだけの説得材料が必要であり、
そのためには、第三者の意見を求めることも必要になります。
そうしないで、ただ単に復職を拒否すると、争いに発展する可能性がありますので、ご注意ください。

 

 


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