熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

日経・日本経済研究センター・・・新春景気討論会(1)~アメリカ経済の行方

2011年01月22日 | 政治・経済・社会
   恒例の日経ホールで開かれた新春景気討論会を聴講した。
   この討論会での概略は、日経新聞の紙面や電子版で、動画も含めて報道されているので端折るが、アメリカ経済と中国経済についての討論について、多少異論があるので、考えてみたい。
   大方の見方としては、日米欧など先進国は、過重な国家債務の重圧や成熟化によって成長が鈍化し、世界経済の主役は、先進国から成長著しい新興国に移り、これら新興国の旺盛な成長によって、経済は、年度後半に入って緩やかな回復に向かうであろうと言うことであったように記憶している。
   日本経済については、成長率は、2010年度が3%強、2011年度が1.5%前後、為替と株の予測については、ほぼ現状を中心に小幅のアップダウンと言うところであったような気がしているが、要するに、経済ではなく景気討論会なので、どうしても、直近の目先に囚われて、中長期の構造的な視点が欠けるのは仕方がないのであろう。

   アメリカの景気については、岩田一政理事長は、FRBのQE2による金融緩和策を高く評価してデフレから脱却しつつあると言う見解であり、野村の木内登英部長は、為替や株価から予測をしていたが、一方、日銀の門間一夫部長は、住宅部門のバランス不況からは未脱却であり、緊急危機に端を発した不況で失われた雇用の回復が未達で、失業が長期化するであろうと述べていた。
   私は、これまでに、このブルログで、アメリカの景気回復には、もっともっと大規模な公共投資など政府の財政出動が必要だとするスティグリッツやクルーグマンの説を取り上げて来たが、この考え方の方が、特に、新産業やイノベーションを誘発して経済を成長軌道に乗せるためには必要だと思っているので、既に、金利をゼロ近辺に引き下げても機能しないFRBの金融政策の効果については疑問を持っている。

   経済浮揚策としての巨大な財政出動には、アメリカには根強い拒否反応があり、オバマ政権の経済政策が国家債務を益々増加させると危惧されているが、インフラへの公共投資を積極的に拡大してアメリカ経済を再生させよと説くスティグリッツと全く同じことを、フランス人のジャック・アタリが、新著「国家債務危機」で説いている。
   ”公的債務の危機に対する本当の解決策は、結局のところ、経済成長である。経済成長の前提となるのは、競争力のある投資であり、そのためには公的なインフラが欠かせない。したがって、過剰な債務解消の前提となるのは、健全な債務の増加である。”
   (誤解なきよう付言するが、日本は、国家債務はもう臨界点を突破した成熟国家となってしまっているので、この説は殆ど当て嵌まらない。リチャード・クー流の財政出動による需給ギャップの穴埋めなどは、これ以上絶対にやってはいけない。)

   ABCニュースの報道では、オバマ胡錦濤会談の半分は、米国の雇用問題が議論されたと言われているくらいであるから、アメリカ経済にとっては、高止まりして一向に改善しない失業問題、すなわち、雇用問題の解決前進が、最も喫緊の関心事であって、中国政府への元切り上げ圧力も、この延長線上の施策なのである。結局は、もっとも有効なのは経済成長しかないと言うことである。
   アメリカの中国への経済的圧力の究極の目的は、中国市場の解放であって、かって日本市場をターゲットにして意図した様に、価格競争力など眼中にない知財や高度なサービス産業や超ハイテク産業などの進出による中国産業経済のコントロールであろうと思っている。

   三井物産の飯島彰己社長は、従来型の産業からではなく、スマートホンなど更なるITハイテクなど新地域や新産業などでの構造転換型の経済回復を予測していたが、アメリカにとって、正に必要なのは、この方面への強力な経済社会の産業構造変化の推進加速であって、イノベーション誘発による新産業革命であろう。
   昨日、オバマ米大統領が、雇用創出と競争力強化を目指す諮問会議を新設し、議長に米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフ・イメルト会長兼最高経営責任者(CEO、54)を起用し、ボルカー元米連邦準備理事会議長(83)が議長を務めていた経済再生諮問会議を刷新するもので、ボルカー氏は退任することになったのも、正にこの路線の充実の為であろう。産業界との関係を改善し、規制強化路線から経済活性化へ政策の軸足を移すということでもあり、技術革新や自由貿易促進などを通じて米企業の競争力を強化し、雇用を増やす方策を助言する役割を担うことになると言うことである。

   また、The Economist誌が、China in the mind of America  Why some politicians yearn for another“Sputnik moment”, and why it wouldn’t help と言う記事のなかで、オバマ大統領などが、中国の破竹の勢いの経済成長をロシアのかってのスプートニク危機に見立てて、月ロケット打ち上げを目指して、科学技術の振興教育を強化しNASAを設立して全米が燃えに燃えたあの時代の「スプートニク・モーメント」を再現したいと目論んでいることを記しているが、アメリカの再生は、金融政策や為替や株管理だけではなく、根本的には、新産業の創設を核にした実体経済の再活性化以外には、望み得ないのである。
   テクノロジーで絶対に中国の遅れを取りたくないと息巻いている共和党のニート・ギングリッチなどは、解決策として、民主党とは相いれない、税の削減、小さな政府と自由市場、公共投資反対を唱えており、力がついた共和党の抵抗は強い。
   したがって、先のスティグリッツやクルーグマンの叡智の実現は非常に困難で、アメリカ経済が再浮上するかどうかは危ぶまれ、景気循環の回復局面を待たねばならないとなると、かなり前途多難である。
   しかし、いずれにしろ、私自身は、アメリカ経済の先行きは、アメリカ政府のこの方面への財政出動や積極的な新産業政策如何にかかっていると思っている。
   
   
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