中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

休職中の社員と、どのように?

2015年08月26日 | 情報
質問がありました。
うつ病をり患して、休職中の社員がいます。
中小企業ですから、休職中の社員ばかりに対応していたのでは、通常の業務が滞ります。
さりとて、放置したままでは不安です。
ネット検索していたら、休職中の社員に対する接し方が掲載されていました。
とてもきめ細かい対応内容が紹介されていましたが、弊社の状況では、とても出来そうにありません。
アドバイスをお願いします。

以下、答えです。
尤もな質問です。
私傷病の場合ですが、うつ病に限らず、病気やけがを治癒して、業務に復職する過程の全ては、当該従業員の責任です。
会社には、安全配慮義務(労働契約法第5条)がありますが、それに相対する義務として、従業員には「健康保持義務」があると云われています。
会社と社員(労働者)は、労働契約を締結しています。
労働契約とは、労働者が会社に使用されて労働し、会社はこの対価として労働者に賃金を支払うことを内容とする
労働者と会社(使用者)間の契約を云います(労働契約法第6条)。
ところが、従業員は休職中ですから、労働契約における労働者の債務の本旨に従った労務提供できないでいます。
労務提供できないでいるということは、本来であれば解雇措置となっても致し方ないのですが、
休職中ということは、従業員がこの労働の義務を、会社から一時的に猶予されていることになります。
従って、従業員は、労働契約の本旨を履行するために、病気やけがを早期に克服しなければならないのです。
一見、冷たく、あるいは厳しく映るかもしれませんが、権利と義務、当然の帰結なのです。

ですから、会社は、基本的に休職中の労働者の生活に介入する必要はありません。
しかし、会社には、安全配慮義務がありますので、定期的に休職している従業員の様子をチェックする必要はあります。
ちゃんと休んでいるのか? 主治医の治療を受けているのか?病気やけがの回復状況は、どの程度か?
といった具合に、観察していなければなりません。
そして、当該社員から、質問や問い合わせがあれば、真摯に対応しなければなりません。
ただし、会社はこれ以上に介入する必要はありません。介入する義務はありません。
過剰な介入は、かえってトラブルを引き起こします。
なお、これらの対応については、正確かつ詳細に記録してください。けっこう面倒なのですが、これが大切です。

ご質問をいただいたので、ネット検索をしてみたら、小生からみれば「過剰」とも思える介入、
あるいは、「支援」をしている例が、正しい対応であるがごとく紹介されていることに気が付きました。
大企業や公共機関ならともかく、中小企業において、人事労務部門のスタッフや、健康管理部門のスタッフは、
少数ですから色々な業務を兼務しています。
そもそも本来の業務を疎かにすることは許されませんので、休職中の従業員に対するケアは、最低限のことができれば十分です。
具体的には、主治医に対する早期の面談、月に1回程度の居宅訪問等でしょう。

主治医に対する早期の面談、月に1回程度の居宅訪問とは、何か?また、どのようなことをするのか?ですって。
疑問は膨らみますね。でも、この話題は、次回にしましょう。




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