中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

主治医と産業医の意見が分かれたとき

2020年02月13日 | 情報

2月8日付けの日経新聞紙に、産業医の先生による、産業医の業務についての解説記事が掲載されました。
産業医の業務内容や役割、主治医との違いなど、とても参考になる内容ですので、ここに転載します。
ぜひご一読ください。
さて、記事の中には事例紹介があり、主治医と産業医の意見が分かれたとき、
どのように対応したらよいのか、産業医の立場からの解説ありました。

そこで、皆さんに質問です。

質問1.ここでは産業医の意見が採用され、復職が認められませんでした。
しかし、もし復職希望者が、主治医の診断書を盾にして会社の決定に納得しない場合、
どのように対処しましか?

質問2.復職が認められないため、当該企業の就業規則により休職期間が満了となり、退職扱いとなりました。
そのまま退職を強行しますか?

質問3.産業医は、 「通勤や客先に常駐する業務形態など」を理由に復職を認めないとしましたが、
ほかに講じることができる手段の検討はできませんか?

(参考)「産業医」何する人? 仕事に並走、安心・安全守る
産業医・精神科専門医 植田尚樹氏 2020/2/8 日経

社員がいきいきと働き、高いパフォーマンスを発揮する職場をつくるには何が必要か。産業医として多くの企業で社員の健康管理をアドバイスしてきた茗荷谷駅前医院院長で、みんなの健康管理室代表の植田尚樹医師に、具体的な事例に沿って「処方箋」を紹介してもらいます。
企業の従業員の健康管理について、専門的な立場から指導・助言を行う「産業医」をご存じでしょうか。病院などのいわゆる「主治医」が患者を診断して治療するのに対して、産業医の役割は企業内で従業員の健康を守ることにあります。専門知識を備え、その企業の業務や職場環境について詳しく知る医師をうまく利用することで、「いきいき職場」を実現できるはずです。
産業医は「労働安全衛生法」に基づき、50人以上の従業員がいる事業所に、その選任が義務づけられています。中小規模の事業所であれば非常勤の嘱託でかまいませんが、1000人以上の大規模事業所となると専属の産業医を置くことが必要です。
医師はその専門とする診療科にかかわらず、日本医師会などの研修を修了したり、労働衛生コンサルタント試験に合格したりすることで産業医となることができます。
診断や治療は行わず、労使でつくる「衛生委員会」に出席して労働災害防止について助言するほか、健康診断の実施や面接指導、健康相談、作業現場を見て回り問題点をチェックする原則月1回の「職場巡視」、健康や衛生管理のための研修「衛生講話」などを手がけています。

「外部の目」としての産業医
職場巡視であれば、労災を未然に防ぐために、消火器や非常口の前に物が置かれていないか、地震などの災害時に備えて棚を固定しているか、給湯室や仮眠室の衛生状況、換気や温度管理などの問題点を指摘して改善を求めるなどします。例えば、密室の作業現場について、作業者が倒れるなどの万が一の場合に備えて、内部が見えるように扉に窓を設けるように助言したり、作業所内で事故があった箇所に
毎日働いている人たちからすると、当たり前のようになっている職場環境でも、専門家の目で見ると、危険が潜んでいる場合も少なくありません。企業には産業医を「外部の目」として積極的に活用してほしいところです。産業医に求められる役割も時代ともに変化しています。以前は物理的な労災を予防する仕事が多かったのですが、最近は長時間労働やメンタルヘルス不調などへの対応も大きな部分を占めています。
2018年に成立した働き方改革関連法により、19年4月から産業医の権限と機能が強化されたことは象徴的です。従業員の「時間外・休日労働時間」、すなわち残業時間が1カ月あたり80時間を超えた場合、産業医への情報提供が企業に義務付けられました。また、それまで1カ月の残業が100時間を超えた場合、従業員からの申し出があった際、産業医による面接指導が義務付けられていたのですが、この要件が「月80時間超」に引き下げられました。
脳梗塞や心筋梗塞などが生じる「過労死ライン」とされる残業時間は月100時間。厚生労働省の認定基準は「発症前1カ月間におおむね100時間、または発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって1カ月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる」としています。企業がこうしたリスクを放置すると、「安全配慮義務」を怠っていたとして責任を問われる可能性があります。
面接指導の目的は過重労働による健康障害リスクを低減することにあります。勤務状況や疲労の蓄積、心身の状況を確認するとともに、生活改善を指導するほか、企業に従業員の状況を報告、改善のための対応策を助言します。
面接指導のほかに、任意の健康相談もあります。私の場合、非常勤の嘱託として幾つかの企業で産業医を務めているため、毎月の衛生委員会でそれぞれの企業を訪れる際に、従業員の健康相談に応じています。相談のうち2割は生活習慣病やその他、8割はメンタルヘルス不調といったところです。
病院などの医療機関での診断ではなく、なぜ産業医の相談を選ぶのか。会社の業務と従業員の仕事内容に詳しいことから、従業員が相談しやすいと思っているのかもしれません。ただし、相談は診察ではありませんので、状態に応じて病院などでの受診を勧めています。
従業員の休職や復職にあたっての面談も産業医の大きな仕事です。主治医があくまでも病気それ自体のレベルを診断するのに対して、産業医は主治医の意見を参考に、業務の内容などを含めて勤務に耐えられるレベルかどうか判断します。

産業医と主治医の意見が違ったら…

IT系企業に勤める30歳代男性の事例です。
不安障害で長期休職していたのですが、主治医が「復職可」と診断しました。産業医が面談して詳しく話を聞いたところ、休職前にあった動悸(どうき)や目まい、吐き気や息苦しさといった症状は解消されたものの、満員電車による通勤などに不安が残ることが分かりました。主治医は自覚症状が無くなったこともあり、以前との比較で「回復した」と判断したようです。一方、産業医は通勤や客先に常駐する業務形態など、実際に働いた際のことを考慮して「時期尚早」と結論づけました。安易な復職は、結果的に本人の体調不良を再燃させ、悪化させる恐れがあるので、慎重な判断が求められます。結果として、会社は産業医の意見を採用しました。
企業で産業医とやり取りするのは総務部門や人事部門の担当者がほとんどです。このため、職場の皆さんからすると、遠い存在に感じているかもしれません。あるいは存在自体をご存じないかもしれません。しかし、産業医はその会社の事業や職場環境をよく知る理解者でもあります。
自身の健康やメンタルに何か不安がある場合はもちろん、管理職であれば部下の勤怠などに心配な点がある場合など、気軽に産業医に相談してみてください。従業員の心身の健康を守り、よりよい職場環境を実現して、仕事のパフォーマンスを上げられるように協力するのが産業医の役割なのです。

植田尚樹先生 略歴
1989年日本大学医学部卒、同精神科入局。96年同大大学院にて博士号取得(精神医学)。2001年茗荷谷駅前医院開業。06年駿河台日大病院・日大医学部精神科兼任講師。11年お茶の水女子大学非常勤講師。12年植田産業医労働衛生コンサルタント事務所開設。15年みんなの健康管理室合同会社代表社員。精神保健指定医。精神科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

 

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