今日の日経のエコノフォーカスで、次の記事が掲載されていて、「消費者余剰」について論じられていた。
「GDPの外」経済拡大 動画配信など「お得感」25%増
まず、消費者余剰だが、「消費者がこれくらい払ってもよいと考える価格(支払許容額あるいは支払意思額と呼ばれる)と、実際に払った価格の差」で、わかりやすくいうと「お買い得感」である。
これまで、レンタル店に行って、個々にDVDやCDを借りていたのを、ネットフリックスやアマゾンプライムに入って僅かな定額を支払えば、見放題に楽しめる。
配信サービスでは、DVDのように複製や運搬のコストはほぼかからず、料金は安くなる。映画やドラマを何本見ても追加費用はかからず、その分、消費者余剰は膨らむ。
しかし、逆に、動画配信の普及でDVD生産や販売・レンタルが減るので、その分、GDPは縮小して、工場やレンタル店で働く人の雇用を圧迫する。
野村総合研究所がネットの利用時間などを基に試算したところ、20年にデジタルサービスから生まれた消費者余剰の総額は日本全体で少なくとも200兆円を超えた。16年時点では161兆円だったとはじいており、4年で25%ほど増えたことになる。動画配信だけでなく、オンライン会議の普及や機能を増やすSNS(交流サイト)が消費者のお得感を一段と高めたと分析する。20年通年のGDPは実質で前年比4.8%減り約529兆円となったが「落ち込みの一部を急増した消費者余剰がカバーしている」(野村総研の森健氏)。GDPだけをみると16年比でも2.4%減ったが、消費者余剰との合計なら4%弱増加した計算が成り立つ。と言うのである。
この関係を日経記事のグラフを借用すると次の通りである。
勿論、これまで、何回も論じているが、GDPに含まれない経済活動は、デジタルだけではなく、ほかにもある。その典型は、サミュエルソンが半世紀以上も前に論じたように、主婦の家事や育児など家庭内の無償労働だが、同じ仕事を外注すれば、GDPの増分となる。
また、アルビン・トフラーが説いた生産消費者 (prosumer) が行う、市場を通さない、自分自身や家族や地域社会で使うためもしくは満足を得るための無償の隠れた経済活動など、DIYも、このジャンルの重要なプレイヤーである。
同じ宴会でも、家人などが準備する内食ならGDPに含まれないが、レストランへ行けばGDPに加算され、親が子供の勉強を見ればGDPには関係ないが、塾や予備校に行けば、GDPが増えると言ったケースである。銀行など、窓口なら無料だが、客に総てやらせるATMで手数料を取るなど言語道断だというクレイムも分からないわけではないと言う類いもそうである。
それに、百均などの価格破壊も「消費者余剰」を生み出しており、経済発展の根幹である破壊的イノベーションも「消費者余剰」を惹起するなど、消費者産業は、知恵を絞って、如何に、「消費者余剰」が感じられるような魅力的な商品を売り出して商戦に勝とうかと鎬を削っている。
しかし、上記グラフの「生産者余剰」は、即、付加価値で、その総計がGDPであり、三面等価の法則で分配所得と等価なので、雇用の維持には、この部分を拡大する必要があるのだが、どんどん、「消費者余剰」に蚕食されて伸びなくなっていると言うことであるから、経済成長が頭打ちの現下の成熟経済下では、非常にゆゆしい問題であるところが、難題である。
この消費者余剰現象も含めて、現代の経済成長は、GDPには換算されない質の向上に比重が移って、実質的に生活水準はどんどん上がって豊かになっているにも拘わらず、GDPベースで、経済成長が実感されないと言う現象については、これまで、何度も書いてきたが、
問題は、国の膨大な借金も、雇用の拡大も、GDPをアップしない限り解決しないことである。
コロナ騒ぎで、行動が制限された御陰で、人間活動が内向き志向となって、最近、この「消費者余剰」や「生産消費者」を志向した経済活動が、どんどん、増えていく感じで、質の向上で生活水準は上昇しながらも、雇用に直結するGDPの増加が見込めない閉塞経済状態が続いている。
社会が進めば進むほど、人間が豊かになればなるほど、知的水準が上がれば上がるほど、人間は、自分自身の知的や情緒的な満足を、自分自身で内的に増幅して追求してゆくであろうから、ますます、この傾向が強くなって行くような気がしている。
「GDPの外」経済拡大 動画配信など「お得感」25%増
まず、消費者余剰だが、「消費者がこれくらい払ってもよいと考える価格(支払許容額あるいは支払意思額と呼ばれる)と、実際に払った価格の差」で、わかりやすくいうと「お買い得感」である。
これまで、レンタル店に行って、個々にDVDやCDを借りていたのを、ネットフリックスやアマゾンプライムに入って僅かな定額を支払えば、見放題に楽しめる。
配信サービスでは、DVDのように複製や運搬のコストはほぼかからず、料金は安くなる。映画やドラマを何本見ても追加費用はかからず、その分、消費者余剰は膨らむ。
しかし、逆に、動画配信の普及でDVD生産や販売・レンタルが減るので、その分、GDPは縮小して、工場やレンタル店で働く人の雇用を圧迫する。
野村総合研究所がネットの利用時間などを基に試算したところ、20年にデジタルサービスから生まれた消費者余剰の総額は日本全体で少なくとも200兆円を超えた。16年時点では161兆円だったとはじいており、4年で25%ほど増えたことになる。動画配信だけでなく、オンライン会議の普及や機能を増やすSNS(交流サイト)が消費者のお得感を一段と高めたと分析する。20年通年のGDPは実質で前年比4.8%減り約529兆円となったが「落ち込みの一部を急増した消費者余剰がカバーしている」(野村総研の森健氏)。GDPだけをみると16年比でも2.4%減ったが、消費者余剰との合計なら4%弱増加した計算が成り立つ。と言うのである。
この関係を日経記事のグラフを借用すると次の通りである。
勿論、これまで、何回も論じているが、GDPに含まれない経済活動は、デジタルだけではなく、ほかにもある。その典型は、サミュエルソンが半世紀以上も前に論じたように、主婦の家事や育児など家庭内の無償労働だが、同じ仕事を外注すれば、GDPの増分となる。
また、アルビン・トフラーが説いた生産消費者 (prosumer) が行う、市場を通さない、自分自身や家族や地域社会で使うためもしくは満足を得るための無償の隠れた経済活動など、DIYも、このジャンルの重要なプレイヤーである。
同じ宴会でも、家人などが準備する内食ならGDPに含まれないが、レストランへ行けばGDPに加算され、親が子供の勉強を見ればGDPには関係ないが、塾や予備校に行けば、GDPが増えると言ったケースである。銀行など、窓口なら無料だが、客に総てやらせるATMで手数料を取るなど言語道断だというクレイムも分からないわけではないと言う類いもそうである。
それに、百均などの価格破壊も「消費者余剰」を生み出しており、経済発展の根幹である破壊的イノベーションも「消費者余剰」を惹起するなど、消費者産業は、知恵を絞って、如何に、「消費者余剰」が感じられるような魅力的な商品を売り出して商戦に勝とうかと鎬を削っている。
しかし、上記グラフの「生産者余剰」は、即、付加価値で、その総計がGDPであり、三面等価の法則で分配所得と等価なので、雇用の維持には、この部分を拡大する必要があるのだが、どんどん、「消費者余剰」に蚕食されて伸びなくなっていると言うことであるから、経済成長が頭打ちの現下の成熟経済下では、非常にゆゆしい問題であるところが、難題である。
この消費者余剰現象も含めて、現代の経済成長は、GDPには換算されない質の向上に比重が移って、実質的に生活水準はどんどん上がって豊かになっているにも拘わらず、GDPベースで、経済成長が実感されないと言う現象については、これまで、何度も書いてきたが、
問題は、国の膨大な借金も、雇用の拡大も、GDPをアップしない限り解決しないことである。
コロナ騒ぎで、行動が制限された御陰で、人間活動が内向き志向となって、最近、この「消費者余剰」や「生産消費者」を志向した経済活動が、どんどん、増えていく感じで、質の向上で生活水準は上昇しながらも、雇用に直結するGDPの増加が見込めない閉塞経済状態が続いている。
社会が進めば進むほど、人間が豊かになればなるほど、知的水準が上がれば上がるほど、人間は、自分自身の知的や情緒的な満足を、自分自身で内的に増幅して追求してゆくであろうから、ますます、この傾向が強くなって行くような気がしている。