先日のニューヨーク・タイムズ電子版に、この口絵写真の「The German Example」と言う経済ニュースが掲載されていた。
アメリカ経済の陰りが問題になり始めた時期でもあり、緊縮政策を取っているにも拘わらず、何故、財政出動している米国と比べて、ドイツの方が経済成長しているのか。1985年から、インフレ調整後のドイツの時間給は、30%増加しているにも拘わらず、アメリカでは50年代60年代とも、そのような恩恵はなく、同じ1985年からの時間給の上昇率は、たったの6%だと言うのである。
ドイツの教訓から見えてくるのは、リベラルでも保守でもなく、両方の政策効果だと言う。
ドイツは、経済を活性化するために、政府を上手く使って、非情とも思えるほど、財政面での無駄を削減して来ている。
過去10年間の内、半ば頃から、米国経済の悪化とは逆に、ドイツ経済は活況を呈し始めたのだが、2007年以降の金融危機後も、ドイツでは、住宅バブルはなかったし、国家財政の赤字も少なく、第一、失業率が、米国の9.1%に対して、6.1%と低い。数学と科学に対する子供の能力は、ドイツの方がはるかに高いと言うのである。
米国がドイツから学ばねばならないのは、政府を、もっともっと効率化することだと言う。
長年、ドイツの失業保険制度は、多くのヨーロッパ諸国と同じように、就業意欲を失わせるほど完備してしたのだが、10年前に大ナタを振るった。
多くのベネフィットに関して、期間や水準を切り下げて、早期引退へのインセンティブを抑えて、長い間失業していた人々を就業させるように切り替えた。
長い間仕事についていない人については、働けるのか働けないのか調査をした。
健康で働ける人は、それに似つかわしい仕事につけて、賃金の低い仕事についている人は、ベネフィットを切り下げ、働かない人には、更に、一層切り下げた。
就業に対するインセンティブを高めて、従わない者には制裁を強化するなど、改革が進むにつれて、労働者が、スキルを向上させ、そのための支出を増加し始めるなど、仕事が仕事を生み、労働人口が増加して行った。
また、ドイツ優位を示しているのは、前述の数学や科学の学力の高さで、2000年以降急速に高まり、ドイツ平均が、全米一のマサチュセッツ州よりも高く、ドイツ人の技術力の卓越性や製造業優位の源となっている。
Pisaと言う国際的な数学、リーディング、科学テストについては、アメリカ人はピサの斜塔と言う認識しかないが、ドイツでは、国民の関心事だと言うから、そのあたりからして差が大きい。
また、政府の対応も、強力な効率化対策だけではなく、アメリカは住宅バブル後の政策は煮え切らないが、ドイツでは、銀行が40%の頭金を要求するようになった。
労働組合も比較的穏健で、ミドルクラスの賃上げも、トップの報酬アップと呼応していて、トップ1%の家庭所得は、全体の11%で、その後もこの構成比は変わっていないが、アメリカの場合には、9%から20%へとアップして格差が拡大している。
最後の指摘は、税の差で、かっての福祉国家政策から決別して支出を切り詰めており、ベネフィットに見合った税制度を取っているので、財政赤字と国家債務は、かなり、低い。
最近の政策は、60%の財政削減で、40%の増税である。
贅肉を取るために、食べるのを減らして、より多くの運動をすると言う政策の追求である。
ところで、ラグラム・ラジャンが、「フォールト・ラインズ」で、アメリカ経済の強みは、他の国と比べて、国家の福祉政策が貧弱で、失業や貧困に喘いでも、国民が、自助努力で立ち上がらなければならないところにあると論じていたが、この記事では、そのアメリカの福利厚生システムや経済社会のセイフティ・ネットでさえ、ドイツと比べれば、恵まれていて、生ぬるい、もっと切れということである。
もっともっと、経済的に苦境にある日本においては、左派政党などが、格差の拡大やワーキングプア―問題に危機感を感じて、更なる、福祉向上政策を求めているのだが、どう考えれば良いのであろうか。
今や、先進国ドイツでさえ、米国以上に、福祉厚生政策を切り詰めて対応しなければ、グローバル競争に勝てない、生きて行けない時代に突入したとするのなら、日本も、このまま経済停滞のまま行くのなら、皆平等に貧しく行くのか福祉を切り捨てるのか、どっちの道を歩むのか、肚を決めないと振り飛ばされてしまうであろう。
ところで、この記事は、何も、アメリカが、ドイツに成れと言っているのではない。依然、アメリカは、世界の一等国であり、Wal-Mart, Google, Apple, Facebook, Twitter など世界に冠たるイノベイティブな企業を有する移民のメッカであり、ドイツより、はるかに豊かであると言う。
では、何故、ダメなのか、それは、ドイツは、自分たちの弱点に対する対応に真面目に取り組んでいるが、アメリカは、そうではないと言うのである。
銀行が、頭金支払いに対する規制に反対して、或いは、ウォール・ストリートが、金融規制の強化に水を差すなど激しいロビーイング活動を展開したり、また、民主党が、社会保障やメディケアの変更を阻止し、共和党が、税制の1990年代レベルへの回帰を拒否し、ドイツが、財政出動なしに金融危機を乗り切った貧困絶滅プログラムの大幅カットを主張するなど、今回の金融危機で、どれ程、アメリカ経済が壊滅的な打撃を受けて疲弊したかを、何も理解していないと言うのである。
There is no getting around the fact that financial crises wreak terrible damage. It’s too late for us to prevent that damage, and it will take a long time to recover fully. It is not too late to learn from our mistakes.
日本の事情も、全く同じこと。
イギリスも、一時は、サッチャー革命で蘇ったが、日本の起死回生は、いつになるのであろうか。
アメリカ経済の陰りが問題になり始めた時期でもあり、緊縮政策を取っているにも拘わらず、何故、財政出動している米国と比べて、ドイツの方が経済成長しているのか。1985年から、インフレ調整後のドイツの時間給は、30%増加しているにも拘わらず、アメリカでは50年代60年代とも、そのような恩恵はなく、同じ1985年からの時間給の上昇率は、たったの6%だと言うのである。
ドイツの教訓から見えてくるのは、リベラルでも保守でもなく、両方の政策効果だと言う。
ドイツは、経済を活性化するために、政府を上手く使って、非情とも思えるほど、財政面での無駄を削減して来ている。
過去10年間の内、半ば頃から、米国経済の悪化とは逆に、ドイツ経済は活況を呈し始めたのだが、2007年以降の金融危機後も、ドイツでは、住宅バブルはなかったし、国家財政の赤字も少なく、第一、失業率が、米国の9.1%に対して、6.1%と低い。数学と科学に対する子供の能力は、ドイツの方がはるかに高いと言うのである。
米国がドイツから学ばねばならないのは、政府を、もっともっと効率化することだと言う。
長年、ドイツの失業保険制度は、多くのヨーロッパ諸国と同じように、就業意欲を失わせるほど完備してしたのだが、10年前に大ナタを振るった。
多くのベネフィットに関して、期間や水準を切り下げて、早期引退へのインセンティブを抑えて、長い間失業していた人々を就業させるように切り替えた。
長い間仕事についていない人については、働けるのか働けないのか調査をした。
健康で働ける人は、それに似つかわしい仕事につけて、賃金の低い仕事についている人は、ベネフィットを切り下げ、働かない人には、更に、一層切り下げた。
就業に対するインセンティブを高めて、従わない者には制裁を強化するなど、改革が進むにつれて、労働者が、スキルを向上させ、そのための支出を増加し始めるなど、仕事が仕事を生み、労働人口が増加して行った。
また、ドイツ優位を示しているのは、前述の数学や科学の学力の高さで、2000年以降急速に高まり、ドイツ平均が、全米一のマサチュセッツ州よりも高く、ドイツ人の技術力の卓越性や製造業優位の源となっている。
Pisaと言う国際的な数学、リーディング、科学テストについては、アメリカ人はピサの斜塔と言う認識しかないが、ドイツでは、国民の関心事だと言うから、そのあたりからして差が大きい。
また、政府の対応も、強力な効率化対策だけではなく、アメリカは住宅バブル後の政策は煮え切らないが、ドイツでは、銀行が40%の頭金を要求するようになった。
労働組合も比較的穏健で、ミドルクラスの賃上げも、トップの報酬アップと呼応していて、トップ1%の家庭所得は、全体の11%で、その後もこの構成比は変わっていないが、アメリカの場合には、9%から20%へとアップして格差が拡大している。
最後の指摘は、税の差で、かっての福祉国家政策から決別して支出を切り詰めており、ベネフィットに見合った税制度を取っているので、財政赤字と国家債務は、かなり、低い。
最近の政策は、60%の財政削減で、40%の増税である。
贅肉を取るために、食べるのを減らして、より多くの運動をすると言う政策の追求である。
ところで、ラグラム・ラジャンが、「フォールト・ラインズ」で、アメリカ経済の強みは、他の国と比べて、国家の福祉政策が貧弱で、失業や貧困に喘いでも、国民が、自助努力で立ち上がらなければならないところにあると論じていたが、この記事では、そのアメリカの福利厚生システムや経済社会のセイフティ・ネットでさえ、ドイツと比べれば、恵まれていて、生ぬるい、もっと切れということである。
もっともっと、経済的に苦境にある日本においては、左派政党などが、格差の拡大やワーキングプア―問題に危機感を感じて、更なる、福祉向上政策を求めているのだが、どう考えれば良いのであろうか。
今や、先進国ドイツでさえ、米国以上に、福祉厚生政策を切り詰めて対応しなければ、グローバル競争に勝てない、生きて行けない時代に突入したとするのなら、日本も、このまま経済停滞のまま行くのなら、皆平等に貧しく行くのか福祉を切り捨てるのか、どっちの道を歩むのか、肚を決めないと振り飛ばされてしまうであろう。
ところで、この記事は、何も、アメリカが、ドイツに成れと言っているのではない。依然、アメリカは、世界の一等国であり、Wal-Mart, Google, Apple, Facebook, Twitter など世界に冠たるイノベイティブな企業を有する移民のメッカであり、ドイツより、はるかに豊かであると言う。
では、何故、ダメなのか、それは、ドイツは、自分たちの弱点に対する対応に真面目に取り組んでいるが、アメリカは、そうではないと言うのである。
銀行が、頭金支払いに対する規制に反対して、或いは、ウォール・ストリートが、金融規制の強化に水を差すなど激しいロビーイング活動を展開したり、また、民主党が、社会保障やメディケアの変更を阻止し、共和党が、税制の1990年代レベルへの回帰を拒否し、ドイツが、財政出動なしに金融危機を乗り切った貧困絶滅プログラムの大幅カットを主張するなど、今回の金融危機で、どれ程、アメリカ経済が壊滅的な打撃を受けて疲弊したかを、何も理解していないと言うのである。
There is no getting around the fact that financial crises wreak terrible damage. It’s too late for us to prevent that damage, and it will take a long time to recover fully. It is not too late to learn from our mistakes.
日本の事情も、全く同じこと。
イギリスも、一時は、サッチャー革命で蘇ったが、日本の起死回生は、いつになるのであろうか。