熟年の文化徒然雑記帳

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ミシェル・オバマ、ウォルマートの健康食品キャンペーンに賛同~ワシントン・ポスト

2011年01月21日 | 政治・経済・社会
   ワシントン・ポストからのメール・ニュースで、”With praise from Michelle Obama, Wal-Mart announces healthy food campaign”がトップで入ってきた。
   ファースト・レイディが、南東ワシントン・コミュニティセンターで行われた、安売りで名声を博したメガスーパーのウォルマートの、もっと健康な食品を販売しサプライヤーにも協力を要請するとする「健康食品キャンペーン」に賛同して、ウォルマートの役員と共に発表セレモニーに参加したというのである。
   大統領夫人が、特定企業のキャンペーンに賛同するなどと言うのは異例のことだが、「ウォルマートのこの努力は、国中のマーケットプレイスを変革する国民の巨大な勝利だ」と述べている。  
 
   食品会社が、Great Valueと銘打って売っている米、スープ、缶入り豆、サラダドレッシング、ポテトチップスのようなスナックなどの多くの加工食品に加えられている、ナトリウム、トランス脂肪酸、添加砂糖などを削減して健康食品とすることは勿論、新鮮な果物や野菜などを、もっと低価格で提供すると言う健康食品キャンペーンを5か年計画で実施すと言うことである。
   更に、ウォルマートは、全生産の16%をウォルマートに供給していると言う巨大食品メーカーKraftなどを筆頭に、商品のメーカーやサプライヤーに圧力をかけてこのキャンペーンに協力させることを約束している。 

   前に、マイケル・ポーランの「雑食動物のジレンマ」のブックレビューで、アメリカの食品が如何に悲惨な状態にあるかを論じたが、特に、アメリカで売られている加工食品の汚染や悪質振りは特筆すべきで、貧困層や子供たちの健康を蝕んでおり、深刻な社会問題を惹起しているのである。 
   世界最大の小売店で、しかも、中国からサテライト2基を使って毎年数兆円の商品を調達しているウォルマートであるから、このキャンペーンの意義と影響力は、途轍もなく大きく、ファースト・レイディが言うように、食品市場を変えてしまうのみならず、グローバルベースでのビジネスのコンセプトさえ変革しかねないと考えられる。

   とにかく、エブリディ・ロープライスを旗印に、安く売るためには何でもすると言うイメージで、労働環境や従業員の待遇は最低だと揶揄されていたウォルマートだったが、最近では、省エネや地球環境の保護などの緊急の社会問題へも意を用い始めたと言う。
   この健康食品キャンペーンも、その社会的責任への企業努力の一環であろうか。

   いずれにしろ、このキャンペーンと言っても、とどのつまりは、巨大なスケールの調達力をフルに活用して、規模の経済を実現するのであり、更なるコスト削減努力は、従来のように熾烈かつ強烈なサプライヤー競争を強いて弾き出すのであろうから、ウォルマートとしては、痛くも痒くもないであろう。
   ウォルマートにとっては、ミシェル・オバマをキャンペーンに誘い込んで実現した大きなPR宣伝効果と、社会的責任企業としてのイメージアップで得たレピュテーションの価値は、非常に大きい。
   問題は、このように巨大な安売りスーパーが、社会的責任と社会正義に目覚め始めて巨大なスケールで動き出すと、これまで、健康食品を売りとしてニッチ市場を目指して業績を伸ばしていた専門スーパーや小売店などが、どのように対抗するのか、その再編が面白い。

   もう一つ話題となるのは、趣旨は、社会的正義のために良いとしても、今回のように極めて影響力の強いファースト・レイディと言った政府高官ないし関係者なり政府など公的機関が、特定の企業の動向にどこまで、協賛なりサポートが出来るのかと言うことである。
   既に、リーマンショック後の金融機関やビッグスリーの救済などで、アメリカも社会主義国家(?)になってしまったのであるから、是々非々主義で良かろうと言う考え方も出来るであろうし、或いは、既に国家規模のプロジェクトなど巨大なグローバル・ビジネスなどでは政府主導の売り込みやプロジェクト参画が常識となっているので、目的次第で、政府など公的機関の関わりは問題ないと言う考え方もあるであろう。
   私は、このケースは、人類社会における喫緊の課題でもあり、社会的正義のためにも必須の消費者運動でもあるから、非常に良いことだと思っている。
   昔から、イギリスやオランダなどのヨーロッパ政府が、結構、私企業のビジネスのサポートに積極的であるのを見ているので、日本政府も逡巡せずに、もっと、ビジネス・オリエンテッドになっても良いと思う。
   
(追記)写真は、NYTホームページより借用。
 
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